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Access Accepted第795回:Summer Game Fest 2024はE3がなくなった今,どこに向かうのか?
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印刷2024/06/17 08:00

業界動向

Access Accepted第795回:Summer Game Fest 2024はE3がなくなった今,どこに向かうのか?

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 E3の無期限中止がアナウンスされ,ゲーム業界の夏のイベントの中心として成長している「Summer Game Fest」。今年は過去最大の再生数を記録し,今やゲーム業界にとって無視できない大型イベントとなった。現時点では,E3とは異なる雰囲気であるものの,良い面,悪い面のどちらも含めて,徐々にE3に近づいている印象も受ける。


夏の新作発表時期の重要イベントとなったSummer Game Fest


 この4年で一気に夏の恒例配信イベントへとのし上がった「Summer Game Fest 2024」が今年もオンライン配信され,今年後半から来年にかけてリリースされるであろう数々の作品が紹介された。その後日,今年で3回目となるオフラインイベント「Summer Game Fest 2024: Play Days」(以下,Play Days)も開催されている。まさに“ゲームフェス”と呼ぶに相応しい初夏の祭典にまで成長している。

ソーシャルメディア時代のイベントとして,今年ですでに4年目となる「Summer Game Fest」と,今年で第3回を迎えたメディア向けオフラインイベントの「Summer Game Fest: Play Days」。一般ファンへのアウトリーチ的な役目は,Steamで6月10日から開催されている「Steam Nextフェス: 6月エディション」が担っている
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 1995年以来,ゲーム産業の重要イベントであったE3(Electronic Entertainment Expo)の無期限中止が昨年にアナウンスされ,もはや夏のイベントと言えばSummer Game Festであり,今年はライブ放送終了後に過去最大となる350万回再生(一週間後までに約750万再生)を記録。オンラインを発表の場とするアクセシビリティの高さが今の時代にうまくマッチし,Xでのハッシュタグ数は100%アップになるなど大成功だったようだ。

 また,Summer Game Festに合わせて,MicrosoftによるXbox Games Showcaseをはじめ,Ubisoft EntertainmentやDevolver Digitalの番組,さらにはメディア企業によるFuture Game ShowやPC Gaming Showなど,E3時代から続くさまざまな配信イベントが数日間にわたって併催された。今年は新しく中南米地域のゲームを紹介する「Latin American Games Showcase」が加わっており,配信番組数は増加傾向にある。

 5月31日に開催されたPlayStationプラットフォームのショーケースである「State of Play」や,6月中に開催される予定の「Nintendo Direct」なども含め,とくにアメリカでは初夏にゲーム発表イベントが集中している。
 この理由として,経営的に第2四半期(4月から6月)はゲームの販売が少ないことから株価の下落を阻止するためにも景気の良い新作情報を公開しておきたい,マーケティング的に夏から新作情報で盛り上げて年末商戦までにしっかりと消費者にアピールしておきたい,そして消費者的な観点でも,アメリカではすでに夏休みに入っている6月は情報が伝わりやすいなど,複合的な理由が挙げられる。

 本連載では,E3の話題になるたびにマイナス面についても述べてきた。特定のゲームに話題が固まってしまう傾向にあるため,開発費やライセンス料をつぎ込んだゲームであっても注目されにくい状況が生まれてしまうこと,厳重なセキュリティ体制も必要な昨今ではイベント会場に支払う“ショバ代”が非常に高額になってしまうこと,何よりリリース直前の忙しい時期に開発リソースを割いてまでデモ作りを行わなければならないことなどだ。
 それでも,夏に発表の場は何らかの形で行わなければならないという,ゲーム企業にとっての切実なニーズが残されたままなのが,Summer Game Festの活況の理由であるのは間違いない。

Summer Game FestおよびThe Game Awardsのオーガナイザーとして知られるジェフ・キーリー(Geoff Keighley)氏。職分としてはジャーナリストであるが,誰かがやらなければいけないことをやり続けてゲーム業界をまとめている
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結局E3化し始めているSummer Game Festはどこに向かうのか?


