連載
Fallout 3 連載 荒野に咲いた一輪の花 / 第5回:コンパニオン
いつものように,相変わらず自分の書いた原稿は最高に面白いと思いながら,記事を読み返しているときに気が付いた。展開がなんだかおかしい。当初の予定と違う。
何が違うかというと,お話の内容が,当初夢想していたような乙女チック美少女ストーリーになっていないところ! 首が飛んだり腕が切れたり,なんの肉だかよく分からない肉を食べたりと,なんだって話がこういう方向ばかりに進んでいくんだ? 予定ではこの物語はキュートでエンジェリックなヒロインの愛らしさを前面に押し出したストーリー展開になるはずで,グロとは無縁のはずだった。
そういうわけなので,いまさらながら,ここで軌道修正を試みたい。
基本的にこのゲームは一人称視点でプレイしている。そのほうがやりやすいからなのだが,この視点には手痛い欠点がある。
それはもちろんプレイ中にプレイヤーキャラクター自身の姿がまったく見えないことだ。このゲームでは,誰もが時間をかけてキャラメイキングをしているだろうし,その思い入れのあるキャラクターの姿をもう少し頻繁に見たいなあと思うのは,不自然なことじゃないだろう。しょうがないので,ときどき,Fキー押しっぱで利用可能になる手動カメラモードをわざわざ使い,ヒロインの姿をうっとりと眺めている。
先日,そんな風にして自分のキャラクターを正面から見ているときに改めて気が付いたのだが,やはりヒロインは美しい。町にいるNPC達と並べて画面に映すことで分かるのだが,「肌の透明感」というのだろうか,それがほかのキャラクター達とはまるで違うのだ。
つまり,容姿的にはかつてだって今だって,ヒロインが美少女であるということに間違いはなく,それはおそらく万人が認めるところであり,このキャラクターが美少女ストーリーのヒロインたる存在であるということに疑いの余地はない。ではいったいなにが,このお話が美少女ストーリーになることを阻んでいるのか?
ひょっとしたら……紹介するエピソードの選び方に問題があったのかもしれない。
だから今回は,ヒロインの女の子としての魅力がほんわり感じられるようなエピソードを進めることにした。また,こちらもがんばってもうちょっと美少女の気持ちになってみる必要がありそうだ。パンティとかはいたほうがいいのかな?
あたしはできれば人を殺したくない。でも荒野を歩けば襲撃者に出会うし,襲われたら相手を倒さなければこちらが殺される。だからまた首が飛ぶ。ここでは,何かしようとすれば簡単に人の首が飛ぶ。でも,もうそれにも慣れてきたかもしれない。どうしようもないことだと受け入れられるように……なってきたのかも。
いつものように荒野を歩いているときだった。身長よりも高い金網で囲われているそこは,“スクラップヤード”という名前で,壊れた車(壊れてない車なんか見たことないけど)や大きなコンテナの残骸が積まれた,打ち捨てられた場所だった。
扉のようになっている部分があったので,開けて入ってみる。ひょっとしたら何か武器になるようなものが落ちてやしないかと思って奥へ進んでいくと,先のほうから銃声が聞こえてきた。
ビクッとなってしゃがみ込む。怒声も聞こえてくるのでRaider達だ。いやだいやだ,また戦うのか――と,銃を構えたが,様子がおかしい。弾がこちらに飛んでこない。どうも向こうで戦いが起こっているみたいだ。何が起こっているのかを知ろうとのぞき込んで様子をうかがうと,犬がいた。Raiderが犬と戦っている。
Raider数人と犬1匹の戦闘だったら,たいていの場合,犬がすぐに撃ち殺されて終わる。だけどこの犬は違っていた。強い。何人かをあっというまに噛み殺して,いま最後の一人と戦っている。それも時間の問題って感じで,人間の死体一山がもうじき完成――最近ではそんなシーンにもあたしは動じなくなってきた。なにより今は身を守らないと。最後の一人の喉笛を噛み切り終わった犬はこちらにゆっくりと歩いてきた。どうやら,あたしを襲う気はないみたいだ。
本物の犬を見たのはこれが初めてではないけど,あたしのことを殺そうとしない犬は,初めてかも。だからあたしもつい,「どうしたの? ご主人とはぐれちゃったの?」と犬にむかって面倒見の良い幼馴染み美少女系の声で話しかけていた。
「あたしも一人で,パパもどこにいるのか分からなくって……一緒だね。ねぇ,一緒に来る? 一人はさびしいもんね?」てな感じで。
Fallout 3では,こんな風に主人公の仲間となる「コンパニオン」と出会うことがある。コンパニオンは主人公の後ろをついてきて,一緒に戦ってくれる。
多くのコンパニオンは人間のNPCだが,中にはこの犬のような人間ではないコンパニオンも存在する。いうまでもないと思うが,コンパニオンといってもゲームショウで機会があるたびに4Gamerにアップされている女性達のことではないので間違えないようにしたい。
ちなみに以前,編集部に対して「プロのコンパニオンさんよりもコスプレをしているアマチュアの方々のほうが,何かとドキドキできていいっていうか」的な要望をメールで伝えたことがあるが,それに対して「いろいろあって難しい」とのことだったことを,ここ付記しておこう。プレイの参考になれば幸いだ。
ともあれ,そういう風にしてあたしと犬は友達になった。犬の名前は「ドッグミート」。犬の肉?
