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[TGS 2007#62]オンラインゲームのマルチプラットフォーム化と業界3社の最新動向
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印刷2007/09/22 23:02

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[TGS 2007#62]オンラインゲームのマルチプラットフォーム化と業界3社の最新動向

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 東京ゲームショウと併催されているカンファレンス,TGSフォーラム2007で,「全プラットフォームがネット接続可能に! 新たなフェーズに入ったオンラインゲームビジネス」と題したリレートーク&パネルディスカッションが行われた。

 コンシューマゲームを中心にした事業展開からオンラインゲームに参入してきたテクモ,かねてより日本の代表的オンラインゲームパブリッシャであり,逆にこれからコンシューマゲームに手を広げるガンホー,そしてXbox LiveやGames for Windows - LiveでコンシューマとPCの両面からオンライン展開を目指すマイクロソフトという,現在のオンラインゲームを巡るさまざまな立場の人物が集まって論じ合うという内容だ。PCのみならず,マルチプラットフォームでの展開というのが今年のキーとなるテーマである。
 まず,それぞれがオンラインゲームに対する主張を行い,最後に質問形式で三者の考えを聞くという手順でディスカッションが行われた。

融合の時代に対応した世界戦略:テクモ(Lievo)


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 最初に壇上に上がったのは,テクモ執行役員でLievo事業統括の佐々木憲太郎氏だ。アーケードやコンシューマゲームの開発を主とした方向から,どうしてオンラインゲームを目指すようになったのかが語られた。
 まず,テクモとはどういう会社かというところが問われた。そこで出てきた「大きくはないが,ときどき世界的なヒット作を出す個性的な開発会社」という認識は,おそらく多くの人に共通するものだろう。もちろん,ときどき世界的なヒット作を出す日本メーカーは別に珍しくないのだが,ある種の部分で「個性的」と思われていることは間違いない。
 そんなテクモが,なぜオンラインゲームを始めたか? 同社のこれまでの軌跡を追いつつ,その理由と今後の戦略が明かされた。
 まず,テクモがオンラインゲームに参入した当時の最初の難問は「運営をどうするか?」というものだったという。そこでテクモが行ったのが,運営を自社で持たないという選択だ。
 これには二つの理由があるという。まず,運営のためのノウハウ,人材,リソースを持っておらず,それらの整備に時間がかかること。海外展開なども視野に入れた場合,テクモ自体の力点は,あくまで開発に置いたほうがよいとの判断によるものだ。
 こうしてSeedCと提携して「Lievo」が誕生している。Leivoは韓国でもサービスを開始しており,会員数は日韓で550万人に上るという。

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 運営会社と提携して事に当たるという手法は,その後の展開にも見受けられる。テクモでは,提携を決めたあと,そのスキームをオープンにしていくこと,そしてそれを世界的に広げていくことなどを,方針として決めたのだという。
 海外展開も,現地の有力企業との提携を基本とする。これも時間とノウハウ,そしてローカライズを重視しているためだ。テクモでは,単にゲームを提供するのではなく,現地に合った状態で提供することが非常に重要だと考えているようだ。

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 運営主体を外に任せ,開発に注力するために設立したのがLievo Studioだ。これはコンシューマ機用ゲームの開発チームから派生したもので,コンシューマゲームとオンラインゲームの開発ノウハウを蓄積することを目的としている。オンラインゲームということで,現状ではPCゲームの開発を主としているが,コンシューマゲームも作れるスキルを持ち,将来的には機種を問わずオンラインゲームを展開できる部隊となるのであろう。
 また,PCのオンラインゲームである「スカッとゴルフ パンヤ」をコンシューマに移植したりと,オンラインゲームへのちょっと違ったアプローチも行われているが,これもノウハウ習得の一環なのかもしれない。

