企画記事
魅力的な独自要素と日本展開,「Perfect World」に続くカジュアルファンタジーMMORPG「夢世界−武林外伝−」インタビュー
日本でのサービス時のタイトルは「夢世界-武林外伝-」となった。「完美(完璧な)世界」の次は,「夢の世界」ということか。
このゲームは,もともと中国の大人気コメディ番組「武林外伝」をMMORPG化したものだ。中国では,その世界をPerfect Worldのシステムを使ってゲームにしたものということで分かりやすい棲み分けができていた。しかし,日本では元の番組自体がまったく知られていないので,ぱっと見て「Perfect Worldの可愛い版?」という印象しか持っていない人も多いのではないかと思われる。
ゲームシステムの多くは,Perfect Worldから引き継がれている。ではPerfect Worldとの違いはなにか,原作の知名度が低い日本ではどのように展開していくのかなどについて,シーアンドシーメディア オンライン事業部統括戦略部部長木村武志氏,同マーケティング課曽羽孝則氏,オンライン事業部運営部山下養一氏に話を聞いてみた。
Perfect Worldとどこが違う?
4Gamer(以下4G):本日はよろしくお願いします。最初にゲームの概要を教えてください。
4G:Perfect Worldでは無制限にできましたから,確かにそれもどうかという気はしますね。
曽羽氏:ある程度,制限があったほうが,燃える人もいるのではないかと思います。また,ある一定レベルまで行かないと結婚できないといった制限もあります。また,夫婦のみを対象としたクエストも多数揃えられていますので,結婚したほうが楽しみ方は広がりますね。
4G:そのほか,Perfect Worldと変わった点としてはどんなものがありますか?
曽羽氏:一番の違いは,要求スペックがかなり低くなったことですね。3Dのオンラインゲームとしては,かなり低いスペックでも動作するものとなっています。4Gamerの読者さんあたりではゲーム用PCを持っている人も多いのでしょうが,そうでない人にとっても楽しめるものとなっています。
山下養一氏(以下,山下氏):インストールベースでだいたい1GBくらいですね。
4G:それくらいなら容量の心配もなさそうですね。
夢世界のゲームクライアントは,Perfet Worldで使用された完美時空独自エンジンAngelicaの最適化版が使用されているものの,要求スペックはかなり引き下げられ,全体に軽くなっている。
グラフィックスカードの必須条件は,Intel GFX2(Intel 865Gなど)以上となっている。当初発表されていたスペック(RIVA TNT2以上)からは引き上げられているのだが,これはかなり安全策をとったものと思われる。さすがにTNT2では(動かなくはないのだろうが),快適なプレイは期待できそうにない。
大雑把にいって,Pentium 4(ないし,そのCeleronタイプ)が搭載されているPCでIntel 845Gなどが使われている場合は,グラフィックスカードが必要になる。865G,915Gなどはグラフィックスカードなしで,チップセット内蔵グラフィックスだけでも大丈夫。Pentium III世代だとグラフィックスカード次第という感じか。Pentium M搭載くらいのものであれば,ノートPCでもほとんど問題がなさそうだ。
曽羽氏:初心者サポート機能としては,オンラインゲームでは珍しいツールかなと思うのですが,マップをクリックするとそこに移動するようなものが用意されています。逆に,ある程度ゲームをやり込んだ人向けの機能としては,ランキングシステムが用意されています。これはゲーム内で自動的に更新されていくものなのですが,レベル(経験値)やゲーム内のコインなどによってプレイヤーキャラクターの順位が公表されるというものです。毎週,1位の人には,「称号」が名前のところに付くようになります。
4G:その称号というのはどんなものですか?
曽羽氏:これはランキング入賞者の人しか名乗れないものなので,それを維持するにはレベルアップなどを続ける必要があり,ゲーム内で競い合う,ゲーム内が活性化する要素として楽しんでいただけたらと思っています。
どちらも「飛天オンライン」の特徴的なシステムに似ているのはちょっと気になったが,これら以外でも,ほかのカジュアル系MMORPGがかなり研究されている感じを受けた。
アバターアイテム中心のキャラクターカスタマイズ
4G:キャラクターのカスタマイズについてはどのようになっていますか?
