インタビュー
「Alliance of Valiant Arms」トップクラン DeToNatorの対談企画第2弾。パンクラスの川村 亮選手,石渡伸太郎選手,ISAO選手に“プロ”の真髄を聞く
第11代ミドル級キング・オブ・パンクラシスト 川村 亮選手 |
第2代バンタム級キング・オブ・パンクラシスト 石渡伸太郎選手 |
第5代ライト級キング・オブ・パンクラシスト ISAO選手 |
2013年2月,日本代表として世界大会「Alliance of Valiant Arms International Championship 2013」に臨んだDeToNatorは,惜しくも優勝を逃した。しかし,その後,5月に行われた国際エキシビションマッチでは海外の強豪クランを撃破しており,再び世界の頂点を目指す機運が高まっている。
そこで,ゲームオンのプロデューサー 井上洋一郎氏がセッティングしたのが,競技は違えど同じく世界を相手に戦うプロフェッショナルとの対談だ。DeToNatorのエース Darkよっぴー選手と,同クランのマネージャーを務めるMaxJam氏は,この対談から何を得るのだろうか。
ディファ有明で開催されたパンクラス主催興行の終了直後,リング上にてゴングは鳴らされた。
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プロとアマチュアの違いとは
井上洋一郎氏(以下,井上氏):
本日はよろしくお願いします。たったいま試合が終わったばかりで,まだ興奮しているんですが,そのリング上でインタビューということで,とても緊張しています。
川村 亮選手(以下,川村選手):
なかなかリングに上がる機会はないですよね。血の跡も残っていますし(笑)。こちらこそよろしくお願いします。
井上氏:
まずは自己紹介をさせてください。我々が運営している「AVA」は,各国に多くのプレイヤーを抱え,世界大会も盛んに行われているオンラインゲームです。
川村選手:
すごいですね。その世界大会では,どこのチームが強いんですか?
井上氏:
今は韓国が強いですね。若いプレイヤーが多く,徴兵制でメンバーが入れ替わっても,やっぱり強い。非常に層が厚いです。
日本のプレイヤーはアマチュアとして活動していますが,彼らに追いつき追い越すために,プロフェッショナルを目指していきたいと考えています。そこで,世界と戦うプロ格闘家の皆さんと,日本代表のDeToNatorによる対談を企画しました。
Darkよっぴー選手:
パンクラスの大会を観戦させていただいて,試合はもちろんですが,観客を沸かせるコメントに強いプロ意識を感じて圧倒されました。僕達には足りない部分だと思います。
選手によって得意不得意がありますので,まったくマイクを持たない選手もいますが,要は自己プロデュースの意識です。アマチュアだったらいいんですが,プロは「何か」を見せてお金をもらうわけですから,それを各自が考えなくてはいけない。しゃべらないなら,ひたすらしゃべらないことで個性をアピールできればいいんです。「強さ」だったり,「キャラクター」だったりといった,魅せるものがないとプロとは言えないですよね。
プロである以上,「勝つ」という結果が必要なのは当たり前ですが,ずっと勝ち続けられるのは世界でも一握りしかいません。結果を追い求めながら,自分なりの見せ方や,応援してくれる人に対してアピールができるかを考えることも重要です。
Darkよっぴー選手:
今日も川村選手の「引退を懸けて戦う」というマイクアピールで,会場が大いに沸きましたね。
※9月29日に行われるパンクラス20周年記念大会で,川村選手と高橋義生選手の対戦が決定。この試合は高橋選手の引退試合だが,川村選手は「僕が負けたら,引退したほうがいいと思う」とリング上で意気込みを語った。
川村選手:
アドリブです。久しぶりにリングに上がったので,緊張しちゃいました(笑)。ISAO選手や石渡選手みたいに強くてカリスマ性があれば,試合だけでも納得してもらえるんですが,僕みたいなタイプはしゃべることでプラスαが必要なんですよ。
最近,海外で2試合(韓国とシンガポール)戦ってきたんですが,ホームリングで戦うのとは雰囲気が全然違います。その中で,いかにして観客を味方にするのかは,とても大事だと思います。
井上氏:
プロとして観ている人を意識するということですね。
川村選手:
でも,アピールを意識しすぎて負けたら元も子もない。微妙なラインで難しいところです。
MaxJam氏:
DeToNatorとしても,スポンサーを得て,チームが「戦う集団」になってきたところです。次の段階として,ようやく選手達が「魅せる」ということを意識し始めるようになりました。
同時に,プレイヤー人口を増やすための活動も重要と考えていて,そうしないと先を見据えたときに成り立たないと思っています。
川村選手:
そのあたりはパンクラスも同様で,アマチュア選手の指導や拡大に力を入れています。ジャンルは違いますが,同じような課題を持っていますね。
MaxJam氏:
それでは,プロとして勝つために必要だと思われていることを教えてください。
ISAO選手:
自分は,とにかく一生懸命やるというだけです。
Darkよっぴー選手:
それは,練習を?
