インタビュー
AION開発者インタビュー,AION 2.0を機に全世界統一仕様から各国ローカライズ体制に移行,その新要素や方向性を聞く
本日はよろしくお願いいたします。
日本のサービス開始から1年ということで,これまでのサービスを振り返ってみていかがですか。
イ・ジホ氏:
韓国のほうでは,さらに1年経過しているんですけれど,あっという間に過ぎたなと思うほど,慌ただしい1年でした。日本で,新たに1周年を迎えたということで,非常に感慨深いと思っています。
4Gamer:
AIONは現在韓国でトップクラスの人気ゲームになっていますよね。MMORPGだと先行タイトルが有利で,大きな勢力を持っているゲームのほとんどは,かなり初期に始まったタイトルなわけですが,比較的最近始まったタイトルで目覚ましい結果を出されています。その理由はどの辺にあるとお考えですか。
イ・ジホ氏:
まずは,弊社のリネージュやリネージュIIといった大きなタイトルによる,会社のブランドパワーというのが根底にあったのではないかと思います。弊社の場合は,製品を早く市場に出すことよりは,とにかくクオリティを高めることに手間をかけています。ですので,そういう風に時間をかけてクオリティを確保したことが,よい結果に繋がったのではないでしょうか。
AIONの場合,具体的に「この部分がすごくよかった」と大きな特徴があって,そこが受けているゲームというよりは,MMORPGの基本的な部分が,全体的にバランス良く取り込まれているということが,人気に繋がったのではないかと思います。
4Gamer:
これは,韓国でサービスを始める前から,このくらいの反響はあるだろうと見込んで開発していたのでしょうか。
イ・ジホ氏:
正直,予想を上回る反応でした。その当時は,韓国のMMORPGマーケット自体も,決していい状態ではありませんでしたし,そんなに大きな反響を受けるとは予想しなかったんです。ですが,実際にスタートしてみたら本当に多くの方が参加してくださって,嬉しい結果となりました。
4Gamer:
当時韓国では,MMORPGではなくて,カジュアルゲームであるとか,FPSであるとか,むしろ小さめなゲームのほうに業界全体が流れていましたよね。その中で,大きなMMORPGを出したというのは,会社の方針なんですか?
その辺に関しては,いついつ市場に出す,というのを先に考えたというよりは,ずっと前から準備していて,それがやっと完成し,完成したから市場に出しただけで,周辺の状況というのを最初から考慮していたわけではありません。
4Gamer:
韓国以外の地域,日本・欧米・中国,台湾などでは若干苦戦気味と聞いています。どの程度苦戦気味なのかは分かりませんが,そのあたりの状況と原因について,何か考えていることがあれば聞かせてください。
イ・ジホ氏:
正確な原因については,私ではお答えできないと思いますので,今から申し上げるのはあくまで個人的な意見です。
まず,韓国の場合はプレイヤーの意見を聞いて,それをすぐにゲームに反映できるスピードを持っているということですね。また,韓国では,開発者,つまり多くのスタッフがいて,問題にすみやかに対応できる,そういった仕組みができています。つまり,それだけ多くの人を投入して対応しているということです。しかし,海外の場合はプレイヤーの意見を聞いて,それを修正し,ゲームに反映するまでかなりの時間がかかっているのです。
それと,AION1.9バージョンまでは,すべての国に対して同じオプション,同じ内容でサービスをしていましたので,その国ごとのニーズというものに対応できませんでした。私が思うには,こういった部分が大きな要因だったのではないかと思います。
4Gamer:
いろいろ問題が起きたときにスピーディに対応できるとのことですが,日本での状況は,サービスが始まった途端に,トラブルの連続になっていました。その辺は韓国NCsoftさんから見てどうだったのでしょうか。
イ・ジホ氏:
日本だけでなく,いろんな国で一緒にサービスをしていますので,その部分に関しては開発ではどうしようもない状況でしたが,本当に残念でした。今までは,とにかくゲーム本体を開発することに集中していましたので,ほかの部分に力を割くことができなかったんですね。
しかしこれからは,そういった問題を解決することに集中したいということで,海外開発チームを新たに結成しました。
4Gamer:
新しく作られた海外開発チームというのは,何をするところなのか教えてください。
今までは,海外のプレイヤーのニーズを積極的にゲームに反映することができませんでした。ですので,海外のそういったユーザーの意見を取り入れたり,海外の嗜好にあったものを作る必要性がかなり大きくなり,開発チームの中に,海外開発チームというのを別途作って,海外に対応することになりました。
4Gamer:
現在,AIONはいくつかの地域でサービスされているわけですが,地域ごとの特色とか要望とかで違いはありますか。
イ・ジホ氏:
もちろんあります。例えば,PvPの場合も,国ごとにPvPを楽しんでいる国もありますし,あまり楽しまない国もありますよね。例えば,アメリカとヨーロッパを比較しますと,ヨーロッパのほうがPvPや,要塞戦を楽しんでいるという傾向があります。つまりヨーロッパの人のほうが攻撃的な傾向があるということです。それに反して,日本の場合はお互いが殺しあうということよりは,そうじゃないというものを望んでいるということです。
また,アメリカでは一人でプレイをする人というのが,かなり見受けられます。ちょっと入ってきて,クエストを一つか二つこなして,ログアウトするという傾向の人が多いんですよね。パーティプレイはアメリカでは好まれていないような気がしますね。それから,1回ログインをしてプレイをする一人当たりの時間なんですけれど,西洋の人よりも東洋の人のほうが若干長いという傾向があります。
4Gamer:
AIONのコンセプトは,PvPvEということで,対人戦がどうしても中心になっているわけですが,そういうPvPを好む人と好まないという人がいるということに関しては,どのように対応されますか?
