連載
極私的コンシューマゲームセレクション:第10回「コール オブ デューティ 3」
» 4Gamerの編集部スタッフ達が,趣味でプレイしているコンシューマゲーム機のタイトルを紹介する本コーナー。第10回は,PCなら平気なのに,ゲームパッドでFPSをプレイするとなぜか3D酔いを起こすという,奇特な体質であることが判明した松本隆一が,Xbox 360の「コール オブ デューティ 3」を紹介する。
■FPSといえば,PCゲームの独壇場……だったのだけど
言わずもがなかもしれないが,Xbox 360やプレイステーション 3に代表される次世代コンシューマ機は,それこそPC並のCPUとメモリを搭載し,しかも常駐プログラムなどに余分なパワーを削がれることなく100%ゲームに力を発揮できる。さまざまなヒューマンインタフェースが試されることで,コントローラによるRTS操作も不自然でなくなりつつあり,Xbox LIVEなどに代表されるオンライン対応も当たり前になった。なによりゲーム制作費の高騰によるマルチプラットフォーム戦略がパブリッシャの間で一般化しており,制作側のモチベーションの点でも「PCだけだぜ,えっへっへ」というタイトルが減少しているように思える。
ちなみに,つい先月終わった2007年のE3 Summitのエキスポ会場での話。私はすべてのブースの試遊台を回り,キーボードとマウスで入力するタイトルの数を数えてみようとしたのだが,途中で止めてしまった。なぜなら,ほとんどがコンシューマ機&コントローラとなっており,「Crysis」「S.T.A.L.K.E.R: Clear Sky」「SimCity: Societies」など,キーボードとマウスの置いてある試遊台はほんのわずかだったからだ。
……ここまで書いて,あらかじめ言っておいたほうがよさそうなので言いますけど,こうした現状に筆者は絶望したり,「すわ,PCゲームの危機だ!」と世界自然保護基金(WWF)に手紙を書いたりするわけではないのである。WWFに手紙を書いても意味がないことも分かっているので,そっとしておいてほしい。
ともあれ,マルチプラットフォーム戦略は,PCゲームにとって必ずしも悪い話ばかりではないし,世間を見渡すとPCならではの野心的な作品がまったくなくなってしまったわけでもないからだ。要するに今,コンシューマ機の世代交代の時期であり,各社とも戦略上,現在はネクストジェネレーションに傾注している時期なのだと思うが,違っていたらすいません。
さて,「Call of Duty 3」(以下,CoD3)を初めて見たのはE3 2006でのこと。CoD3がリリースされるという特ダネ(よほど不注意な人以外見逃さないような,とてもでっかい看板が会場に出ていた)をつかんだ我々取材班は,あわててActivisionのプレスミーティングに混ぜてもらったのだ。その段階ではイメージムービーと簡単なゲームの説明しかなかったものの,質疑応答のさい,筆者は「PC版はどうなってますか?」と尋ねたのだが,答えは「まったく予定していません」。あらら。
それまでにも,「コール オブ デューティ ファイネストアワー」(以下,ファイネストアワー)や「コール オブ デューティ2 ビッグレッドワン」(以下,ビッグレッドワン)がコンシューマ機専用タイトルとして発売されたことがあったが,正直,あまりうらやましくなかった。わずかなグラフィックスメモリによって表示されるゲーム画面を見て,やっぱりウフフな感じがしたからである。うふふ。
だが,そのグラフィックスレベルからしてPC版が出るものと疑わなかった筆者は,さらにしつこく「将来的にはいずれはPC版が出るのではないか?」と質問して,「何度も言うようにまったくその予定はない」とあしらわれたのである。いい思い出だ。「そこをなんとか」と食い下がってはみたものの,ダメなものはダメであった。惜しいなあもう,って,惜しくないですか? そうですか。
そういう(どういう?)経緯の末,CoD3はXbox 360用として2006年12月(日本語版の発売は2007年3月)にリリースされた。そのほかの対応機種として欧米では,PLAYSTATION 3とPlayStation 2およびXbox,さらにはPSPとWii版が発売されており,“PC以外の機種”と書いたほうが早いような勢いだ。Xbox 360版とPS3版は各メディアからかなり高い評価を受けているが,やはりグラフィックスの問題で,さすがにそれ以外の機種では“それなり”の評価といったところ。
