レビュー
広範囲検証でGeForce 8800 GTの実力を確認する
PV-T88P-YDFP
WinFast PX8800 GT Extreme
» 限られた時間の中で取得できた限りのデータを基にパフォーマンス速報をお伝えした「GeForce 8800 GT」だが,クロックアップモデルやSLI構成のスコアも用意しつつ,比較対象を増やすことで,位置付けを明確化てみよう。GeForce 7世代などからの買い換えを検討している人は,ぜひ参考にしてほしい。
2007年10月29日の製品発表に合わせて,4Gamerでもパフォーマンス速報をお伝えした「GeForce 8800 GT」。だが,いかんせん時間が少なかったこともあり,4Gamerのレギュレーションで採用しているすべてのテストを行えず,また,事前に予定していた比較も十全と言えるものではなかった。
そこで本稿では,速報でお伝えできなかったテストを追加し,同時に,GeForce 8800 GTのクロックアップモデルと,GeForce 8800 GTのNVIDIA SLI(以下,SLI)構成についても検証することで,GeForce 8800 GTのゲームにおける有効性を,あらためてはっきりさせてみたい。
用意したのは,XFXブランドで知られるPINE Technology製の「PV-T88P-YDFP」と,Leadtek Research製のクロックアップモデル「WinFast PX8800 GT Extreme」。PV-T88P-YDFPは,速報で用いたものと同一の個体だ。また,SLIの検証に当たっては,PV-T88P-YDFPをもう1枚用意している。
PV-T88P-YDFP メーカー:PINE Technology(XFX) 問い合わせ先:シネックス(販売代理店) info@synnex.co.jp 実勢価格:3万6000円前後(2007年11月8日現在) |
WinFast PX8800 GT Extreme メーカー:Leadtek Research 問い合わせ先:アスク(販売代理店) 03-5215-5650 予想実売価格:3万9000円前後(2007年11月8日現在) |
クロックアップモデルもリファレンスクーラーを採用
SLIテストはnForce 680i LT SLIで
WinFast PX8800 GT Extremeは,コアクロックが680MHz,シェーダクロックは1.7GHz,メモリクロックが2GHz相当(実クロック1GHz)と,全体的に1割強のクロックアップが図られているのが特徴だ。一方で同製品は1スロット仕様となるGeForce 8800 GTのリファレンスクーラーを採用しており,果たして冷却性能が足りているのかどうかは,本稿における注目点といえるだろう。
ちなみにWinFast PX8800 GT Extremeが搭載するメモリチップはQimonda製のGDDR3 SDRAMチップ「HYB18H512321BF-10」。これもPV-T88P-YDFPと同じなので,おそらくカードデザイン自体に違いはなく,グラフィックスBIOS(VBIOS)レベルでのクロックアップ処理がなされているものと思われる。
今回のテスト環境は表1のとおり。ご覧のとおり,グラフィックスドライバはNVIDIAからレビュワー向けに配布された「ForceWare 169.01 Beta」を利用している。もっとも,“GeForce 8800 GT専用”の公式最新版「ForceWare 169.02」との違いは,2007年10月30日の記事でお伝えしたとおりごくわずかなので,性能面で大きな違いが生じることはないと言っていい。
GeForce 8800 GTにおけるPCI Express 2.0/1.1動作の違いについては,速報時と同じく,Intel X38/P35 Expressチップセット搭載マザーボードで比較する。また,SLI動作についてだが,これはnForce 680i LT SLIチップセット搭載マザーボードを用意した。
比較対象として,本稿で新たに加えたのは,「GeForce 7900 GS」と「ATI Radeon HD 2900 XT」。2006年において,GeForce 8800 GTと同じ位置にあったGPU,そしてライバルとなるAMDの最上位モデルである。
Maximus Formula Special Edition DDR2メモリに対応するゲーマー向けモデル メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp 実勢価格:4万1000円前後(2007年11月8日現在) |
P5K Premium/WiFi-AP ハイエンド指向Intel P35マザーの定番 メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp 実勢価格:3万3000円前後(2007年11月8日現在) |
MB-N680-ILT9 「Designed by NVIDIA」のSLIマザー メーカー:PINE Technology(XFX) 問い合わせ先:シネックス(販売代理店) info@synnex.co.jp 実勢価格:2万5000円前後(2007年11月8日現在) |
EN8800GTS/HTDP/640M グラフィックスメモリ640MB搭載のハイエンド メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp 実勢価格:5万9000円前後(2007年11月8日現在) |
PV-T80G-GHF9 安価なリファレンスモデル メーカー:PINE Technology(XFX) 問い合わせ先:シネックス(販売代理店) info@synnex.co.jp 実勢価格:3万9000円前後(2007年11月8日現在) |
