インタビュー
フライトシューティングMMORPGとは一体?「エースオンライン」を運営するアラリオにそのあたりを詳しく聞いてみた
本作のサービスを提供するアラリオにお邪魔し,サービス推進チーム・マネージャーの島吉 誠氏とゲームプロデューサーのユ・ヒョンジュン氏,そして運営スタッフの石田 耕大氏と同じく森 麻砂美氏に話を聞いた。
クリックゲームの簡単操作とフライトシューティングの爽快感を併せ持つ,れっきとしたMMORPG「エースオンライン」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,エースオンラインはフライトシューティングMMORPGを謳っていますが,実際どのようなゲームなのか,あらためて聞かせてください。
本作はフライトシューティングをモチーフにした,SF寄りの独自の世界観を持つMMORPGです。日本のオンラインゲーム市場には,多数のMMORPGが存在しますが,いわゆる剣と魔法のファンタジーをテーマにしたものが多いですから,少し毛色が違います。
4Gamer:
ええ,そういう意味でエースオンラインは少し変わった存在として注目を集めている感があります。
島吉 誠氏(以下,島吉氏):
システム的には,MMORPGそのものです。プレイヤーはフィールド上で「ギア」と呼ばれる飛行体を操作しますが,都市マップの中では人間型キャラクターに変わります。そこでは,プレイヤー同士でチャットしたり,あるいは個人商店を出したりといったようなコミュニケーションを取ることができます。
4Gamer:
なるほど。ただ,一口にMMORPGといってもいろいろありますよね。例えばプレイヤーの成長システムにしても,レベル制やスキル制などがあります。もう少し詳しく教えてください。
ユ氏:
本作はレベル制のMMORPGになります。プレイヤーはレベルに応じてスキルを習得していきますし,またパーティやギルドの概念もあります。このあたりは,MMORPGをプレイした経験があれば,自然に慣れ親しむことができるでしょう。
要するに,戦闘時に操作するキャラクターが,人型ではなく飛行体であるというだけなんですよ。そして戦闘で経験値を取得してレベルアップしていきます。またクエストも充実していまして,ストーリーに沿って次々にクリアしていくだけで,一定のレベルに達します。
そういった中で取得した原材料を加工し,武器を作ることもできます。武器はエンチャントもできますので,さまざまなオプションを付加した独自のものを作れます。
加えて,二つの勢力に分かれて大規模戦闘を行う勢力戦や,いわゆる攻城戦にあたる「拠点占領戦」「アドバンスベース戦」もあります。
都市には司令塔が存在し,勢力の指導者を選出する選挙や母船戦などの日時を設定できる | |
アドバンスベース戦では,上記SSそれぞれで右側に見えるプロテクターを破壊することで,そのアドバンスベースの所有権が得られる |
4Gamer:
まさに一般的なMMORPGの要素はすべて用意されているわけですね。戦闘システムなどについても,MMORPG的なものになるのでしょうか?
そうですね,戦闘も普通のMMORPGと大きくは変わりません。まずギアにはスキルの系統に基づいた四つの種類があります。それぞれ攻撃特化,万能タイプの爆撃機,回復/補助系,そしてタンク形態(飛行は当然可能)で地上から遠距離攻撃を行うタイプという特徴を持っています。そして「編隊」という形でパーティを組み,クエストをこなしたり狩りをしたりするわけです。
ユ氏:
狩りに有利なギアもあれば,大規模戦闘で能力を発揮するギアもあります。
4Gamer:
そういったギアは,状況に合わせて乗り換えられるのですか?
ユ氏:
いえ,1体のプレイヤーキャラにつき1種類のギアしか使えません。ギアは一般のMMORPGにおける職業と似た概念です。ただ,一つのアカウントで最大3体までプレイヤーキャラを作成できますので,それを利用したギアの使い分けは可能です。
4Gamer:
なるほど。別のギアを使いたければ,新規にプレイヤーキャラを作成しなければいけないわけですね。
それでは操作についてはどうでしょうか?
島吉氏:
非常に簡単です。攻撃も,一度ロックオンしてしまえば,ミサイルは勝手にホーミングしてくれます。また大きな特徴として,高い爽快感が挙げられます。世界観がSF的ですから,ギアも現実ではあり得ないような挙動をします。一般的なMMORPGとフライトシューティングのどちらと比較しても,操作していて非常に楽しいんじゃないでしょうか。
ユ氏:
フライトシューティングはそもそも機体の安定を維持することが難しかったりしますが,エースオンラインではそんなことを考えなくても,簡単に操作できるようになっています。
4Gamer:
先ほど,狩りという単語が出てきましたが,プレイヤーはどういった立場で何と戦っているのでしょうか。
島吉氏:
プレイヤーは政府側の「バイジェニュー」か,反乱軍組織「アーリントン」のいずれかの勢力に所属します。その二大勢力の対立がストーリーの核を成しており,一般のMMORPGにおけるモンスターは基本的に敵勢力のギア(NPC)という扱いになります。ただクエストで,第三勢力や未知のモンスターが登場することもあります。
4Gamer:
なるほど。では,プレイヤーは一度勢力に所属したあと,反対勢力に移籍できますか?