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 Lievo Studioの活動も,国内だけに留まらない。まず「DOA ONLINE」。「なぜ中国なのか?」については,よく尋ねられるらしく,最初に明解な回答が与えられた。曰く「熱烈なファンがいるから」。お国柄を考えると少し不思議な気はするのだが(アーケード機は2D格闘人気,コンシューマ機はどちらかというと御禁制の品?),猛烈な人気があるのは事実である。以前掲載したインタビューによれば,盛大からのアプローチにテクモが応えた形のようだ。
 開発は基本的に日本で行われるものの,ネットワーク周りでは盛大と協力していくという。日本メーカーの多くがサーバー周りで苦労をしているのを見ると,ほかならぬ中国で通用するようなMMOタイトルを開発するというのは,ハードルの高い試練に違いない。そういった点では多大なノウハウを持つ盛大との協力体制は,Lievo Studioがオンラインゲームノウハウを習得するうえで,メリットが大きなものといえそうだ。
 さてDOA ONLINEでは,格闘部分があるのは当然として,それ以外の部分でもオンラインゲームとしての可能性を探っているようだ。それはビジュアルロビーであったり,アバターとなるKINであったり,ユーザーが試合をプロモートできるようなコミュニティ機能であったりする。DOA ONLINEで試されるゲーム本体とコミュニティの関係は,今後のテクモのオンラインゲーム戦略で重要なものになるようである。

 この秋のサービスを目指して最近テストが行われている「モンスターファームオンライン」は,CDなどを読み込ませてモンスターを作っていくモンスターファームシリーズのオンライン版だが,オンライン化に際しては,いくつか修正が加えられている。育成の仕方でモンスターの姿や大きさ,色が変わっていったり,モンスター同士が勝手にコミュニケーションしたりなど,オンラインならではの要素が加えられる予定だ。
 変更点における最大のものは,世界観を一新したことだ。すでにコンシューマ機で使っていた世界を流用すれば,楽にオンラインゲームを作れるのは確かである。デザインの変更はそれなりに高くついたようだが,どうしても新しいものを提供していきたいということで,デザイン変更が断行されたようだ。

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 「Gallop Racer ONLINE」は,初めての同社開発によるサービス作品である。騎乗してレースを楽しむ部分と,馬の育成および,今後追加されるサイアーラインによる交配など経営的部分が組み合わさったゲームとなる。開発側の野望としては,サイアーラインの部分はゲーム本体とは独立しているので,今後世界展開をした場合,世界中から共有できるサービスを目指しているという。

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 以上のような同社の取り組みを踏まえて,最初に示されていた「なぜテクモがオンラインゲーム取り組んでいるのか?」に対する答えが明かされた。
 まず示されたのは,現代は,インターネットの普及と共にデジタルエンターテインメントの選択肢が広がり続けているという認識だ。そしてその選択肢は,インターネットを巻き込みながら緩やかに融合しつつあると佐々木氏は語る。
 「さまざまなプラットフォームで,ゲームはそれぞれ特別な方向に進んでいくか?」という問いには否定的だ。ゲームであれば基本は一緒。ゲーマーは,別にデバイスでゲームを選んではいないという認識に立っている。
 いまや主要プラットフォームはすべてインターネットに接続されるようになった。インターネットがもたらす,こうした「融合の時代」には,ゲームのマルチプラットフォーム化,そしてあるプラットフォームで作成したゲームのノウハウを次のゲーム開発に生かしていく体制作りが重要だという。
 インターネットとともに市場は簡単に世界規模に広がる。その土地にあった最適なプラットフォームで最適なコンテンツを,地域特性を踏まえながらローカライズしていくというのがテクモの戦略である。そのため,海外企業との提携やLievo Studioの設立などで,着実に足場を固めていることが見て取れるだろう。どのプラットフォームでもオンラインゲームを開発できる力を身に付け,世界中で,その土地に合ったプラットフォームでその土地に合せたサービスを展開していくことが重要だというわけだ。
 ということで,DOA ONLINEはPC用オンラインゲームとしてリリースされるが,それは中国や韓国といった現状の巨大オンラインゲーム市場では,PCが主力であることからPC用に作られているのだということが推測できる。

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 テクモは,「クリエイターの会社」という部分にかなり自負を抱いているようだ。ゲームを通して世間にメッセージを発信ししていくことを非常に重視している。コンシューマ主体だった開発を,オンライン対応に進化させていく,それが現在のフェーズである。
 次にテクモが目指しているのは,ズバリ「世界制覇」だという。すでに述べたようなマルチプラットフォーム展開,世界展開,各国との有力企業との提携など,徐々に動きは始まっている。数百名の会社から発信したコンテンツで,数千万に感動を与えたいと佐々木氏はテクモの目指す夢を語った。

