連載
極私的コンシューマゲームセレクション:第7回「アイドルマスター」
» 4Gamerのスタッフが,リレー形式でコンシューマタイトルを思い思いに紹介する本連載。今回は,ゲームの中のアイドルを愛でてはいるものの,実際のアイドルにはあまり反応しないという,将来がちょっとだけ心配な若手編集者gingerが,「アイドルマスター」でその思いのたけをつづっている。
■国民的アイドルを目指したり目指さなかったり
アイドルマスターは,2005年にナムコ(当時)がアーケードゲームとしてリリースした,通信対戦型アイドル育成シミュレーションゲーム。ゲームの目的は単純にして明快だ。プレイヤーは「765プロダクション」のプロデューサーとなって,プロダクションに所属するアイドルの卵達を1年間プロデュースする。レッスンによって能力を伸ばし,オーディションを勝ち上がってテレビ出演権を獲得し,ファンを増やして国民的アイドルに育て上げるのが目標だ。
2007年1月25日に発売されたXbox 360版では,一部ゲームシステムの変更や,新アイドル/新曲/新イベントの追加,ハイデフ対応によるグラフィックスの強化など,大幅な改良が行われている。Xbox 360版は,特典映像を収録したDVDやオリジナルフェースプレート,本作に登場するアイドル全11人のフィギュアおよび,それを飾るためのステージなどが付属する初回限定版(2万790円/税込)と,通常版(7140円/税込)の二種類のパッケージで発売された。
Xbox 360本体の箱と見間違えそうなほど巨大なパッケージに,豪華特典(主にフィギュアと,それを飾るステージだが)をこれでもかと詰め込んだ初回限定版は,予約の段階で売り切れが続出したのも記憶に新しい。特典フィギュアと聞いては黙っておれない筆者も,発売日の数か月前から予約をして購入したことは言うまでもない。初回限定版と通常版の差額で,通常版がもう二本ほど買えそうだが,後悔などは……一片もない。
ゲームの目的は上述のように,担当アイドルをトップアイドルに育て上げることにあるが,Xbox 360版ではレッスンをまったく受けず,テレビにも出演せず(というか,出来ず),ひいてはファンがこれっぽちも増えなくても,ゲームの進行になんら支障はない。アイドル達は,オーディションに勝ってテレビに出演することでファンを獲得し,アイドルランクを上げていくのだが,Xbox 360版ではこれをまったくせずに,1年間営業をだけを行って,アイドルとひたすら思い出作りに励んでもいいのだ。全国のプロデューサー達と血で血を洗うオーディション合戦を戦い,規定の期間でランクアップできなければ強制的に引退(=ゲームオーバー)となってしまったアーケード版とは対照的である。
かくして,Xbox 360版アイドルマスターは,お気に入りのアイドルと,1年間を好きなだけまったりと過ごせるゲームに生まれ変わったのだ。
■歌ったり,踊ったり,トチったりするアイドルにメロメロ
この中でも本作最大の魅力は,テレビ出演シーン(ライブシーン)にある。動画投稿サイトにも数多くのライブシーンが投稿されたので,目にしたことがある人も多いのではないだろうか。このライブシーンは,トゥーンレンダリングによるアイドル達が,ステージ上で歌ったり踊ったりするという,言ってしまえばただそれだけのものだが,これが実に素晴らしい。このライブシーンを見て,グッとくるものがない人には,残念ながらこのゲームはまったく向いてないといえる。そう,アイドルマスターは,アイドル達が歌って踊る姿を愛でるためのゲームであると言い切ってしまっても構わないだろう。
では何がそんなに素晴らしいのか? まずなんといっても曲がよい。Xbox 360版ではアーケード版の10曲に加えて,新曲6曲が追加されている。既存の曲もそれぞれいいのだが,プロモーションムービーにも使用された「GO MY WAY!!」や,典型的なアイドルソング「私はアイドル♡」,ビートの利いた「relations」などの新曲は筆者の大のお気に入りだ。
また,曲ごとに異なる振り付けもまた魅力的だ。歌と踊りのタイミングが気持ちよくピタリとはまっており,振り付けそのものも曲の雰囲気にマッチしていて,見事だ。
加えて,狙いすぎず,自然な可愛らしさに仕上がっているアイドル達のモデリングも秀逸だ。歌や踊りに合わせて笑ったり,流し目をしたり,眉を曇らせたりといった一つ一つの仕草も,丁寧に作り込まれている。またキャラクターのモデリングは,Xbox 360のハイデフ表示に対応して作り直され,モーションも秒間30フレームから60フレームへと強化されている。
ライブシーンはやはり,ソロよりもデュオ,デュオよりもトリオのほうが断然華がある。ここでさっそく,今すぐお気に入りのアイドルでトリオを組ませて,思う存分ライブシーンを堪能したい! と思うのも無理からぬところなのだが,ゲーム開始直後はソロのアイドルしかプロデュースできない。プロデューサーとしての評価を高めて「プロデューサーレベル」を上げることで,ようやくデュオやトリオのアイドルユニットをプロデュースできるようになるのだ。プロデューサーの評価は1年間の活動が終わったあとになされるので,デュオやトリオのアイドルを育成するためには,まずはゲームを何周か終わらせる必要がある。少々手間だが,世の中そんなに甘くないのだ。
