連載
(11)ドライバ編・中-2
予告どおり今回は,AMD製GPUであるATI Radeonシリーズ用のグラフィックスドライバ「ATI Catalyst」を,Windows XP環境でアップデートする方法について説明していきたい。
……と,あらたまってはみたものの,実のところ,グラフィックスドライバのアップデート作業に,そう大きな違いがあるわけではない。大筋は第10回で説明した「ForceWare」と同じだ。つまり,まずは既存のドライバソフトウェアをアンインストール(=削除)して,その後,新しいドライバソフトウェアをインストールする“だけ”である。
もっとも,いくつかForceWareと決定的に異なる部分もある。最も特徴的なのが,ATI Catalystが複数のファイルで構成されている点だ。
第9回で,ATI Catalystをダウンロードするとき「ファイルは三つあるが,必要なのは二つだけ」と説明したのを憶えているだろうか? ATI Catalyst――正確には日本語版のATI Catalystだが――は,以下の3ファイルから構成されている。
- ATI Catalystグラフィックスドライバ
- ATI Catalyst設定ソフト「ATI Catalyst Control Center」
- ビデオ入力機能用ドライバ
1.と2.はどちらも似たようなファイル名となっているので少々紛らわしいが,よく見るとグラフィックスドライバには「dd」,設定ソフトには「ccc」の文字がある。AMDはグラフィックスドライバを「Display Driver」と呼んでいるためddという文字が入り,一方の設定ソフトは,ATI Catalyst Control Centerの略称であるcccが使われているので,間違えないようお気を付けを。
なお,もう一つ注意しておいてほしいのは,現在のATI Catalystが,「ATI Radeon 9250/9200/9000/8500/7500/7200/7000」をサポートしていない点だ。これらDirectX 8世代以前のGPUに向けたドライバはすでに完成しており,アップデートする必要がないというのがAMD(※当時はATI Technologies)の言い分である。いま挙げたGPUを搭載したPCを使っている人にとっては,「ATI Catalyst 6.5」が最新版かつ最終版となる。
ATI Catalystのアップデート手順(Windows XP版)
以上を踏まえ,以下,ATI Catalystのアップデートを行っていこう。まずはいま導入されているドライバソフトウェアのアンインストール作業からだ。
アンインストールの仕上げに
“おまじない”を唱えよう
これで,アンインストール作業は完了だ。続いてインストール作業に入るが,第10回と同じく,インストール前に,このタイミングで“インストール作業がうまくいくおまじない”を行っておくことをオススメしたい。
“おまじない”に関しては,第10回でコラムとして詳しく説明してあるので,ぜひそちらを参照してほしいが,簡単にいえば,ドライバのアンインストール時に残ったゴミを削除する作業のこと。行っておくと,ドライバのインストール時に問題が生じる可能性を減らせるので,(少々面倒なのだが)ぜひトライしてもらえればと思う。
よくあるエラーメッセージと
インストールオプションを確認
これでWindows XP環境におけるATI Catalystのアップデートは完了となる。
ただし,ATI Catalystに関しては,二つほど,“定番”のエラーがある。一つは「MOM.Implementationがうんぬんで,指定されたファイルが見つからない」という,下に示したメッセージだ。
これは,手順(21)のあたりで生じやすい。ATIロゴを右クリックしてATI Catalyst Control Centerを起動しようとしたり,ロゴがタスクトレイに表示されず,デスクトップの右クリックからATI Catalyst Control Centerを起動しようとしたりしたとき,このエラーメッセージが表示されてしまうのだ(※ATI Catalyst Control Centerはロゴだけでなく,デスクトップの右クリックからも起動できる)。
このエラーが発生する明確な理由はよく分からないのだが,“おまじない”を行わなかったときなどによく生じやすい。解決方法はドライバの再インストールとなるので,面倒ではあるが,もう一度(1)からやり直そう。
もう一つのよくあるエラーが,「cli.exe−アプリケーションエラー」というものだ。
実のところ,「購入したPCがATI RadeonやAMD製のグラフィックス機能統合型チップセットを採用していた」場合,こちらのエラーが発生する可能性は極めて低い。実のところ,PCビギナーというよりは,PCビギナーから一歩踏み出した人が直面しやすいエラーなのだが,100%発生しないともいい切れないので,本稿の最後にコラムの形で解説することにした。必要に応じて確認してほしい。
