男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第532回「『ドラえもん のび太の牧場物語』には夢が詰まっていた」

著者近影

　私，男色ディーノは末端ながらプロレスラーという，人前に出る仕事をさせていただいておりまして。で，人前に出る仕事ってよく“夢を与える職業”だと言われるのね。
　いや，言わんとすることは分かるのよ。人に見られるということは，自分の行動が商品となるわけで。だから人前に出る職業に従事している以上は，自分の言動には大なり小なりの影響力がある。ここまでは分かるの。
　では，具体的に“夢”って何なんでしょうね。その答えは人によってまちまちでしょう。与える側の“与えたい夢”と見る側の“見たい夢”というのが異なっているわけだからね。しかしあえて大きくまとめるならば，多くの人にとっての夢は“ワクワクすること”ではないかと思うわけです。
　受け手にとっての“見てみたい”“やってみたい”“味わってみたい”っていう好奇心を刺激するのが，いわゆる“夢”なんじゃないかしら。そして，そんな私も与える側でありつつ，一方ではほかのジャンルのエンターテイメントから，“夢”を受け取る側でもあるわけですね。だって人間だもの。生きている以上，どんな人間にも夢を受け取る権利があるんです。たとえ夢を与える側の職業に就いていても。
　ところが，ですよ。私もスレた大人になったもんでね。生きている中でワクワクすることが減ってきているの。確かに今でもゲイムは好きだけれど，めちゃくちゃテンションが上がるっていうことは少なくなったわ。きっと，年を重ねるごとにいろんな経験をしてきて，刺激に慣れ，感覚が麻痺してきたっていうのもあるんでしょうね。子供の頃，いろんなことに対してワクワクしていたあの感じが，段々薄れてきているのよ。悲しいけど，それが大人になるってことなのかしらね。

　回りくどい言い方になったけど，何が言いたいかというと。私は今，ゲイムで久々にワクワクしているって話。そして，そのワクワクしているタイトルの体験版が遊べるよって話。
　そうなの。「ドラえもん のび太の牧場物語」。あの「ドラえもん」が「牧場物語」に登場するという作品ね。いや，こんなもん面白いに決まっているじゃない。世界観が合うことだってイメージできるし，のび太が牧場生活を送るのもしっくりくるわ。
　思えば，夢があるアニメの代表格だからね，ドラえもんは。ひみつ道具なんて現実の世界にはあるはずはないのに，「もしあったら自分だったらこう使う」っていう空想をしてしまうじゃない。ドラえもんを見て育った世代なら，必ず誰もが考えたことがあると思うの。
　ドラえもんって，基本的にはそういう“あったらいいな”の夢なのね。一方で牧場物語って，“自分の力で生活する”っていう，現実的なようでいて実際にはなかなかできない生活を味わえるという夢なの。小さな頃，自給自足の生活ってどんなものだろう？　って考えたこと，あったでしょ？　まさにそれ。
　牧場物語を簡単に説明すると，畑で作物を育てたり動物から食べ物や毛などを手に入れて加工したり，広い範囲の自給自足を体験できるゲイムよね。そして，少しずつできることが増えていくことの楽しさを味わえる。


　この二つの夢が同時に味わえると思うと，いかに希望の光を失い冷たい現実に打ちのめされた中年の私もワクワクするしかないわ。そんなゲイムの体験版が先週から配信されているわけ。ヤらずにおられようか。
　で，実際にプレイしてみたわけだけども。やっぱり面白いわよね。ぶっちゃけ，目新しさはないわ。ただ，ものすごくていねいに世界観がすり合わされている印象ね。主人公に対する感情移入がバッチリできることが，このゲイムにとってめちゃくちゃ大きくプラスに作用しているの。
　牧場物語って，やり込み要素が豊富だからこそ，初心者は世界観だったり目的だったり自給自足のための操作だったりなどの覚えることが多くなりがちなんだけど，今作ではもうすでにキャラクターに対するイメージが固まっているから，ゲイムでヤるべきことがスッと入ってくるのよ。
　極端に言えば「今からゲイム内で何をすればいいのか」だけに集中できる。ヤれることが多いこのゲイムで，次にヤるべきことに集中できるのは，序盤で投げ出す人が少なくなる意味があるんじゃないかしら。
　そして，例えば収穫を助けるようなひみつ道具がゲイムに無理なくなじんでいる。ちゃんと牧場物語として面白いわね。体験版ではオープニングだったりが省略されてるみたいだけど，体験版としてはそれもよかったんじゃないかしら。
　まだ牧場物語をプレイしたことがない人も，どういうゲイムなんだか理解できる作りになっていると思うわ。いや，ホント牧場物語だけでも面白い作品だから，全国のドラえもん好きにはぜひ遊んでもらいたいわよね。体験版の段階で言うのもなんだけど，ナイスコラボだと思うし体験してみてからもその考え方は揺るがないわよ。早く製品版をプレイしたくてワクワクしているわ。


　夢って，大人になるとなかなか実感することがないわ。世知辛い現実と戦うことのほうが多くなるからね。でも。決してなくしたわけではない。逆に，大人になればなるほど夢に憧れているのかもしれないわね。
　夢を受け取ること，夢を感じること，ワクワクすることは人間にとって楽しいことよ。おそらく，遠い昔からそうだったはず。夢は人間の特権じゃないか。これからもスカさず，一生懸命ワクワクしよう。
　年とっても他人の目を気にせず堂々と夢を持って，それに向かっている人，カッコいいよね。ドラえもん のび太の牧場物語を体験し，製品版を待ちわびることでそう思えた42歳になりたての5月末でした。また来週。

今週のハマりゲイム
PlayStation 4：「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」
Nintendo Switch：「ドラえもん のび太の牧場物語」体験版
iOS：「ドラゴンクエストモンスターズ　スーパーライト」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，今週末の6月2日，愛媛･アイテムえひめ大会「WRESTLE MATSUYAMANIA 2019」を開催します。ディーノ選手はアイアンマンヘビーメタル級選手権時間差入場バトルロイヤルに，チャンピオンとして参戦予定です。この日までチャンピオンでいられるのかは定かではありませんが，ディーノ選手としては「王者としての振る舞いを見せ，王者として東京に戻って来る」と意気込んでいました。