インタビュー
やや不人気だった魔族に再評価の兆し? コミカライズを含む今後の展開を「AION」新プロダクトマネージャー に直撃
今回4Gamerでは,新たにAIONのプロダクトマネージャーに就任したパク・ナナ氏に,先日のオフラインイベントを振り返ってもらいつつ,今後予定されているさまざまな展開についても話をうかがってきた。AIONプレイヤーはぜひ読んでみてほしい。
“Episode 2.6”やコミカライズの話が飛び出した「AION」のオフラインイベントレポート
「The Tower of AION」公式サイト
“映画館”を貸しきって行われた前代未聞のオフラインイベント
本日はよろしくお願いします。
大阪でのイベントが盛況のうちに終わりましたが,振り返ってみて今の感想はいかがですか。
AIONプロダクトマネージャー パク・ナナ氏(以下,パク氏):
こちらこそ,よろしくお願いします。
今回のオフラインイベントは,弊社にとって初めての“映画館”という会場で行えたことと,再び大阪で開催できたことの二重の意味で,とても嬉しかったですね。
4Gamer:
おや,前にもイベントで大阪に行っていたのですか?
パク氏:
ええ。日本でAIONのクローズドβテストが始まる前,先行体験会を行うために,一度大阪へ行っています。あのときは会場に300名近くの方が来てくださったのですが,暑い中何時間も並ばせてしまい,申し訳なく思っていました。いつか再び大阪でイベントがやれたらいいな,とずっと考えていたんです。
4Gamer:
しかし皮肉なことに,空調のトラブルだったのでしょうか,当日は会場内がかなり蒸し暑くなっていましたね。
パク氏:
あれは,会場内の一部空調設備のトラブルだったようです。来場されたお客様には蒸し暑い思いをさせてしまい、申し訳なく思っております。
4Gamer:
あの中で大型のスポットライトや,50台弱ものハイスペックPCがフル稼働していましたからね……。というか,あれだけの数のPCを設置するのは,ものすごく大変だったのでは。
パク氏:
そうなんですよ。まず,ステージと観客席の間の狭いスペースに,机や椅子を人数分並べる段階で,まるでパズルゲームを行っているような状態でした。その後もPCを動かすための電源が全然足りなくて,最終的にはワーナーマイカルシネマズ側と交渉し,一時的に電圧を上げてもらいました。また,劇場内にはインターネット環境がないので,無線LANの環境をイチから構築しています。
4Gamer:
映画館側にとっても,きっと初めての経験だったのでしょうね。
あとは,最長3時間という制限があったのも大変でした。Episode2.5の紹介やユーザー参加型イベントだけでなく,Episode2.6やコミカライズのサプライズも盛り込まねばならくて,どの要素をカットするのか本当に悩みました。
ちなみに,イベントの終了後は急いで撤収して,その直後に映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」を普通に上映していました。
4Gamer:
万が一撤収が遅れでもしたら,ジョニー・デップも黙っていなかったでしょうね(笑)。
それにしても一体どうして,映画館でオフラインイベントを行うことを企画したのですか?
パク氏:
弊社は以前から,オフラインイベントにはとくに力を入れています。お客様と直接顔を合わせることで,スタッフ一同いろんな刺激を受けますし,彼らを良い意味で驚かせてあげたいんです。また何よりも,彼らに対する感謝の気持ちや誠意を,目に見える形で伝えたいという思いがあり,それを実践しています。
4Gamer:
映画館以外でイベントを行う可能性もあったのですか?
パク氏:
今回は最終的にワーナーマイカルシネマズさんで行いましたが,それとは別に遊園地やショッピングセンターなどとも,交渉を進めていました。
ほかにも,いろんな場所で検討していますよ。たとえば,AIONのファンがイベントに参加するだけでなく,そこにAIONをまったく知らないような,一般の方たちも交えて楽しめたら素敵じゃないですか? あとは,船の上とかもいいなぁ……。
4Gamer:
そういったアイデアを,実際に形にしてしまうところが凄いですですよね。
今回は大阪でしたが,次はどの地域でオフラインイベントを行ってみたいですか?
