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剣と魔法の博物館 モンスター編 / 第101回:コボルト(Kobold)
ファンタジーをテーマにしたRPGには,ゴブリン,オーク,コボルトといった,定番ともいえる雑魚モンスターがいる。ファンタジーRPG界の3大雑魚キャラともいえる彼らは,非常に弱いことから注目されず,あまり話題に上ることはないが,ルーツを掘り下げてみると,なかなか興味深い存在である。すでにゴブリンとオークについては紹介しているので,今回はコボルト(Kobold)について紹介してみよう。
一般的なコボルトは,犬の頭を持つ人間型の種族とされている。背丈は人間よりも小さく,低い知能しか持ち合わせていない。強そうな冒険者などを見ると,一目散に逃げていくこともしばしばだ。集団で行動するというやっかいな習性もあるが,スリープなどの魔法がよく効くし,ちょっと派手な攻撃魔法でも見せれば,コボルトたちは大混乱に陥いり,戦線は崩壊するだろう。そうしたことから,ひよっこ冒険者であっても扱い易い相手といえる。
コボルトを語るうえで外せないのが,TRPGの王道,「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」。この作品におけるコボルトの容姿は,小型で犬のような頭を持つデミヒューマンと紹介されているのだ。初期のコボルトには明確なイメージがなかったものの,「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」の影響は大きく,のちのコボルト像に大きな影響を及ぼした。さらに「ウィザードリィ」を始めとするRPGでも,犬頭のモンスターというイメージが広まり,今ではコボルト=犬頭といいうのが定番となっている。
コボルトというネーミングは,ギリシャ語で「子供」を意味する「コバロス」(Kobalos)からとも,ドイツ語で「部屋の妖精」を意味する「コーベンホルト」(Kobenhold)からきているとも言われてれいるが,実際のところは定かではない。
コボルトに関する民間伝承が多い場所といえばドイツだが,それらの伝承では鉱山などに住み着くいたずら好きの妖精とされており,鉱山内で発生する怪奇現象などは,すべてコボルトのせいだと言われる。また別の伝承では,コボルトはいたずら好きな妖精であるが,人間の手伝いもするとされ,お礼にミルクを与えると,良好な関係が築けるという。
ほかにもさまざまな伝承が残されているが,ゴブリンとの類似点が非常に多いため,同一種として扱うこともあるようだ。ある意味,ドイツ版のゴブリンがコボルトというわけである。ただし,この説で話を進めると,多くのイタズラ好きの妖精がゴブリンになってしまうので,ここでは別種族として考えたい。
数々の伝承にいえることだが,とにかくコボルトはイタズラ好きである。そうしたイタズラの中で興味深いのが,コボルトが銀を盗み,代わりに粗悪で危険な鉱物を置いていくというものだ。今でこそ判別できるようになったが,昔は輝銀鉱(きぎんこう)と間違えて,銀色に光る鉱石を持ち帰ってしまった人が多かった。精錬しても銀にはならなかったり,ヒ素などの有害な物質が含まれていたりして,ひどい目に遭う人もいたという。これらの被害を見た昔の人々は,コボルトがイタズラをして偽の銀鉱を作り出したと考えたようだ。そして,精錬しても銀にはならない銀色の鉱石を「コバルト」とネーミングしたという。
なお,現在ではコバルト鉱から青色着色顔料が採れることから,コバルトは単なる粗悪な金属とは言えなくなっている。粗悪な金属だと思わせておいて人々をがっかりさせ,実は有益な金属だったというのも,コボルトのイタズラなのかもしれない。
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