業界動向
Access Accepted第736回:リークによって,そのベールを“脱がされた”「グランド・セフト・オート」新作
2022年9月18日,人気ゲームシリーズ「グランド・セフト・オート」のファンフォーラムにおいて,ハッカーが入手したという「新作GTA」の90本,計50時間にも及ぶゲームプレイ映像がリークされた。翌日には,Rockstar Gamesがネットワークへの侵入によって情報が流出したことを認め,そのさらに数日後に容疑者が逮捕されている。リーク映像は大半が視聴できなくなっているが,ファンの間では次回作の話題で持ちきりだ。
Rockstar Gamesを襲った大規模リーク事件
現在までにシリーズ累計3億7000万本以上を売り上げている,オープンワールド型クライムアクション「グランド・セフト・オート」。その最新作にあたる「グランド・セフト・オート V」は,2013年のローンチから今年で10年目を迎えており,ライブゲームコンテンツである「GTAオンライン」がまだまだ現役とはいえ,新作を待ち望んでいるファンも少なくない。
2021年頃には,次期タイトルにあたるコードネーム「Project America」について,「バイスシティ(マイアミ)が舞台になる」「女性が主人公」といったさまざまなウワサが上がっていた。また,2022年2月には「新作を開発中である」ことが正式にアナウンス(関連記事)されている。それから公式なアナウンスはないが,東京ゲームショウ2022の最終日でもあった9月18日,GTAシリーズ最大のファンフォーラムとして知られる「GTAForums」(外部リンク)に,ハッカーを名乗る“teapotuberhacker”という人物が90本,総計50時間にもおよぶ,新作GTAのゲームプレイ映像を始めとするさまざまなアセットをリークさせた。リークされたもののほかに,GTA5と新作GTAのソースコードも入手していたという。
そして,その翌日となる19日には,Rockstar Gamesがネットワークに侵入されて内部情報が流出したことを認め,リーク情報は“本物”であることが明らかになったわけだ。
なお,22日には,英国の国家サイバー犯罪ユニット(National Cyber Crime Unit)とロンドン市警の連携によって17歳の容疑者が逮捕されている。この容疑者は,GTAのリーク事件を起こす数日前に配車・宅配サービス「Uber」に対するセキュリティ侵害を起こした犯人と同人物であったとのことだ。
リークされた映像は,ドライブやアクションシーンなどのアニメーションテストやゲームマップのレイアウト,そしてキャラクター同士の会話など,開発者同士がインターネット上でやり取りし,開発の進行具合をチェックするようなアセットとなっている。
おそらくコロナ禍のリモートワークにより,こうした情報が流出しやすい状態にあったと思われるが,The Guardian誌によると(外部リンク),Rockstar Gamesがビジネスチャットツール「Slack」でやり取りしていた,過去1年ほどの情報であったとされているようだ。
現在,Take-Two Interactiveはデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act/DMCA)を利用してリークされた映像の削除要請を懸命に行っているものの,ゲーマーたちがその内容を語り合うことまでは制限できず,ファンたちの間で「新作GTA」のゲーム内容についての話題は尽きない。
リークでベールを“脱がされた”「グランド・セフト・オート」新作
「新作GTA」のリーク映像には,マイアミと思われるランドマークのある風景や,“ジェイソン”と“ルシア”という2人のキャラクターがストリップクラブに入ったり,レストランを襲ったりするシーンも含まれている。男女がメインキャラクターになるという情報も,1967年の名作映画「俺たちに明日はない」で描かれたボニーとクライドにインスパイアされたというウワサ話と合致するものだった。
ミッション内容として描かれたストリップクラブの名前は「Malibu Club」で,「グランド・セフト・オート・バイスシティ」(2001年)をプレイした人には懐かしい店名だ。「新作GTA」はリメイクではないので,単なる過去作品へのオマージュやリファレンスの類であると思われるが,「North Point」と呼ばれる地名もあるなど数十年後の「バイスシティ」という設定は十分にあり得るかも知れない。
リーク映像には,マップ座標が表示されていたこともあり,フロリダ州ほぼ全域が描かれていることがわかっている。東海岸側に連なる都市や中央の湿地帯,さらに“フェアリーワールド”と名付けられたテーマパークや宇宙センターなども存在するようだ。コードネームの「Project America」が示すように,「ローンチ後にアメリカ中の都市がDLCで追加されていく」というのは今回のリーク情報とは関係のないウワサだが,もし本当であれば非常に夢のある話だ。
そんな「新作GTA」を開発中のRockstar Gamesについては,2020年4月に掲載した連載記事「第644回:ダン・ハウザー氏が引退したRockstar Games。その歴史を振り返る」(関連記事)でも紹介している。創業以来開発チームを率いたダン・ハウザー(Dan Houser)氏やレズリー・ベンジーズ(Leslie Benzies)氏が退職し,2000人とも言われる開発メンバーが1つの作品に従事する,ある種の職人芸とも思えるカルチャーを維持しつつも,その古い体質からくる慢性的な超過労働などの内部問題の改善に努めてきた。
上記の連載記事内では,「今,GTA6の開発をやってなくてありがたい。我々がやりたいことに怒る人も今のご時世では多そうだし,いったい何をしていいのか分からない」というハウザー氏のコメントを引用しているが,実際には2015年頃から開発は始められていたようなので,前作の開発期間からすると,そろそろ開発終盤に差し掛かっていると思われる。
今回の情報リークにあたり,Rockstar Gamesは公式ツイッターにおいて,「このような形で次回作の情報が皆さんに伝わってしまったことを残念に思います。次回作への取り組みはこれまで通りに進めていき,皆さんの期待を上回るような体験をお届けすることに努めていきます。」とコメントし,次回作の正式な情報は準備ができ次第,適切な形で紹介していくとしている。
Tweetの文面は冷静な雰囲気であるものの,ソースコードまで流出したとすると,その被害は計り知れない。Rockstar Gamesには現在進行形でさまざまな対応が求められているはずだ。
発表前からお騒がせ状態になっている「新作GTA」だが,今回のハッキング事件の行く末を注視しつつ,予定どおりの発表とリリースに期待しておきたいところだ。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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