自慢じゃないが筆者は「PCゲーム一筋」である。一筋というにはなんだかあちこち蛇行しているような一筋っぷりだが,ましてFPSにおいてをやである(もっとも,その昔,Atari Jaguarで「Wolfenstein 3D」と初代「DOOM」にハマった甘酸っぱい経験があるというのは誰にも言わないでほしい)。そんな,最先端コンシューマ機版FPSをほぼ初体験の私がここでCoD3を紹介しようという魂胆なのであり,紹介されるCoD3がちょっと気の毒な気もしないでもないが,これも運命だと思ってあきらめてほしい所存だ。江戸の仇を長崎で討つ,ってとこですかね。
ちなみにPC版の制作は,拡張パックであるユナイテッドを除き,すべてInfinity Wardが担当しているが,Xbox360版CoD3はサンタモニカのTreyarchが行っている。同社はファイネストアワーやビッグレッドワンも開発しているActivision傘下の中堅デベロッパだ。
■ゲームの舞台はいつものように第二次世界大戦
2007年末にリリース予定の「Call of Duty 4: Modern Warfare」で,いよいよ現代の戦いに突入することになるCoDシリーズだが,CoD3の舞台となるのは,従来作と同じ第二次世界大戦下のヨーロッパだ。プレイヤーは,アメリカ軍,イギリス軍,カナダ軍,ポーランド軍の兵士となってドイツ軍相手に獅子奮迅の戦いを繰り広げるわけだが,この“マルチ主人公システム”はPC版でも変わらない。PC版CoDシリーズはいずれも,アメリカ軍パートで中隊規模の戦闘を,またイギリス軍パートで特殊部隊の潜入工作や小規模戦闘を,そしてロシア軍パートで雲霞のごとき兵士による大規模戦闘を楽しめるという,三色アイスのようなスタイルが大きな特徴であり,そこへさらに爆撃機の後部銃座から見た空中戦,対空砲を使った敵機の撃墜,戦車同士の戦いといった多彩な戦闘を散りばめ,目もアヤな「まるで戦争映画の中に投げ込まれたような」とよく形容される演出でやたらと盛り上げていくのである。
CoD3もそれにならっているわけだが,こちらはいささかメリハリに乏しい印象を受ける。戦場がすべて西部戦線,それもフランスだけなので,PC版にあったアフリカの砂漠地帯やソ連の廃墟のような都市,ドイツ沿岸砲台といったロケーションの豊富さに欠ける。またすべてのミッションが順ぐりに続いており,PC版CoD2のように自分で好みの国のミッションを選べるわけではない。
シングルミッションは全部で14種類で,25種類前後あるPC版の初代CoDおよびCoD2と比べるとやや少なめ。ミッション内容は歩兵戦闘ばかりでなく,ジープに乗っての敵陣駆け抜け,戦車戦,潜入工作などそれなりに用意されている。ストレートにプレイするとおそらく10時間前後で終わるだろうが,後述するようにプレイスタイルにかなりの幅があるので,人によってはもっとかかるかもしれない。ボリューム的には十分という雰囲気だ。
登場するのは,アメリカ軍パートが第29歩兵師団のニコルズ二等兵。ノルマンディーの上陸作戦そのものは出てこないが,その後サンロー,ファレーズ・ギャップ,シャンボアといった著名な激戦地をくぐり抜け,パリ入城を目指すのである。ちなみに,そのスジの人にはファレーズ・ギャップよりはやはりファレーズ・ポケット,もしくはファレーズ包囲戦のほうがピンと来るような気がするが,マニアってイヤね。
イギリス軍を受け持つのはドイル軍曹。彼はPC版の「コール オブ デューティ:ユナイテッド オフェンシブ」(2004年)のイギリス軍パートにも登場したSAS隊員で,ランカスター爆撃機で敵中に降下し,"マキ"と呼ばれるフランスレジスタンスに協力して破壊工作を行う。ユナイテッド オフェンシブに登場したイングラム少佐なども出演しているので,同作をプレイした人なら思わずニヤリといったところだが,再会してそんなに嬉しい相手かというと微妙。ただのおじさんですからね。
……と,片っ端から説明しても仕方ないので,カナダ軍のコール二等兵,ポーランド軍のボハターについては,ぜひご自分の目で確認していただきたい。
各パートの合間にはカットシーンが挿入され,例えばニコルズの属する分隊でのマッカリン軍曹とグッツォ伍長の対立や,兵士の成長といった物語,また伝説の戦車兵“ブラックバロン”を追うポーランド戦車指揮官といったストーリーが描かれ,プレイヤーをゲームの中にグイッと引き込んでいく。このあたりの人物描写や演出は,筆者が歳のせいで涙腺が緩くなり,いろんなことに感動しやすいということを差し引いても,さすがである。
■ゲームを盛り上げる見事な演出と戦闘システム
ゲームシステムは,PC版のCall of Duty 2とほぼ同一だ。基本的には「撃って撃って進んで進んで」なのだが,一人で行動することはなく,戦場には常に仲間がいる。戦友に命令を下せはしないが,彼らは自律的にドイツ軍に反応して砲火を開く。敵が迫り,こちらは弾切れ。やられる,と思ったときに仲間の銃弾が敵兵を撃ち倒すといったシーンに多く遭遇するのである。ただし,プレイヤーが何もしないでいると,敵味方がバリバリ撃ち合うだけでゲームはちっとも進展しない。プレイヤーは危険を顧みず,なんとかしてチェックポイントに到達しなければならないのだ。