この2項目は,簡単にいうと「ATI Radeonユーザーだけが利用できる,無料の3Dアプリケーションを入手するためのインターネットショートカットをデスクトップに置くかどうか」を決定するためのもの。チェックを入れると,Google Earthライクな3Dの地球表示ソフト「Earthsim」と,Valve製のFPS「Half-Life 2: Deathmatch」と「Half-Life 2: Lost Coast」を入手するためのショートカット「Valve Free Games Offer」がデスクトップに置かれる。いずれもリンク先は英語だが,説明に従って作業すると,計3本のソフトを無料で入手できるというわけだ。
このうちValveの2タイトルについて付け加えると,ゲーム配信システム「Steam」を入手してインストールすることで,期間限定(※いつまでかは不明)で配布される2タイトルを入手できる。ドライバと直接関係があるわけではないのでこれくらいにしておくが,興味を持った人は,Steamの日本語公式サイトをチェックするといいだろう。
国内の大手メーカー製PCには,AMD製のグラフィックス機能統合型チップセットを採用したモデルが少なくないが,想像するに,そういったPCを購入した人のほとんどは,初期状態のままグラフィックスドライバを使っているのではないだろうか。DirectX Runtimeが最新版になっていて,要求スペックをクリアしているにもかかわらず,ゲームがうまく動かないときにはドライバのアップデートを行うと,状況は劇的に改善する可能性がある。
PCの根幹に関わる部分をアップデート(=更新)する作業なので,ドライバの更新作業はどうしても自己責任になってしまうが,上で示した手順に従えば,まず大きな問題には至らないはず。失敗しても基本的にやり直せるので,ドライバのアップデート作業を,ぜひ身につけてほしいと思う。(ライター・石井英男)
ATI Catalyst Control Centerを実行しようとすると,「cli.exe」のエラーメッセージが表示される――。
これは,ATI Catalyst Control Centerが「.NET Framework」(ドットネットフレームワーク)を利用したソフトウェアであるがゆえに発生するものだ。
.NET Frameworkとは,Windowsベース(=Windows上で動作する)やWebベース(=ネットワーク上で動作する)といった区別なく,ソフトウェアを開発できるようにする仕組み。開発に便利な要素をたくさん持っていることもあり,近年,多くのソフトウェアで採用されている。
DirectXを利用したゲームをプレイするにはDirectX Runtimeが必要なことは連載第1回で詳しく述べたが,同様に,.NET Frameworkを利用したソフトを実行するには,.NET FrameworkのRuntimeが必要だ。まわりくどいのでストレートに言ってしまうと,ATI Catalyst Control Centerを利用するには「.NET Framework 2.0」のRuntimeが必要ということなのだが,これはWindows XPに標準ではインストールされていない。だから,別途入手してインストールしなければ,ATI Catalyst Control Centerを実行しようとしたとき,「必要なRuntimeがない」→「エラー」となるわけだ。「cli.exe−アプリケーションエラー」というのは,そのエラーメッセージなのである。
原則論をいえば,すでにATI Catalystが導入されていたPCなら,ATI Catalyst Control Centerが利用できるようになっている(=.NET Framework 2.0が導入されている)はずだ。しかし,PCメーカーによっては,あえてATI Catalyst Control Centerを利用しないところもあるので,その場合は新しく.NET Framework 2.0を入手しなければならない。また,本連載のターゲットからは少し外れるが,初めてATI Radeon搭載グラフィックスカードを購入した人にとっても,.NET Framework 2.0の導入は必須となる。というわけで,念のため以下のとおり,入手&インストール方法を説明しておきたい。(佐々山薫郁)
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AMD Software
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