インタビュー
最大の売りは,MMORPGが本来持つべきコミュニティの形。「アッピーオンライン2(仮称)」運営スタッフインタビュー
なぜ2009年の今,当時のシステムを継承したアッピー2を展開するのか? なぜ,今なお当時のプレイヤーから支持されているのか? その理由と,今後の展開などについて,Lievo オンラインゲーム事業部の勝山 元氏および柳下貴司氏に話を聞いてみた。
一人ではプレイが困難なシステムと前作プレイヤーの協力を得て初期コミュニティを形成
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。アッピー2は,一度サービスを終了した前作を継承して開発され,今回またサービス開始に至るわけですよね。あまり類を見ないケースだと思うのですが。
前作のアッピー1のサービスを終了した背景には,もう開発を続けられないという,開発会社の事情がありました。そこでいろいろ模索した結果,すでにあるものに手を加え続けるよりも,アッピー2として一から作り直したほうがいいのではないかという判断に至りました。
柳下貴司氏(以下,柳下氏):
弊社の社長が,アッピー1のサービス最終日に行ったインゲームイベントで「アッピー2,やるよ!」と発表してしまったのです(笑)。それが大きかったというのもあります。
4Gamer:
なんと社長の鶴の一声でしたか。そうすると,プレイヤーの続編への期待は大きくなりますね。
勝山氏:
そのあと2006年末頃から,プレイヤーの有志が署名活動をしたり,復活を祈るサイトを用意したり,あるいは「たのみこむ」へのリクエストなどを始めたりしました。そうした皆さんの活動を踏まえて,また我々も有言実行をポリシーとしていますので,実際にアッピー2の開発に着手したわけです。
とはいっても先ほど述べたとおり,もともときちんと予定していたことではあるのです。
柳下氏:
メールマガジンの最後のほうに,アッピー2の現状報告を入れているんですが,常に一定数の反響があります。非常にファンの多いゲームだと感じています。
4Gamer:
そこまで復活を求めるプレイヤーのアピールがあったんですか。それにしても,アッピー1がそれほどプレイヤーから支持される理由は何なのでしょうか?
勝山氏:
それは,プレイヤー同士で形成したコミュニティが非常に強いからだと思います。私もオンラインゲームはいろいろプレイしているのですが,アッピー1のコミュニティはどこと比較しても強固です。それはゲーム性そのものに拠る部分もありますし,運営スタイルがプレイヤー主導の参加型だったことにも起因しています。
4Gamer:
コミュニティを強くするゲーム性といいますと?
本作では,一人でゲームを進めるのは非常に困難です。プレイヤーの基本クラスは,戦士/探検家/魔法使いですけれども,それとは別に「医者」や「鍛冶屋」といった職業に就きます。例えば各プレイヤーは病気になったり,武器が壊れたりしますが,自分だけでそれらすべてに対処できるわけではなく,特定職業のプレイヤーに頼まないと,その状況を回復/改善できません。
つまり,人が困っていたら助けてあげる,逆に人に助けてもらわないとゲームに支障が出るといったように,皆で共存しないと生きていけない世界なんです。そうやってプレイヤーのコミュニティが成長していったわけです。
4Gamer:
それは,例えば運営で「皆で助け合いましょう!」と誘導した結果ではなく,プレイヤーが自然にそうなっていったと。
勝山氏:
はい。困っているときに誰かが助けてくれたというような“人と人の触れ合い”によって成長したコミュニティなんです。今時珍しい,MMORPG本来のスタイル,とでもいいますか。
4Gamer:
アッピー2でも,同じスタイルを継承するわけですよね。ただ最近の傾向では,そうした濃厚なコミュニティよりも,いわゆるCo-opプレイ,あるいはチームを組んでの対戦が人気で,それ以外の部分ではある程度ソロでも遊びたいという需要も大きいようです。そういう意味では,おっしゃっているようなコミュニティは時代に逆行しているスタイルとも思えますが。
勝山氏:
MMORPGですから,当然,アッピー2にもそういったパーティプレイなどはあります。ただ,まずは以前のようなコミュニティ形成を目指した運営を進めていきます。
それにパーティプレイは楽しい反面,ちょっとしたミスで周囲から責められてしまいがちですよね。責められた人は,ゲームから離れていってしまいますし,私も実際にそういった経験があります。なので,パーティプレイの要素を強めていくのは,実際にサービスを開始して皆さんの反応を確かめてからにしようと考えています。その延長線上には,ギルド戦や攻城戦,三つ巴の国家戦もあります。
4Gamer:
なるほど。そうなると当面のコミュニティ形成は,基本的に前作のプレイヤーの力を借りる形になりそうですね。
勝山氏:
そうですね。また,そこが最も要望の強い部分でもあるんです。助け合いが必要であること……それこそ「そうじゃなければアッピーとはいえない」くらいの勢いです。
4Gamer:
たしかに,アッピー1の復活を望んだ,かつてのプレイヤーの考えとして,本作がそうあって欲しいのだろうと理解できます。それでは,新規プレイヤーに対しては,どのように訴求していくのでしょう?
