テストレポート
ゲーマー向けデュアルGPU&SLIソリューション「Skulltrail」の可能性を探る
Xeon対応チップセット+nForce 100で
SLIサポートを実現
対応メモリはPC2-6400までのDDR2 SDRAM FB-DIMMで,4スロットで最大4ch接続をサポート。これまた,一般的なデスクトップPC向けメモリモジュールであるDDR2 SDRAM DIMMは利用できないので注意が必要だ。乱暴にまとめると,「Intel 5400という,サーバー&ワークステーション向けチップセットを採用し,対応CPUも対応メモリもデスクトップPCとはまったく異なるD5400XSに,Core 2の名を被せた倍率ロックフリー版Xeonを組み合わせたもの」が,Skulltrailだったりする。
一方,現時点で3-way SLI(やQuad SLI)はサポートされていないようで,入手した評価機にも3-way SLI用ブリッジコネクタは付属していなかった。試しに別途用意したブリッジコネクタを使って3枚差しを試みたが認識されなかったので,少なくとも2月4日時点で3-way SLIは動作しないという判断でよさそうだ。
nForce 780i SLIと比較
電源をかなり選ぶ(?)Skulltrail
テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.1に準じるが,現時点でSLIの効果がないと確認できている「RACE 07: Official WTCC Game」のテストは省略する。また,8コアシステムを利用したときにベンチマークスコアが向上することが分かっている「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロストプラネット)は,今回のテスト環境でテストが完走しなかったため,こちらの結果も割愛する。
ロストプラネットが完走しなかった理由については,正式発表前のBIOSやドライバの可能性があるが,CPU負荷の高い同タイトルが完走しなかったこと,そして,同じくCPU負荷が高いほかのゲームタイトルでも,かなりの割合でテストが中断し,やり直しを余儀なくされたことを考えるに,電源周りに原因を求めることもできそうだ。
Intelは,Skulltrailのテストに当たって容量1000W以上の電源ユニットを推奨(※2CPU+2GPU+メインメモリ4GB時。2CPU+4GPU+メインメモリ8GB時は1400W以上推奨)しており,スペック面では今回の電源ユニットで条件をクリアしている。しかし関係者によれば,「CPUに12Vを1系統割り当てるだけで済ませている電源ユニットでは,CPU負荷が高い局面でコケる」とのことで,このあたりが問題になった可能性を指摘できよう。Skulltrailシステムの発売までに,対応電源ユニットなどの詳細が明らかになることが望まれるところだ。
なお以下本文およびグラフ中で,Striker II Formulaは「nF780i」と表記する。
SLIのメリットは明らかだが
FB-DIMMが最大の壁に
というわけで,肝心のテスト結果に移ろう。グラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)の総合スコア(3DMarks)をまとめたものだ。3DMark06はマルチスレッドに対応しているうえ,総合スコアにCPUベンチマーク結果も加味されるため,8コア環境のSkulltrailが高いスコアを叩き出している。とくに1024×768ドットの「標準設定」において,nF780i+SLIで出した値を,Skulltrailシステムがシングルカード構成のまま出している点は注目に値するだろう。
解像度1280×1024ドットの標準設定という,3DMark06のデフォルト設定時における3DMarksの詳細スコアをまとめたのがグラフ3だ。CPU ScoreでSkulltrailがnF780iを大きく上回るのは当然として,むしろここではSLI構成時のスコアに注目したい。というのも,SM2.0 ScoreとHDR/SM3.0 Scoreともに,SLI構成時にはnF780iがSkulltrailを上回っているからだ。
この結果はもちろん,nF780iのほうがSLI環境としての最適化が進んでいるというのも一因だろうが,それ以上に影響していると思われるのが,Coreマイクロアーキテクチャがデビューしたタイミングで掲載した「Xeon 5160/3GHz」のレビュー記事においても目立った,FB-DIMMのパフォーマンスの低さである。
そこで,レギュレーション5.1からはいったん離れて,システム情報表示&総合ベンチマークスイート「Sandra XI」(Sandra 2008.1.12.34)の「Memory Bandwidth」と「Memory Latency」をシングルカード構成でチェックしてみる。すると,同じPC2-6400のデュアルチャネル動作でありながら,FB-DIMMのメモリバス帯域幅は一般的なUnbuffered DIMMの6割強に留まり,レイテンシも大きい(グラフ4,5)。Xeon 5160レビュー時の繰り返しになるが,Skulltrailにおいても,このFB-DIMMが最大のネックになるだろう。