曽羽氏:キャラクター作成は,Perfect Worldのような細かいキャラクターエディットではなく,5種類くらいずつのパーツを選んでいくタイプですが,夢世界では,アバターアイテムが充実していまして,とくに顔部分では目,鼻,口などといった細かい部分でのカスタマイズができるようになっています。
4G:……鼻ですか?
曽羽氏:猫の鼻を付けたり,天狗の鼻,ピノキオの鼻とかいった感じですね。
4G:なるほど。
曽羽氏:Perfect Worldでは,キャラの作成時に,凝る人は非常に凝ったカスタマイズをしているのですが,ちょっとハードルが高くなっていますよね。もっと手軽に楽しめるものということで,夢世界では,こういったアバターアイテム中心でキャラクターのカスタマイズをしていくことになります。変更点が,見た目ですぐに分かるという意味ではアバターアイテムのほうが優れているのではないでしょうか。コスプレみたいに変身したキャラクターでのプレイを,ビデオシステムで記録しておくという楽しみ方もできます。
4G:ビデオシステムというのはなんですか?
山下氏:これは課金アイテムになる可能性もあるのですが,ゲーム内の映像を記録しておいて,あとから再生できるようになるものです。再生時には360度好きなアングルから楽しむことができます。領土戦とかの記念に記録したり,あとで攻略に利用したり,面白そうな人がいたら個人的に録ってみたりと,いろいろな楽しみ方ができるものになっています。
4G:要するに,リプレイデータがプレイヤーのPCに記録できるものですね?
曽羽氏:そうですね。
4G:プレイの記録を残したり,いろんな用途に使えそうです。MMORPGでは珍しいですよね。いまのところ,リネージュIIとグラナド・エスパダくらいにしかないと思います。もう少し描画が重ければ,ハードウェアのベンチマークで使えるのですが(笑)。
Perfect Worldで話題を呼んだ顔のエディット機能は省略され,髪,顔型などの各要素を5種類くらいずつから選択していくという,ごく普通の方式が採用されている。自由度は下がっているが,どんな操作をしてもちゃんと可愛いキャラクターができるようにはなっている。
中国での状況を見ると,月額固定+アイテム課金で運営されているPerfect Worldと違って,武林外伝(夢世界)は最初からアイテム課金のみのモデルを前提として制作されていた。アバターアイテムは,アイテム課金と親和性がよく,そのような方針が取られたのだろう。プレイヤー側としてもゲーム開始後のカスタマイズ要素が多くなるのは悪いことではない。日本での課金形態はまだ発表されていないが,専用か併用かはともかく,アイテム課金が行われることは確実で,さまざまなアバターアイテムで賑わうことは間違いないだろう。
戦闘システムは?
山下氏:6人ですね。
4G:夢世界は,どちらかというとパーティプレイ中心ですか?
曽羽氏:職業や狩り場などを選べば,ソロでも結構いけますが,どちらかというとパーティ向きのゲームですかね。転職も含めると全部で15クラスの職業に分かれるわけですが(1→2→4→8種に分化),4種類になったあたりから,かなりクラスの性格がはっきりしてきますので(剣,槍,攻撃魔法,回復魔法といった感じ),パーティを組みやすいのではないかと思います。
4G:ちなみに剣と槍では,どれくらい違いがあるのですか?
曽羽氏:アタッカーと盾ですね。槍が盾役になります。
4G:片手剣なら盾を併用できそうなのですが,両手で使う槍使いが盾役なんですね。ところで,クラスが8種類になると,日本語版では職業名はどうするのかなとかちょっと心配もしているのですが(編注:以前の記事でも紹介しているように,中国版では剣聖,邪皇,刀君,戟神,天師,蠱王,医仙,神尊)。中国名ではどんな職業か分かりにくいですし。
曽羽氏:それは今後のお楽しみにさせてください。
4G:戦闘関係でとくに変わった部分はありますか?
