レビュー
ターン&プロット制とリアルタイム制で現代戦を再現
コンバットミッション ショックフォース【日本語マニュアル版】
» 2008年というごく近い未来を舞台に,シリアに支援された(という設定の)テロリストと,それを制圧するために派遣されたアメリカ主導の多国籍軍との戦いを描くストラテジーゲーム「コンバットミッション ショックフォース」。ゲームの進行を選べるという独特のシステムを,シリーズ前作から引き継いだこの作品について,現代の兵器と軍事情勢に明るい田村眞治氏がレビューする。
装甲車編成の快速部隊による対テロ戦闘
実にシンプルな,「コンバットミッション ショックフォース」のタイトル画面。質実剛健かつコアなゲームデザインの反映といえようか |
以前も簡単に説明したが,CMSFの世界ではアメリカを中心とした多国籍軍と,シリア軍およびその支援を受けたテロリストとの戦闘が繰り広げられる。2001年のアメリカ同時多発テロ事件をより大規模にしたような,ダーティボム(核廃棄物を利用し,放射能汚染を目的とした爆弾)を利用したテロ事件が西側諸国で発生。そのテロを支援した(という設定の)シリアに対し,テロリスト壊滅を狙った多国籍軍が侵攻に踏み切る……。
つまりは2001年における米軍のアフガン侵攻から,それに続くイラク戦争,さらにはイスラエルとヒズボラの衝突といった,西側諸国対「イスラム原理主義者」の戦いが,大規模な侵攻作戦に発展したという,えらくリアルな設定なのである。
こうした状況設定と時代背景を受け,CMSFにおける主な戦闘シチュエーションは,前作までのような主力戦車同士の火力戦ではない。現代戦,とくに対テロリスト作戦で必要とされる,迅速な移動と戦力展開を実現するために,装甲車を核に編成されたストライカー旅団戦闘チームが,今作の主役だ。
ストライカー旅団戦闘チームは,脅威度の高い地域紛争などに向け,素早く兵力を投入することに主眼を置いて編成されており,その主力になるのはストライカーICVと呼ばれる装甲兵員輸送車と,それに載った歩兵部隊だ。機動性重視のため,さほど強固な装甲は備えていない。
このような部隊の活躍場面をゲームの中心に据えているため,コンバットミッションシリーズ従来作品のような真っ向勝負ではなく,威力偵察や拠点制圧などのミッションが大半を占めている。
ストライカー戦闘旅団による,敵拠点制圧任務。高い機動性を生かして素早く敵拠点に接近,歩兵による制圧を行う |
敵拠点付近まで迅速に接近したら,搭載した歩兵を降車させ,建物内へのエントリー行動へと移行する |
拠点と思われる建物には歩兵が突入し,中の状態を確認する。敵兵がいればCQB(近接戦闘)が発生する |
ターン制とリアルタイム制のどちらかを選べる
ターンベースかリアルタイム制かはバトルシナリオ開始時に選択できる。つまり同じシナリオについて,二通りの遊び方がある |
プロット&アクションによるターンベース進行では,「命令フェイズ」で各ユニットに指示を出しておき,スタートボタンをクリックすることで始まる「実行フェイズ」で,指示のとおりに各ユニットが行動する。
一般的なターンベースのストラテジーゲームでは,敵と味方の手番が交互に来て,自分の手番で移動や戦闘をこなす。しかし現実の戦闘で,敵味方が交互に動くはずはない。プレイしやすいが現実離れした交互ターン制でなく,ターン制のまま移動や戦闘を両軍同時解決にしようというのがプロット&アクション制だ。
交互ターン制と同様に,ボードゲーム由来の発想ではあるのだが,ボードとコマでこれをやらせると,どうしてもプレイが煩雑になるという欠点があった。それに対してコンピュータゲームであれば,プレイヤーはそうした煩雑さから解放される。コンバットミッションシリーズでは,1ターンの長さは60秒を表しており,行動フェイズでは実際に60秒かけて各ユニットの行動が行われる。もちろん,マップスケールやユニットの速度も,これに見合った設定だ。
ただ,相手の行動を予測しながら,1分ごとの行動を具体的に計画するのはなかなか難しく,お互いに行動予測が外れると,ユニットがまったく的外れの行動をとったりもする。
もう一つの操作モードが,近年のコンピュータゲームでは主流となっているリアルタイム制だ。状況を判断して即座に行動を選択できる部分はリアリティが高いものの,個々のユニットに指示を出している間にも時間は経過していく。指示を受けられなかったユニットが,ある程度自律的に行動してくれない限り,全体としてリアルにならないという難点を併せ持つ。
このように両者は一長一短であり,またプレイヤーの好みの問題もあるだろう。そこでCMSFではターンベース,リアルタイム制のどちらかを,ミッション開始時に選べるようになっている。
詳しくは後述するが,ミッションの性格によってはどちらを選ぶかで,難度がかなり変わるケースもある。
威力偵察から戦車同士の正面戦闘まで,多彩なシチュエーション
バトルのシナリオ選択画面。ここではそのシナリオのごく簡単な概要だけしか分からない |
