［CJ 2007＃19］PvP完全特化型MMORPG「Fury」，日本展開もある？

Tony Hilliam氏（CEO＆Director, Auran）

　オーストラリアのゲームデベロッパであるAuranは，MMORPG「Fury: Unleash the Fury」（以下Fury）を引っ提げてChinaJoy 2007に出展していた。E3 2006でプレイアブル展示された同タイトルは，2007年7月6日からワールドワイドなクローズドβテストも始まるなど，開発は順調のようだが，その割にはなかなか表に情報の出てこない作品だ。
　実は，2006年のChinaJoyには，「F」のロゴをあしらった揃いのTシャツを身にまとう，ナゾの白人の一団が何度か目撃されていた。ゲームメーカーのようではあるが，どこにもブースを出している気配がない。それを不思議に思っていたのだが，AuranのCEO兼ディレクターであるTony Hilliam氏によれば，それは同社の一団で，2006年はパブリッシングに関連した調査のためChinaJoyに参加していた（※出展はせず）とのこと。いきなり冒頭から個人的な話で恐縮だが，1年越しの疑問がようやく解決した次第である。

■Unreal TournamentのようなMMORPG!?
■PvPに完全特化したRPGの正体とは

　ところで，Hilliam氏に「このゲームはどんなゲームか」と聞いたときに返ってきた言葉は「Unreal Tournament」だった。FPSのようにPvPを楽しむためのRPG，それがFuryの基本コンセプトとなっている。
　Hilliam氏は，延々と野原に出かけて狩りを続けるような時間のかかることは無駄だと切って捨てる。また，延々とゲームを続けてボスキャラを倒した人だけが，さらに強力なアイテムを手に入れるというのは公平ではないという。
　そういった労力なしにゲームを始めることができるように開発されたのがこのFuryで，オンラインゲームの面白さのうち，対人戦（PvP）だけを取り出して磨き上げているとのことだ。

　PvPというと，MMORPGのPKなどで嫌な思いをした人もいるだろうが，FuryのPvPは，かなりスポーツライクである。……そう聞くと「ギルド ウォーズ」（以下GW）と似ているなと思った人も多いのではないだろうか？　Hilliam氏は，GWと比べたときの違いを4点にまとめてくれた。

　まずGWでは，PvEパートとPvPパートが存在しているのだが，Hilliam氏はそれを“妥協”とする。
　GWは，PvEとPvPの両方のモードを楽しめるという言い方もできるが，PvEだけをやりたい人がGWを選ぶ理由はほとんど存在しないだろうから，それも分からない理屈ではない。「（オンラインRPGが）『PvPに特化させたいけどPvEもできるよ』的な実装に落ち着くのも無理はないと思う。ただ，それは妥協の産物だ」とはHilliam氏。FuryではPvEをまったく含まないが，この決断は実に潔い。

　次に，クランなどといった人為的な関係ではなく，“誰にでも味方がいる”という，Furyが持つ特別な関係性について。Furyは，サーバー単位で国のような扱いになっており，同じサーバーの人はすべて味方となり，異なるサーバーの相手はすべて敵である。仮にFuryが50台のサーバーで運営されているとすると，あるサーバーに所属するキャラクターは，残る49個のサーバーにいるキャラクターすべてから攻撃される可能性がある一方，同じサーバーに所属するほかのキャラクターは，絶対的に仲間なのである。
　ちなみにFuryでは，サーバーは国単位でどんどん追加していくことが可能で，最終的には数百万人規模にまで拡大していけるという。

　3点めはジャンプである。GWではジャンプはできなかったのだが，Furyではジャンプを使ったアクションを使用できる。
　ちょっとFuryをプレイしてみて驚いたのは，走りながら横っ飛びジャンプで木を避けると，木の枝から三角跳びのように跳ねて屋根の上まで登ってしまったことだ。使い方によっては非常にトリッキーな動きができ，戦闘でも役に立つことがあるかもしれない。
　ただ，ジャンプを使って攻撃をかわすようなことはできないという。ターゲットは，視線が切れるか，40m離れないと解除されない仕様だそうだ。対戦型RPGにはありがちだが，近接メインのキャラにはつらい仕様となっている。「ターゲットからの離脱は，スネアやスローなどを駆使して行うことになる」（Hilliam氏）とのことだ。

　最後に，Furyでは，強い攻撃を超高速で連発することはできない。速い攻撃は弱い。大ダメージを与えるためには，少し溜めてからでないと強い攻撃はできない。速度と打撃強度は両立しないのだ。実に常識的な設定といえるだろう。

■2007年秋にはオーストラリアと欧米でサービスイン
■2008年には中国展開となり，日本は……

　さて，Furyは，このようにPvPに特化したMMORPGである。戦闘は，［W/A/S/D］の各キーで基本的な移動操作を行い，数字キーでショートカットを実行していく。近接攻撃，各種遠隔攻撃，魔法といった要素があり，さまざまな武器とさまざまなスキルを利用可能だ。

　キャラクターを延々と鍛えるような“苦行”はないが，一般的なRPGにおける成長要素のようなものは組み込まれている。となると，どうしてもやり込んだ人が有利になってきてしまうだろうが，大人と子供ほどの力の差は出ないようなシステムとなっているという。
　面白いのは，キャラクターの成長にレベルという概念がないこと。代わりに「ランキング」が10段階用意されており，ランキングごとに一定のポイントが用意されるシステムになっている。ポイントはランキングによって70～120が与えられ，プレイヤーは，このポイントを消費することで，スキルを覚えたりアイテムを買ったりするわけだ。
　アイテムなどに，職業ごとの制限は一切ない。プレイヤーの好きなようにキャラクターを設定できる。


　気になるサービス展開だが，まず2007年10月にアメリカ，ヨーロッパ，オーストラリアでサービスが開始される。2008年にはアジアで展開予定という。（ChinaJoy 2007に出展していることからも想像がつくように）Auranが最も重視しているのが中国で，その市場規模もさることながら，PvPを非常に好む国民性に期待するところも大きいという。
　ちなみに中国のあとは，韓国，日本，台湾の順でアジア展開を行う予定とのこと。日本国内サービスの具体的なスケジュールは決まっていないが，すでに何社かと交渉は持たれているようだ。

　最近は相応に認知度が上がったとはいえ，まだまだPvP不毛の地といってもよい日本。しかし，忘れてはならないのは，日本が格闘ゲームの生まれた国でもあることだ。ルールの下に対等な条件で戦える場があれば，のめり込む人も少なくないのではないだろうか。
　既存のMMORPGとは，見事なほど正反対の方向に邁進を続けている，オーストラリアの雄に期待したい。（aueki）