インタビュー
サービス開始から足掛け4年,「MHF」は大型アップデート「フォワード.1“襲来,双極の脅威”」で新たなステージへ。運営プロデューサー・杉浦一徳氏へのインタビューを掲載
サブタイトルの名称を変更し,ナンバリングもリセットされたこのアップデートでは何が変わり,今後はどのように展開されていくのか。その意図を「MHF」運営プロデューサーの杉浦一徳氏に聞いてきた。また,毎回恒例ではあるが,シーズン10の振り返っての話も聞いてきたので,プレイヤーは最後まで目をとおしてほしい。
「フォワード.1 “襲来、双極の脅威”」プレビューサイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,今回から大型アップデートのサブタイトルを,“シーズン”から“フォワード”に変えた理由を聞かせてください。
「MHF」も,もう4年近くサービスを続けていますから,いろいろな意味で保守的な雰囲気がどうしても出てきてしまいがちです。それはスタッフに限った話ではなく,長らく遊んでいただいているお客様にもあり得ることではないでしょうか。
我々としては,このままアップデートを続けていくと,どこかで保守的な思考だけにとらわれてしまうかもしれないと,以前から少しずつ気にしていたんです。そこで,シーズン10の次という区切りのいいところで,心機一転し,大きな挑戦をしようという意味を込めて,アップデート名称を“フォワード.”に変更しました。
4Gamer:
“フォワード.”という言葉を選んだのは,どのような理由からですか?
杉浦氏:
まず分かりやすい言葉であること,そしてメッセージ性を意識しました。
“前進する”というメッセージを掲げて,それを実現していくのは,「言うは易く,行なうは難し」といわれるように,決して簡単なことではありません。しかし私達には,お客様にご迷惑をおかけしながらですが,この4年近くの間,有言実行で「積極的なアップデートを短期間の間隔でやります!」という部分もがんばってきたという自負があります。
そういう意味において,“前進する”という言葉もスタッフの綺麗事で終わらせることのない,お客様にもきちんと響く言葉なのではないかと考え,この言葉を選びました。
4Gamer:
それでは今回,「MHF」はどのように前進するのでしょう?
杉浦氏:
特設サイトで謳っているとおり,ボリュームが過去最大級というのは間違いないです。アップデートの目玉である新モンスターの「ルコディオラ」をはじめとしたコンテンツ,武具の大量追加,リファイン項目など,至るところでさまざまな挑戦をしています。
ただ,大変申し訳ないのですが,東北地方太平洋沖地震の影響で,デバッグ作業に遅れが出てしまったため,今回のアップデートは,3回に分けて実装させていただくことになります。
実は,フォワード.1のアップデート自体を延期しようかという話もあったのですが,こういうときだからこそ可能な限りスケジュールを守って,元気なところを見せましょうと判断しました。
4Gamer:
実装のスケジュールはどのような予定になるんでしょうか。
杉浦氏:
大半の要素は4月20日のアップデートで実装されるのですが,一部のコンテンツについては,5月11日と6月末に分けて実装する予定です。何がいつの実装になるかは,公式サイトで随時発表していきます。
“極”がキーワードとなる古龍種「ルコディオラ」。人気の特異個体モンスターも6体追加
4Gamer:
フォワード.1で実装される新モンスター「ルコディオラ」は,どのようなモンスターになるのでしょうか?
ルコディオラは,「MHF」初のオリジナル古龍となります。
アップデート実装後に新鮮な気持ちでプレイしていただきたいので,モンスターのギミックはお話しできない部分もあるのですが,4月1日にプレビューサイトで公開するPVを観ていただければ,なんとなくイメージはつかんでいただけるかと思います。
ヒントは“極龍”という二つ名と,「フォワード.1」のサブタイトルに入っている“双極”という部分ですね。
4Gamer:
できれば,もう少しヒントをもらえませんか?
杉浦氏:
ルコディオラは,ちょっと属性が分かりにくくなっているので,“極”の文字が意味するところに着目してもらえればと思います。あとはPVで確認できる戦闘シーンで,ルコディオラの攻撃から,いろいろと想像していただければと。
ほかには,これまでの古龍だと,クシャルダオラが風,テオ=テスカトルなら炎など,それぞれが象徴的な力を持っていたように,ルコディオラもそれに倣って,何らかの力を持っているという設定です。
ルコディオラをデザインするにあたって,注力した点や苦労したところはありますか?