バトルは全部で18個。内容としては,敵主力撃退後の残敵捜索&掃討や,拠点の無力化,敵の待ち伏せ体制の破砕などが中心となる。ただし,こうしたストライカー旅団戦闘チームの本領ともいえるシチュエーションだけでなく,MBT(主力戦車)を中心とした機甲部隊同士の戦闘も盛り込まれており,従来のコンバットミッションシリーズに近い,堂々たる戦車戦を望む人にも,楽しめるラインナップである。
バトルの選択画面では,タイトルと前提条件,そしてごくおおざっぱなシナリオ展開が表示される。ただ実際のところ,この選択画面からは各バトルの展開を予想することは難しい。勝利条件やシチュエーション,参加部隊などについては,実際にそのバトルを選択し,ミッションブリーフィング画面を見てみないと分からない。
ミッションブリーフィングは,操作する陣営,プレイヤー数と進行方式(ターン制/リアルタイム制),難易度を選択したあとに表示され,ここからバトル選択へは戻れない。せっかく好きなバトルを選べるようになっているのに,少々不親切ではある。
バトルの中身に合わせて進行システムを選ぶ
状況によっては,開始直後にいきなり敵の対戦車兵器による待ち伏せ攻撃を受けることもある。ストライカー装甲車にとって対戦車兵器は大きな脅威。ターンベースの場合,こうなっても指をくわえて見ているしかないが,リアルタイム制なら,即座に回避行動や反撃に移行できる |
例えば残敵捜索や強行偵察などのミッションでは,当然ながら敵の待ち伏せ攻撃に遭うことがある。ストライカー装甲車は機動性を重視していることもあり,装甲強度はそれほど高くない。このため,RPG-7のような対戦車ロケットの直撃を受けると,一発で致命的な損傷を受けてしまう。
ターンベース進行を選び,開始数秒でこのような状況になってしまうと,何台もの装甲車が連続でRPGの餌食になってしまうことがある。もちろん,自軍ユニットもある程度は自律的に行動するので,反撃や回避などの行動をとるのではあるが,指揮官であるはずの自分が指示を出せないというもどかしさがある。
ここでリアルタイム制ならば,回避行動や反撃,障害物を利用できる位置への移動などを即座に指示できるため,損害を抑えることも可能となる。
とはいえ,ストライカー旅団戦闘チームを操作する場合は,装甲車に加え,場合によってはそこから降車展開した歩兵部隊にも指示を与える必要があり,操作するユニット数は多くなる。いきおい指示が間に合わなかったり出し忘れたりで,ストラテジーゲームというよりアクションゲームに近い操作を要求される場合も出てくる。
同様に機甲師団同士の戦闘では,操作ユニットの数が比較的多くなることもあり,いちいちリアルタイムで各ユニットに指示を与えるより,プロットしておいて一斉に行動させたほうが,思ったとおりの戦闘がしやすい。
おそらくはストライカー旅団戦闘チームの機動性を表現するためにこそ,リアルタイム制という選択肢が用意されたと思われる本作ではあるが,先述したとおりターンベースとリアルタイム,どちらも完全ではない。バトルのシチュエーションに応じた進行をプレイヤー側で選ぶのが,この作品らしいプレイの進め方といえそうだ。
非情な現代戦の姿を再現
ミッションブリーフィングでは基本プランとして「損害は許容し,前進を優先するように」などと指令されることもある。アフガン侵攻やイラク戦争(そのもの)では大きな被害を被ることがなかった米軍だが,それは大規模な陸上戦がなかったから。陸上戦力同士が本気で衝突したら,現在ではどちらか一方が無傷で済むことなどあり得ない |
現代のゲリラ戦でとくに問題になるのは,「敵がどこから攻撃してくるかすぐには分からない」ことと「テロリスト(ゲリラ)といえども強力な武器を所持している」ことだ。
結果として,高性能ハイテク兵器を装備した米軍ストライカー旅団戦闘チームとはいえ,それなりの損害を受けることは必至である。先にも述べたが,RPG-7などの対戦車兵器にとってみれば,ストライカー装甲車の装甲など紙みたいなものだ。
さらにミッションによっては,ブリーフィングで「多少の損害は覚悟し,むやみに戦闘を行わず,迅速に移動すること」といった方針が示されることもある。このような指示に従ってミッションを遂行してみると,戦闘においてまったく無傷で敵を排除することなど不可能に近いと,改めて認識させられる。
とくにCMSFの設定ではテロリストとは言い条,敵対国によるバックアップがあるわけで,かなり強力な兵器を装備している。力と力のぶつかり合いになったら,お互いにそれなりの損害を受けることは確実なのだ。
イラクの現状を見ても分かるとおり,携行火器の能力が向上したうえに,正規戦におけるお約束が必ずしも通用しないゲリラ戦になってしまうと,たとえどんなに強力な装備を持った軍隊でも,そうそう簡単に相手を押さえつけることなどできない。
そうした,実はいまここにある現実を,かなりの程度疑似体験できるという点で,「コンバットミッション ショックフォース」は侮れないゲームなのである。
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