イ・ジホ氏:
楽しみ方というのは人によって違います。実は,ゲームを作った当時の予想とは非常に違った調査結果が出たことがあります。当初,RvRを好む人ばかりが集まると思っていたのですが,実際分析をしてみたら,そうではない人もゲーム内に大勢いたのです。
ゲームのコンテンツには,かなりこだわっていますので,RvR以外のコンテンツもかなり用意してあります。ですので,RvR以外のコンテンツを好む人,楽しむ人というのが,予想よりも多かったということですね。とくにクエストの場合は,日本やアメリカのほうが,韓国よりも好まれているような気がします。
4Gamer:
1.9までは,同じバージョン,同じ内容でやっていて,ということをさっきおっしゃっていたんですが,それ以降は少し変えているということでしょうか。日本では,一部のダンジョンでちょっと違いがあったと思うのですが,そういったことを世界的に行っている部署があるということでしょうか。
イ・ジホ氏:
実は1.9では,特別な変更点というのはありません。2.0から本格的な変化が現れてきます。これから韓国で2.0とはまた違うバージョンをサービスする予定なんですけれども,大きく考えると,韓国向けのバージョンがあって,それとは別に海外向けのバージョンがあります。それから海外向けのバージョンの中でも,国別に若干差別化を図っています。
例えば要塞戦ですが,要塞戦の場合は国ごとのプレイヤーで非常に異なる傾向を示しています。ですので,各国のスタッフの意見を積極的に反映して,要塞戦の時間などを,国のニーズに合わせて変更したバージョンを2.0から適用していく予定です。
韓国バージョン以外の海外バージョンすべての共通点としては,プレイをより簡単にするための工夫というのを行っています。比べてみると,韓国のプレイヤーのほうがヘビーなプレイヤーが多いんですね。しかし,海外においてはそうではないということなので,プレイヤーの成長を補助するように調整しています。
4Gamer:
それはどのようなものでしょうか。
いくつかの例を挙げさせていただきますと,クエストの経験値は韓国よりも海外版のほうが高めに設定されています。で,そのほかには,死亡によるストレスを海外のユーザーはかなり感じているということなので,死亡したときに失う経験値をより少なくしたりなど,死亡時のコストを下げています。それからダンジョンでも重要なボスの場合は,韓国よりもドロップ率を上方修正しました。2.0では,これ以外にも多くの部分において,海外ユーザーの利便性を高めるための工夫を行いました。
4Gamer:
割と成長しやすいというか,ライト方向に振ったという感じですか。
イ・ジホ氏:
そうですね。
4Gamer:
韓国以外のすべてのバージョンがすべて同じという感じですか。
イ・ジホ氏:
先ほど挙げた内容は,海外共通部分ですね。それ以外にも,各国のニーズに合わせて細かい部分の調整というのは行っています。例えばペットの場合も,国別に良く売れているというものは違うと思いますし。そういった販売リストというのも確立する必要があると思います。
4Gamer:
ちょっと疑問に思ったのが,中国とかも割とライトに振っているわけですか? いろいろ話を聞くと,中国では韓国よりさらにヘビーな人が多いという印象があるのですけれど。
イ・ジホ氏:
おっしゃるとおりなんですが,韓国よりヘビーなユーザーというのは,実は一部で,中国でもそれ以外の多くのユーザーはライトな傾向にあると思われます。最近は,全体的にライトなユーザーの離脱というのが目立っていますので,そういった部分を改善して,もっと新規プレイヤーを獲得したいと考えています。
これまではコアプレイヤー中心の展開をするだけで手一杯でしたが,これからは,もっとライト層を対象とした展開をしていきます。MMORPGというのは,多くの人が一緒にプレイして初めて本当の楽しさというのが分かると思いますので,より多くのユーザーに楽しんでもらうということに力を注いでおります。
日本の状況と海外開発チームの展開
