PumaプラットフォームのコアとなるTurion X2 Ultraと,日本独自のAMD HD! エクスペリエンスのロゴ
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AMDの日本法人である日本AMDは,ノートPC向け新世代プラットフォーム
「Puma」を,国内でも正式発表。Pumaプラットフォームは,2008年6月4日にCOMPUTEX TAIPEI 2008(以下,COMPUTEX)で
発表済みだが,国内では,日本AMD独自のロゴプログラムである
「AMD HD! エクスペリエンス」とセットで,普及が図られることになる。
都内で開催された発表会では,国内でのパートナー各社によるノートPCの展示も行われたので,それらを交えながら,日本におけるPumaプラットフォームの今後を占ってみよう。
ノートPCの3D性能を飛躍的に向上させる
Pumaプラットフォーム
発表会で挨拶する,日本AMD取締役・マーケティング本部本部長の吉沢俊介氏。「ATIを合併したことでプラットフォームの提案ができるようになった」と,Pumaプラットフォームの意義を説明する |
Pumaプラットフォームの概要を説明する,日本AMDマーケティング本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティングマネージャーの土居憲太郎氏 |
COMPUTEXのレポート記事でもお伝えしているとおり,“Pumaプラットフォーム”というのは,Intelの「Centrino」のような,公式のプラットフォーム名ではない。実際COMPUTEXで,新世代のノートPC用プロセッサ
「Turion X2 Ultra」(※正式名称は「AMD Turion X2 Ultra Dual-Core Mobile Processor」)をコアとする同プラットフォームは「AMD Turion X2 Ultra Platform」として紹介されている。しかし,日本AMDは「Puma」で行くようだ。今回の発表会では,徹頭徹尾「Pumaプラットフォーム」として紹介されていた。
というわけで,本稿でもPumaプラットフォームと表記するが,これは,Turion X2 Ultra,そして新しいノートPC向けグラフィックス機能統合型チップセット
「AMD M780G」(開発コードネーム「RS780M」)で構成されるものだ。日本AMDの“兄貴”こと土居憲太郎氏によれば「ホームユースに焦点を当てた」製品とのことである。
Turion X2 Ultraは,65nm SOIプロセスで製造されるCPUで,Athlonファミリーと同じK8マイクロアーキテクチャを採用しつつ,ノートPCのための新たな機能がいくつか実装されている。なかでも,
Turion X2 Ultraのアーキテクチャ概要
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- Independent Dynamic Core Technology:要求されるCPU負荷に応じて,内蔵する二つのCPUコアが異なる動作クロック,異なる電圧で動作できる機能
- Power Optimized HyperTransport 3:I/O負荷に応じて帯域幅(=リンク幅)を切り替えるHyperTransportリンク
- Mobile Optimized Memory Controller:ノートPC向けに,省電力性を重視して設計されたメモリコントローラ
の搭載がトピックだ。また,下位モデルとしては,「Turion X2」「Athlon X2」「Sempron」がラインナップされる。発表会では,これら“Turion X2 Ultraシリーズ”のスペックについて概要が明らかになったので,
表のとおりお伝えしておきたい。
※1 上下片方向1.8GHzずつ
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新しいATI Radeonのロゴ。今後は「Premium Graphics」として訴求されるという
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さて,一方のAMD M780Gは,デスクトップPC向けにリリースされているグラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780G」のモバイル版。統合されているグラフィックス機能には(AMD 780Gと同じ)「ATI Radeon HD 3200」の名が与えられている。また,チップセット側のグラフィックス機能と,単体グラフィックスカードとの組み合わせにより,「ATI Hybrid CrossFireX」を利用可能で,さらに,ACアダプタ駆動時は単体GPU,バッテリー駆動時はチップセット側のグラフィックス機能といったように切り替えられる「PowerXpress」もサポートされる。
ゲーマー的に気になる3Dパフォーマンスだが,発表会では「Half-Life 2: Episode Two」を利用した比較が行われた。これは,4Gamerの
ベンチマークレギュレーション5.2準拠で行われたテストだが,それぞれTurion X2 Ultra ZM-82+AMD M780G,Athlon X2+NVIDIA C51Mという構成のHewlett-Packard製ノートPC×2で行われたデモにおいて,その差は圧倒的。グラフィックス機能統合型のノートPC向けチップセットとしては,2008年6月時点において,頭抜けた性能を持つといっていいだろう。
4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2準拠で行われた比較。右の写真は,サムネイルだとフレームレートが見にくいので一部を拡大してあるが,言うまでもなく,左がPumaプラットフォームのスコアだ。レギュレーション5.2準拠で,Pumaプラットフォームは30fps弱程度をコンスタントに出し,十分プレイできるレベルにあったが,従来製品はカクついてしまい,かなり厳しい状態になっていた
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チップセットのTDPはそこそこ高め?