 テクモの次世代に向けたキーワードは「Project EDEN」である。Project EDENの一端は,DOA ONLINEに組み込まれていくという。KINを使った構成などがそれに当たるようだが,具体的な内容はまだ明らかにされていない。ユーザーのニーズを汲み,それをゲームに反映させていく仕組みを取り入れるようで,最近流行りのユーザー参加型コンテンツを指向しているのかもしれない。詳細についてはDOA ONLINEの登場を待ちたい。

 さて,ゲームメーカーが,コンシューマゲーム機からオンラインゲーム市場へ目を向けるというのは,インターネット接続率が上がった世情を考慮すれば誰が見ても当たり前の展開ではある。むしろ,日本での動きの鈍さが異様に思えるくらいだ。まあ,国内のオンラインゲーム市場規模をもって,まだ時期尚早と見るのも分からなくはないのだが。
 一方,テクモの動きを見ると,最初からターゲットは世界規模である。佐々木氏は,アジアのオンラインゲーム市場規模が日本のコンシューマゲーム市場とほぼ同規模なことを挙げ,アジアへの展開に意欲を見せている。無論,海外でも一定の評価を勝ち得ている同社ならではの部分もあるのだろうが,方向性と意欲は大いに評価したいところだ。

課金制の悩ましいジレンマ:ガンホー


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 続いて,ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長,森下一喜氏の講演が行われた。TGSフォーラムでは毎年オンラインゲーム業界の動向について講演している同氏だが,まず,最近のオンラインゲームのトレンドとして,同氏の個人的な関心事が2点紹介された。
 最初の関心事は,課金モデルに関する問題だ。一時期ほど騒がれなくなっているものの,定額課金かアイテム課金かという運営者の悩みはいつまで経っても変わらないようだ。
 昨今は,新規タイトルのほとんどがアイテム課金でサービスを開始し,定額課金であったタイトルも次々とアイテム課金にシフトしつつある。タイトル数の変移を見ると明らかである。

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 2002年にラグナロクオンラインが登場したときには,世の中には定額課金という選択肢しかなかった。現在では,オンラインゲームも増え,どちらかといえばオンラインカジュアルゲームといったものが主流となりつつある。そして基本無料のアイテム課金制が全盛となっている。

2005年 2006年
定額課金 76 57
アイテム課金 51 120


 ただし,カジュアル中心といっても,実はアイテム課金のほうがプレイヤー一人あたりの支出額は高く,一人あたりの支出が月額1万円に達するゲームもあるという。
 ガンホー自体,アイテム課金に関してはまだ詳しくないと前置きしつつ,オンラインゲームを始める際に必ず問題となる「定額課金にするかアイテム課金にするか」について,森下氏自身の考察を語った。
 まず,定額課金とアイテム課金のモデルを挙げ,数字で以下のような例が示された。

  10万人×1500円=1億5000万円
  1万人×1万円=1億円


 会員数と一人あたりの月間収入のモデルである。10万人の会員を集めて,1500円ずつ,1万人で1万円ずつの2パターンだ。

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 この設定だとトータルでは,定額課金制のほうが5000万円の差をつけているが,サーバーや回線その他の費用,さらに会員数が増えれば,カスタマーサポートのコストがどんどん上がってくる。スクウェア・エニックスやガンホー規模になると,自前でコールセンターを抱えているのだという。売り上げからそういった管理費用を引くと,利益自体はアイテム課金のほうが多くなる。加えて,アイテム課金では初期投資も少なくて済み,事業リスクも低くなるという。

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 現状で10万人規模を狙える作品や,平均1万円も遣ってもらえるゲームがどれくらいあるのかという話を置いておいても,これが業界の状態をうまく表した例であることは間違いないだろう。
 オンラインゲームフォーラムの資料によると,プレイヤー一人当たりの課金額も,定額課金では,月額1000円程度で年々減少傾向なのに対して,アイテム課金では4500円前後と安定している。先ほどの式に当てはめると,1万人が4000円では月に4500万円となり,定額課金には遠く及ばない計算となる。しかし,3万人程度集めることができれば,1億3500万円となり,定額課金とほぼ同等の売り上げを1/3の設備で実現できることになる。利益率が高く,おそらく2万人でもやっていけるだろう。と考えると,これが現状の業界の姿に近いものなのかもしれない。