島吉氏:
いいえ。一度勢力を決めたら,そのアカウントのキャラはすべて同じ勢力に所属します。そのあたりは,不正行為防止のために徹底しています。
最大の売りは数百人の規模で繰り広げられる対人戦「母船戦」
それではエースオンラインの最大のポイントを教えてください。
島吉氏:
二大勢力間で行う勢力戦です。その中でも「母船戦」は,本当に大人数同士がぶつかり合う,迫力のあるものになります。
4Gamer:
具体的にどれくらいの人数が参加できるのでしょうか。
ユ氏:
サーバーの限界まで無制限です。海外では100人対100人くらいの規模で行われる場合が多いですが,日本ではさらに高性能なサーバーを使っていますので,計算上,それ以上でも大丈夫です。
島吉氏:
理論上は,数百人対数百人の規模にも耐えますよ。
4Gamer:
その母船戦はどういった流れで行われるのですか?
ユ氏:
まず各勢力の指導者が,いつ母船戦を起こすかを決定します。
島吉氏:
最初から説明しますと,プレイヤーはレベル11に達した時点でいずれかの勢力に所属しなければなりません。各勢力では月に一度,所属プレイヤー全員の投票によって「指導者」を選出します。指導者は自ら指名した副指導者らと協力し,母船戦を含めた勢力戦を指揮することになります。
4Gamer:
なるほど。指導者は,具体的にどのような形で指揮を執るのでしょうか?
島吉氏:
指導者には,専用の全体チャットが与えられ,同じ勢力のプレイヤー全員に指示が出せます。母船戦を例に説明すると,指導者は敵陣マップに設置されたワープゲートを活性化でき,そこに戦力を集中させる指示を出したり,逆に敵が自陣マップで活性化させようとしているワープゲート周辺に防衛線を張ったりといった指示を出すわけです。
4Gamer:
そういった戦況は,どのように把握すんでしょうか。例えば指導者専用のレーダーがあるとか?
テキストベースの情報になります。「どこそこに敵が何機侵入」といった情報が,指導者と副指導者に与えられ,それをもとに指示を出していくわけです。
島吉氏:
勢力の異なるプレイヤー間ではまったく会話を交わすことができないのですが,指導者同士のみ「ささやきチャット」でのやり取りができます。
ここで話を戻しますと,指導者同士がチャットで駆け引きを行いながら,母船戦の日程を決定するんですよ。
4Gamer:
というと,母船戦は両勢力の合意の上で行われるわけですか。例えば,相手が油断した隙を突いて一方的に仕掛けるようなことはできないわけですね。
島吉氏:
ええ,基本的に両者が合意して行います。
ユ氏:
そのほうが,お互い面白いですから。
4Gamer:
いずれかの母船が沈んだら決着が付くというルールでしょうか?
ユ氏:
そうです。ただ母船自体,自動防衛機能を持っています。いわゆるレイドボスのような存在ですので,そう簡単には沈みません。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,母船戦に参加するにはどれくらいのレベルが必要ですか?
ユ氏:
レベル40以上になります。レベル40までは,クエストを通じて段階的にゲームシステムを習得できるようなバランスになっています。
島吉氏:
補足すると,レベルに応じて進入できるマップが増えるのです。レベル40にならないと,そもそも自分から母船に近づくことができません。
4Gamer:
つまりレベル40からが“第二の本番”といった感じでしょうか。そのほか,ゲームに関して何か公開できる情報はありますか?
島吉氏:
すでに発表していますが(関連記事),今回日本向けにローカライズするにあたって,オペレーター「ジーナ」のボイスを声優の田中敦子さんにお願いしました。田中さんは「攻殻機動隊」の草薙素子役をやっておられていますから,同じくSF的な要素を持つエースオンラインとも非常にマッチしていると思います。ジーナはチュートリアルから登場しますので,最初にログインした直後から田中さんの声を楽しんでいただけます。
4Gamer:
田中敦子さんのファンには嬉しいかもしれませんね。
島吉氏:
また,日本独自の仕様としてゲームパッドでの操作にも対応しています。
ユ氏:
これは本作において世界初の仕様です。ゲームパッド(アナログコントローラー)に対応したことで,そもそも簡単だった操作がより簡単になっています。
サービス開始直後は自然に選挙や勢力戦に馴染めるよう,GMがプレイヤーを誘導
4Gamer:
さて,積極的にインゲームイベントを行っていくという話を事前に伺っているのですが,具体的にどういったものを予定していますか。
基本的な方針として,何かしら限定アイテムを配布できるように考えています。やはりプレイヤーのみなさんは,限定アイテムに対する関心が非常に高いですから。
具体的なイベントの内容として,まずトライアルテストでは,いわゆるモンスター召喚を予定しています。またGMによるプレイのレクチャーなども行います。
4Gamer:
以降,オープンβテスト,正式サービスと続いていきますが,定期的に何か考えていますか?
