テストレポート
「nForce 780i SLI」との組み合わせでチェックする「3-way SLI」の実力
今回4Gamerは,PINE TechnologyのXFXブランド(以下,XFX)製nForce 780i SLI搭載マザーボード「MB-N780-ISH9」を,同社の販売代理店であるシネックスから入手した。MB-N780-ISH9は「Designed by NVIDIA」仕様のリファレンスデザイン採用モデルだが,これを用い,あらためて3-way SLIが持つ実力に迫ってみたいと思う。
※2007年12月18日追記:
詳細は後述しますが,3-way SLI用のSLIプロファイルの詳細,そして「現時点ではCrysisで3-way SLIの恩恵を受けられないこと」について本文を追加しました。
3-way SLIを有効化するための
必要事項を確認する
3-way SLIの概要については西川善司氏による解説記事を参照してもらうとして,本稿では実際に一般のPCユーザーが3-way SLIを利用するための要件を確認しておきたい。先のパフォーマンス速報と内容は一部重複するが,3-way SLIを利用するための要件は,12月17日現在,以下のとおりとなる。
- GeForce 8800 GTX/Ultra搭載グラフィックスカード3枚
- nForce 780i SLIまたはnForce 680i SLI搭載マザーボード
- 3枚のグラフィックスカードをつなぐ専用のSLIブリッジコネクタ
- 6ピンのPCI Express電源コネクタを六つ備えた容量1100W以上の電源ユニット
- 3-way SLI対応グラフィックスドライバ,「ForceWare 169.25 Beta」
ちなみに,NVIDIAコントロールパネルの「3D設定」(3D Settings)からSLIインジケータを表示するように設定しておくと,3-way SLI動作時には画面に「SLI x3」と表示され,2-way SLIとの違いを確認できるようになっている。
おそらく読者が最も知りたいことは,「どんなゲームで3-way SLIが有効になるのか」という点に集約されるだろう。。結論から述べると,別記事でもお伝えしているように,3-way SLIでは「AFR」(Alternate Frame Rendering)しかサポートしていない。そのため,2-way SLI時にSFRでパフォーマンスの向上を実現していたタイトルだと,3-way SLIの恩恵は受けられないのだ。
さて,AFRをサポートするタイトル,およびSFRをサポートするタイトルの見分け方だが,これはゲームプロファイルを見れば一目瞭然。3-way SLIで効果の上がるタイトルのプロファイルは,「SLIパフォーマンスモード」が「3-GPU Alternate frame rendering 2」に指定されているので,ここで判別できる。
なお,ForceWare 169.25 Betaの時点において,ゲームプロファイル側のSLIパフォーマンスモードが3-GPU Alternate frame rendering 2になっているタイトルは下にまとめたとおりだ。もちろんこのほか,「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)や「F.E.A.R.」など,ゲームプログラム自体がSLIのAFRモードをサポートしているタイトルでも,3-way SLIの恩恵は受けられる。
- 3DMark05
- 3DMark06
- Battlestar Galactica
- Company of Heroes
- Dreamfall: The Longest Journey
- Dungeon Runners
- Fury
- Gears of War
- Joint Operations: Typhoon Rising
- Lego Star Wars II
- Madden NFL Games(※)
- Microsoft Rise of Nations: Rise of Legends
- OutRun 2006: Coast 2 Coast
- Painkiller
- Painkiller: Overdose
- PT Boats: Knights of the Sea
- Serious Sam II
- Stranger
- Tom Clancy's Ghost Recon Advanced Warfighter
- Tom Clancy's Ghost Recon Advanced Warfighter 2
- Unreal Engine 3(※)
- Unreal Tournament 3
- Warhammer 40000: Dawn of War - Dark Crusade
- X2: The Threat
※SLIプロファイルの表記ママ。前者はシリーズ全般,後者は同エンジン採用タイトル全般を指すと思われる
Windows Vista+Direct3D 10を中心に
超高解像度で3-way SLIの効果をチェック
一方,レギュレーション5.0採用タイトルのうち,「RACE 07: Official WTCC Game」は,描画負荷が低いため,また「Unreal Tournament 3」はスケジュールの都合で測定を見送った。なお,「Crysis」については,NVIDIAいわく「近々にCrytekからリリースされる予定のパッチを当てないと,3-way SLIの効果が現れない」とのことである。というわけで実際,レギュレーションどおりに1920×1200ドットの標準設定でCrysisのベンチマークを行ってみたところ
- シングルカード:24.3fps
- 2-way SLI:34.1fps
- 3-way SLI:34.9fps
だったので,確かにNVIDIAの言うことが正しそうだ。Crysisで3-way SLIの恩恵を受けるには,パッチを待つほかなさそうである。
このほかテスト環境は表のとおりだ。
高い描画負荷環境でこそ
そのパフォーマンスが発揮される3-way SLI
ベンチマークテスト結果の考察に入る。
グラフ1は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)のテスト結果である。ここでは解像度2560×1600ドットに固定して,標準設定,そして8xマルチサンプルアンチエイリアシング+16x異方性フィルタリング(以下,8x MSAA+16x AF)のスコアをまとめているが,標準設定では3-way SLIと2-way SLIの間に大きな違いはない。しかし,8x AA+16x AFを適用して描画負荷を高めると,その差は一気に30%弱ほど開く。同設定時にシングルカード時と比較すると,2-way SLIで1.87倍が,3-way SLIで2.41倍へと向上しており,3-way SLIの効果は明らかだ。