ISAO選手:
もちろん練習が大事なんですが,私生活も含めてですね。私生活で手を抜いていると,練習が疎かになるし,試合でも負けにつながると思っています。格闘技だけでなく,人間的に土台からしっかりしていかないと,もし勝っても惜しいところまでしか行けないかなと。常に格闘技のことを考えています。
Darkよっぴー選手:
対戦相手のことは,よく研究されるんですか。
ISAO選手:
ある程度はします。どういうタイプなのか,どんなクセがあるのかといった情報を入れますが,細かい対策を立てて試合に臨むほうではないですね。いかに自分のいいところを出せるのかが大事だと思っています。
石渡伸太郎選手(以下,石渡選手):
自分は対戦相手の試合映像をよく見ますね。そのうえで自分の映像も見直しながら,相手に勝っている部分を探して,何をぶつければ勝てるのかを研究します。
Darkよっぴー選手:
反対に,自分のファイトスタイルが相手からどう見えているのかは意識するものですか。
石渡選手:
それも自分を客観視することで,相手だったらどう来るのかを予測します。さらに,そのうえをいくための練習を考えるようにしています。
井上氏:
パンクラスの中には,UFCを始めとする海外のリングで戦うことを目指す選手がおられると思います。日本のAVAプレイヤーも世界チャンピオンを目指しているところでして,世界と戦うためにどのような努力をされているのでしょうか。
川村選手:
パンクラスとしては「世界標準」というスローガンを掲げて,もう一年以上になります。最終的には選手個人の意識によるので,いろいろな道があっていいと思いますが,海外で戦いたい選手には団体として積極的にサポートできる体制を強化しています。
MaxJam氏:
ISAO選手は,UFC参戦を断ったことがあると聞きましたが,それはなぜですか?
ISAO選手:
まだ自分が納得できるタイミングじゃなかったからですね。自分なりのパンクラス愛がありますので,今はここで戦い続けたいと考えています。ただ,海外の試合はよく見ていますし,いつかは出たいという思いはあります。自分も納得して,観ている人も納得してもらえる時が来たら,いろいろと考えたいと思います。
石渡選手:
海外は2回練習に行ったり,試合の映像を見たりして,ずっと世界を意識して戦ってきました。でも,その前にまずは日本一になろうと。
この前の試合で負けてしまったので,また一からやり直しなんですが(苦笑)。
なぜ戦うのか,戦い続けられるのか
MaxJam氏:
AVAの大会は,5人でチームを組んで戦います。パンクラスの皆さんは,1対1の戦いをされるわけですが,仲間やチームといった意識は強いのでしょうか?