新規プレイヤーの獲得は,我々にとっても大きな課題です。アッピー2が目指すコミュニティは,今の流れの中では珍しい存在ですから,“新しい発見”として捉えていただけると思います。また我々も,その良さをきちんとアピールし,理解していただく努力をしなければなりません。
4Gamer:
アッピー1のサービスが終了してから3年近く経っており,その間,オンラインゲームプレイヤーもさまざまな意味で多様な価値観を持つようになりました。中には,必ずしも周囲と強調することを求めていない人もいます。そうした状況の中,当時コミュニティの中心にいた人はともかく,まったく新規でアッピー2に触れる人が理想どおりコミュニティに溶け込めるのかという疑問も出てきます。
勝山氏:
それについては,職業というシステムがあることで,おのずとコミュニティに溶け込めるようになっています。というのは先ほど言ったとおり,一人ではゲームが進められないからです。例えばマナーが悪いなどの理由で周囲のプレイヤーから敬遠される人は,誰も助けてくれないので自然に淘汰されていくのです。
4Gamer:
なるほど。職業システムにおける“一人ではプレイを続けられない”という不便さが,コミュニティの自浄作用として機能し,結果としてコミュニティを強固なものにしてきたというわけですか。何だか実社会のシミュレーションみたいですね。
勝山氏:
そのとおりです。ゲームというよりは,もう一つの社会で生活するようなイメージです。そうやってプレイを続けていくうちに親しくなり,お互いに対する信頼も高まっていきます。
実をいうと,私自身,このシステムをまったくの新規タイトルに組み込もうといわれたら賛成するかどうか分かりません。「一人で何もできないシステムじゃ,皆すぐに辞めちゃうよ!」って(笑)。しかしアッピー1はそうではありませんでしたし,またアッピー2にはそこで培ったコミュニティが継承されますから,上手くいくと信じています。
接続率に表れていた,プレイヤーに待ち望まれた復活
4Gamer:
それでは,1月に実施されたプレミアテストの手応えをお聞かせください。
何よりも,プレイヤーさんの喜びの声に驚きました。中には「まさか,本当にテストまで漕ぎ着けるとは!」というのもあって,信用されてなかったのかな,とも思いましたが(笑)。
4Gamer:
プレミアテストの応募はどれくらいあったのでしょうか。
柳下氏:
具体的な数字の話をすると,1000名の募集枠に対して5000名近い応募がありました。我々としても,予想以上の反響でした。
4Gamer:
募集制限(関連記事)があったなかで,その数字は多く感じますね。5000人の応募者の内,前作のプレイヤーはどのくらいだったのでしょう?
勝山氏:
当選した1000人のうち,8割以上は前作のプレイヤーでした。プレミアテストでの同時接続数,一日のユニークプレイヤー数,総アクティブ率は,当社でサービスをしているほかのタイトルと比べると,群を抜いて高かったです。
4Gamer:
それだけアッピー2を心待ちにしていた人が多かった,ということでしょうか。プレミアテストは,基本的に負荷テストだったんですよね。
勝山氏:
そうです。回線使用量やクライアントの動作などもチェックしまして,ちょうど反映しているところです。
4Gamer:
続いて2月2日から,クローズドβテストが実施されますが,どういった内容になるのでしょう?
勝山氏:
今回は,参加人数を5000名に増やしての負荷テストですね。クライアントに大きな変更はないのですが,「郵便機能」と,お話してきた職業システムを実装します。
4Gamer:
職業は,アッピー2のゲームとしての核となる部分ですね。具体的に,どんなものがあるのですか?
勝山氏:
一次職と二次職があります。一次職は伐採や採掘,狩猟などです。二次職は武器の生産や修理,医者などになります。
4Gamer:
一次職と二次職は,どういう関係なのでしょう? 例えば,一次職で採掘を選んでいると,二次職で生産を選べるといったようなイメージでしょうか。
勝山氏:
大体,そうです。詳しくは2月2日に公式サイトで発表します(関連記事)。各職業とも熟練するにしたがってジョブポイントが溜まりますので,それを消費してスキルを取得します。
4Gamer:
なるほど。そのほか,クローズドβテストでの見どころを教えてください。
勝山氏:
そこはやはり,職業の実装と,それに伴うコミュニティの発展に尽きます。アッピーオンラインの何が面白かったかというと,プレイヤーの皆さんが口を揃えてその部分を挙げます。
4Gamer:
実際に触れてみれば,その面白さが分かるというわけですね。
ただ最近では,グラフィックスが2Dであること,つまり良くも悪くも古い外見であることが,ある意味,プレイヤーを選んでしまう理由になっている傾向も見られますが。
勝山氏:
確かにそういった傾向はありますが,ニンテンドーDSのゲームを見ても2Dグラフィックスで面白いものはたくさんありますから,そこは本質ではないと思います。とはいえ,アッピー2は細かく綺麗なグラフィックスに仕上がっていますので,ぜひジックリと見てください。水の動きやNPCの顔など,本当に細かく作りこんでいますよ。
今,市場を見ると,オンラインゲームをやる人は確かにいますが,その一方で,やらない人はまったくやらないという状況になっています。それを踏まえると,ノートPCで動くようなタイトルを提供して裾野を広げていくことも重視しなければなりません。アッピー2も,その選択肢に入るようなものとして位置づけています。まあ,まずはログインしていただいて,実際に触れていただくのが一番ですけれども。
