レビュー
「ギルド ウォーズ」初の“拡張版”となる「新たなる予言」,先行プレイレポート
本作の関連タイトルとしては,これまでに「Campaign2 戦乱の章」および「Campaign3 審判の章」が発売されてきたが,この2作はそれぞれ単体でのインストール/起動が可能であった。仮に本作の未経験者が,最初に「Campaign2」や「Campaign3」を手に取ったとしても,チュートリアルレベルから順を追って,ゲームに慣れていける作りになっていたのである。つまりRPGモードのみならず,繊細なゲームバランスが要求されるPvP(対人戦)モードですら,いずれか一本を持っていれば,楽しめていたわけである。
こういったパッケージの制作手法は,少なくともオンラインRPGではほかに類を見ない試みであり,発売後長期間が経過しても新規プレイヤーが参加しやすいという大きなメリットがある。本シリーズは累計で,全世界400万本の売上実績を記録しているが,その中にはCampaign2や3からプレイを始めた人も,数多く含まれているだろう。
しかし,今回リリースされる「新たなる予言」は,従来の「Campaign2」や「Campaign3」とは異なり,正真正銘の“拡張版”である。つまり,プレイするには過去の作品のうち,いずれか一作以上のインストールが事前に必要となる。そして,未経験者向けの要素を廃する代わりに,頭のてっぺんからつま先まで,上級者向けのコンテンツで満たされているのだ(難度的には,レベル20のキャラクターを対象とする既存キャンペーンと同程度)。
さらに「新たなる予言」のストーリーは,シリーズ第一作(Campaign1 予言の章)にも深く関わっている。シリーズを通してプレイしているような熱心なファンの中には,「Campaign1」におけるストーリーの“今後”が,気になっている人も多いのではないだろうか。筆者個人としても,「Campaign1」のRPGモードは,5,6回は通しでプレイしているので,非常に気になっている。
そこで今回は,ローカライズ作業の真っ只中にあるエヌ・シー・ジャパン本社にお邪魔し,開発途中の「新たなる予言」に触れさせてもらった。本稿ではそのプレイレポートをお届けしていこう。
なお,「新たなる予言」は8月31日の世界同時リリースが予定されており,今回は開発作業とローカライズ作業のピークに差しかかる中のプレイであった。そのため本稿に掲載しているスクリーンショットは,細かい翻訳部分やグラフィックスなどが修正される可能性がある。その点はご了承を。
■「新たなる予言」のストーリーラインを紹介
「新たなる予言」のストーリーは,世界各地で突如大地震が起こるところから始まる。そしてこの地震により,ティリア大陸の中心部である“ライオンアーチ”の北部で,巨大な地割れが発生してしまったのだ。冒険者は,ライオンアーチのNPCに地割れの調査を依頼され,新たな冒険をスタートすることになる。
冒険者達が調査に行くと,それは単なる地割れではなく,奥には長い地下道が続いていた。そして地下道をさらに奥へと進むと,なんとドワーフと,今回初登場となる新種族の“アスラ”の集落が広がっていたのだ。彼等は,以前からひっそりと地下での生活を営んでいたが,今回発生した地割れによって,地上への出入口が開かれたわけである。
ちなみに,ここに登場するドワーフ/アスラの集団は,後述するデストロイヤーを倒そうと,爆弾を仕掛けて準備していたようだ。
かつて冒険者達が遭遇したドワーフの中には敵対勢力もいたが,ここにいる一派はとりあえず味方のようなので一安心。またアスラについても,極めて高い魔法技術を持ち合わせており,頼もしい味方となってくれそうである。
しかし,ほっとするのも束の間,彼等は強力なモンスターの“デストロイヤー”の軍勢から逃げている最中だという。仮に冒険者達が助太刀したところでまったく歯が立たないとのことで,ひとまずはアスラが作った転移装置の“アスラゲート”を使い,退却することになる。
デストロイヤーは,Campaign1に登場したデルドリモアドワーフ族により,その存在と危険性が確認されていた種族。デストロイヤーの出現により地下の住居から追い出されたアスラ族は,現在では地上での生活を余儀なくされているようだ。
アスラゲートを潜り抜けた先は,ティリア大陸の北部,既存マップで言うならば“シヴァピーク山脈”のさらに北という極寒の地であった。冒険者達はここで,これまた今回初登場となる,巨人族“ノルン”と出会うことになる。
ノルンはかなり好戦的な種族で,冒険者と戦うことなど意に介さずといった様子。しかし彼等は,とある事情により仇討ちに行く途中で,今は冒険者達との一触即発の展開は避けられそうだ。ノルンから,「近くに“人間”の集落がある」と聞いた冒険者は,そこを目指すことになる。
