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[GDC2008#17]陽気な傭兵アクション実現のために開発されたハイテク――「Mercenaries 2」の新技術とは
2008年中の発売が予定されているMercenaries 2の特徴は,傭兵版GTA3といえる自由度の高さと,なんでもかんでもドッカンドッカン破壊して燃え上がったりする派手なアクションにある。ベネズエラに跋扈(ばっこ)する数々の勢力から依頼されるミッションを好きに選び,最終的にどの勢力に勝利をもたらすかも自由自在。サブタイトル「世界は燃え上がる」(意訳)にもあるように,多くの建物が破壊可能で,戦車や飛行機,戦闘ヘリコプター,果ては巡洋艦まで使った破天荒なゲーム性にその魅力があるわけだ。
しかし今回のレクチャーは,タイトルである「Mercenaries 2: Networked Physics in a Large Streaming World」からも分かるように,その物理効果を,ネットにつながったそれぞれのプレイヤーがどうやって共有するかという,大変地味なセッションであった。
講演者は,昨年(2007年)Electronic Artsの傘下に入ったことでゲーム業界を賑わせたPandemic StudiosのGlen Fielder氏。自身,昔傭兵でもやっていたのではないかという声と身振りだったが,内容はといえばかなり専門的なものだった。
マルチプレイアクションゲームのフィールドには,Static(静的)なものとDynamic(動的)なものの二種類があるが,現在普通にプレイされているタイトルは静的なもののほうが多い。フィールドに置かれたオブジェクトは最初から最後までほとんどそのままで,銃で撃てば穴が空いたり,ドラム缶を撃って破壊したりはできるが,大きな建物などを破壊することはできない。
対して動的な世界では物理エンジンが使われ,誰かが誰かを突き飛ばしたら,突き飛ばされたほうがよろめくとか,ロケット弾で爆破されたたビルの破片が降ってきてやられてしまうとか,そういうことが普通に起きる世界だ。オブジェクトを破壊できるマルチプレイタイトルもあるが,多くはアニメーション処理によって決まった場所があらかじめ決められたとおりに壊され,ネットを介したプレイヤー全員に「場所Aの壁破壊」という報告がいくことで,各人のPC上で然るべき処理がなされるタイプが多い。
もともと一般のゲーマーが使うインターネットはさほど安定した通信ではなく,クライアントは,兵士の位置や移動速度などから推測して適宜情報を補完しつつ,滑らかな動きを再現している。これもまた決定論的な世界であるからできることであり,非決定論的な物理効果を導入することは難しいわけだ。
さらに権限の問題もある。これはつまり,ある物理処理をクライアントがやるのかサーバーがやるのか,また二つの処理を同時に行おうとした場合,どちらが優先されるべきなのかという話だ。これは各プレイヤーのフレームレートが異なった場合,速いほうが優先されてしまい,一つのクライアントに処理が集中するという問題にも関わってくる。
……というわけで,それらの問題に対処して動的な世界を実現するMercenaries 2は,そのバックボーンに,非常に挑戦的なものを持っているのだ。正直に述べるが,その対処の方法はあまりにも専門的で,筆者の理解もなかなか追いつかず,上記説明にも勘違いがあるかもしれない。いずれ機会があれば,稿を改めて紹介したいと思う。
とはいえFielder氏によれば,Mercenaries 2は「完璧なネットワークに向けた小さな一歩」なのだそうである。ゲーム中,アニメーションによって処理されたり,ハードウェア的な制約で仕方なく手を抜いた部分もあり,彼のチャレンジは続く。最近のFPSにおいては,物理エンジンは常識というか,ほぼ当たり前なので,それをマルチプレイにも適応しようという動きはPandemicだけでなく,各社がやってくるだろう。マルチプレイでどっかんどっかんは,今後数年のトレンドになりそうな予感がしてくるので,その走りの部分のそのまたさわりの部分だが,触れられただけでも収穫だった。いや,負け惜しみじゃありませんとも。
- 関連タイトル:
マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス
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