パク氏:
個人的には,福島ですね。
4Gamer:
なるほど。御社が言うのなら,きっと真剣に検討されたんでしょうね(関連記事)。
パク氏:
いざ開催するとなると我々スタッフはともかく,お客様が来られるのかということまで考える必要があり,そこで断念しました。ですので別のアプローチを考えた結果,被災されたネットカフェの事業者様に対し,PCの無償貸与をはじめとした支援を行っています。
女性PDの視点で「スタイリッシュ」さを標榜するAION
新たにプロダクトマネージャーに就任された,パクさんについて話をお聞かせください。先ほどちらりと話が出ましたが,日本版のAIONには,立ち上げ当初から携わってこられたんでしたっけ。
パク氏:
そうですね。2011年の1月にプロダクトマネージャーに就任しましたが,行っている業務に関しては,実は以前からそれほど変わっていなかったりします。ジャン(※)と二人三脚で切り盛りしていましたので。
(※ジャン・ションヨン氏:AIONの前任プロダクトマネージャー)
4Gamer:
ジャンさんがプロダクトマネージャーだった頃の運営チームの活動は,プレイヤーからも高く評価されていたと思います。その点で少し気になったのですが,あのポリシーは今も引き継がれているわけですね。
パク氏:
ええ,そこは安心してください。ジャンは今,韓国のNCsoft本社に戻って海外事業部の担当として動いています。またいつか,お会いすることもあるかもしれませんね(笑)。
4Gamer:
楽しみにしています。
パクさんが就任されてからのAIONの動きですが,ちょうどその頃にキャッチコピーが「スタイリッシュMMORPG」に変わっています。これはパクさんの発案ですか?
パク氏:
そうですね。ご存知のとおり,AIONのローンチ当初は「完成型MMORPG」というキャッチでした。ゲームコンテンツに自信があるからという理由だったのですが,これは人によっては,ハードルの高さを感じる要因にもなっていました。そのイメージを払拭したかったんです。
「AIONならではの良さってなんだろう?」とあらためて考えた結果,洗練されたキャラクターデザインやグラフィックスなどから「スタイリッシュ」という言葉が思い浮かび,これだ! と思いました。
4Gamer:
AIONのオフラインイベントを取材するときによく感じるのですが,ほかのMMORPGタイトルとは参加者の客層がちょっと違いますよね。NCJのほかのタイトルとも違います。なんていったらいいのか,普通のいまどきの若者が多いですね。
パク氏:
そうですね。レギオン単位やカップル,そして夫婦で来られる方がとても多いんです。そういった風に遊ばれているのなら,アピールの仕方も変えていく必要があるんじゃないかな? って思ったんですよ。
PKから始まる恋愛モノ? AIONのコミカライズが決定
ステージイベントのサプライズとして,AIONのコミカライズが発表されました(関連記事)。この企画を行った経緯についてお聞かせください。
パク氏:
企画として立ち上げたのは,今から約1年前です。AIONの新規プレイヤーを増やすためのアプローチを構築したい,という思いがきっかけです。さまざまなコンテンツを模索したのですが,この日本においてオンラインゲームと親和性が高いものとなると,やはり“コミック”は外せないな,と。
4Gamer:
ゲームのコミカライズというだけなら,割とよく見かけます。しかし今回は“オンラインゲーム”で,なおかつ“実際にあるワールドが舞台”というところが面白いですよね。
パク氏:
従来のコミカライズは,ゲーム内の世界だけで物語が完結していたり,ゲームの世界観を用いてストーリーが展開されたりするタイプがほとんどです。でもそれだと,オンラインゲームならではの醍醐味って,あまり伝わらないじゃないですか。
4Gamer:
ゲーム内のキャラクター同士のやりとりだけでなく,“プレイヤー同士のやりとり”がごっそり抜けていますからね。
パク氏:
オンラインゲームと,そのプレイヤー達が登場する作品というと「.hack」が有名です。あれをさらに推し進めて,オンラインゲームならではの面白さ,そしてAIONならではの面白さを,どういった風にコミカライズするのがベストなのか,この1年ずっと考えていました。それを形にしたのが,この前のイベントで紹介したPVです。
先日のイベントで,主人公の少年が所属するワールドが“イズラフェル”に決まりました。実在するワールドであるイズラフェルの様子が,漫画にどのような影響を及ぼしていくのでしょうか?
パク氏:
まず,漫画の主人公やその仲間達がイズラフェルの魔族でプレイして,ヒロインの女の子が天族という設定は確定です。そのほか分かりやすいところでは,主人公が友達を誘うときに「ワールドはイズラフェルな!」と言ったりとか。例えばですが,漫画の中で“要塞戦”を行う際,ワールド内で活躍されている方に指揮官として登場して頂くこともあるかもしれません。
4Gamer:
一般プレイヤーやレギオンの名前を,漫画に登場させるんですか?