ミドルサイズのノートPC用となる可能性が高いPuma
Half-Life 2: Episode Twoの比較を行ったのと同じ2台で,高解像度ビデオを再生したときのCPU負荷率とシステムの消費電力を比較した結果をまとめたものというスライド。Pumaシステムでは,CPU負荷が33%程度で,消費電力が35〜46Wとなっている |
デモに用いられた,Hewlett-PackardのPumaプラットフォーム採用タブレットPC「HP Pavillion tx2500 Entertainment Notebook PC」(以下,tx2500)。参考出品のため,市場投入時期などは不明 |
tx2500の排気口。アイドル時にもけっこう温かくなっていた |
以上,3Dパフォーマンスについては大いに期待していいPumaプラットフォームだが,その実力をモバイル環境で,いつでもどこでも享受できるかというと,やや厳しいかもしれない。
上の
表で,Turion X2 UltraのTDPは32〜35Wとなっていたが,別途「Blu-ray Discの高解像度ビデオを再生したときに,従来のノートPCと比べて消費電力が低い」として示されたスライドには,高解像ビデオ再生時におけるノートPCの消費電力が35〜46Wとされている。CPU使用率が33%でこの値なのだから,
AMD M780GのTDPは,ノートPC用ということを考えると,かなり高そうである。
ちなみにQ&AセッションでTDPについて聞いてみたところ,回答は「非公開」。そのため,チップセットの消費電力については想像するほかないが,デモに用いられたHewlett-Packard製ノートPCは,AC給電動作のフルパワーモードにおけるアイドル時にも,ファンはかなり勢いよく回転していた。また,排気口周辺はかなり温かくなっていたので,バッテリー駆動時間はあまり期待できないだろう。
ただ,“普段使い”用のノートPCであれば,家庭内を持ち運べればおおむね問題ないはずで,その用途でPumaプラットフォーム搭載ノートPCを購入しておけば,いざ3Dゲームをちょっとプレイしてみたいと思ったとき,その要求に応えられそうなのも確かだ。また,グラフィックス機能統合型である以上,価格的にも期待できると思われ,
PCゲーマーの裾野を広げる可能性を大いに秘めたプラットフォームとして,期待できそうである。
なお,搭載機も順調に登場するようで,会場にはAcerのATI Hybrid CrossFireX対応機などが並んでいた。以下,写真で紹介していきたい。
先頃日本市場再参入を果たしたAcer製ノートPC「Aspire 5530G」。参考出品のため,詳細なスペックや発売時期などは分からなかったが,Turion X2 Ultra+AMD M780Gに加え,ATI Mobility Radeon HD 3470を搭載し,ATI Hybrid CrossFireXをサポートしていた
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MSIは3製品を参考出品。Turion X2 Ultraと,開発コードネーム「RS781」チップセットを採用し,「ATI Mobility Radeon HD 3870」搭載となる「GT735」は,COMPUTEXレポートでも紹介したゲーマー向けモデルだ(左)。右はAthlon X2 QL-60+AMD M780G搭載の「PR211」
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Turion X2 RM-70と,「グラフィックス機能を統合しないチップセット」(エムエスアイコンピュータージャパン)という,開発コードネーム「RX781」が組み合わされた,MSI「PX210」(左)。GPUにはATI Mobility Radeon HD 3450を採用していた。富士通は,高解像度テレビとの接続を前提にした小型デスクトップPC「FMV-TEO」を展示(右)。こちらは本日発表された新製品だ
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Hewlett-Packardは,スタンダードなタイプのノートPCも投入予定のようだ。こちらも参考出品されていた「HP Compaq 6535b Notebook PC」
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AMD HD! エクスペリエンスのロゴ取得要件。デスクトップPC向け製品にも適用されるため,今後はロゴ入りマザーボードやグラフィックスカードも登場する見込み
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ところで,本稿の冒頭で述べたとおり,日本AMDはPumaプラットフォームを,日本独自のロゴプログラムであるAMD HD! エクスペリエンスとセットで訴求していく。これは,ロゴの貼られた製品が,Blu-rayや地上デジタル放送といった高解像度ビデオ環境を快適に鑑賞できる,コストパフォーマンスに優れたソリューションであることをアピールするもの。もっといえば,ゲームとはほとんど関係ないが,一部の地上デジタルチューナーデバイスやグラフィックスカード,Blu-rayドライブといった製品に,ロゴシールが貼られるようだ。
条件を満たしたデスクトップPCにも貼付されるが,Pumaプラットフォームを採用したノートPCには,ほぼ例外なく貼られるようなので,“Puma識別ロゴ”としては,案外便利かもしれない。