4G:PvPやPKはPerfect Worldと同じような感じですか?
曽羽氏:はい。そのあたりは同じものです。PKは,一方的に攻撃可能でアイテムを落としたりする可能性があるもの,PvPはお互いに合意のうえで戦うものです。
4G:PKをすると,名前が赤くなったりするんですね?
曽羽氏:そうです。そのあたりも同じです。
4G:いちばん特徴的なのは騎乗戦闘のようですね。
曽羽氏:実は,Perfect Worldでは,騎乗して移動し,降りて戦闘,また移動するときに騎乗と,乗り降りの手間がかかるという指摘があったのですが,そういったものが解決されているのが夢世界のシステムです。騎乗した状態だと,スキルの出方が少し変わったりという楽しみもあります。
4G:念のために聞いておきますが,二人乗りはできますよね?
曽羽氏:もちろんです。
4G:騎乗ペットもいろいろ揃えられているようなので楽しみです。
4G:騎乗ペットと戦闘用ペットは,完全に別のものなのですか?
曽羽氏:はい。別のものになります。
ペットは,いろいろなMMORPGで人気を集めているコンテンツだ。Perfect Worldでは,一般のモンスターを捕獲して使役するというのが妖精クラスの特徴となっていたので,妖精しかペットを扱えない仕様であった。そちらのほうがやや特殊なペットシステムだったのだが,今回は一般的なものが搭載されたと考えればよいだろう。このあたりからもライトMMORPGのトレンドをいろいろ取り込んでいることが分かる。
さまざまなモンスターになれる「変身システム」の魅力
山下氏:クエストをクリアしたり,特定の少し強いボスを倒したときに報奨として出てくるアイテムで,特定のモンスターに変身できるようになります。
曽羽氏:変身の種類は結構豊富です。大きな岩みたいなモンスターになれば防御力が上がったり,妖精ぽいものに変身するとまた違う力が使えたりと,見た目だけではなくて,本当に変身で「RPG」のようなこともできるものになっています。
4G:外見だけでなく性質が変わるというのはいいですね。あるアイテムを持っていると,特定のモンスターになれるという感じですか?
山下氏:そうですね。一人で複数の変身アイテムを使えますので,状況にあわせていろんなモンスターに変身できます。
4G:そのアイテムは,回数制限のようなものはあるのですか?
山下氏:回数制限はありません。ただ,使用時間には制限があります。
山下氏:最初はレベル5くらいですね。レベル1からでもできるクエストの報酬なのですが,だいたいレベル5くらいが適当だと思います。
4G:おお,それはいいですね。かなり早い時期から変身が試せるわけですね。
山下氏:レベル5で変身,レベル10で転職,そして次の変身とかなりテンポよく進んでいけるようになっています。
4G:変身アイテムは課金アイテムが中心になるのでしょうか?
山下氏:課金アイテムも用意される予定ですが,現在はクエストで取得するようになっています。
現状では,変身というとリネージュやRED STONEの変身システムやホーリービーストの獣人化(動物から人間になる)くらいしかMMORPGでは扱われていないように思われる。夢世界の変身は,RED STONEやホーリービーストの二者択一的な変身よりは,リネージュの変身に近い。MMORPGでは,古くはEverQuestのEnchanterが他種族(一部モンスター)に変身できたものの,さほど有効な使い道はなく,Perfect Worldでも妖族は変身できるが,自由度はほとんどない。最近ではSecret Onlineで,一部種族のみに変身が取り入れられているものの,自由度の高い変身を中心要素に据えたゲームというのは,夢世界が初めてかもしれない。
夢世界の変身は,すべてのプレイヤーが使用可能で,かつ応用性,柔軟性の高いものになっている。さらに重要なことは,これがこのゲームの中心的な要素であり,今後は集中的に手が加えられるであろうことだ。キャラクターの性能が大きく変化すると,ゲームバランスへの影響が懸念されるところだが,そのあたりは実際のゲームを見て判断する必要があるだろう。全面的に強いモンスターではなくて,一芸に秀でたモンスターを多数使い分けていくといったスタイルなら,コレクション要素や攻略要素が加わって,ゲーム性を高めていく可能性もありそうだ。
夢世界のターゲットと日本での展開は?
