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[AGC 2006#04]ジェームズ・キャメロン監督の女房役ジョン・ランドー氏基調講演:3Dデジタルシネマの展望
最近では,木城ゆきと氏原作によるコミック「銃夢」(英題: Battle Angel Alita)の実写化が進められていたが,映像化が困難という判断から一時的に制作休止になっている。その代わりに,彼が進めているのが,以前は“Project 880”として知られていた「Avatar」である。この作品は,当初からXbox 360に開発されるMMORPGとの融合が企画されており,「ハリウッドとゲーム業界の再婚」などといわれるほど注目されている。
このAvatarは,キャメロン監督が創設したLightstorm Entertainmentが開発中の最新技術を使って制作されており,「3Dデジタルシネマ」として,2008年の公開が予定されている。Battle Angel Alitaは,Avatarと同じ技術を利用して,2009年に公開されることになりそうだ。
このLightstorm Entartainmentを実質的に率いているのが,アカデミー賞受賞経験も持つ敏腕プロデューサー,Jon Landau氏(ジョン・ランドー氏)だ。映画とゲームの融合という,新しいコンセプトを担う人であり,Avatarでは映画産業だけでなくゲーム業界にも一石を投じそうな気配。計り知れない技術力や企画力,そして役者というコンテンツを持つハリウッドが本格参入することで,ゲーム業界の地図が,一気に塗り替えられてしまう可能性だってあるだろう。
Avatarについては,2005年度のGame Developers ConferenceにおけるXbox 360基調講演の特別ゲストとして,ビデオレターでキャメロン氏が少しだけ語ったことがある。その後も 「宇宙大戦争の只中でのラブストーリー」という,アンチスターウォーズとでもいうような簡素なストーリー以外は,ほとんど明かされておらず,今回のランドー氏の基調講演も,映画の宣伝を目的としたものではない。
「時代の流れとともに,映画に音が加わり,色がつき,そのたびに観客はより豊かになったエンターテイメントを楽しむために,映画館に足を運んだ。今後も,そのニーズがなくなることはない」と話すランドー氏。その新しい牽引役が「3Dデジタルシネマ」であるわけだが,これがどのようなものなのかは明らかにしていない。ただ,ランドー氏が「映画は多くの場合3人称視点で,ゲームのように目の前に広がる世界に,自分がいると錯覚できなかった」と話していることから,映画の見せ方とはまったく違うことになるのかも知れない。
「役者のメーキャップに何時間もかけることなく,クロースアップにも対応できる」と説明を加えるように,モーション・キャプチャーとは異なる性格であることを匂わせる。
講演の後に行われたQ&Aで「一時は役者がデジタルキャラクターに職を奪われるのではという危機感もハリウッドにあったようですが」と聞かれて,ランドー氏は「いえいえ,パフォーマンスキャプチャーで我々が奪うとすれば,それは役者ではなくアニメーターの職ですよ」と,冗談交じりに話した。
俳優達には,観客を惹き付ける微妙な感情表現やオーラがあり,それが簡単に取って代わることはあり得ないという発想である。blue ray Discなど次世代光記録メディアの登場で,大容量を生かすだけのアートが必要になるともいわれているが,ゲーム業界でもプロシージャルアニメーションなど,アニメーターの負担を減らす方向に流れているわけで,このあたりにも共通した時代のニーズを感じる。
ランドー氏は,MMORPGはもはやゲームという狭義ではなく,エンターテイメントとして見るべきだとゲーム開発者達を力付けるような発言をしている。彼の友人が使う言葉として,PPE(People-Powered Entertainment)としたほうが市場にフィットするのでは,というのだ。
MMORPGには,コミュニティが経験を共有するという,映画にないものを持っているのが魅力的なのだそうで,「今後はMMORPGでもデジタル映画でも独立系制作者の力が強まり,Lightstormの持つ技術もすぐに広まっていくだろう」と締めくくった。(ライター:奥谷海人)
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