ノルンに言われた通りに道を進んで行くと,そこには遠目からでも未知の文明によって建てられたことがはっきりと分かる,巨大な砦がそびえ立っていた。ここのエリア名称は「ノース アイ」。英語表記では“Eye of the North”となり,これは本作の英語版タイトルと同一名称である。本作において重要な意味を持つ地であることは間違いないだろう。
ノース アイの内部では,人間達が小規模ながらも軍隊を編成しており,自らを“エボン ヴァンガード”と名乗っていた。……Campaign1の経験者は覚えているだろうか? 彼等は,かつてチャールによって滅ぼされた“アスカロン ヴァンガード”(ルリック王子の部隊)と同様,いまだ滅びていないチャールと戦っている,アスカロンの部隊なのである。彼等のチャールに対する憎しみの炎は依然として消えておらず,ノース アイを拠点に地道なゲリラ活動を行っていたのだ。
そして,ここではもう一つ嬉しい再会がある。アスカロン崩壊時に行方不明となっていたNPCの少女“グウェン”が立派に成長し,エボン ヴァンガードに所属していたのである。
このように「新たなる予言」は,ドワーフ,アスラ,ノルン,そして人間達といったさまざまな種族/勢力が,それぞれ別の思惑によって動いている世界だ。冒険者はそれぞれの勢力へ加担しつつ,チャールやデストロイヤーの侵攻を食い止め,物語の発端となった大地震の真相を究明していくのである。
■今回は勢力ごとに別々のストーリーが用意
つまり,勢力ごとに個別のミッションを進められるのが本作の大きな特徴だ。この仕組みはCampaign2における“ラクソン”と“カーツ”の関係に比較的近いが,登場する勢力が多いこともあり,あれよりも複雑に入り組んでいる印象だ。
今回のプレイでは,“ノルン”,“アスラ”,“エボン ヴァンガード”の3勢力に,それぞれ別のミッションが用意されていることが確認できた。ここで,各勢力の背景を簡単に整理しておこう。
・ノーザン アリー
迫り来るデストロイヤーの脅威に対し,種族の垣根を越えて結束する必要性を説くドワーフと,それに賛同したノルンによる勢力。ちなみにNorthen Ally=“北方の同盟”という意味。
今回初登場となるノルンについて説明すると,これは人間よりも二回りほど大きな種族である。さらに一時的にクマに変身し,それによって絶大なパワーを得る。ただしノルンの協力を得るのは一筋縄ではいかなく,彼等を納得させるために,変身後のクマと直接戦うといったクエストも複数確認できた。
・ナレッジ アスラ
ウサギのヒューマノイドとでもいうべきか,なかなか的確な例が思い浮かびにくい。とりあえず,掲載画像を直接見てもらったほうが理解は早いだろう。とても小柄で,会話の際は語尾に“すら”が付くという,コミカルな一面も感じさせる種族だ。
その見た目とは裏腹に(?),アスラは高度な魔法文明を持ち合わせている。地中を瞬時にワープできる“アスラゲート”は,その最たるものである。しかし,アスラゲートの動作に必要な“中央転送室”をデストロイヤーに占拠されたことで,大きな障害が発生してしまっている。
・エボン ヴァンガード
かつて,獣人族“チャール”の急襲によって滅ぼされた王国“アスカロン”に属し,極北シヴァーピークを拠点に戦い続けていた部隊。先の大戦での残党を中心に,チャールの元捕虜や北方の難民なども加わり,それなりの規模に拡大している。しかし,新たな拠点“ノース アイ”がチャールに察知されてからは,再び両者の間で断続的な交戦が行われている。
今回の舞台はCampaign1から地続きなこともあり,本稿に掲載しているワールドマップを見れば,各ミッションにおける大まかな足取りを,イメージできるのではないだろうか。
プレイヤーキャラクターは各勢力のミッションをある程度進めると,その報酬として新たなスキルを習得できる。また,平行して複数の勢力のミッションを進めることも可能だ。ここで注目してもらいたいのは,「新たなる予言」ではRPGモードでしか使えないスキルが,合計で50種類も用意されていること。種族の数を踏まえると,10〜15程度のRPGモード専用スキルを,各勢力の一般ミッションを通じて習得できそうだ。
ご存じの通り,ギルド ウォーズはRPG/PvPモードの両立を主眼に据えたゲームバランスとなっている。“RPGモード専用”という要素がここまで大きいのは,少々意外に感じる人もいるかもしれない。
しかし見方を変えると,これらの専用スキルには,仮にPvPモードで用いるとゲームバランスを崩しかねない,強力かつアクの強いものが揃っているのではないだろうか? 例えばノーザン アリーのミッション終盤では,ノルンのようにクマへと変身するスキルの習得も期待できる(さすがに無理かもしれないが)。冒険者が実際に,どのようなスキル群を習得できるようになるのか,今から気になるばかりだ。