 話を戻そう。
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 利益率が高いならアイテム課金制で問題がないように思えるのだが,森下氏は,それが正しいとは思っていないという。アイテム課金を成功させるためには,最初からアイテム課金を意識した課金システムやロジックを設計しておく必要があるので,アイテム課金のほうが利益率がいいからと深く考えずに移行すると,痛い目に遭うのだそうだ。
 また,そのためには「ゲーム自体,課金アイテムを買わないと楽しめない設計にしなければならない」という,きっと運営会社の誰もが心の奥底で考えているけれど,誰も公の場で語ったことのないであろうタブーにも触れた。そして,これではオンラインゲームビジネスとして成り立たないのではないかと語っていた。ゲーム開発者の立場からいうと,ゲーマーに楽しいものを提供するのが当然で,このようなシステムは歪んでいるということであろう。
 開発者の本音としては定額制で行きたいところだが,それもなかなか難しい。定額制とアイテム課金の双方がなんらかの問題を持っているなら,新しい課金モデルが必要ではないか? ……と模索しているところのようだ。
 また,日本の定額制で一般的となっている「月1500円」という相場は,同社がラグナロクオンラインを始める際にとりあえず設定したものである(編注:元は米国のMMORPGの月額課金額12.99ドルを日本円換算したもの……だった気がする)。ラグナロクオンライン2は,月額1980円と発表されているものの,北斗の拳ONLINEとグランディア ゼロの価格は未定である。もしかしたら1500円が業界標準になってしまったことが,逆に同社の首を締めているのかもしれない。まるで,9.99ドル/月を選択して自らが後悔することになったUltima Onlineのようだ。

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 第二のトレンドは,海外展開である。自分達のコンテンツを世界中に配信するというのは,テクモの話にも出ていたように開発者の夢でもあり,経営的には,開発費の回収を行ううえでも有効な戦略である。
 ガンホーの「エミル・クロニクル・オンライン」は現在,韓国とタイでサービス中となっている。さらに中国など13か国で導入が検討されているという。
 海外展開については,市場の大きさが魅力であり,土地柄に合せてカルチャライズや課金モデルの変更対応,障害対応などの課題があるという。


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 提携主義のテクモとは異なり,ガンホーは韓国やアメリカに子会社を作っている。海外展開でも準自社運営を目指すのかと思われたのだが,話の内容は海外運営会社との協業などを念頭に置いているようで,正直少し意外であった。現地でローカライズやサポートの人員を揃えるのは大変なようで,そういった点で韓国企業の日本展開を高く評価していたのも印象に残った。同社は,Gravityからそういったノウハウを学んでいるのだという。

 続いてガンホーのコンシューマ事業に関する展開報告だ。ガンホーは,オンラインゲームだけでなく,最近はWiiなどでコンシューマゲームを発表している。同社は,総合的なエンターテインメント企業を目指しており,オンラインゲームは事業の一つにすぎないのだという。コンシューマ事業はようやく動き出した段階で,同社の取り組みに関する委細は省略するが,コンシューマゲーム開発が軌道に乗れば,次の段階はコンシューマゲーム機向けのオンラインゲーム開発になると森下氏は語っていた。
 現状で見ても,いわゆる次世代機と呼ばれた機種は,55%〜60%以上がインターネットに接続されている。となれば,コンシューマ機を扱う以上,そこでもオンラインゲーム戦略を練るのは当然のことで,オンラインゲーム分野に関しては,コンシューマ機でもNo.1を目指していくと氏は語る。コンシューマ機では,PCと違ってキーボードがない。これをいかに克服するかなどが課題となっているという。
 そういった段階になれば,PCオンラインゲームとコンシューマオンラインゲームといった区別も薄くなり,先ほどのテクモと同じ方向性になっていくのかもしれない。

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 最後に,ガンホーが制作中の「北斗の拳ONLINE」と「グランディア ゼロ」の進捗報告が行われた。その近況については,別記事を参照していただきたい。
 ただ,両ゲームとも低スペックのPCで動作することが強調されていたのが印象的だ。3Dは使用するものの,4年前のノートPCでもちゃんと動く,インテル製のチップセット内蔵グラフィックスコアでもちゃんと動くように作られているという。グラフィックスは向上させながら,なるべく要求スペックを抑えるという点に最大限の努力をしていると森下氏は強調する。
 これは,ガンホーが長年低スペックPCでプレイするゲーマーを間近で見てきていることが大きいという。実際,日本国内で普通に販売されているPCは,情けないくらいパフォーマンスが低かったりする。ハイエンドPCの能力は最新コンシューマ機を軽く凌駕するのだが,日本で最も普及しているCPUがCeleronという状況では,コンシューマ機に負けないグラフィックスなどは望むべくもない。また,冒頭で述べられていた定額課金を実現する条件となる,一定以上のゲームプレイヤーを集めるためにも,低スペック対応は重要なポイントとなるのだろう。