パク氏:
もちろん,プレイヤーさんに許可を取るのが前提ですが,可能性としては大いにアリでしょうね。
4Gamer:
逆に,NCJの運営スタッフが漫画内のキャラクターに扮して,ゲーム内に降臨するというのはどうでしょう?
パク氏:
それも悪くないですね。イベントでPVを公開したときは,かなり良い反響でした。ほかにもあっと驚く仕掛けを用意していますので,ぜひ楽しみにしてください。
天族・魔族を含めイズラフェルを盛り上げていきたい
コミカライズの舞台として今回選ばれたのが,AIONの中で現在もっとも勢力差の激しいワールドだったというところが,個人的にいろいろと感慨深かったですね。
パク氏:
誤解される方がいるかもしれませんが,あれはヤラセではないですよ(笑)。
ちなみにリハーサルのときは“シエル”だったんです。我々としては,魔族が現在優勢なシエルが選ばれてしまったら,漫画のストーリー作りに苦労するかもなぁと心配していました。
4Gamer:
現在イズラフェルの魔族は,かなりの劣勢を強いられています。インスタンスに行こうと思ってもパーティが編成しにくかったり,RvRで勝てない期間が続いたりすることで,一部のコンテンツがなかなか遊べない状況が生まれがちです。
パク氏:
劣勢種族に対しては“RA”(レースアシスタンス)関連のイベントで随時サポートしていますが,これも限度がありますね。ご指摘のとおり,全ワールドの統計を見ても,イズラフェルは勢力差が最も激しいです。
4Gamer:
私自身,サービス開始時からイズラフェルの魔族でもプレイしているので,もう少し語らせてください。ああいった逆境でもPvP/RvRを盛り上げようとしている人はいますし,一人のプレイヤーとしても尊敬しています。彼らの努力がいつか報われるといいな,あるいはせめて,勢力比への影響を手ごたえとして実感できるようになればいいな,と常日頃から思っています。ですが実際には,そのためのハードルがとても高いです。
なので今回,漫画の舞台としてイズラフェルが選ばれたときは,本当に嬉しかったんですよ。
パク氏:
AIONのゲームバランスはPvPを軸に設計されていて,ここに対して無闇に運営が介入するわけにはいきません。要塞IDやパシュマンディル寺院といったコンテンツへの挑戦権も,見方を変えるとRvRの報酬ですし。仮に誰でもいつでも挑戦できるのなら,RvRに対するモチベーションも下がってしまうでしょう。
ですので,コミュニティを盛り上げるというアプローチで,イズラフェルの魔族を盛り上げていきたいです。コミカライズはちょうどいいきっかけですね。
優勢種族側のプレイヤーの中には「自分達が強いからいいじゃん」と考えている人もいるかもしれませんが,それは違うんですよね。PvP/RvRが盛り上がる瞬間というのは,キャラクター個人の装備が揃ったという面白さとはまるで次元が違う興奮が味わえますから。勢力差が極端についてしまうと,あの面白さに触れにくくなるわけで,つまるところ劣勢だけでなく,優勢側のプレイヤーにとっても不幸なことでしょう。
パク氏:
現在のそういった状況は,天族と魔族の人口差が原因で,更に辿っていくとプレイヤーが最初に種族を選ぶ段階で,極端なイメージを植えつけてしまっていました。この部分に関しては反省しています。
Episode2.5ではグラフィックスがリニューアルされ,日本人プレイヤーが魔族を敬遠する理由はなくなります。あとは私達運営側の努力次第で,フラットな所まで持っていけるはずです。天族・魔族共に盛り上げていきたいですし,コミカライズの舞台となったイズラフェルを,その象徴にしていきたいですね。
4Gamer:
期待しています。それでは最後にAIONプレイヤーに向けて,プロダクトマネージャー就任にあたってのメッセージをお願いします。
パク氏:
個人的には女性のプレイヤーさんが,AIONを遊んでることを周りの友達に自慢できるようなMMORPGにしていきたいです。キャッチコピーを“スタイリッシュMMORPG”に変えたときも,実はそんな想いを込めていました。いつかAIONの“女子会”もやってみたいですね!(笑)
4Gamer:
今回はありがとうございました。
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