インタビュー
新章発表! ちょっと無茶してでも面白いものを。開発移管でさらなる“攻め”の姿勢を見せる「コンチェルトゲート フォルテ」インタビュー
10月実装の新章で学園モノに転身!? 狙いはプレイヤー間コミュニケーションの強化
4Gamer:
それでは,リズに開発を移管してからの展開について教えてください。
春田氏:
10月6日に,新章「ローゼンベルク学園と7つの世界」がスタートします。
藤原氏:
サブタイトルの通り,学園を舞台にしたコンテンツです。そこで,プレイヤーさん達がワイワイ楽しめるような内容となります。
渡辺氏:
ストーリーは,後日,公式サイトなどで発表しますが,一言でいってしまうとコンチェルトゲートが学園モノになります。「何で?」という疑問もあるでしょうが,そこは理屈じゃない部分です(笑)。
4Gamer:
えーっ(笑)。
私がコンチェルトゲートを初めてプレイしたとき,やれること,覚えることが多く,最初に何をしたら良いのか分からず,そこで若干の戸惑いを覚えたんです。誰かに教えてもらいたい。教えてもらうといえば学校,学校なら皆が集まるといった流れで学園コンテンツの企画をまとめました。
渡辺氏:
初心者にゲームのやり方を教えるだけなら,チュートリアル用の施設を作ればいいのですが,それだけに留まらないコミュニケーションの場を作りたかったんです。今後のコンチェルトゲートでは,プレイヤー同士のコミュニケーションをより強化していこう,と。システム面やそのほかでいろいろやっていくのですが,全体の雰囲気を表すキーワードが学園なんです。
4Gamer:
なるほど。学園という設定を作ることで,コミュニケーションのとっかかりを作ったわけですか。
渡辺氏:
プレイヤー同士が協力するゲームというと,例えば弊社とゲームポットさんでやっている「ファンタジーアース ゼロ」がありますが,あれはゲームの題材としても軍隊のイメージですよね。しかしコンチェルトゲートはもっとゆるくて,強制力もあるんだかないんだかといった雰囲気のコミュニティが望ましいでしょう。そこで学園に落ち着いたわけです。
藤原氏:
クラスのみんなと協力して楽しめるような内容を予定しています。例えば,クラス同士で何かを競い合って,クラスの成績がいいと全員が何かご褒美をもらえるようなシステムを入れられたらと考えています。「ウチのクラスも頑張ろう! みんな協力して」みたいなノリが生まれれば良いなと思います。
4Gamer:
クラス分けは,システムで強制的に決められてしまうんでしょうか?
ローゼンベルク学園校章 |
それは検討中です。というのは,せっかく友達と一緒にゲームを始めたのに,クラスが分かれてしまったら残念という人もいれば,学校なんだから勝手にクラスを振り分けられて当然と思う人もいるでしょうから。
とはいえ,やはり最初は自動的に振り分けられる方がいいんじゃないかかと考えています。そのあと何らかの方法で,好きなクラスに移れるようなイメージですね。最初のクラスは,あくまでもコミュニケーションのきっかけとして利用してもらうことを目的にしています。
4Gamer:
学園と聞いて,思い浮かべるような要素やイベントに期待してもいいんですよね?
藤原氏:
例えば「講義」では,特定の時間になるとクラスに集まるよう指示され,先生から課題クエストが出されます。そこでは,その場にいる人達で自動的にパーティが組まれ,協力してクエストに挑戦することになります。これには,初めてオンラインゲームをプレイする人などに,パーティプレイや協力プレイの楽しさを知ってもらおうという意図も含まれています。
もちろん,クラス対抗の運動会や文化祭など,学園ならではのイベントも提供していく予定です。
初めてオンラインゲームに触れると,どういうギルドに入ればいいのか戸惑いますよね。でも,一度入ってしまえば徐々にギルドの面白さも分かってくると思います。そこで自動的にクラスに振り分けられて,クラスメイトと一緒に行動することで慣れてもらって,一定の期間が過ぎたら今度は自由にギルドを選んだり,自分で作ったりしてもらおうという意図が根底にあります。
渡辺氏:
ほかの要素も,今後,発表していきます。今回は,学園と聞いて何となく面白そうだなと思っていただければいいかなと。とはいえ,もちろんきちんと考えているので,安心してください。
4Gamer:
これまでのメインストーリーはどうなるのでしょう?
春田氏:
学園コンテンツと並行して続いていきます。したがって,学園生活を送る一方で,メインストーリーを楽しむことができます。ちなみに,学園にもキーとなる新たなキャラクターやストーリークエストが登場しますよ。
陣形,伝承,コンボ技(いずれも仮称)。新たな戦闘にもコミュニケーション強化要素を導入
4Gamer:
プレイヤーから寄せられる要望や,その対応状況などはいかがでしょう?
