プレイレポート
協力プレイやストーリー性を軸に,MMORPGらしいMMORPGを目指す。日本独自展開も楽しみな「風林火山」テストプレイレポート
いい意味でゲームらしい派手さのある戦闘シーン
トゥーンレンダリングとアニメ調の彩色で表現されたキャラクター。好みが分かれるところだが,実際にプレイするといい意味で,昔ながらのゲームらしさを感じさせる。モーションもなかなか自然だ |
しかし移動中に,ダンジョン内などの段差や,狭い通路に配置された大型モンスターなどに引っかかってしまうこともあり,わざわざ一歩下がってからジャンプしなければならないケースが頻繁に生じた。これは単純にストレスが溜まるだけでなく,モンスターが多数配置された場所では逃げることもままならなくなってしまう。生死に関わるケースも少なくないので早期の改善を望みたいところだ。
作成可能なキャラクターは,前衛攻撃職である「剣」(男性),デバフを主体とする「爪」(女性),タンクの「槍」(男性),回復/バフ/魔法攻撃と後衛全般を担当する「扇」(女性)の4種類で,性別は固定。またステータスポイントは,レベルアップ時に自動で上昇する。今回は合同テストプレイということもあり,各メディアともいずれか1体のキャラクターしか使用できなかったので,それぞれのプレイフィールに関しては別の機会に譲りたい。
また,キャラクターレベルが50だったこともあり,スキル使用時のエフェクトも,“いかにもゲーム”といった感じの派手さなので,結構な爽快感が味わえる。ただしスキル使用時のMP消費が多いため,POTをがぶ飲みできる今回のテストプレイのような状況ならともかく,通常のプレイでスキルを連発するのは難しいかもしれない。加えてダンジョン内のマップは3種類を使いまわしているため,先の見えないダンジョンを手探りで攻略する楽しみは若干薄いと感じた。
プレイヤー間コミュニティを重視した運営とシステム
1時間半程度のテストプレイののち,風林火山の今後の展開などについて,エムゲームジャパン ゲーム事業部で風林火山の企画/運営を担当する軸丸高志氏と,マーケティング部の堀口陽平氏にお話を伺った。
過去,他社タイトルも含めていくつかのオンラインゲームに携わってきた軸丸氏は,自身の経験から本作を運営する上でのテーマとして,プレイヤー間コミュニティの構築と,その支援を掲げている。
軸丸高志氏(以下,軸丸氏):
一番やりたいのは,プレイヤー間コミュニティを可能な限り深めていくことです。まずはGMの露出を増やしていこうと考えています。この手法は一般的にプレイヤーと運営の距離を縮めるものと思われがちですが,そうではなく,プレイヤー同士の関係を強化するために使っていこうと。
ゲーム中に登場するGMは4人。ゲーム内のキャラクターに合わせて剣/爪/槍/扇が各1名で,それぞれ,お茶目/姉御肌/使い走り/おとなしめという性格付けがされる。イベントではそれぞれの性格が活かされたオリジナルショートストーリーが展開される予定とのこと。また,ユーザーが企画したイベントを公式にバックアップすることも考えているそうだ。
軸丸氏:
公式サイトに「イベントカレンダー」を用意しようと考えています。公式イベントはもちろん,プレイヤーイベントも網羅するようなものですね。
それ以外にも記念アイテムを提供していきたいと考えています。性能的な意味でなく「第○○回戦闘大会優勝記念」などの銘が入った,トロフィーなどのレアアイテムですね。
こうした一連のイベントの手始めとして,オープンβテストでは「疾風」と名づけられた初心者向けのイベント/キャンペーンを実施するとのこと。単にアイテムをプレゼントするようなものではなく,風林火山の世界観をより深く理解できるような内容を目指しているそうだ。
加えて,公式サイトなどを通じてプレイヤー間のコミュニティを深めていく仕組みを作っていきます。例えば,ゲームで何か分からないことがあったとします。そこで公式サイトに問い合わせたら,返答が来た。従来はここで完結していましたが,そこから一歩踏み出て外部リンクに誘導するとか,あるいは実際にゲームの中に戻っていただくとか。
さらにオープンβテスト以降は,プレイヤー間コミュニティを促進するゲーム内システムも実装される予定だ。
軸丸氏:
風林火山には「団」という,いわゆるギルドシステムがあります。ゲーム内では「団コミュニティ」というWebシステムのようなものが利用できて,自分の団をアピールしたり,メンバーを募集したりできます。掲示板のような感じで,投稿していただければ即座に反映されます。
また並行して,公式サイトでメンバー募集中の団を紹介していくというようなサービスも行っていく。ここで気になるのが,ゲーム内にしろ公式サイトにしろ,営利目的などよからぬ理由でコミュニティを利用しようとする輩の存在だが,当然ながら規約の設定や定期的な監視で対策していくという。
しかしサポートを強化するということは,それだけスタッフの負担増加に繋がる。エムゲームの既存タイトルと比べて人員の増加などが行われるのだろうか?