続いて,3DMark06の詳細をグラフ2で確認してみると,標準設定では3-way SLIにとって負荷が低いようで,SM2.0 Scoreはまったく上がっていない。一方,8x MSAA+16x AF適用時には,SM2.0とHDR/SM3.0 Scoreの両方で,まんべんなくスコアの向上を確認できる。
以上を踏まえ,実際のゲームにおけるスコアの評価に入っていこう。ロスト プラネットは描画負荷の非常に高いタイトルとして知られているが,その証拠に,標準設定でも3-way SLIと2-way SLIとの差はハッキリと確認できる。ゲームでは1920×1200ドットという,より現実的な解像度でも検証しているが,その1920×1200ドットでも3-way SLIのメリットは明らかだ(グラフ3)。パフォーマンスアップの割合は,1920×1200ドット時の対シングルカード比で2-way SLIが1.80倍,3-way SLIが2.57倍と,これまた優秀だが,そもそもこの解像度で平均76fps出ているというのには,驚くほかない。
続いてはCompany of Heroesの結果である(グラフ4)。ロスト プラネットほどは描画負荷が高くないため,1920×1200ドットだとシングルカードの200%超えは達成していないが,2560×1600ドットでは易々とクリアし,十分なパフォーマンスメリットを感じさせてくれている。
しかし,グラフ5の「Half-Life 2: Episode Two」(以下HL2EP2)は少し様相が異なり,3-way SLIが大きくスコアを落としているのだ。
この理由は先述のパフォーマンスプロファイルにあり,HL2EP2用のプロファイルは,ForceWare 169.25 Betaに用意されていない。NVIDIAはテスター向けに配布している「Reviewer's Guide」の中で,HL2EP2――というか,Source Engine――について「2-way SLIで最高のパフォーマンスが発揮されているため,3-wayにしてもそれ以上には上がらない」と説明しているが,グラフィックスカード3枚の調停が,むしろオーバーヘッドとなる可能性があることは,記憶に留めておく必要がありそうだ。
もはや暖房器具並みの消費電力
性能だけでなく,電気代も強烈な3-way SLI
4Gamerのテスト記事では恒例の,消費電力チェックに入ろう。いつものように,OS起動後30分間放置した直後を「アイドル時」,3DMark06を30分間リピート実行し,その間で最も高い消費電力を示した時点を「高負荷時」とし,両時点におけるシステム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した。その結果をまとめたのがグラフ6だ。
高負荷時における3-way SLIの消費電力は,驚くべきか,あるいは予想どおりというべきか,700Wオーバー。ちなみに,筆者がこの冬購入したオイルヒーターの“節約モード”が700Wなので,もはや暖房器具並みの消費電力と断じても誤りではないだろう。「ドライヤー」と揶揄されていた「GeForce FX 5800 Ultra」がかわいく思えてくるほどだ。
いずれにせよ,3-way SLI環境を構築する場合は,電源ユニットの定格出力に注意するだけでなく,電子レンジや暖房器具,それに乾燥機などとの併用に気を配りたい。筆者はブレーカー容量40A契約のマンション住まいだが,実際,テスト中に何度かブレーカーを落としてしまっている。
そこで,グラフ6の時点におけるGPUコア温度を,NVIDIA製のGPUユーティリティソフト「nTune」(Version 5.05.47.00)で計測。室温23℃の室内で,PCケースに組み込まないバラックの状態にあるテスト環境において,どれだけのGPU温度を示すかをチェックしてみた。
その結果はグラフ7のとおり。3-way SLIで「#3」としたカードが“真ん中”のものになるが,高負荷時には95℃とかなり温度が高い。実際にカードを触ってみても非常に熱く,当然だが,長時間は触っていられないほどだ。
GeForce 8800 Ultraリファレンスカードが採用するGPUクーラーはかなり強力なものなのだが,それでも冷却能力が足りていないように思える。3-way SLIを利用するとき,ケースファンからのエアフローを直接グラフィックスカードに当てるなど,ケース内の冷却に十分配慮する必要があるだろう。
特定条件での効果は絶大だが……
今後は下位モデルでの3-way SLI実現に期待
ただ,速報時にも触れたが,ハードルの高さはどうしても否めない。ウルトラハイエンドのGPU×3に,1100W超級の――しかも,どれでもいいというわけではない――電源ユニットが必須。すぐ解決するかもしれないが,圧倒的な市場シェアを誇り,2-way SLI環境を構築しているゲーマーからの支持も篤(あつ)いと想像されるWindows XPのサポートがないのも厳しい。
さらに,1920×1200ドットでも場合によってはそれほどのパフォーマンスメリットを得られない場合があるため,最低でも24インチクラス以上のディスプレイが必要だ。一方,27インチを超える液晶ディスプレイでは,応答速度の低さという,ゲームプレイに当たって致命的な弱点を抱えるケースがほとんど。
……快適な3-way SLIゲーム環境を整えようとすると,制約が非常に多いのである。それでいて,必ずしもすべてのゲームでパフォーマンスの向上を期待できるわけではない。確かに,絶対性能に魅力を感じる人は一定数存在すると思われるが,その数は確実に少なく,市場はあくまでもニッチに留まるはずだ。まあ,NVIDIAも,このソリューションをすべてのゲーマーに売るつもりは毛頭ないだろうが。
性能はもちろん,全体的なコストや,消費電力にGPU温度,液晶ディスプレイの性能などを勘案するに,3-way SLIは,GeForce 8600シリーズやGeForce 8800 GTのような,ミドル〜エントリーハイエンドGPUでこそ,有効化すべきではなかろうか。
いつになるかは分からないが,次世代GPUシリーズに期待したい。
- 関連タイトル:
GeForce 8800
- 関連タイトル:
nForce 700
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