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「Second Life」内の会場ともリンク。AOGC 2007プレイベント開催
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印刷2007/02/02 22:08

イベント

「Second Life」内の会場ともリンク。AOGC 2007プレイベント開催

■つながりつつあるバーチャルとリアルを表現?

 ブロードバンド推進協議会(BBA)が主催する講演イベント「Asia Online Game Conference 2007 Tokyo」(AOGC 2007)が,2月22日と23日の両日に開催される。それに先立って本日(2月2日),その事前アピール的な位置付けのイベントである「〜 Preview of AOGC 2007 in Second Life 〜 〜VirtualからRealへ,オンラインコミュニティ脅威の進化〜」(注:用語は原文ママ)が行われた。

 このプレイベントは,デジタルハリウッド大学院との共催で行われたもの。東京は神田にあるデジハリ東京本校の一室と,「Second Life」の中にある「デジハリ・ランド」に設けられた会場を,結ぶ形で実施された。
 メインの講演者であり,全体の進行役も務めたのは,駒澤大学 グローバルメディア・スタディーズ学部助教授の山口 浩氏で,ここにゲストスピーカーであるシリアスゲームジャパン 代表 藤本 徹氏が加わる。ただし藤本氏はアメリカ在住であり,今回デジハリ東京本校に来ていないのがミソだ。講演はSecond Life内で行われ,両氏はそれぞれ自分のアバターを操作しつつ,スライド説明を進めていく。音声についてはSkypeサービスを使って,デジハリ東京本校の会場とSecond Life内の会場で会話ができるようになっていた。



BBA事務局,オンラインゲーム専門部会部会長 IGDA 日本代表 新 清士氏
 イベントの開始に当たっては,BBA事務局,オンラインゲーム専門部会部会長にして,IGDA 日本代表の新 清士氏より挨拶があった。氏はそこで,AOGC 2007のテーマである「コミュニティ」と関連付けつつ,現在のオンラインゲームサービスでコミュニティマネジメントの比重が増していること,SNSやRMTをめぐって,ゲームとそれ以外の境界があいまいになりつつあることに触れ,オンラインゲームの話題とインターネット全般の話題が共通になりつつあるという認識を示した。
 また,AOGC 2007で扱う話題に触れて,e-Sportsがオリンピックの正式競技に入りつつあること,ハックツールが引き起こす問題などと併せて,Socond Lifeにおける「ユーザーが作ったデータはユーザーが所有権を持つ」ことを前提としたビジネスモデルが,韓国で盛んに研究されている現状についても語った。今回のイベントの形も,いわばそうした動きを受けてのものなのだろう。

 続いて,共催者であるデジタルハリウッド大学院側からは,同大学院がSecond Life内にデジハリ・ランドという施設を持ち,また企業向けの「セカンドライフ・トレーニング講座」を開設するなど,人材育成の面でSecond Lifeに取り組んでいることについての説明がなされた。
 山口氏によれば,現在Second Life内におけるコンテンツ作成は,一時期のWebサイト構築ビジネスのような形で,注目されつつあるのだそうだ。



■バーチャル世界でも,人と人との交流は本物

駒澤大学 グローバルメディア・スタディーズ学部助教授 山口 浩氏
 挨拶に続いて,本題である山口氏の講演「『Virtual World』としてのオンラインゲーム」が始まった。内容としては,新氏の述べた「ゲームとそれ以外の境界があいまいになりつつある」ことの積極的な意義の面,オンラインゲームが現実社会に対して発揮し得る効用を追ったものといえよう。
 氏はまずオンラインゲームの特徴を,市場規模やジャンルの内訳などを使って簡単に説明し,そこに加わったSecond Lifeが持つ新しい発想,つまり競争や戦闘といった一元的な目標を持たず,創造したアイテムの所有権を認めるプラットフォームとしての性格などについて,簡潔に整理した。