杉浦氏:
当然,メインビジュアルとして映えるかどうかといった議論はありました。とくに古龍には,通常のモンスターとは別格の存在というイメージがありますから,それをどのように表現するかという面では苦労しました。
具体的には,説明なしにこれまでのモンスターと並べたときでも,「これが古龍だ」「かなり手強そうだ」と思ってもらえるようなデザインにするか,ということですね。
あとはどのモンスターでもそうですが,象徴的な力や属性に関連するビジュアルにするかという部分も重要です。古龍だと,これらの制約がほかのモンスターよりも強くなるというところでしょうか。
4Gamer:
ルコディオラのクエストは,どのハンターランク(HR)帯から挑戦できるんでしょうか?
杉浦氏:
下位がHR22以上,上位がHR71以上,そしてHR100以上は剛種クエストになります。ただ下位クエストについては,今までの「MHF」オリジナルモンスター同様,対象HR帯よりは難度が高めです。HR22になりたてで装備が整っていないハンターだと,かなり苦戦すると思います。
4Gamer:
ルコディオラの素材から作れる武器・防具もあるんですよね?
もちろんあります。防具の「ルコシリーズ」は,今回はFまで強化できます。Fシリーズ防具の中でも,いい性能の部類に入っていますよ。
4Gamer:
ルコディオラは4月20日のアップデートで実装されますか?
杉浦氏:
はい,それはもちろんです。下位クエストのルコディオラを4月20日に,以降,剛種クエストまで順次配信していきます。
4Gamer:
今回,新モンスターを飛竜種などではなくあえて古龍としたのはなぜでしょうか?
杉浦氏:
古龍の新モンスターを出そうという話は以前からあったんですが,ただ漠然とアップデートで出すのでは芸がないので,どのタイミングにするかという議論が付きまとっていたんです。
今回,フォワード.1という区切りのアップデートということもあって,セットにすれば分かりやすし面白いんじゃないかということで決めました。
4Gamer:
ルコディオラはどのフィールドに登場するんでしょうか?
フォワード.1で新しく実装する,古龍迎撃戦用のフィールド「迎撃拠点」です。
既存の“戦闘街”のように,撃龍槍やバリスタなどのギミックがあるのはもちろん,ジャンプ台のような新しいギミックも加わっています。また,耐久度の減少に伴って施設が崩れる,ビジュアルが変化していくなど,演出面にもこだわっています。歴戦のハンターの方々も,かなり新鮮に感じていただけるのではないでしょうか。
4Gamer:
ちなみに,PVではヤマツカミが迎撃拠点に登場していますが,ほかの古龍のクエストも用意されるんですか?
杉浦氏:
これまで戦闘街での迎撃戦に登場した古龍は,迎撃拠点にも登場します。それと,アップデート直後には,入魂対象の中心を古龍に据えた狩人祭を開催する予定なので,迎撃拠点での戦闘をたっぷり楽しんでいただけるはずです。
4Gamer:
では次に,特異個体モンスターの話を聞かせてください。今回追加される特異個体には,どのようなものが用意されるのでしょうか。
今回は,カム・オルガロン,ノノ・オルガロン,ヒプノック繁殖期,リオレイア亜種,フルフル亜種,それとクシャルダオラの6体です。カムとノノは,別にカウントするかどうか微妙なところもありますが(笑)。
これまでの特異個体同様,それぞれ通常種とは少し見た目や動きが異なっています。
4Gamer:
クエストは,どういった形で提供されるのでしょうか?
杉浦氏:
シーズン10で特異個体モンスターの登場するイベントクエストが非常に好評だったので,フォワード.1でも引き続き配信することを検討しています。まずイベントクエストで配信してから,SRハンター向けのHCモード用のクエストを導入する予定です。
そのほかのモンスターが登場するクエストにも,ちょっとサプライズ的な要素を導入する予定です。
プレビューサイトでは,複数のモンスターが「今までのモンスターとは一味違う」と4月15日更新分で紹介されるのですが,「通常のモンスター以上特異個体未満」と言った位置づけのモンスターが,6月末に登場します。ただ,“赤い目のやつ”だけは,まだ秘密とさせてください。
4Gamer:
既存クエストにも手を入れて,マンネリ感を払拭させるということでしょうか?