先進的なマルチプラットフォームの実践:マイクロソフト


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 最後に登壇したのは,マイクロソフトホーム&エンターテインメント事業本部Xboxマーケティング本部長の,坂口城治氏だ。マイクロソフトは現在,PCとコンシューマ機のマルチプラットフォームインフラについては最も先進的な実装を行っているといってよい。話の多くはXbox Liveに関するものだが,当然ながらGames for Windows - Liveなどの展開や,オンラインで実現されていることについての興味深い話も聞くことができた。
 Xboxの登場以来,かなり早期からオンライン基盤としてのXbox Liveが展開されてきており,すでに5年の実績と700万人に上る会員数を誇っている。同システム上で実現される対戦,メッセージング,マッチメイキング,協力プレイほか,最近では他人のプレイを観戦するモードも人気を集めているという。

 こういった,一般的なゲーム運営会社とは少し違った次元でサービスを提供しているという点で,オンラインゲーム運営の未来形を先取りしているといえなくもない。ただ,扱われるゲーム自体は,シングルプレイを基本としたマルチプレイ止まりのものが多く,本格的なゲームサーバーを使ったMMOゲームは登場していない。現状のオンラインゲーム業界から見ると,かなり特異な存在である。

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 Xbox 360の展開とXbox Liveの基本的な部分については省略するが,途中で紹介されていた,Xbox 360のパッドにすっぽりかぶせるとキーボードになる,という周辺機器がちょっと目を引いた。名前はチャットパッドで,まもなく発売されるものだという。「ちょっとカッコ悪くないですか?」という声もあったようだが,ゲーム中にテキスト入力が必要な場合は,パッドで文字選択などという手法よりはるかに使いやすいものとなるだろう。メッセンジャーでの使用を中心に考えられているようだが,わざわざゲームパッドと一体型になるようにしているということは,パッドでゲームプレイしながら文字入力が必要になる局面もあるということだろうか? チャットならボイスチャットのほうが合理的なのだが。

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 さて,「Shadowrun」では,Xbox 360とPCによるプラットフォームを超えた対戦が実現されている。Xbox連合軍対PC連合軍での戦いなども行われ,盛り上がっているようだ。
 ただ,同程度の実力の人がPCとXbox 360で対戦すると,PCのほうがどうしても強くなってしまうという。確かにマウスによるエイミング速度に太刀打ちできるほどに,コントローラを使いこなすのは至難の技だろう。コントローラでのエイミングでは,照準を甘くするなどのサポートが行われているようだが,多くのFPSプレイヤーに選ばれてきたマウスとキーボードのインタフェースは,かなりの完成度にある。ただ,マイクロソフトでは,コントローラでもマウスに匹敵するエイミングを実現することを,あきらめてはいないとのこと。2種類のプラットフォームを扱う以上,避けては通れない問題なのであろう。

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 Xbox Liveで提供されているマーケットプレースは,さまざまなコンテンツを配信するためのシステムだ。すでに広く活用されており,コンテンツは9000種,累計2億9000万ダウンロードを記録している。
 人気のコンテンツとなっている無料デモ版では,ダウンロード数が販売本数の目安となるため,マーケティングにも利用されるようになってきているという。カプコンのデッドライジングの場合,デモ版ダウンロードが月間63万件で,発売4か月後に100万本の販売を達成していたため,デモ版で月間100万ダウンロードロストプラネットの場合,初回出荷を100万本に設定したのだそうだ。ある意味,オンライン展開の興味深い成果といえる。

 オンライン展開での成果としては,Forza2の「痛車」,「男心をくすぐる」というアイマスのアイテムなどが紹介された。
 アイドルマスターは,日本のみでサービスされている作品にもかかわらず,Xbox Liveでの各種売り上げが世界第3位になるという。日本と海外でのXbox 360の販売数の差を考えると,いかに異常な事態であるかを理解していただけるだろう。
 これはパッケージ売りだけではなく,売ってからも同等の収入を得るチャンスが広がることを示しており,これが認識されてくれば,最初から追加コンテンツ販売を見据えたゲーム開発も行われるようになるだろう。それはどちらかといえば,オンラインゲームの姿に近いのかもしれない。