EAH2900XT/G/HTVDI /512M AMDの現行最上位GPUを搭載 メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp 実勢価格:6万円前後(2007年11月8日現在) |
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション4.1準拠で,以下,とくに断りのない限り,カードの製品名ではなくGPU名で表記し,グラフ中は「GeForce」「ATI Radeon HD」を省略する。また,GeForce 8800 GTについては,下に示す表記ルールを適用するのでご注意を。
- リファレンスクロックモデルのSLI構成→GeForce 8800 GT SLI
- クロックアップモデル(PCI Express 2.0動作)→GeForce 8800 GT OC
- リファレンスモデル(PCI Express 2.0動作)→GeForce 8800 GT
- リファレンスモデル(PCI Express 1.1動作)→GeForce 8800 GT[PCIe 1.1]
なお,今回取り上げたグラフィックスカードについて,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.0.9)で取得したデータに、公表されているスペックを追記したものを表2にまとめたので参考にしてほしい。
クロックアップモデルのスコアは魅力的
GeForce 7900 GSは過去のものに
というわけでテスト結果だ。まずグラフ1,2は,「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)のテスト結果だが,注目したいのは,1割強のクロックアップを果たしたGeForce 8800 GT OCが,「標準設定」でGeForce 8800 GTXのスコアを上回っている点だ。さすがに4xアンチエイリアシング&16x異方性フィルタリングを適用する「高負荷設定」だと後塵を拝するものの,実勢価格4万円以下のカードと,同7万円以上のカードを比較しているとは思えない結果である。
SLI構成のテスト結果に目を向けると,GeForce 8800 GT SLIが確固たるメリットを示すのは,やはり高解像度&高負荷状況といえそうだ。
“2006年末の主役”GeForce 7900 GSとはまったく比較にならない。ゲームパフォーマンスでを比べるまでもなく,GeForce 7900 GSは,もはや完全に過去のGPUになったと断言できるだろう。
次は「3DMark05 Build 1.3.0」の結果だが,ここでもGeForce 8800 GT OCのスコアは良好(グラフ3,4)。3DMark06より描画負荷が低いことも手伝って,高負荷設定でもGeForce 8800 GTXと同等以上のスコアを叩き出している。一方,SLIのスケーリング状況は3DMark06と同じだ。
以上の傾向を踏まえ,実際のゲームにおけるテスト結果に移っていこう。
まずグラフ5,6は,FPS「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」(以下S.T.A.L.K.E.R.)における平均フレームレートをまとめたもの。S.T.A.L.K.E.R.において,GeForce 8800 GT OCのスコアはGeForce 8800 GTXに及ばない。クロック以外の基本仕様で一歩譲ることが,最新世代の3Dゲームタイトルでは影響しているようだ。
GeForce 8800 GT SLIの効果は,やはり高負荷状況において特筆すべきで,SLIがターゲットとするような負荷状況においては,安定してGeForce 8800 GTXのスコアを上回っている。なお,ATI Radeon HD 2900 XTのスコアが一部N/Aとなっているのは,当該条件において画面が文字化けを起こすなど,正常にベンチマークが実行できなかったためである。
次もFPSから「Half-Life 2: Episode One」(以下HL2 EP1)の結果である(グラフ7,8)。速報において筆者は「標準設定だとGeForce 8800 GTのスコアは高解像度になってもGeForce 8800 GTXとほぼ互角」と述べたが,GeForce 8800 GT OCは高解像度でGeForce 8800 GTXを上回っている。
GeForce 8800 GT SLIのスコアは実に安定しており,高負荷設定の1920×1200ドットでは,実にスケーリング効果60%だ。
TPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下ロスト プラネット)の結果をまとめたのがグラフ9,10である。ロスト プラネットは非常に描画負荷の高いゲームタイトルだが,S.T.A.L.K.E.R.と同じように,GeForce 8800 GT OCはGeForce 8800 GTXに置いて行かれる。逆に効いてくるのはSLIで,80%を超える効率を示すこともあった。
RTS「Company of Heroes」の結果をグラフ11,12にまとめた。標準設定,高負荷設定とも1024×768ドットではCPUボトルネックが発生してスコアが荒れているため,1280×1024ドット以上を見ていく。GeForce 8800 GT OCとGeForce 8800 GTXはほぼ互角であり,GeForce 8800 GT SLIは,高解像度設定時にその効果をはっきりと確認できる。