PC版初代CoDは,スクリプトを多用した演出にその面白さがあった。開発者が想定したストーリーに沿って戦うことで次々にイベントが発生し,それがまるで映画の登場人物になったような気分を与えてくれたわけだ。だが,筆者自身はなんとも思わなかったものの,それに対して「自由度が低い」という意見が多く出たらしく,続くCoD2では広いマップを好きなように攻められるシステムに変更されている。プレイヤーがどう動くのか予測できないためにスクリプトは廃され,プレイヤーの移動につれて周囲に敵が次々に出現するというシステムになったのだ。どんどん現れる敵を全部倒しているわけにはいかないのでランボースタイルのプレイ性も改められ,敵の全滅ではなく,銃火をかいくぐってチェックポイントにたどり着くことが目的に変わったのである……みたいなことは,CoD2のレビューにも書いたような気がしてきたので,ぜひ参照していただきたい。
CoD3はそのシステムをそっくり踏襲しているので,その長所と短所も似ている。
いい点としては,ゲームがよりリアルになったことが挙げられるだろう。一人で大量の敵をバッタバッタとなぎ倒していくのは爽快だが,非現実的である。スーパーマンではなく,単なる一人の兵士として戦場の片隅で戦友達と助け合い,ジリジリ前進するという雰囲気がより濃厚になった。だが,短所は長所の裏返し。ある程度味方の兵士がやってくれちゃうため,とくに難度を下げている場合,いつの間にかミッションが終わって達成感が味わえない場合がある。コツを飲み込むと,イベントのトリガーとなる場所まで走り,そのまま引き返してあとは後続の味方に任せるといったプレイも可能になり,なんだったらほとんど撃たないうちにミッションをクリアさせられるのだ(それはそれで楽しいのだが)。
もちろん,場所によってはスクリプトを使った一本道の部分もあり,それらのシステムを巧みに使い分けて阿鼻叫喚,怒声怒号渦巻く戦場の雰囲気を高めるという演出はCoD3でも健在だ。
PC版に比べてやや狭い印象があるが,マップにはいくつかの進行ルートが用意されており,CoD3はこれを“ストーリーチョークポイント”と名付けてセールスポイントの一つとしている。ルートによって敵の数や難度がわずかながらも変わるため,よりよい戦略を見つけだす楽しみもあるし,リプレイ性も高いという寸法だ。「マイクロソフト ヘイロー コンバット エボルヴ」のようなリニアなマップに慣れている人は面食らうかもしれないが,マップの作り込みも細かく,戦場を駆け回るのはかなり楽しい。
また,もう一つCoD3に追加されたシステムが“エンハンスド・インタラクション”である。敵がつかみかかってきたときやボートを漕ぐときなど,RBボタンとLBボタンをタイミングよく交互に押して敵の攻撃を押し返したり,ボートを進めたりする。爆弾に信管を設置する際など,押し込むタイミングに合わせて右スティックをグルグル回したりなど,つい「維新の嵐」で西郷どんに気合を入れるためにSpaceバーを連打したことを思い出してしまうが,そんなことを思い出すのは私だけですか? あ,そうですか。
試み自体は面白いけど,ちょっとした問題は「失敗する人があまりいない」ところだろう。たまに出てくるのはいいけれど,あまり連発されても面倒なだけという気もする。
■グラフィックスだってかなり凄くて困っちゃう
もう一つの特徴は,そのHUDの少なさだろう。ちなみにHUDとはゲーム画面上に表示されるヘルスバーや,ミニマップのことだ。これまたPC版に由来するのだが,いっときデベロッパのInfinity Wardは「HUD不要論」を唱えていたように記憶している。プレイヤーにあまりにもたくさんの情報を提供してしまうのはリアリティを削ぎ,撃ち合いに集中できなくする。「残りの体力」ってなんだよ? という話だ。対して,HUDはゲーム史上最大の発明だというメディア筋の意見もあったりして,HUD論争はあちらのゲームシーンではちょっとしたトレンドだったのだ(結論らしいものはとくに出ていないようだが)。
というわけで,CoD3には最低限のHUDしか用意されていない。移動しているときはミニマップだけしか表示されず,残弾数は銃を持ち替えたり弾倉を交換したときだけ,クロスヘア(照準)は銃を撃つときだけしか現れない。体力ゲージもヘルスパックもなく,敵に撃たれ続けていると画面が赤くなってアラートが出,遮蔽物に隠れて体力を回復しなければそのままあの世行きとなってしまう。
調子に乗って撃ちまくっていたら弾が切れたとか,壁のうしろに隠れるタイミングが遅れて死んでしまったとか,これらも最初はちょっと面食らうが,必要なときだけ必要な表示が行われるというシステムは慣れればカッコよくも思える。