テレビ出演中は,このパラメータの高低と,アイドル達のテンションによってパフォーマンスが変化する。パラメータやテンションが低いと,歌っている途中で歌詞を忘れてしまったり,ステージ上で転んでしまったりするのだ。可愛い我が子(アイドルだけど)が,ステージで無事に1曲歌いきれるのかをハラハラしながら見守る瞬間が,アイドルマスターの一番の醍醐味なのだ。
ライブパフォーマンスに影響を及ぼす,ボーカル/ダンス/ビジュアルの三つのパラメータは,ミニゲーム形式のレッスンによって上昇し,衣装やアクセサリ,現在選択中の曲によっても変動する。また,その時々での“流行”によって,どのパラメータが重視されるかが変わってくるので,トップアイドルを目指すときには注意を払っておきたい。アイドル達のテンションは,レッスンや営業でよい成果を上げたり,休みをとらせたりすることでアップし,失敗すると下がってしまう。
営業パートは,さまざまな仕事をこなすことを通じてアイドル達とコミュニケーションを図る場だ。営業中の会話では時折選択肢が現れ,選択した会話によってアイドル達のリアクションが変わり,営業の成功/失敗が決まる。基本的には正しい選択肢を選んで,営業を成功に導くのが王道だが,わざとトンチンカンな受け答えをしてアイドルを困らせたり,恥ずかしがらせたりするのもいいものだ。何がどういいのか具体的に説明せよ,と言われるとそれはそれで困ってしまうのだが,ともかくいいものはいいのだ。
アイドル達とのイベントは豊富に用意されており,それに伴うリアクションも非常に多彩。中には特別な条件を満たすことで見られるイベントなどもあり,テレビ出演などせずに1年中ひたすら営業だけをこなして遊ぶこともできる。なお,営業でアイドル達とのコミュニケーションに成功すると,そのときのテンションや成功の度合いに応じた数の「思い出」が手に入る。この思い出は,オーディション中に使うことで,一気に大量のアピールポイントが得られる。
■765ショップには禁断の(?)アイテムが山盛り
ある程度のパターンを把握すればほぼ勝てるCPUとの対戦とは異なり,オンライン対戦で勝ち残るためには相手との駆け引きが要求され,熾烈な戦いが繰り広げられる。CPU戦と同じつもりで挑戦しても,簡単には勝たせてもらえないだろう。自分のアイドルがこてんぱんにされてしまうのを見るのは,何とも切ない気分にさせられるが,CPU戦にはない真剣勝負が味わえるので一度は挑戦してほしい。
また,Xbox Liveに接続して,マイクロソフト ポイントで新たな衣装やアクセサリを購入できるのも大きな特徴の一つだ。マイクロソフト ポイントは,Xbox Live マーケットプレースの有料コンテンツを購入するときに使用するプリペイド方式のバーチャルマネー。アイドルマスターでは,アイテムショップに当たる「765ショップ」で,月に一度のペースで新たなアイテムが追加されており,無料の「Xbox Live シルバー メンバーシップ」でも購入できる。
そして,この765ショップで購入できる衣装アイテムが実に曲者ぞろいなのだ。765ショップで購入できる衣装アイテムは,ゲーム中で入手できるものの色違いなどにとどまらない。すなわち,「スクールウェア」(要するに制服)やら,「エクササイズウェア」(とどのつまりは体操服)やら,「チアガール」やらと,男心をピンポイントで直撃する衣装が,毎月のごとく,これでもかとばかりに追加されているのだ。6月27日のカタログ更新では,ついに禁断の(?)「スクールミズギ」までが登場し,もはや誰にもその勢いは止められない。
また,ゲームとは直接のつながりはないが,PROJECT IM@Sの一環として,アイドルマスターの世界観や設定を大胆にアレンジしたテレビアニメ「アイドルマスター XENOGLOSSIA」が現在放映中だ。アニメでは,ゲームとは打って変わってなぜかロボット物になってしまったり,アイドル達の声優が総入れ替えとなってしまったりと,これはこれで大きな反響を呼んだが,ゲーム/アニメ両方のファンである筆者としては,今後はアニメに登場するパイロットスーツや,制服などの衣装が,765ショップに登場してくれることを期待したい。また,これまでのところ新曲の追加は一度も行われていないが,これについてもぜひ追加をお願いしたいところだ。
個々のゲーム性だけを取り上げてみれば,アイドルマスターは繰り返し作業になりがちな部分も多く,物足りなく感じる人も中にはいるだろう。しかしアイドルマスターは,そうしたゲーム性だけで語られるべきタイトルではないと筆者は考える。繰り返しになってしまうが,アイドルマスターは歌って踊るアイドル達を一喜一憂しつつ見守ることこそが本質であり,そこに感情移入することさえできれば,末永く楽しめるはず。アイドル達にグッと来るものを感じた人は,いまからでも遅くないので,さっそくプロデューサーデビューを果たしてほしい。
|
アイドルマスター
対応機種:Xbox 360
メーカー:バンダイナムコゲームス
発売日:2007年1月25日
価格:[通常版]7140円,[限定版]2万790円(ともに税込)
CEROレーティング:C(15歳以上対象)
公式サイト:http://www.idolmaster.jp/
(C) 窪岡俊之 (C) 2003 2007 NBGI
- 関連タイトル:
アイドルマスター
- この記事のURL:
キーワード
(c)窪岡俊之 (c) 2003 2007 NBGI