木村武志氏(以下,木村氏):Prefect Worldのサービスが始まったときに,興味を持ってもらったもののPCのスペックが合わなかったり,キャラクターの造形に抵抗があった人も結構いて,継続していただけなかった層があるように思われます。夢世界は,ちょうどそういった人にも楽しんでいただけるような作品になっています。年齢層でいうとPerfect Worldより,やや低めの層を想定しています。
4G:かなり低いスペックのPCでも遊べれば,一気にターゲット層が広がりそうですね。ところで,Perfect Worldのアイテムはちょっと値段が高めだったように思うのですが,対象年齢が下がるとなると,アイテムの値段も少し控えめになると考えていいのでしょうか?
木村氏:はい。そうですね。
4G:単価が下がると,その分,より多くのプレイヤーを確保しなければならなくなると思うのですが,そのあたりはいかがでしょうか。
木村氏:MK-STYLEユーザーの皆様は,ある程度流れてくるだろうと思っています。しかし,キャラクターの可愛さなどを押し出して,これまでのPerfect Worldとは違った層へのチャンネルへも露出を広げて行きたいと思っています。そのため,リアルな世界でのメディアミックスを展開していく予定です。
4G:なるほど。ゲーム自体の方向性ですが,これまでの話を聞く限り,日本版は中国版とはかなり違う方向を目指していますよね? 日本版では,コメディといった要素は盛り込まれるのでしょうか?
木村氏:中国ではテレビ番組があって,それを前提としたゲームになっていますが,それは日本では通用しません。日本では,武侠や中国色は極力廃して,一般的なファンタジーMMORPGとしてサービスしていく予定です。
4G:中国版では,テレビ番組を反映したクエストがたくさんあることなども特徴になっていたと思うのですが,そのあたりはどうなりますか?
山下氏:クエストの量的な部分は,そのまま維持する方針です。
4G:日本の独自要素が多いと作業も大変そうですね。日本でのサービスないしテスト開始はいつくらいからになりそうですか?
曽羽氏:クローズドβテストは,年末から年始にかけてくらいで始められればと思っています。サービス開始は(オープンサービス含め),この冬中という感じでしょうか。Perfet Worldは,事前の話題もあって鳴り物入りでサービスしたおかげで高い評価をいただいているのですが,当社としてはそれに続く2作目で真価を問われることになると考えています。その点で,サポート面をはじめとしたバックオフィスを強化して,夢世界をサービスしていきたいと考えています。
4G:楽しみにしています。本日はありがとうございました。
Perfect Worldの完美時空&シーアンドシーメディアコンビの2作目ということで注目されている本作。Perfect Worldの可愛い系でカジュアル版というイメージで大きな間違いはないものの,具体的な部分は分かりにくかったのだが,今回のインタビューでだいたいの方向性は見えてきた。中国では「コメディ」で売っていた作品だが,日本での展開はまったく違うファンタジー路線となる。
夢世界は,Perfect Worldの基本的なシステムを引き継ぎつつも,テイストは可愛い系,そしてビジュアル的にも目立ちそうな変身システムやアバター性の重視など,カジュアルMMORPGとして必要な要素を揃えている。戦力的には不足のないところだろう。また,コアMMORPGゲーマーからカジュアルゲーマーにターゲットを広げることから,シーアンドシーメディアも運営面の強化など,かなり慎重に準備をすすめているようだ。詳細についてはまだ不明な点も多いが,かなり期待できそうな作品である。今後の展開に期待したい。
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