川村選手:
そうですね。所属ジムはチームと同じですから,一体感は強いです。とくに,ISAO選手が所属する「坂口道場一族」は,家族も同然ですよ。
ISAO選手:
ジムの仲間は常日頃,一緒にいて,皆が理解し合っている関係です。
川村選手:
全員が信頼するボスがいるから,いい関係性が築けていると思うんです。AVAのチームも先頭に立って皆を引っ張るリーダーがいないと,うまく戦えないですよね。
Darkよっぴー選手:
まさにそのとおりです。
MaxJam氏:
それでは,川村選手にとってチームをまとめる効果的なコミュニケーション術とは?
川村選手:
うーん,皆で酒を飲むことかな(笑)。
一同:(笑)
MaxJam氏:
実はDeToNatorのメンバーも,ちょうど関東に集まり始めていて,そういった機会を設けようと考えていたところなんですよ。インターネットでつながれるとはいえ,強くなるためにはコミュニケーションを図って,本当の意味でチームにならなくてはいけない。でも,そこにたどり着くまでには時間がかかります。あと,若い世代にはお酒によるコミュニケーションが苦手な子が多くて,難しさを感じています。
井上氏:
パンクラスの選手はさまざまなジムに所属していますが,異なるジムの選手同士でも交流の場は多いのでしょうか。
川村選手:
ジムによって違いはありますけど,多いと思いますよ。今の選手はストイックなので,飲む時は飲む,飲まない時は飲まない,ときっちり切り替えができていますね。
Darkよっぴー選手:
試合を重ねていくと,勝つこともあれば負けることもあると思います。負けてしまったときに,それでも高いモチベーションを維持して,練習を続けられる秘訣があれば教えてください。
川村選手:
やっぱり目標があるから練習をするし,リングに上がって戦えるのだと思います。
Darkよっぴー選手:
「勝てないから,辞めたい」と思うことはありませんか?
川村選手:
辞めたいというか,本当のことを言えば,リングに上がるのは怖いですよ。できることならば上がりたくないけど,自分を待ってくれている人がいて,喜ばせなきゃいけないと思うから戦うことができます。僕の場合,「自分は期待されている」という勘違いからスタートした格闘人生なので。勝手な義務感を持っているから,怖いはずのリングにも上がれます。気づいたら「アレッ,そんなに期待されてなかった」という気がしますけど(笑)。勘違いも力になるなら,大事だと思います。
Darkよっぴー選手:
ISAO選手はどうですか。
ISAO選手:
ふがいない試合をしたときは,最初にふてくされるところから始まりますね。
川村選手:
ふてくされるの?
ISAO選手:
「なんでできないんだろう?」と自分自身が嫌になって,腹が立ちます。それでも良かったところ,悪かったところを見直し,少しずつ消化したり整理していくことで,次の練習に活かしていくようにしています。
川村選手:
それはすごい。偉いと思う!
ISAO選手:
いや,ちゃんとできているかどうかは分からないですけど……。自分ができなかったこととか,結構考えるほうだと思います。
Darkよっぴー選手:
反省は大事ですよね。
それでは,石渡選手はいかがですか。
石渡選手:
試合前の減量やプレッシャーで苦しくなってくると,バイクに乗っているときに「このまま事故で死なないかな」と考えてしまうくらいに追い込まれます(笑)。こういう弱虫な自分を変えたいと思いながらやってきたんですけど,最近,気づいたのは「好きだからやってるんだな」と。自分は,この気持ちが一番大きいですね。あまり負けてばっかりだと,嫌いになっちゃうかもしれないですけど。
MaxJam氏:
残り時間が少なくなってきました。最後に,皆さんの今後の抱負を聞かせてください。
川村選手:
1回の失敗が命取りになる戦場で戦っている皆さんと交流ができて,まだまだ僕らは甘いなと感じました。個人としてはもっと高めていけると思うので,一つ一つの試合を大事に戦っていきたいですね。
ISAO選手:
自分が試合で勝つことや,頑張る姿を見せることで,格闘技の世界を盛り上げたいです。
石渡選手:
個人の目標は,日本一になること。日本で一番強い男になってから,世界に出ていきたいですね。
「Alliance of Valiant Arms」公式サイト
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