レビュー
2008年春,1万円台で購入できるCPUの本命か?
Core 2 Duo E7200/2.53GHz
» 先にパフォーマンス速報をお届けしている,Core 2 Duoの新世代下位モデルについて,速報をまとめたJo_Kubota氏によるレビューをお届けしたい。65nmプロセスを採用するCore 2 Duoや,Phenom X4などと比較することで,真のコストパフォーマンスが見えてきた。
今回は,Core 2 Duo E7200の上位モデルとなる「Core 2 Duo E8500/3.16GHz」をはじめ,スペックが比較的近い65nmプロセス世代のCore 2 Duo「E6750/2.66GHz」「E6550/2.33GHz」,そしてライバルとなる「Phenom X3 8750/2.4GHz」や,その上位モデル「Phenom X4 9850 Black Edition/2.5GHz」と比較(表1)。これによって,L2キャッシュ容量3MBのCore 2 Duoが持つ実力を,よりはっきりさせてみたいと思う。
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また,Phenomの2製品については,Phenom X3 8750のレビュー記事からスコアを流用した。このほか,テスト環境は表2のとおり。
※オーバークロック設定は自己責任であり,オーバークロック設定の結果,いかなる問題が生じても,筆者や4Gamer編集部,販売店,メーカーは一切その責を負いません。また,今回のオーバークロックテスト結果は,筆者が検証した個体についてのものであり,すべての製品が同じくオーバークロック可能であると保証するものではありません。
L2容量4MB&2.66GHz動作のE6750に迫る性能
多くのゲームでPhenom X4より速い
以下,「Core 2 Duo」「Phenom」の表記を省略し,「Black Edition」は「BE」と表記すること,グラフの見やすさを重視して,オレンジ系のバーで示すE7200のスコアをグラフの最上部に置かないことをお断りしつつ進めるが,グラフ1,2は,マルチスレッド処理に最適化された「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3Mark06)の結果だ。Core 2ファミリー内での比較では,同一の動作クロックであればL2キャッシュ容量の多いほうが有利である一方,それ以外は動作クロック順に並んでいる。E7200に対して,L2キャッシュ容量で1MB,動作クロックで140MHz上回るE6750は,もう少し高いスコアを示すかと思ったのだが,かなりいい勝負になっている。
CPUのコア数がスコアを左右するCPU Scoreでは,やはりPhenom X4/X3が有利だ。
描画負荷が高く,CPU性能よりはGPU性能がフレームレートを左右しやすい「Crysis」のスコアがグラフ3だ。1280×1024ドット以上ではGPUボトルネックが生じてスコアが頭打ちになるため,1024×768ドットで見ていくが,ここでも基本的には動作クロックに準じたCore 2ファミリー内での序列が出来上がっている。E6750とE7200,E6550のスコアの違いを見るにつけ,L2キャッシュ容量もスコアを幾らか左右している印象だ。
「その割にはE7200@3.16GHzとE8500のスコアは開いていない」と感じるかもしれないが,これは1024×768ドットでGPUボトルネックが生じているため。念には念を入れ,E7200のベースクロックを366MHz(実クロック3.46GHz)にまで引き上げてみたが,スコアは58.6fpsで,ほとんど変わらなかった。
また,E7200のスコアがPhenom 2製品のそれを大きく引き離している点にも注目しておきたい。
続いては,比較的描画負荷の低いFPSを二つ,「Unreal Tournament 3」と「Half-Life 2: Episode Two」だ(グラフ4,5)。描画負荷が低くなると,CPUのパフォーマンスがフレームレートを左右しやすくなるが,こうなるとL2キャッシュ容量が効いてくる。とくにUnreal Tournament 3において,動作クロックが同じE7200@3.16GHzとE8500の間に生じているスコアの違いや,1024×768ドットでL2キャッシュ容量4MBで2.33GHz動作のE6550が,同3MB,2.53GHzのE7200を上回っているあたりは顕著だ。