石田氏:
はい。オープンβテストでは,プレイヤーが一定のレベルに達すると,便利なアイテムやレアアイテムがプレゼントされるようなものを考えています。正式サービス開始時期は未定ですが,そのときも何かしら限定アイテムを用意しようと考えています。
そのほか,まだ構想段階ですが,撃ち落とした敵機の数を競うようなイベントができないか考えているところです。また,都市には「アリーナ」というシステムがあり,最大16人でPvPが楽しめます。そこで,このシステムを利用した大会なども考えています。さらに以前担当していた「ドリフトシティ」の季節イベントの評判がよかったので,季節ごとのイベントも展開したいと思っています。
島吉氏:
実はドリフトシティの2008年夏のイベント(関連記事)は彼が企画して,非常にプレイヤーの評価が高かったんです。なので,きっとエースオンラインでも何かやってくれるだろうと,我々も期待しています。
4Gamer:
どのようなイベントが行われるのか,今から楽しみですね。ほかには,例えばMMORPG初心者に向けたイベントなどはどうですか?
イベントというよりは,コミュニティシステム関連の話になってしまうのですが,日本独自仕様として「ミッションマスターシステム」を導入しました。これにより,一人ではクリアできないミッションやクエストに関して,ほかの高レベルプレイヤーにヘルプを求めることができます。これを利用すれば,ゲームの進行を促進させるだけでなく,MMORPG初心者がコミュニティに参加しやすくなるのではないでしょうか。
4Gamer:
ヘルプ要請に応えた高レベルプレイヤーにメリットはあるんでしょうか。
森氏:
もちろん,専用アイテムや経験値が与えられるなどのメリットがあります。
とくにレベルが高くなると「一定時間内に敵を何機撃墜せよ」といったクエストが出てきます。一人または数人でクリアするには少々難度が高いですから,「ミッションマスターシステムを使って皆で一緒にやろう!」というように,コミュニティを活性化させる方向に誘導しようと考えています。
4Gamer:
なるほど。ところで月1回,選挙があるというお話でしたが,何か関連するイベントは予定されていますか? やはり最初の数か月は皆手探りでプレイしますから,指導者になるほど余裕のある人はいないように思います。
島吉氏:
さすがに最初のうちはGMを指導者に立てます。初期の勢力内コミュニティはある程度GMが介在して,よりよい方向へと持っていけるようバランスを取りますよ。
4Gamer:
それでは最後に直近のトライアルテストに向けて,参加者や4Gamer読者へのメッセージをお願いします。
島吉氏:
今回,アラリオの3本目のタイトルということで,これまでとは一味違ったものにするため準備してきました。楽しんでいただけたらと思います。
森氏:
エースオンラインは,女性の私でも簡単に操作できるゲームです。女性も含めて,より多くの人に楽しんでいただけるようなサービスを提供していけるよう考えています。
石田氏:
私がオンラインゲームを手がけるのは,以前の会社のタイトルも含めると,これで5本目になります。経験を活かし,これまでよりも優れたイベントを企画していきますので,ぜひ参加して楽しんでください。
ユ氏:
アラリオのゲームは,一見シリアスですが簡単に楽しめるものばかりです。エースオンラインは戦争をモチーフにしたゲームですが,気軽にプレイできますので,ぜひ一度試してみてください。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
エースオンラインは北米やヨーロッパ,アジア各国など世界70か国以上で展開しているタイトルである。実績があるだけにプログラムの完成度も高く,またサービス開始にあたってのマニュアルも細部に至るまで徹底しているとのこと。今回のローカライズに関しても,既存の英語版と韓国版のクライアントを日本語に差し替えるだけでほぼ動作する状態になっており,今後のアップデートも順調に進む見込みだという。
また,上記のコントローラ対応などのほか,何か日本独自展開があるのかインタビュー後に聞いてみたところ,ギアの外見やイベント限定アイテム/モンスターなどにも柔軟に対応でき,いろいろ企画している最中とのこと。戦闘でもロボットアニメ調のエフェクトを採用するなど,雰囲気を損なわない程度の遊び心をどんどん入れていくそうだ。まだ未定ではあるものの,例えばSF系人気アニメとのタイアップなども視野に入れているような口振りだった。
エースオンラインは,アラリオがサービスを提供する3本目のタイトルとなる。これまでの経験を踏まえ,ティザーサイトではイメージを優先的に展開したり,あるいはゲーム中のボイスに著名な声優を起用したりと,入念な準備を持ってサービス開始に臨んでいる。ゲームの内容自体はもちろんだが,パブリッシャとしての運営手腕の成長ぶりにも期待したい。
(――1月22日収録)
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