 では,E3のマイナス面がSummer Game Fest 2024で解決されたかというと,そうではないように思う。過去最高の視聴者数を獲得したとはいえ,結局は“違った形のE3になりつつある”と言うことなのかもしれない。
 6月6日,エンターテインメントやファッション情報誌として知られるEsquireオンライン版が暴露記事を掲載したのだが,Summer Game Festの話題性の高まりによって,1分のトレイラーを公開してもらうのに25万ドル,1分半で35万ドル,2分なら45万ドル,そして2分半で55万ドルをスポンサー料として支払う必要があるとしている。

 もちろん,会場のレンタルから設備,人件費まで馬鹿にならないコストがかかっていると思われるが,複数のラインナップがある大手パブリッシャなどは,Summer Game Festの軒先を借りるには,余りにもコスト高になってしまう。さまざまな企業が,一歩引いた場所で自前のショーケースイベントを行い,より長いゲームプレイトレイラーや開発者のトークを公開するような形になっているのも頷ける。

イベントの高額化にともない,もともとはインディーゲームのショーケース的な側面が強かったSummer Game Festも様変わりし始めている印象だ。Play Daysのイベントスペース料は,ソファの前に4つの大型モニターを並べたブースが5万ドル,個室スペースが15万ドルだとEsquireが伝えている
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 ちなみに,単独イベントを配信しつつ,Play Daysのほうに出展している企業もある。例えばDevolver Digitalは,Play Daysでわりと大きな区画でいくつかの新作を紹介していた。Play Daysは,ストリーミング配信で紹介されたゲームを中心として,各メーカーがプレイアブルデモをメディア向けに公開するという,オンラインイベントに付随する形で行われるものである。
 ロサンゼルスのダウンタウンの外れにある,おそらく平時であれば週末を楽しむ若者たちがバーやカフェに集うのであろう,平屋や二階建てほどの建物が連なっている区画を丸ごと借り切るという趣向だ。ホテルのホールやコンベンションセンターの雰囲気とは異なり,移動時間や昼食時には日光を浴びてゆったりできるという,リラックスした雰囲気は参加者から好評に見えた。

 第3回目となる今年のPlay Daysは,ほぼすべての建物がフルに利用され,さらに前年までの2日間から3日間へと延長された。Sony Interactive EntertainmentやTencent(Level Infinity),カプコン,セガ,Electronic Arts,さらにはAmazon GamesやNetflixのようなビッグネームも参加し,このイベントの重要性も増してきているのを肌に感じる。
 ただ,昨年はPlay Days後に独自イベントを行っていたUbisoftとMicrosoftが,今年はPlay Days会期中に近隣のイベント施設でショーケースイベントを行っていたので,少ない人数で多くのゲームを紹介しなければならない我々ジャーナリストにとっては大変だった。

照明で真っ赤な画像になってしまったが,Ubisoftが「アサシンクリード: シャドウズ」や「スターウォーズ ならず者たち」のゲームプレイを公開したBelasco Theater。実際のゲームを見ると,やはりどちらも面白そうだ
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 毎年のように増えていくさまざまな配信,そしてPlay Daysのようなオフラインイベントも含めると,一連の初夏の催しの開催期間は,今やE3時代よりも長い。今年はロサンゼルス滞在期間が8日間にもおよぶという,かつてないほどの長丁場となり,もうどこに行ってもベテラン(中高年)的な扱いを受ける筆者としては,体力的・精神的な疲労がキツいのは確かだ。
 各国から参加する同業の人たちと話していると,E3に参加したことのない若い層も何人かいて驚くことも多い。逆に古くからの顔見知りからは,ゆったりとした場で取材できる反面,「E3の賑やかさや,まとまりが懐かしい」という声も聞こえてきた。業界のニーズから言っても,Summer Game Festはさらに成長していくと思うが,今後はどのようなイベントに形を変えていくのだろうか?

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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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