 また,「仮想」という日本語と「virtual」という英単語が持つニュアンスの違い,前者では「現実でない」意味が強調されるのに対し,後者では「現実同様である」意味に重きが置かれることを起点にして,仮想現実の一種であるオンラインゲームが持つ可能性についての話題を展開する。その骨子は,ゲームが仮想の存在であっても,そこで展開される人と人との交流は現実そのものであり,その人の思考や行動に影響を与えるという点だ。
 そうした形でゲームが実社会と関わりを持ってくる例として,氏は「シリアスゲーム」の概念を挙げ,ゲストスピーカーの藤本氏にバトンを渡す形とした。



■独自の教育効果を発揮するオンラインゲーム

 そうしたわけで,講演者はSecond LifeとSkypeサービスを介した藤本氏に切り替わる。演題は「シリアスゲームの世界から見たオンラインゲームの可能性」。山口氏のアバターが,イスにかけたままスライドの該当部分をポイントする形で話を進めたのに対し,藤本氏のアバターはSecond Lifeの機能を生かし,浮上してスライドのすぐ横につけていたのが,リアル世界の講演にはない光景といえるだろうか。

 氏はまず,シリアスゲームに関して「教育をはじめとする社会の諸領域の問題解決のために利用されるデジタルゲーム」という定義を掲げる。その前提には,ゲームが社会的な問題の解決や教育などに有用だとする認識があり,波及領域として,

ヘルスケア
公共政策
学校
企業
軍事
社会変革

などが挙げられた。また,シリアスゲームとの関連で,MMOタイプのゲームを対象とした学術研究においては,

ゲーム世界におけるプレイヤーの活動の研究
プレイヤーの活動の中で学習要素に着目した研究
教育目的での利用に関する研究

などがあるという。

 また,MMOタイプのゲームを用いた学習でのコミュニティと,学校的なコミュニティの性質の差を挙げ,前者の特徴として,学習者が興味やレベルに合わせて選び,参加者間の相互学習要素があることなどを強調,教育の各カテゴリにわたって,オンラインゲームという形ならではの可能性に言及した。
 そして,インディアナ大学の「クエスト・アトランティス」,スタンフォード大学の救急訓練MMOなど,特定の教育目的のためのMMO開発例とは別に,プラットフォームMMOにおける教育利用のための用途開発例が見られるのがSecond Lifeだとした。



■バーチャルであれ,人々の活動そのものこそ重要

 藤本氏によるインサーション(挿入部分)を挟んで,講演は再び山口氏の手に戻る。氏はオンラインゲーム業界をめぐる最近の動向について語り,Electronic ArtsやMicrosoft,Googleなどが相次いでゲーム内広告ビジネスに参入していること,アメリカの男性若年層のテレビ離れ,「ながら見」のないメディアというゲームの特徴とゲーム内広告の関係,などのトピックスを整理していった。

 そして,オンラインゲームの大枠での価値と可能性に踏み込んで,オンラインゲームが現実社会そのものでないとしても,自己実現の場,自分の居場所となるならば,そこには意義があると述べる。さらに,テクノロジーの進化に伴って人々の意識とビジネス形態は移り変わるものであって,そこで常に注目していくべきは人々の活動そのものである,と述べて講演を締めくくった。



 今回のプレイベントはメディア関係者を対象とした実験的なものであり,デジハリ東京本校に集まったのはざっと30人弱,Second Life内の会場に来たアバターは,ぱっと見10人ほどと,盛況な催しであったとはいえない。また,Skypeによる会話も音質の問題があって,質疑応答がややちぐはぐになる局面なども見られた。
 とはいえ,全世界を対象とした講演型イベントが,バーチャル世界を利用することでいたって手軽に打てる条件が整いつつあること(いやもちろん,言語の問題もあるが)を実際に示せた点で,目指すところは十分に達成されたものと考える。
 オンラインゲームとインターネットの未来や,オンラインゲーム界の動向に興味のある人は,AOGC 2007本編にも注目しておくとよいだろう。(Guevarista)

(C)Digital Hollywood Co.,Ltd.

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