現在開発中のCoD4にもこのシステムは引き継がれているようで,「撃たれたので救急箱を探して右往左往」というプレイスタイルがなんだか古いような気がしてくるから不思議だ。もちろん,私が影響されやすのは今に始まったことじゃないが。
掲載した画面写真を見てもらえば分かると思うが,グラフィックスは非常に良好で,何を今さらだが,つくづく最近のコンシューマ機は高性能である。初代CoDのレベルには軽く到達しており,爆発や煙のエフェクト,人間の動きなどもクオリティが高い。もっとも,以前からInfinity Wardのグラフィックスポリシーは軽快に動くことを最重要視しており,光と影のどうしたこうしたとか,ブラーとプロシージャルのどうしたこうしたとか,ジオメトリエンジンのどうしたこうしたとかのうち,重い処理になるものを極力オミットし,プレイしてそれほど違和感のない画面であればそれでよいとしていた。CoD3を制作したTreyarchもそのポリシーを受け継いでおり,専門家が仔細に眺めればいろいろあるのだろうけど,遊んでいるぶんには十分過ぎるグラフィックスだ。
というわけで,2006年のE3でそのメディア初登場シーンを見たCoD3を,私は1年以上経ってからついにプレイしてしまったわけである。感慨無量である。とはいえ,まあ,言っても詮ないことなので書かなかったもののやっぱり書いてしまうのだが,コントローラは難しいなあ。長いことマウスとキーボードだけでプレイしてきた私としては,ヘッドショットも決めづらいコントローラでFPSをやるなんて,という気持ちは確かにあったが,とはいえ,すでに書いたように,幸か不幸かCoD3は正確な射撃精度がさほど必要とされない雰囲気重視のゲーム性であり,その点は助かった感じ。これはやはり慣れの問題であり,プレイを続けているうちにだんだんうまくなったような気はするが,やっぱマウスラブだなあ,ぼかぁ。
いずれにせよ,FPSがもうPCゲームのアドバンテージでもなんでもなくなったのは事実のようだ。E3 Summitでプレイアブル展示されていたCoD4にしても,よほど近寄って見ない限り,それがXbox 360版なのかPC版なのかは区別がつきづらかった。その隣のブースにあった「Enemy Territory: Quake Wars」もしかりだ。なんとなく複雑な気分にはなるものの,一人のFPSファンとしては,そうした状況も悪くはないと思う。プラットフォームこだわらず,面白そうなFPSであればどんどんプレイすればいいだけの話であろう。
シリーズの伝統を受け継ぎつつ,面白い部分をさらに強調し,不満な部分に対するシステムの大胆な変更も厭わなかったCoD3は,プレイする価値が十分にある一本だ。チャンスがあれば,ぜひ試してほしいと思う。
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コール オブ デューティ 3
対応機種:Xbox 360
メーカー:スパイク
発売日:2007年3月29日
価格:7140円(税込)
CEROレーティング:C(15歳以上対象)
公式サイト:http://www.spike.co.jp/cod3/
(c) 2006 Activision Publishing, Inc. Activision and Call of Duty are registered trademarks of Activision Publishing, Inc. All rights reserved. This product contains software technology licensed from Id Software ("Id Technology"). Id Technology (c) 1999-2006 Id Software, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners. Marketed and Distributed in Japan by SPIKE
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- コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア 追加マップダウンロード特典付きスペシャル限定版(数量限定)
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- 発売日:2008/07/10
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