春田氏:
現在,2か月に1回ほどの頻度で,ゲーム内座談会を開いて,プレイヤーさんの話を聞いています。そこでは実現できそうなものから,夢レベルの話までさまざまな内容が出るのですが,最も多いのが戦闘に関する要望です。その中でも,職業ごとに役割や個性を持たせたいというものが多いですね。コンチェルトゲートは,誰でも何でもできる代わりに,職業ごとの大きな差がないんです。
そこで今回,プレイヤーさんの意見を踏まえて,リズさんと何かできないかと相談しました。
藤原氏:
新しいスキルやパラメータを追加することによる職業の個性出しなども考えたのですが,どうもそれだけではインパクトに欠けると思いました。そこで今回は思い切ってシステム的な部分にまで手を加えてしまおうと考えています。
これまでの戦闘は2×5のマスで行われており,5人パーティでそれぞれがペットを連れているとすべてのマスが埋まっていたのですが,今回,そのマスを増やすことにより,プレイヤーの移動という概念を戦闘に組み込みます。
渡辺氏:
位置取りの概念が生まれて,タクティカルな要素が増えるわけです。
開発中の戦闘画面 |
藤原氏:
これにより各職業にも,移動範囲が広いけれども攻撃力が弱いといったような特徴が生まれるほか,攻撃した相手を1マス後ろに吹っ飛ばすといったスキルなども持たせられます。
もう一つが「陣形」の概念です。パーティメンバーが特定の位置に立って陣形を作ると,前列は攻撃力アップ,後列は魔力アップといった効果が得られます。ボスなど,ちょっと強い敵と戦うときに有効です。
4Gamer:
そうなると,少し戦闘のハードルが高くなってしまいそうですが。
渡辺氏:
今の説明だけだとそう思えるかもしれませんが,通常の戦闘だと陣形はそれほど重要ではありません。チョコマカ動きまわって,皆が偶然ある位置に来たらビシッと決まっちゃった,勝ってよかった,くらいのものです。タクティカルな側面を追加したといっても,それで戦闘時間が長引いてしまったり,面倒になったりといったことでは本末転倒ですからね。
春田氏:
コンシューマのRPGでも,ボス戦以外はボタン連打で進めたりするじゃないですか。コンチェルトゲートにおける陣形もそれと同じで,本当に強い敵との戦闘で使うようなバランスで考えています。
藤原氏:
いたずらに難しくしてもプレイヤーさんの負担を増やすだけですから。
4Gamer:
全般にメリハリをつけるようなイメージですね。
渡辺氏:
陣形も,もともとはコミュニケーション強化の一環として出たアイデアです。今までの戦闘での位置取りは,前列か後列か,というシンプルなものでしたが,陣形を加えることで,互いに声を掛け合って特定のポジションまで移動するというコミュニケーションが生まれるんじゃないかと。そこに位置取りや,職業ごとの差別化の要素を加えて,今回の仕様に落とし込んだわけです。マスを増やしたから面白くなるのではなく,面白くしようとしたら多くのマスが必要になったというのが実情ですね。
藤原氏:
そのほか,AというスキルのあとにBというスキルを使うと相乗効果が生まれる「コンボ技」を考えています。これも陣形同様に,戦闘で絶対必要な要素にはしません。
あとは「伝承」です。これは,プレイヤーがあるときふと,ある技を覚える──いわば"思いつく"システムなのですが,より重要なのはその技が一緒に戦っているパーティメンバーに伝承する,という現象が起こることです。これもコミュニケーション強化の一環で,その技を持っている人と一緒に戦闘してみようという一つのきっかけになるんじゃないかと考えています。
4Gamer:
なるほど。陣形にしても,コンボ技や伝承にしても,その意図にはコミュニケーション強化があるというわけですか。
藤原氏:
戦闘以外でも,現行システムを見直す予定です。例えばおしゃれ装備関連は,コンチェルトゲートの大きな魅力なので,さまざまな要望や意見が寄せられます。そこで,あらためて何か改善できないか検討していきます。
磯野氏:
現行システムは,当然,何かしら意味があって仕様を決定したはずです。あるメリットを出そうとすると同時にデメリットも生まれるので,そのままにしておいたというものもあるでしょう。そういうものにも,この機会にいったんメスを入れてみようというわけです。
渡辺氏:
例えば,おしゃれ装備はプレイヤーさんからすれば壊れないほうが嬉しいわけです。しかしアイテムが壊れずにひたすら蓄積してしまうと,ゲーム内の経済がいつか破綻します。だから壊れる仕様にしているのですが,今回,まずはその常識の枠をいったん外して,もう一度ゼロから考えなおしてみようという試みです。結果として,変更する部分もあれば,現状維持を選択する部分も出てくる前提ですね。
新章の実装に先駆けた事前テストを7月から実施。初回テスター抽選は,なんと1名だけ!
4Gamer:
さて,新章は10月実装と期日がありますけれども,何かその間の予定はあるのでしょうか。
春田氏:
はい。まず,5月31日(※インタビューは5月13日)に,新章の特設サイトが公開されます。ほぼ毎週更新して,段階的に新章の情報を提供していきます。また携帯電話のメールアドレスを登録していただければ,更新情報が配信されます。
そして一通り情報の公開が終わったら,7月からアップデートに先駆けた事前テストを実施します。
4Gamer:
それは,このインタビューで話してきた内容全般をカバーするものですか?