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 そして,マイクロソフトが総力を挙げて開発したリアル志向カーシミュレーションゲームが「Forza Motorsport 2」(Forza2)である。このゲームでは,物理的なシミュレーションの追求とネットワークを利用したフィーチャーに注力されている。
 ネットワーク対戦はもちろん,オークション機能やコミュニケーション機能を持ち,プレイヤー間で車などをやり取りできるといった,特徴的な機能が実装されている。加えて,車のカスタマイズ機能が用意されており,車に絵を描くことが可能となっている。そうしたカスタマイズカーを使って,ネットワーク対戦できるように(対戦相手も同じ状態で見えるように)するために,多くの工夫がこらされているという。
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 そして,ゲームが発売されるやいなや,有名なゲーム内「痛車」(いたしゃ)が登場することとなった。オークションやゲームコミュニティで話題を呼び,Forza2のオークションでの最高落札額は,24億クレジットに達するという大変な人気ぶりだ。普通にゲームをプレイしていては,とうてい稼げるはずのない金額である。オークションによる富の集約があって,はじめて実現された数字だ。

 先進的な試みが行われている一方で,これまでにはなかったような問題も発生してきている。
 ゲーム内で用意されているオークションは,バーチャルマネーのみの取引なので問題は生じにくいのだが,外部オークションに出した途端にリアルマネーに変わる。実際,ゲーム内オークションで落札された車がオークションサイトのE-Bayに出品されるという事件も起こったとのこと。そのときは,買い手のE-Bay出品に激怒した製作主が,E-Bayに同じ車を10台出展して大暴落を招いたのだという。

 そして著作権問題。現在Forza2では,アニメキャラなどがユーザークリエイトコンテンツに多数使用されており,問題があると認識する人も存在する。おそらくは,そういった問題が発生しにくいように入念に制限を加えたシステムが設計されたのだろうが,プレイヤー側は開発者の想像をはるかに超えたところまで到達してしまっている。もはや「シールをいくつか貼ったら似た形になった」では済まされないレベルである。坂口氏からは,管理ツールを改善して対処するとの方針が示されたが,実際には人の目で確認することが必須で,やはり人海戦術が基本となるという。
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 余談だが,ユーザークリエイトコンテンツは,今後オンラインゲームでもどんどん取り入れられていくと思われるフィーチャーであり,Second Lifeの例を挙げるまでもなく,その管理については同様な問題が発生するだろう。これは他人事ではない問題である。アメリカのデジタルミレニアム著作権法であれば,中間的なプロバイダへの責任は軽く,「苦情があったら消す」といった対応で済むのだが,日本の場合はそう簡単にはいかない可能性が高い。なにせ,サーバーに個人用ファイルを保存しただけで,不特定多数への配信とみなされて,サーバー管理者の責任が問われる国である。そういう意味では,天下のマイクロソフトが主導しているというのは重要なポイントなのかもしれない。


 今回登壇した3者とも,マルチプラットフォームでのオンラインゲームの展開に触れてはいたものの,話の主題はそれぞれ違っており,それぞれの立場でのオンラインゲーム展開を語っていた。パネルディスカッションでも,とくに結論となるものはなかったのだが,全プラットフォームでのオンラインゲーム展開は,いまや規定路線といってよいものなのだろう。
 一方,単一プラットフォームでオンラインゲームやネットワーク機能をサービスしていくだけでも,まだまだ多くの課題が残されていることも分かる。演題から想像できそうなマルチプラットフォームを生かした展開などに言及がないのは,プラットフォーム間の溝を埋めればサービス自体は共通化できるからかもしれない。差がなくなれば,マルチプラットフォームであることを意識する必要もない。
 今回の講演を見る限り,最大の障害はキーボードとマウス,そしてゲームパッドの差に起因するものである。逆にいえば,それ以外はあまり問題にならないくらい,コンシューマ機とPCが近づいてきたということなのだろう。幸か不幸か,PCゲーマー以外の人が使用するPCの性能は,コンシューマ機に劣るものも多く,コンシューマ機がオンラインゲーム端末として一般的に使用されるようになれば,オンラインゲーム自体の水準を引き上げることができる可能性もある。PCゲーマーにとっても,コンシューマ機のオンラインゲーム展開は注目する価値のあるものではないだろうか。
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