それを踏まえて,実際のゲームにおけるパフォーマンスをチェックしてみる。まずはFPS「Crysis」のGPUスコア(Benchmark_GPU)だが,高負荷時のSLIスコアで若干nF780i有利となるが,ほぼ同じといっていいだろう。8コアシステムであることのメリットも,FB-DIMMを採用することのデメリットも,ここではあまり出ていない。
同じくCrysisから,グラフ8,9はCPUスコア(Benchmark_CPU)をまとめたものだが,基本的な傾向はGPUスコアと同じ。ただし,描画負荷の低い状態では,8コアのメリットをかいま見ることもできる。
続いてもFPS「Unreal Tournament 3」(以下,UT3)だが,ここではSkulltrailシステムがnF780iに有意な差を見せる例がある。シングルカード構成では,1024×768ドットだけ,SLI構成時は1920×1200ドットまで安定して,Skulltrailのスコアが上位だ(グラフ10)。
UT3では大別して二つのスレッドが実行されていること,また,描画負荷が軽く,GeForce 8800 GTXの768MBというグラフィックスメモリ容量で足りると想像できることからして,シングルカード構成の1280×1024〜1920×1200ドットでスコアが変わらないのは理解できるだけに,1024×768ドットでだけスコアが高い理由は少し悩むところだ。だが,Crysisと同じように,描画負荷が低く,グラフィックス性能が十分に足りている状態では,8コアで(例えばマルチコアに最適化されているグラフィックスドライバなどの)“何か”が効率よく処理されるのかもしれない。そう考えると,CPUコア数が増えることでSLI構成時のスコアが伸びるのも納得できる。
一方で,CrysisのGPUスコア以上にSkulltrailでパフォーマンスが上がらないのが,「Half-Life 2: Episode Two」(以下,HL2EP2)である。結果はグラフ11,12のとおり。シングルカード構成でもSLI構成でも,(メインメモリ容量の多い)SkulltrailのベンチマークスコアはnF780iのそれを下回っており,FB-DIMMという足枷(あしかせ)の存在を見て取れる。
RTS「Company of Heroes」のスコアもHL2EP2と同様だ(グラフ13,14)。標準設定のSLI構成時には250fpsを超えており,最早まったく体感できる違いではないのだが,それでもほとんどの場面でnF780iのスコアのほうが高い事実を見逃すわけにはいかないだろう。
最後に,システム全体の消費電力をワットチェッカーにより測定したものがグラフ15である。ここではOS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,MP3エンコードソフトベースのCPUベンチマークソフト「午後べんち」と3DMark06を30分間同時実行し,その間で最も高い値を示した時点を「高負荷時」とする。なお,45nmプロセス版XeonベースとなるC2E QX9775は,省電力機能「DBS」(Demand Based Switching。Enhanced Intel SpeedStep Technologyのサーバー/ワークステーションCPU向け拡張版)をサポートするはずなのだが,今回のテスト構成ではD5400XSのBIOSに設定項目が用意されていなかったため,省電力機能は無効化して測定している。
さて,グラフを見てみると,Skulltrailのスコアはさすがに高いと思うかもしれないが,実はこの値,何度やり直しても測定中にシステムがフリーズしてしまうため,やむなくフリーズ時のスコアを取得したもの。実際にはもう少し高い消費電力になるはずだ。いずれにせよ,Skulltrailは電源周りの要求がかなりシビアな可能性が高そうで,「とりあえず推奨容量を超えていれば大丈夫」というわけには行かない気配である。
現時点ではゲーマーにとって時期尚早
Nehalem世代のブラッシュアップに期待
D5400XSの裏面 |
I/Oインタフェース一覧。PS/2は廃されている |
オーバークロック対応ということで,ボード上に電源&リセットボタンを用意。POSTコードを表示する7セグメントLEDも搭載する |
マルチスレッドに最適化された,ロスト プラネットのCPUベンチマーク「Cave」のスコアが取得できていれば,もう少し印象は変わったかもしれないが,それでも「ゲーマーが大枚をはたいてSkulltrailシステムを構築しても,ほとんどの場合,CPUパフォーマンスを持て余すことになる」という結論は覆りそうにない。その意味でSkulltrailは,ゲーマーのためのウルトラハイエンドデュアルCPUシステムなのではなく,「ハイエンドのデュアルCPUシステム」ありき,そのうえで3Dパフォーマンスに妥協したくないという(一般PCメディアがターゲットとするような)人向けの存在だ。当てはまる人は確実にいるはずで,その層からは一定の支持を集めるのではなかろうか。
Nehalem世代のSkulltrail後継システムでは,CPUがメモリコントローラを内蔵し,さらにFB-DIMMの採用が中止される見込み。そのころにマルチスレッド対応タイトルの数が増えていれば,状況は変わってくるだろう。Intel純正プラットフォームが公式にSLIをサポートした記念碑としてSkulltrailを捉えつつ,ゲーマーとしては次世代に期待したい。
- 関連タイトル:
Core 2
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