春田氏:
戦闘システムが中心となります。今のところ,2週間に1回程度,全5回を予定しています。
渡辺氏:
無茶してほしいとはいってますけれども,これまでのコンチェルトゲートも大事にしたいので,そこは慎重に(笑)。
春田氏:
また今回,ちょっと特殊な試みをしていまして,第1回目のテスターは,抽選で一人しか選ばないんですよ。
4Gamer:
それだと,テストにならないんじゃないですか?
春田氏:
ええ。そこで抽選以外でも,運営側からゲーム内でアクティブに活動しておられるプレイヤーさんにお願いして,テストに参加していただきます。運営/開発スタッフも参加しますから,1回目の事前テストでは総勢30〜50名ほどになる予定です。
そこで出た意見をもとに改善したバージョンを,今度はもっと多くの人に体験していただきます。そうやって規模を拡大して,最終的には2000人ほどに参加してもらう見込みです。またテストには抽選だけでなく,テスターによる口コミを通じても参加できるような仕組みを考えています。
4Gamer:
ここでもコミュニケーションを重視するわけですね。
それとは別に,テスターの中から希望者を募って,実際に運営・開発スタッフと顔を合わせてプレイしてもらい,直接,意見をいただくようなことも考えています。
こうした試みは,開発移管をきっかけに,プレイヤーさんと運営/開発の距離を縮めたいということを意図して企画しています。プレイヤーさんがゲームを続けていくにあたって,開発に意見や要望をいえるということを,テストを通じて体験していただけたら幸いです。
藤原氏:
事前テストは,実装前にプレイヤーさんから意見をいただける貴重なチャンスですから,無難な内容で終わらせたくないんです。ちょっと話題になるくらい,派手な修正や変更を加えてみたいですね。もちろん,その結果として批判が集中するかもしれません。ただ,「どこが変わったか分からない」みたいなものにはしたくないです。批判も含めて,プレイヤーさんには,お祭り騒ぎをしてもらえるような内容を目指します。
渡辺氏:
また専用のサイトを設置して,最初に選抜されたテスターさん達が,運営/開発と意見の交換ができるシステムを用意します。ほかのプレイヤーさんも,意見交換はできないけれども,そのやり取りを見ることができます。これも国産ゲームならではの取り組みだと思います。
今,ソーシャルアプリなどの新しい形のゲームが台頭してきていますが,そうした状況下でのMMORPGの存在意義は,こうやって運営と開発,プレイヤーが互いに協力しあって,中長期にわたり一つのゲームを作り上げていけることにあるのではないでしょうか。
4Gamer:
それでは最後に,コンチェルトゲートのプレイヤーと,4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。
MMORPGの開発は初めてですので,いろいろな意味で"やっちゃう"かもしれません(笑)。どうか,暖かい目で見守ってください。「新参者が来たから鍛えてやるか」くらいの気持ちでお願いします。とはいえ,もちろん我々は真摯にゲームを作っていきます。ぜひよろしくお願いします。
藤原氏:
私のモチベーションになっているのは,プレイヤーさんの要望に対し一つ一つ検討していき,それを汲み取ったシステムなどを提供した際のプレイヤーさんの反応を見ることです。その意味でオンラインゲームの開発は,私の理想に最も近い仕事です。なので,どんどん意見をいただければと思います。一緒にコンチェルトゲートを作っていきましょう。
渡辺氏:
プレイヤーさんと一緒に作っていくという意味では,開発者としてベテランであることよりも,先入観を持たずにプレイヤーさんの声に耳を傾けることのほうが大切な場合があります。それが今回の開発移管と,新章開始の根底にあります。運営移管のときも同じことをいいましたが,今回も"攻め"の移管です。
春田氏:
新章のスタートで新たなところに行きますし,新たなことをやります。ぜひ期待してください。また運営移管から1年経ちましたが,これからもプレイヤーの皆様とともに3年,5年,10年と続けていきたいと考えています。
4Gamer:
ありがとうございました。
しかし,運営/開発に携わるすべてのスタッフがそれを認識しているかというと,なかなか難しいところ。もちろん,データや経験としては知っているだろうが,実際のプレイヤー動向まで踏まえて他人に説明できる人は限られる。何となく「オンラインゲームはこういうものだから」「これで十分な利益が出るから」で終わらせてしまうことだってあるだろう。
その一方でコンチェルトゲートの運営/開発では,言葉は悪いが,かなりアナログな方法でプレイヤーの動向をリサーチしたり,あるいは半ば常識化していたシステムにメスを入れたりしていくという。なぜそんな面倒なことをするのかといえば,本インタビューで述べられてきた通り,角度を変えて眺めることで,ゲームに新たな風を吹き込むためだ。その機会を運営/開発の移管と重ねることで,ゲームを熟知していないスタッフの理解をも深めるという効果も期待できるだろう。コンチェルトゲートが長らくプレイヤーに支持され,新規プレイヤーも増えている理由が,このインタビューから読み取れたのではないだろうか。
新章「ローゼンベルク学園と7つの世界」特設サイト
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