杉浦氏:
今,「MHF」で大きなテーマになっているのが,まさにそのプレイ上の“飽き”の軽減という部分なんです。
やはりオンラインゲームというジャンルでは,いかに凝ったイベントを提供し,またそれらをどれだけ効率よく開発・企画できるかがポイントになります。そこに力を入れた結果,3年前のサービス開始当初は,月に一つイベントが作れるかどうかのレベルだったのが,今ではいくつも投入できるようになりました。
4Gamer:
確かに,イベント系のクエストは,かなり充実している印象があります。
杉浦氏:
スタッフが充実してきたことも大きいのですが,さまざまなゲーム内イベントを作成できるツールが充実したことで,スタッフは迅速にイベントの質と量の充実を図れるようになってきました。
また,効率化することで,それぞれのスタッフにも心の余裕ができて,新しい提案も行えるようになってきています。今回のエイプリルフールイベントも,かなりいいものになったと思います。これからは,それをより良い形にしていくという段階ですね。
変化を与えることについては,フォワード.1に限らず,チーム全体の大きな課題としてとらえていますので,続くフォワード.2以降も,小さなものから大きなものまで,開拓し続けていきます。そうなれば,あとはイベント担当チームの腕の見せどころですね。
4Gamer:
フォワード.1では「大討伐」クエストもリファインされるとのことですが,どのように変わるんですか?
大討伐クエストは,4月20日のアップデート前まで継続して配信したあと,5月からしばらくお休みをいただいて,6月末にリファイン実施を予定しています。
このタイミングで,HR100以上を対象とした「ラヴィエンテ狂暴期」が登場します。通常の大討伐クエストとは違ったものになるのはもちろん,撃玉が多めに手に入るなど,大討伐を達成したときのリターンも大きくなります。
それに合わせて,HRの低い方がより楽しめるような,短い時間で終わる,いわば初心者向けの大討伐クエストも用意します。
FX防具や過去のイベント武器がより“使える”ものに。新しい“剛種防具”も登場
4Gamer:
フォワード.1では武器・防具が大量に追加されるとのことですが,具体的にはどのくらい追加されるんですか?
杉浦氏:
分かりやすいところから説明しますと,イベントクエストで作成できる武器50種類以上に,強化派生を追加しました。
イベント武器は,それぞれテーマに沿ったオリジナルのデザインなので見た目の人気は高いのですが,正直なところ,性能面では今いちという評価なんです。メゼポルタ広場でロビー装備に使っていただくことはあっても,クエストで使うには気が引けるというご意見もいただいていたんです。
6月末以降には,剛種武器までとはいきませんが,それに近い性能まで強化できるようになるので,今後はクエストでも気兼ねなく使っていただけるようになると思います。もちろん,そのほかにも新しいものを追加しています。
4Gamer:
なるほど。今までの武器で,あまり“使えない”ものにテコ入れをしたといったところでしょうか。防具についてはどうですか?
杉浦氏:
防具では,シーズン10では新しいものが少なかったというのが挙げられます。そこは,シーズン10におけるイベント担当チームの大きな反省点です。
特異個体モンスターを11週連続で配信しましたが,実は当初,報酬面での際立ったメリットが少なかったんです。そこで急遽,G装飾品を報酬に追加したんです。本当は,武器や防具を作れるようにすべきでした。
私は,基本的に「MHF」はモンスターを狩猟して武具を作るゲームだと考えているので,目玉となるクエストで武器や防具を作れないというのは,やはりダメだったと思います。
なので,フォワード.1では同じ失敗をしないよう強く意識しました。また,実装しても作ってもらえない武具では意味がありませんから,性能面にも配慮しています。
4Gamer:
新たに実装される「剛種防具」とは,どのようなものなんですか?
4月20日のアップデートでは,「ブリッツ」シリーズという剛種防具を実装します。デザイン面は,既存の「キリン」シリーズの防具デザインをリファインした感じになります。スキルには特殊効果が用意されていて,条件を満たすと,特定の効果が得られるといった特徴があります。
4Gamer:
特定の条件で発動するというのは,火事場や餓狼に近い感覚でしょうか?
杉浦氏:
どちらかと言えば,スキルというよりは剛種武器の仕様に近いと思います。
それと剛種防具は,「ブリッツ」シリーズのほかにも,6月末にもう一つ,「カイザー」シリーズを元にした剛種防具が登場します。
4Gamer:
剛種防具の生産難度はどのくらいなんですか?