軸丸氏:
とくにスタッフの数が多いということはないです。ただ意識の違いといいますか,これまで当社では,今お話したような発想で運営をして来なかったと思うんです。そこで,当社の今までの運営スタイルとは違う形で,新しい風を吹き込んでみたいと思いました。
協力プレイとストーリーを強調する日本独自展開
それでは軸丸氏は,風林火山の売りの部分をどのように捉えているだろうか? 軸丸氏は,これといって斬新な部分はないといい切った。
軸丸氏:
斬新な部分こそないかもしれませんが,その分一つ一つの要素が丁寧に作られた,完成度の高いものを目指しています。開発コンセプトもMMORPGらしさを重視していまして,例えば100人が一斉に馬に乗って同じ目的地に向かうなんていう絵ヅラは,それだけでも面白いですよね。風林火山は,そういったMMORPGのワクワク感を重視したタイトルになっています。
風林火山は,すでに韓国で正式サービスを開始しているが,日本で展開にあたっては独自要素を非常に重視しているという。
軸丸氏:
韓国では対人要素の強いタイトルとして知られていますが,日本では協力プレイを中心とする冒険要素を重視した展開を行います。そこに,ゲーム内の世界に散らばった“力”を集めるといったコレクション要素を加えていこうかと。こちらは開発元と調整中なので,まだ具体的にお話できる段階ではありません。
やはり日本では,対人戦よりもレイドのような協力プレイが喜ばれる傾向にありますから。
また韓国では,武侠モノとしてストーリーが展開していくが,日本ではストーリーをリライトし,独自の物語を提示していくという。東洋の要素を取り入れたファンタジーテイストが強くなり,かなり親しみやすいものとなっているそうだ。その内容は,オープンβテスト開始に合わせて公式サイトで確認できる予定。
軸丸氏:
まず,日本では武侠というジャンルに馴染みが薄いこと,また当社ではすでに「英雄」などの武侠タイトルを扱っていますので,差別化を図りたかったことがあります。
日本独自展開については,構想をどこまで実現できるだろうかという問題はありますが,方向性は韓国と大きく変えていこうと考えています。クエストなどもリライトしていまして,単純に与えられた依頼をこなすその場限りのものではなく,何かに誘導するような形式を取っています。また初期マップにおけるゲームバランスも大きく変更して,韓国版に比べるとかなりゲームなり世界観なりが親しみやすくなっています。衣装なども一部に「和」のテイストを取り入れた,日本独自のものを実装する予定です。
具体的にはゲームの序盤,目安としてはレベル20くらいまでは,プレイヤーが世界観やNPCのバックグラウンドを把握しやすくなるよう,日本独自のストーリーが流れるようにクエストをリライトしているとのこと。ここまでプレイすれば,風林火山がどんなゲームであるか把握できるだろうと軸丸氏は語る。以降のストーリー実装時期は未定だが,クエスト自体は当面のレベルキャップである60まで用意されているようだ。またストーリーに関わるクエストは一人でもクリアできるが,パーティで臨むと楽になるというバランス調整に配慮しているという。
その一方で,レベル20以降のプレイヤーキャラクターは,二つある勢力のいずれかに所属し,対人戦を行うというRvR要素も登場する。
堀口氏:
日本では独自の展開をするといっても,勢力間抗争はシステムの根幹に関わる部分ですから外せないですね。
軸丸氏:
一部のRvR要素は,オープンβテストから実装します。勢力同士が戦う要素として,レベル40〜60のマップで常時PvP可能になります。PvPに勝つとポイントが貯まるのですが,それをどう活かすかというシステム周りは,現在韓国で鋭意開発中です。