それからドッグミートと一緒にあちこちへ行った。一緒に行動するうち,ドッグミートのいろいろなことが分かってきた。そしてますますドッグミートと仲良くなった。
えへ。うれしい。
ドッグミートは付近にあるアイテムを自分で探し出して,あたしのところへくわえて持ってきてくれる。「武器を探して」とか「弾を探して」とか指示を出すと,あたりをうろうろ探し回って,見つかると持ってくる。見つからないとそのままそのへんをうろうろし続けるのだが,それもまた可愛い。
敵が近くにいるとドッグミートはうなりだす。このうなり声のおかげで敵の存在に気づくことも,たまにある。
敵が襲ってきたときは,ドッグミートはあたしのために戦ってくれる。初めは,大した戦力にはならないんじゃないかと思っていたのだけれど,予想に反してかなり強い。Raider一人なら,あたしが手助けしなくても倒してしまう。
それより強いの敵の場合,倒すまでには至らないけれど,敵の銃撃をドッグミートが引きつけてくれるので,その間にあたしは傷を負うことなく敵に近づいて,至近距離から命中率の高い銃撃が行える。ナイスなコンビネーション。
ドッグミートは意外とHPが多いみたいで,銃撃にも結構耐える。さらに素晴らしいことに,ドッグミートは戦闘が終わると何もしなくても体力が最大値まで回復する。あたしが自分でダメージを受けた場合,それを回復するには貴重なアイテムを消費する必要が生じるけれど,ドッグミートだったらそれがない。これはすごい。かわいい。キミのおかげで戦闘がラクになったよ!
でも,ややダメなところもある。ドッグミートは敵が近づいてくると,そのままダーッと突撃する。そして敵の足下で戦い続ける。戻ってこいという命令はできない。
だからドッグミートと一緒に戦うときは,自然と前進のみの特攻プレイになってしまう。スニークも,ドッグミートが飛び出してすぐにばれちゃうのでボーナスダメージが狙えない。また多数の敵や強敵に対して“後退しながら戦う”という選択肢がとりづらい。
でもま,あらかじめそこを動かないように指示しておくこともできるし,プラスマイナスでいえばドッグミートがいるプラスのほうが大きいし,なにより……二人でする旅はさびしくないところがいい。ドッグミートと一緒にいると,あまりにも殺伐とした世界にすさんでしまっていた心がふたたび潤ってゆく。
あはははは,なんちゃって。
確かに,2体以上の敵に囲まれるとドッグミートはHPの減りが早くなる。でもうまくサポートできればけっこう大丈夫。
もうドッグミート激ラヴ。だいすき。
そうなんだ,複数の敵もまずいけれど,もっと危険なのがメレーが特別に強力なタイプの敵。遠距離からの攻撃ができないドッグミートは,戦闘が始まると相手のメレーレンジに一直線に向かっていく。そこで強烈な一撃をもらうと体力がガクンと減るので気をつけてあげないと。んもう,しょうがないなあ,ドッグミートはっ。
ドッグミートと一緒に荒野を歩いていたら,ダイナー(食堂)の跡を見つけた。いかにも何か漁るものがありそうだと思って近づくと,いきなり足下が爆発した。あっぶないなーもー!