また,ミッションとは別に,勢力単位での“評価”のステータスも設けられている。これを高めることにより,例えば特別なNPCショップが利用できる,などといった恩恵が用意されているのだ。ストーリーの顛末と恩恵の両面において,プレイヤーがどの勢力と深く関係するか,なかなか悩ましい選択になりそうである。
■ハイレベルプレイヤー向けの拡張版として,順当な仕上がり
今回は拡張版ということで難度が気になっている人も多いと思うが,やはり相応に高くなっている。最初の地下道エリアを抜けてノース アイに辿りつく段階で,レベル20を超えるモンスターが当たり前のように登場するのだ。そのためCampaign1〜3を最後までクリアする必要こそないものの,レベル20のキャラクターは必須となる。
Campaign3で新たに登場した“ヒーロー”(簡単に説明すると,強力なカスタマイズが可能な傭兵システム)は,新たに10体が追加されている。各ヒーローの詳細についてはネタばれになるので控えるが,担当クラスはまんべんなく分けられており,さらなる戦術の追求が可能となっている。
ちなみに先述したグウェンは,ミッションの序盤でメスマーのヒーローとして仲間に加わる。メスマーのヒーローはCampaign3でも登場していたが,対キャスター用の切り札として,活躍が大いに期待できるだろう。
グラフィックス関連については,Campaign1から地続きの土地ということもあり,プレイ中は時折ひどく懐かしい気分にさせられた。例えばノーザン アリーのミッションエリアでは,あのシヴァピーク山脈の肌寒い景色が一面に広がっている,という具合である。
また,エボン ヴァンガードのミッションでチャールの拠点を目指す際に,緑豊かなチャールの国を通過することになるが,これがアスカロンが崩壊する“前”の景観によく似ているのだ。かつてのアスカロンにおけるのどかな雰囲気と,現在のエボン ヴァンガードの境遇を振り返ると,ただそれだけでも胸にぐっとこみ上げてくるものがある。
その一方でナレッジ アスラに関連したエリアでは,グラフィックス面での新しい試みも積極的に行われている。例えば燃え盛る森林の場面では,たった数歩を進むだけで辺りが暗くなるなど,はっとさせられる演出がいくつか見受けられた。
アスラはかつてない魔法文明を築き上げた種族だが,この本拠地が果たしてどのようなグラフィックスで描写されているのか,実際に見るのが待ち遠しい(個人的には,“古代帝王の墳墓”の地下エリアをイメージしている)。
もちろん,これらのグラフィックスは単に綺麗というだけでなく,その割に必要とするマシンスペックは低い。見た目は進化しても,ギルド ウォーズのポリシーはなんら変わっていないので安心してほしい。
なお,今回のテストプレイでは直接触れられなかったものの,ボクシング的な“1対1による決闘”システムが導入されるほか,RPGモード用のミニゲーム風コンテンツも実装されるという。あのArenaNetなら,きっと納得のいくゲームバランスに仕上げてくれることだろう。
今回は2〜3時間しかプレイきなかったので,「新たなる予言」の隅々まで堪能できたわけではないが,とりあえずファーストインプレッションとしてお届けできるのは以上だ。
今,こうやって原稿を執筆していても,「ああ,ティリア大陸で冒険しているんだなぁ」と,しみじみと実感する。以前のCampaign2やCampaign3は世界観が大きく違っており,確かに新鮮ではあったものの,個人的にはそれが逆に少々寂しくも感じた。なぜならば,Campaign1では数多くの勢力/種族が登場したが,ミッション終了時に大団円,というわけにはいかなかったからである。相当作り込まれた世界観であるにもかかわらず,最後まで謎が謎のまま残されることには,歯がゆい思いをさせられたものだ。
それだけに,今回ノース アイでグウェン達と再会し,彼等がチャールへの復讐を計画していると知った瞬間は,「ついにこの日が来たか!」との思いがこみ上げてきた。一刻も早く製品版をプレイし,物語の行く末を見届けたい。
「ギルド ウォーズ 拡張版 新たなる予言」は,8月31日に,全世界同時にダウンロード販売される。少なくともティリアの世界観を満喫するという意味だけでも,Campaign1の経験者はプレイして損はしないことを約束しよう。(ライター:川崎政一郎)
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ギルド ウォーズ 拡張版 新たなる予言
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