4Gamer:
たしかに日本のPC事情を考えるとそうですね。ところで,以前のプレイレポートを確認して,ちょっと気になったのが,チュートリアルクエストの類がないことです。
勝山氏:
将来的に予定してはいますが,当面はチュートリアルを実装しません。これは,やはりコミュニティを強化する方針に基づく判断です。チュートリアルの存在は一長一短で,一人でゲームの内容を把握できる反面,「分からないから教えて」という機会を奪ってしまいます。アッピー1からのプレイヤーさんは,初心者の質問に親切に答えてくれる方ばかりですから,そういった機会を活かしていきたいです。
勝山氏:
チュートリアルの代わりといってはなんですが,クローズドβテストでは,インゲームイベント「りんご学園」を実施します。これはプレミアテストでも行ったのですが,初心者に向けた内容になっています。
4Gamer:
なるほど,人と人のつながりが初心者(プレイヤー)を育てていくというのが前提にあるんですね。
CBT以降も続く,プレイヤー主導であるがゆえの慎重な展開
4Gamer:
それでは,クローズドβテスト以降の展開について教えてください。
スケジュールは大枠で決まっているのですが,クローズドβテストの結果を踏まえてクライアントの調整もしなければなりませんので,まだ発表できない段階です。
4Gamer:
春先にオープンβテスト,それを受けて正式サービス開始といった感じですか?
柳下氏:
そうですね。ただ,プレイヤーさんの意見を,可能な限り取り入れたいという部分が運営/開発ともに強いですから,クローズドβテストの結果を見ないと具体的にはまだお話できません。
勝山氏:
そこは,プレイヤーさんの要望と,運営/開発の解釈が食い違っていることが往々にしてあるんですよ。要望に応じて実装した機能について,実際に触れてもらって初めて,本当は何が欲しかったのかという意見が返ってくるのです。それを踏まえた再調整を考えると,まだスケジュールは発表できないですね。
4Gamer:
一つ一つ非常に慎重にやっているわけですね。
勝山氏:
運営/開発側でのテストなりデバッグなりは,多くても数十名で行うものですから,やはりプレイヤーの皆さんに提供するものとは状況が異なります。「だいたい,こんなもんだろ」でやってしまっては,例えば先行した人が得をする,逆に損をするという状況が生まれてしまうかもしれません。そうなると,今度はリセットするかどうかという問題が生じて,運営的にも無理が出てしまいます。
柳下氏:
とくにアッピー2はプレイヤー主導を謳っていますので,「こうします,ああします」と安易に発言してしまうわけにはいかないのです。安易に言葉にしてしまうと,プレイヤーさんとの約束を守るために無理が生じます。それで結果が中途半端なものになってしまっては,プレイヤーさんのためにもなりません。それで慎重になっているんですよ。
4Gamer:
ただ,あまり慎重になりすぎると,今度はプレイヤーが飽きてしまいかねません。
柳下氏:
そこはアンケートを実施したり,グッズを作ったりという形で皆さんの関心を喚起するようなことを随時行っていきます。
4Gamer:
以前に公式サイトで「どのようなグッズが欲しい?」というアンケートをしていましたね。そういった部分にもプレイヤーありきで進んでいるんだなと感じました。
それでは最後に,アッピー2に注目している人や,4Gamerの読者にメッセージをお願いします。
勝山氏:
アッピー2は,MMORPGの根幹である“人と人の触れ合い”を重視しています。興味のあるなしに関わらず,一度触れてみて「なるほど,これがそうか」と思っていただければ幸いです。
柳下氏:
コアなプレイヤーさんには昔やったゲームを思い出していただけるような,新規の方には新しい経験をしてもらえるようなものになっていると思います。その魅力を,アッピー1からのプレイヤーさんの協力を仰ぎながら,我々もキッチリと責任持ってアピールして行きたいと考えています。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
外見やシステムは若干古めかしいが,そこを逆に利用してコミュニティの形成と維持につなげていくというアッピー2。また各種機能の実装とバランス調整も,プレイヤーの反応を逐一確かめて慎重に行っていくとのことで,アッピー1で実装されていた要素を網羅するのに1〜2年程度の期間を見込んでいるという。その上でアッピー2として更なる展開を行っていくとのことで,長年かけてここまでたどり着いた後継作だけに,長期的な展望はバッチリ考えているようだ。
なお,開発スタッフにはかつてアッピー1に携わった人達を呼び寄せ,また運営スタッフの中には,かつて「アッピーサポーター」として初心者のガイドなどを務めた人もいるとのこと。当時からのプレイヤーだけでなく,現在の運営/開発スタッフもまた,アッピーに思い入れの深い人達ばかりというわけだ。今後,オープンβテストから正式サービス開始へと展開していくわけだが,そうした人達が果たしてどのようなコミュニティを形成していくのか,その推移を見守りたい。
(1月30日収録――)
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