連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第289回「好きになる理由なんてない」
みんな勘違いしてるかもしれないけど,同性愛者でも結婚している人ってけっこういるのよ。もちろん結婚してない人もいるんだけど,している人だっているわ。社会的な体面を保つためであったり,子供が欲しいということであったり,理由はそれぞれ。各人の事情は千差万別だからね。
私の場合,対人コミュニケーション能力に難があるというか友達があんまりいないというか,要は相手がいないから結婚してないってだけなんだけど,そろそろ私も両親の手前,民法で定められている形の婚姻ってやつをしなきゃいけないのかなって思っていて。
ところで,私,一応は人前に顔を出す職業に就いているのね。私の14年のキャリアの中で,プロレスラーである私を見た人から,「恋愛感情で好きです」と言われたこともあるの。もちろんそんなに多いわけじゃないけど。あっ,男も女も含めてね。
じゃあそこから結婚相手や恋人を探せば良かったじゃないか,と思う人もいるでしょう。もちろん,プロレスラーでもファンと結婚するケースはあるわよ。でも,ここが私の対人コミュニケーション能力が脆弱な部分で,ファンに「好きです」と言われても,「いやいや,だまされてるよそれ」って思ってしまう自分がいるの。
人前に出る職業っていうことは,“人に見せてもいい部分”を見せる職業でもあるわけで,人に見せてもいい部分なんて基本的にはいいところしかないわけ。だから,人様に見せられない部分を見てもいない状態で「好きです」と言われても,ちょっと申し訳ない気分になっちゃうのよね。もちろん嬉しいことは嬉しいし,ありがたくもあるんだけど,どうしてもだましてる気になっちゃって。誰が悪いわけでもないけどね。
一例を挙げると,もし私が同性愛のほかにもものすごい性癖があったらどうすんの? っていう。基本的に人前に出ている人というのは,人前に出る時の顔と普段の顔を使い分けているからね。簡単に言うと,私がプロレスラーだから好きになってくれただけなんじゃないか? という疑問がなかなか拭い去れないものなのよ。好きになってくれる人の問題じゃなくて,あくまで私の問題。対人コミュニケーション能力の欠如ってやつ。
ケツ論から言うと,アホみたいにハマってるわ。どれぐらいハマっているかっていうと,ゲイム内で信号無視を続けると出てくる「なまはげ」という妖怪を仲間にするために,4時間ぶっ続けでリセットしては戦い,リセットしては戦いを繰り返すことができるぐらい。不毛よー。回数にして38回のリセット。それが苦にはならない……というのはさすがに誇張のしすぎだけど,なまはげが仲間になることを想像したら,その不毛な時間を繰り返せる程度には,ハマっているわね。
そして,なまはげが仲間になった瞬間思ったね。私は妖怪ウォッチ2が大好きだ,と。どこが好きなのかは説明できるんだけど,理由なんてないのよ。楽しいから好き。好きになったから好き。好きな理由なんてそれで十分。
これもまた,この連載で何度も書いてきたように,私ってそもそもレベルファイブ作品が好きなのね。でも,今回の妖怪ウォッチ2に関しては,レベルファイブ作品だから好きってわけじゃない。単純に遊んでみて好きだから好きなの。
それぐらい,ちゃんと面白いのよ。最初は,正直言うとレベルファイブ作品だから面白かろうという以上の期待はしていかったわ。前作もプレイしていて面白かったし,今じゃ子供達の間でもの凄いブームになっているし,まあ一応押さえとくかという程度の動機でプレイを開始したのよ。
でも,違うね。完全に前作よりも面白い。何が面白いって,ところどころがプレイしやすくなってる。マップも大きくしたり小さくしたりできて見やすいし,戦闘時にできる操作のバリエーションも増えている。相変わらず,次に何をすればいいのか見失うこともないし,コレクション要素も多い。それでいて難度はさほど高くない。全滅してもデメリットは少ない。本当にプレイヤーに優しい作り。こりゃ誰でも楽しめるわよ。
あと,これは私だけかもしれないけど,妖怪の絶妙なネーミングが好き。まるで「ビックリマン」のようでね。要はダジャレなんだけど。藤子アニメのような安心感と,ビックリマンやキン消しのような収集要素。そして,突き詰めようと思えば相当突き詰められるRPG要素。ホント完璧。
レベルファイブ作品であることは事実だし,妖怪ウォッチの続編であることも事実。でも,妖怪ウォッチ2は妖怪ウォッチ2として面白い。もし前作をプレイしたことがないという理由で,スルーを決め込んでいる人がいたとしたら,今作からでもヤってみてほしい。本当におススメだから。少なくとも,私は大好き。とりあえずは今のところの下半期BESTゲイムね。
もちろん,好きになったあとで好きになった理由を説明することはできるんだけど,同じ理由を満たしたほかのものを同じように好きになれるかというと,必ずしもそうではない。好きになった。それが入り口になるの。
そりゃね,妖怪ウォッチ2で言えば,クリエイターにとっては全部が全部うまくいった作品というわけではないでしょうよ。泣く泣く断念した要素もあるだろうし,妥協しなきゃいけなかった部分もあるでしょう。でも,それでもこんなに面白い作品に仕上がった。プレイする側からすると,作り手の苦労は関係ないよね。関係あるのは,自分の手元に届いた作品が面白いかどうかだけだもん。好きになれるかどうか。好きでい続けられるかどうか。それは作品の仕上がり次第。
それを考慮すると結局のところ,私がファンに対して持っている「だましてるようで申し訳ない」って気持ちは,好きになる側からしてみると関係ないことなのよね。乱暴な言い方をすると,彼ら彼女らは勝手に私を好きになっただけだから。イヤなら止めればいい。その選択権は自分にあるわ。
繰り返すけど,恋愛とゲイム愛とは別だから一概には言えない。でも,私がプロレスラーとしてできることなんて限られているわけ。要は面白い作品を作り続けなければならないっていう。提供者と消費者の関係は,常にそう。楽しめるかどうか。好きでい続けるかどうか。恋愛でもゲイムでも,選択権は常に消費者,つまり好きになった側にあるわ。
提供者は,作品を提供することで「まだ好きでい続けるかどうか」を考慮するための選択肢を与えることしかできない。そうやってお互いの関係が出来上がっていくのね。これまでの人生で選びに選んだ結果,現在の自分がいて,自分を取り巻く環境があるの。すべては自分が選んだこと。
というわけで,今回は妖怪ウォッチ2を介して,“好き”の気持ちについて,好きになる側と好かれる側,両方の視点から考えてみたんだけども。何が泣けるって“好き”に理由はないということが分かったところで,私を取り巻く環境は何も変わらないという現実。
もう,好きになってくれた人に対して申し訳なくなる必要がなくなった今,私が結婚できない理由はないはず! では,私が結婚できてない理由とはなんだ? あれ? ひょっとして……理由が……ない? でも,できてない。
となると,分かった! アレだ! きっと私は40前になっても結婚する予兆すらない……っていう,悪い妖怪に取り憑かれてるんだわ! そうに違いない! それ以外に考えられない! 結婚できないのもお金が貯まらないのも私がぽっちゃりしてるのもトイレで大を流し忘れて後から切なくなるのも,全部妖怪の仕業だったんだな! ……はぁ。また来週。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー」
PlayStation 3:「ワールドサッカー ウイニングイレブン 2014 蒼き侍の挑戦」
PlayStation Vita:「フリーダムウォーズ」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「The Wonderful 101」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「妖怪ウォッチ2 本家」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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- 関連タイトル:
妖怪ウォッチ2 本家
- 関連タイトル:
妖怪ウォッチ2 元祖
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