こうしたRvR要素は,いわゆる攻城戦や敵国の領土に侵攻する「領土占領戦」,また同勢力内でもアジトの権利をめぐるギルド戦などが実装される予定だ。ただし先行している韓国でも近日実装予定とのことで,日本での実装はそのあとになるだろう。
独自要素にこだわりながらも
タイトルは敢えて「風林火山」のままに
そのほか,オープンβテストまでには,操作関連やチャット周りなど細かい部分を改善していくという。しかし,それにしても2007年10月のクローズドβテストから,オープンβテストにこぎ着けるまでかなりの時間かかってしまったのはなぜだろうか?
軸丸氏:
ゲームとしてのクオリティアップを図りたかったからです。当時は韓国での開発が一段落したところで,そこから日本側の要望を実現したという形です。時間をいただいてしまいましたが,今なら十分楽しんでいただけると考えています。
堀口氏:
必ずしも要望のすべてを開発に受け入れてもらえるわけではないのですが,可能な限り実現していきたいですね。
しかし,ここまで日本独自の展開にこだわっていながら,なぜタイトルの変更を行わなかったのだろうか。ちなみに風林火山というタイトルは,日本でお馴染みの武田信玄ではなく,その原典である孫子の兵法から採用されたとのこと。しかも開発が進行するにつれ,当初込められていた意味は韓国でも薄くなってしまっているというのだが……。
堀口氏:
確かにそうしたご要望もあったのですが,インパクトを考えたときに,何か別のタイトルに変えるよりは,風林火山のままがいいのかなと。風林火山なら一発で覚えていただけますから。
最後に両氏からメッセージをいただいたので掲載しておこう。
軸丸氏:
少しお待たせしてしまいましたが,それだけのものにはなっていると思います。ぜひ楽しんでいただきたいです。
堀口氏:
GMはもちろん,マーケティングも頑張っています。風林火山自体がベーシックなゲームですから,あまり奇抜なことはやらずに着々と展開していく予定です。ぜひオープンβテストで実際に楽しんでください。
風林火山はいくつか気になる部分はあるものの,軸丸氏のいう通り,ゲームとしては非常にオーソドックスに楽しめる。クリックタイプのゲームはもうウンザリという人でもなければ,試しにプレイしてみて損はないだろう。また軸丸氏を始めとする運営スタッフは,オンラインイベントの充実に強い意欲を見せているので,それを実際に体験すればさらなる魅力を発見できるかもしれない。
一方,韓国など海外産オンラインゲームの日本独自要素というと,過去にさまざまなタイトルが挑戦してはいるのだが,必ずしもそのすべてが成功しているわけではない。その要因としては,日本の運営側がシステムの仕様を把握しきれていなかったり,開発側が日本のオンラインゲーム市場やプレイヤーの気質/傾向を理解しきれていなかったりといったところが挙げられる。最近では,そうした問題を解決するために長い時間を取り,協議を重ねて相互理解を図るケースも見受けられるようになったが,企業の経営レベルの話になると,果たしてそこまでする価値はあるのか? という疑問も生じかねない。
日本独自要素に関しては,なかなか「これが正解!」という図式が成立しにくいのだが,軸丸氏と堀口氏の発言からは,風林火山では敢えてこの問題に焦点を合わせていこうという気概が見える。それがどのような形で実現されていくのか,今後の展開に期待したい。
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風林火山
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