見れば入り口付近には地雷がいくつも仕掛けてある。解除しながら進んでドッグミートと一緒にダイナーの中に入ると,天上からいくつもの死体がぶら下がりまくっていた。カウンターの上には首と両腕のない死体がマットレスにくくりつけられて置いてあるし……ううっ。すべきことをすませてさっさと出よう。
室内をあさったあと,裏口から抜けられるようなのでそちらに向かうと周囲から怒声と銃声が聞こえ始めた。とっさにしゃがんで壁のうしろに身を隠す。
近くに着弾してるので,こっちを狙って撃ってきてることが分かる。声から数は二人以上で,裏口正面のほか,回り込んできているやつもいることが分かる。あたしはライフルに銃弾がフル装填されていることをすばやく確認しながら考えた。うーん……こっちはドッグミートもいるし,Raiderなら,多少敵が多くても手におえる範囲かなってところ。
敵を引きつけようとそのまま壁のうしろに潜んでいると,回り込んできていたやつにドッグミートが反応して入り口から飛び出していった。しばらくはサポートなしでもドッグミートは平気だろう。こっちは裏口側の敵をもっと引きつけるために待ちの姿勢。相手が顔を出すまで引きつける。そして銃撃するが――ああもう,運が悪い。仕留められない。少し時間を稼ごうと入り口側から表に出たところで,足下がまた爆発した。
地雷が完全に除去できていなかったらしい。まずい,左足が動かなくなった。機能を回復させるにはスチムの集中投与をしないと。
銃撃をしのぎながら,注射器のようなそれを引っ張り出して逆手に持つ。キャップは口ではずして,躊躇なく針を血まみれの左の腿に突き立てる。よし,足はオッケー。でも状況はよくない。遮蔽物のない状態で銃撃にさらされている。近くの物影を探すのに手間取っていると,突然それは来た。
………………。
…………。
……。
――原因は,予測に反してドッグミートが二人以上を相手にしなければならなくなっていたこと。そのうちの一人が,運悪く,近距離での威力が大きいコンバットショットガンを使っていたこと。あとは……あたしが手間取っていたこと。
ダイナーの裏手に,動かなくなったドッグミートの身体はころがっていた。かぶさるように倒れている,ナイフでメッタ刺しにされた馬鹿どもの死体が邪魔だったから,蹴り飛ばしてどけようとしたけど,手も足も頭もバラバラになってるから一蹴りでは片づかない。なんだよ,いらいらするなぁ。まだ細かくされ足りないのかよ!
ドッグミートの首は取れてないみたいでよかった。いや,死んじゃえばそんなのあってもなくてもおんなじか。
しばらく見ていたけれど,もうしてあげられることは何もないと分かって,立ち去る前にひとなでしようとしたら,ルート画面になった。
あはは,あたしの友達のドッグミートが,ほんとにDog Meatになっちゃったよ。
あたし……あたし,こんな最悪な超ワケワカンナイ世界に放り出されて,寝るところも,食べるものもなくて,それに犬も人もネズミもゴキブリもみんっなあたしのこと殺そうとしてきて。殺さないとあたしが殺されちゃうからそういうの全部殺して,人もたくさん殺して……。でもあたしガマンした。イヤなものでも目をつぶって口に入れて,どんなところへだって手を突っ込めるようになって。なんでもがんばってできるようになったよ。
それで,それで初めて,初めて一緒にいてくれる友達を見つけて,友達がいればツライことがあってもやっていけるかなって思ってたとこだったのに。こんな……。
……あたしは,もう,イヤだ。
今度こそ本当に,こんなところはもうイヤだと思った。
こんな世界はもういやだ。いらない。なくていい。もうなくていい。
立っていられなくて,キレギレになった首やら足やら胴体やらの山の中にあたしはへたりこんだ。そこであたしは気がついた。ツナギのポケットの奥にいつもあった固い違和感。
あたしはそこに手を突っ込んで,Fusion Pulse Chargeを取り出した。そしてそれを見つめながら,あたしは想像し始めた……。
Fallout 3の世界には,しばしばトラップが設置されている。多くのトラップは無法者どもがねぐらとしている場所の周囲などに仕掛けられていて,まったく意味のない場所に設置されていたりはしない。
地雷(Frag Mine)はかなりポピュラーなトラップだ。Fallout 3の地雷は人が近づくと反応するタイプで,警告音を数度鳴らして爆発する。地雷の機能を停止させるには,素早く近づいて,狙いを定め,Activateキー(Eキー)を押せばよい。機能停止した地雷は拾い上げて自分のものにできる。もちろん再利用も可能だ。あるいは地雷の場合は遠くから銃で撃って爆発させてしまうという処理方法もある。
地雷よりも大きな据え付け型のトラップにはいくつかの種類があるが,その中の多くが犠牲者を引っかけるための仕掛けに,足首の高さに張ったワイヤーを使っている。
このワイヤーは,引っかかる前に発見できれば解除が可能だ。よく見るとワイヤーは,短くて細い2本の杭を使って仕掛けられている。この杭のどちらかに照準を合わせてEキーを押せばワイヤーがはずれる。そのほかプレッシャープレート(踏むタイプのスイッチ)などもEキーで解除できる。
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