なお,一点お断りしておくと,ATI Radeon HD 2900 XTは,レギュレーション4.1で採用するゲームバージョン1.70において,Vsyncをオフにできなかった。そのため同GPUだけはバージョン1.40でスコアを取得している。
レースシム「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(以下,GTR2)のテスト結果がグラフ13,14である。
GTR2は,レギュレーション4.1の採用タイトル中,最も負荷の低いものということもあり,これまでにない傾向がいくつか見て取れる。高負荷設定の1600×1200ドット以上でないと,GPU間の調停がボトルネックとなってSLIの効果を得られないというのがその一つ。そしてそれ以上に注目したいのが,GeForce 8800 GT[PCIe 1.1]が,GeForce 8800 GTと比べて大きくスコアを落としている点である。
GeForce 8800 GTはIntel X38 Expressマザーボード,対するGeForce 8800 GT[PCIe 1.1]はIntel P35 Expressマザーボードに接続されているため,チップセットのメモリコントローラがパフォーマンスに影響している可能性もある。そこで急遽テストしたのがグラフ15,両チップセットの比較だ。ここでは高負荷設定時におけるGeForce 8800 GT/GTX/GTS 640MBの3モデルを,二つのチップセットで比較したが,結果は明白で,GeForce 8800 GTのみチップセットの違いがスコアの違いとなっている。つまり,チップセットの差ではなく,PCI Express 2.0か同1.1かがスコアの違いを生んだわけである。
さすがにこのスコアだけで明解な結論までは導けないものの,「GPU負荷,CPU負荷とも低い状況で,GPU負荷だけ高めていくと,PCI Express 2.0の広帯域幅が“効いてくる”可能性がある」とはいえるかもしれない。
消費電力は総じて許容の範囲内
やはりクーラーの冷却能力がネックか
速報では,65nmプロセスルールを採用したことによる確実な消費電力の低下ではなく,高負荷時に92℃を示したGPU温度のことが各所で話題になったようだが,クロックアップモデルやSLIに関しては,やはり消費電力も気になる。温度の前に,まずは消費電力をあらためてチェックしてみよう。
テスト条件は速報時と同じで,システム全体の消費電力をワットチェッカーで確認する。OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,3DMark06の総合テストをループさせて30分間連続実行し,最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」として,各時点における消費電力をスコアとした。
ただ,速報時と同様にシステムの統一性を重視すると,SLI構成時のスコアを取れない。そこで今回は,マザーボードの異なるGeForce 8800 GT SLIとGeForce 8800 GT[PCIe 1.1]の消費電力が参考値となることを覚悟のうえ,ゲームテストを行ったすべての条件で消費電力検証を行っている。この点はあらかじめお断りしておきたい。
グラフ16がその結果だ。アイドル時の消費電力はGeForce 7900 GSとGeForce 8800 GTSの中間に位置し,高負荷時になるとさすがにGeForce 7900 GSよりもかなり高くなることが分かる。また,高負荷時に注目すると,GeForce 8800 GT OCのスコアは,確実に高まっているものの,目くじらを立てるほどでもなさそうだ。SLI動作時も300Wを切っており,電源ユニットに優しいGPUといえるだろう。
さて,続いて気になるGPU温度だが,こちらも速報時と同じく,GPUモニタリングツール「ATITool 0.27β2」から,グラフ16の時点におけるGPU温度を取得した。GeForce 8800 GT SLIは片方のGPUのみ取得できたため,それをスコアとし,ATI Radeon HD 2900 XTだけは小数点以下1桁まで取得できたので,やはりそれをそのままスコアとしている。システムはPCケースに入れていないバラックの状態で,室温は速報時と同じ20℃だ。
その結果をまとめたのがグラフ17で,GeForce 8800 GTのスコアがすべての条件で高負荷時に90℃を超えている点は速報から変わっていない。消費電力のテスト結果からして,明らかにクーラーの冷却能力が不足しているが,ただここで,クロックアップモデルであるGeForce 8800 GT OCのスコアが意外に低いと思った人もいるだろう。
この秘密は,GPUクーラーが内蔵するファンにある。筆者の主観で申し訳ないが,GeForce 8800 GT OCとGeForce 8800 GT SLIでは,シングルカード構成時と比べて,ファンの回転数が上がって騒音が大きくなる場面が増えた。最大負荷時でもこのクラスの温度に留まるよう,自動的にファンの回転数が制御されているようだ。
クロックアップモデルはさらに優秀
欠点といえる欠点は冷却周りのみ
ただ,それだけに,GPUクーラーの冷却能力が足りていない点が残念でならない。クロックアップモデルやSLI構成時に劇的な温度上昇がないと分かったのは収穫だったが,どうしても懸念は残る。GPUクーラーの換装を試みるか,カードメーカー各社が準備中と伝えられる,より冷却能力の高いクーラーを搭載したモデルの登場を待つかするのが,ここは正解ではなかろうか。
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