E7200とPhenomでは,前者が安定して高いスコアを見せている。Unreal Tournament 3もHalf-Life 2: Episode Twoもマルチスレッド処理に対応したゲームアプリケーションだが,現実的にはまだまだ動作クロックとキャッシュ容量がゲームパフォーマンスを左右する印象である。
TPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)から,実ゲームに近いスコアが出やすい「Snow」テストと,CPUベンチマークの色が濃い「Cave」テストの結果をグラフ6,7に示した。SnowではどのCPUでもほとんど差がない。ロスト プラネットをプレイするに当たって,今回のハードウェア構成なら,どのCPUを使っても体感速度は変わらないだろう。
一方,CPUベンチマークとなるCaveでは,さすがにPhenomが有利だ。もっとも,E7200@3.16GHzはX3 8750のスコアを上回っている。
最後は,CPUのシングルスレッド性能が比較的素直に表れやすい「Company of Heroes」だが,ここでは1024×768ドットと1280×1024ドットでE6550とE7200のスコアがほぼ同じ(グラフ8)。動作クロック200MHz程度の差が,L2キャッシュ容量1MBの違いで埋まってしまっているわけだ。もっとも,解像度が上がってGPU負荷が上がってくると,L2キャッシュ容量よりも動作クロックの影響のほうが大きくなり,E7200が若干有利となる。
なお,これはE7200@3.16GHzとE8500の間にも当てはまる。また,E7200は定格動作でもX4 9800 BEに完勝だ。
劇的ではないものの
消費電力は確実に低減されている
45nmプロセスで製造され,L2キャッシュ容量も少ないということで,Core 2 Duo E8000番台より一段低い消費電力が期待されるところだが,実際はどうだろうか。以下の4条件における消費電力をワットチェッカーで計測した。
- アイドル時(EIST有効):Windowsの起動後,30分間放置した直後。省電力機能「Enhanced Intel Speedstep Technology」(以下,EIST)有効
- アイドル時(EIST無効):Windowsの起動後,30分間放置した直後。EIST無効
- 3DMark06実行時:3DMark06を30分間連続実行し,その間で最も消費電力の高かった時点
- 午後べんち実行時:MP3エンコードソフト「午後のこ〜だ」ベースのCPUベンチマーク「午後べんち」を分間連続実行し,その間で最も消費電力の高かった時点
流用元の記事で省電力機能有効時のスコアを取得していないため,Phenomの2製品については省電力機能有効時のスコアがN/Aとなる点をご理解いただきたい。結果がグラフ9となるが,動作電圧を1.15Vに固定しているE7200@3.16GHz,BIOSから「Auto」に設定してあるE7200とも,65nmプロセスで製造されるE6750やE6550と比べて,劇的ではないが確実に消費電力は低減されている。
一方,マザーボードが異なるため参考値となるPhenomだが,3DMark06実行時や午後べんち実行時といったロード時の消費電力では,Core 2 Duoとは比べるべくもない。もちろん,コアの数が異なるのだから高くて当然という見方はできるのだが,ゲームにおける消費電力当たりの性能が,Core 2 Duoほど高くないのも確かだ。
定格でもオーバークロックでも有力な選択肢
2008年5月時点における“2万円以下CPU”の本命か
まとめに当たって,まずは先のパフォーマンス速報時に触れられなかった点,定格動作時における65nmプロセスのCore 2 Duoとの違いに注目してみよう。
さらに,オーバークロックについても,Crysisの追試を行ったときに造作もなく3.46GHzで動作したことを考えると,少し無理をすればまだまだ上を狙えそうな気配。もちろんオーバークロックはすべて自己責任となるが,E8500を超えるレベルも狙えそうだ。
性能と消費電力,価格のバランスは非常に良好で,これから1〜2万円台のCPUを購入しようとしている人にとっては,大いに注目すべき選択肢の一つといえる。この価格帯における,2008年5月時点の本命といっても過言ではないだろう。
- 関連タイトル:
Core 2
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