杉浦氏:
討伐の証でいえば,5部位の生産で剛種武器一つ分くらいといったところでしょうか。最終段階まで強化するのは少し大変かもしれませんが,第1段階でもそれなりに使用できる性能だと思います。あと強化は7段階で,今のところFのような強化派生はありません。
4Gamer:
そのほか,新しく「P防具」が追加されるとのことですが,これはどのようなものですか?
杉浦氏:
これは,新しいアイテム販売商品の「ターボパックP」で生産できるものです。カテゴリとしては従来のL/R防具と同様で,生産券を入手することで,S/U防具から派生させられるようになります。
4Gamer:
P防具には,どのようなメリットがあるんですか?
杉浦氏:
2007 年のサービスインの時期から実装されている,歴史あるデザインの各防具の見た目を保ったまま,新しい性能を持たせているところです。Lは防御力重視,Rはスキル重視でしたが,P防具はまた別コンセプトの性能を持たせています。発売前には性能を公式サイトで公開しますので,それを見て購入をご検討いただければと思います。
生産券は頭/胴/腕/腰/脚の5種類で,同じ部位であれば,どのP防具でも生産できるようにしています。
4Gamer:
「剛猫武器」についてですが,シーズン10での反響はどうでしたか? また,フォワード.1で新しいものは追加されますか?
杉浦氏:
フォワード.1で追加するのは,双剣と太刀です。
剛猫武器は,もともとコアな方を想定して企画したコンテンツだったのですが,ここまで反響が出るとは予想しませんでした。
データベースで見ると,実装から1週間でかなりの数を作っていただき,ハンターの皆さんが持っている剛種素材や討伐の証も激減していたんです。素材がいつの間にかなくなっていたという声もあがっていたので,もともと作りたかった剛種武器が作れなくなってしまうのも申し訳ないと思い,急遽,アップデート2週目のタイミングで,全剛種クエストの配信を行わせていただきました。
4Gamer:
性能に運の要素が絡むという部分の反響はどうでしたか?
杉浦氏:
剛種武器や進化武器をコツコツと作っていらっしゃる方には少し面白くないというご意見もいただきました。1回試しただけでいいものを作れるケースもあるので,息抜きくらいのつもりで試していただけると,ちょうどいいコンテンツなんじゃないでしょうか。
4Gamer:
フォワード.1では,新しいG装飾品も出るんですか?
杉浦氏:
剣晶系など,「MHF」オリジナルスキルが付くG装飾品を実装します。シーズン10で「集中珠G」「断食珠G」などが人気だったので,特異個体モンスターが登場するイベントクエストは定番化していこうかな,と考えています。
4Gamer:
あとリファインでは,SRでの防御力補正が変更されますよね。今までの999から100まで一気に下がったのには,かなり驚きました。
SR999だと,数字を見ただけで心が折れてしまって,多くのお客様が,補正がなくなるまでがんばろうという気持ちになれなかったというのが大きいですね。
また,HRとSRのコンテンツは連動しています。SR100で「嵐ノ型」を取得したら,それでHRのクエストを遊んでみたいと思うでしょうけど,これまでの仕様では防御力に50%近い補正がかかっていましたから,たとえば剛種クエストに挑戦するのは,かなり厳しいところがありますよね。
4Gamer:
シビアな部分を緩和する意味もあるというわけですか。
杉浦氏:
「嵐ノ型」を取得したお客様は,HR500,SR100をそれぞれ達成していますから,ある意味,シビアさは承知のうえだとは思います。しかしそれを置いても,SR999を目指すのはなかなか困難です。最初から諦められてしまうようでは,設定する意味もなくなってしまいますから。
それでは,どこに補正がなくなるポイントを持っていこうかと考えたときに,「嵐ノ型」を取って剛種クエストにも行けるという,SR100に設定し直しましょうと。
4Gamer:
それにしても,かなり極端な変更ですよね。
杉浦氏:
ゲーム内のバランスが崩れてしまう要素であれば,SR999からSR800であるとか700にするといった程度の修正が適当かもしれませんが,今回のケースはそうではありませんから。お客様の声で変更の要望が多い部分は,スタッフもきちんと認めてあらためないといけません。
ただ,SRハンターとHRハンターが一緒に遊ぶときのことを考えて,SR100までは補正をかけることにしています。攻撃力や防御力に格差がありすぎると,始めたばかりの方はやはり楽しめないと思いますので。あとはSR1〜100までの間に,HR100までの過程を思い出して気分転換していただきたいという思いもあります。
- 関連タイトル:
モンスターハンター フロンティアZ
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