4Gamer:
日本でのサービスの現状についてどう考えていらっしゃるかを聞かせてください。
イ・ジホ氏:
日本市場の今の状況では,最初の頃よりプレイヤー離れが進んできています。ですので,2.0からは,今まで寄せていただいたプレイヤーの意見というのをゲームに反映して,どんどん改善していくというところに集中していきたいと思っています。
4Gamer:
そういうことをやるのが,海外開発チームなわけですね。
イ・ジホ氏:
そうです。
4Gamer:
日本特有の問題点として,種族の人気の違いが挙げられます。先日の運営インタビューでも出た話ではありますが,開発の方にもお聞きしたいと思います。日本では,どのサーバーも天族のほうが多いという状況なのですが,そういったことをどう考えていらっしゃるのか。あるいは,PvPの参加状況やユーザー離れなどについても,日本の状況についての問題点について聞かせてください。
今回日本にきて,日本人スタッフとこれらの問題に関して多くの意見交換を行いました。種族の人気の差は,日本が一番大きいと思っております。ヨーロッパの場合だと,むしろ魔族のほうが人気があるんです。韓国でももちろん差はあるのですが,さほど目立たない程度です。我々としては,種族の人気度の差を改善するというよりは,ワールドの人口の比率を問題視しています。ですので,ワールドの人口の比率の差に関しては,要塞戦を通じて解決しようと思っています。
4Gamer:
要塞戦で解決というのはどういうものですか。要塞戦でのバランスを中心に考えていくという話でしょうか。
イ・ジホ氏:
このワールドの比率の違いというのは,要塞戦において,一番影響が出てくると思われます。日本においても,要塞戦の勢力比というのが問題になっているということなので,それを解決していきたいということです。
4Gamer:
それはゲームの開発のレベルで何か仕掛けをして改善する方向に動くということですか。ある程度ハンデをつけるような仕掛けをしたりとか。
直接,種族のバランスには手を出さないのが開発ポリシーです。バランスをとるために,要塞戦の比率,というか勢力比をちょっと変えるかなと。要塞戦では,片方が非常に不利な状況になってしまうと,その不利な状況にある勢力のほうに助力するBUFFがあるのですけれど,そういったシステムを使ってバランスを取りたいと思っています。
4Gamer:
そのシステムは今も入っていますよね。
イ・ジホ氏:
そうですね。元々用意されてはいるのですが,発動しにくくなっていますので,それを発動しやすくする調整をするということです。
4Gamer:
こういうRvRだと,勝ったほうに特典がついて,もっと強くなってしまい,バランスの取りようがないものが多いのですが。
イ・ジホ氏:
その反対のシステムですね。
4Gamer:
そちらのほうで調整をしていくわけですね。
イ・ジホ氏:
そういうことです。
4Gamer:
最後にプレイヤー離れなどについての対策を聞かせてください。AIONで一番つらいというか,プレイヤーが離れていっているのが,レベル20から30くらいの間の,ソロでやってきたけれど,苦しくなってパーティに入らなければいけないけれど,なかなかメンバーも揃わず行くところがないという状況だと思うんですよ。そのあたりで,何か対策とかいったものは考えていらっしゃいますか。おそらく現状ではノフサナ訓練場がそれに当たるんだと思いますが,あれのさらにライトなバージョンがあってもいいかなという気もしますが。
イ・ジホ氏:
今回,2.0では,とくにそういった部分に気を使っています。ノフサナ訓練場以前に,ソロ用のインスタンスダンジョンを追加しました。それ以外にも,クエストなどのコンテンツを追加して,成長をより早くするといったものを追加しました。
AION 2.0以降の新要素を見る
イ・ジホ氏:
今ご覧になっているのは,先日世界同時公開した2.0公式映像で、冒頭では過去のAION,つまり1.9までのAIONを見せています。こちらは,飛行船に乗って龍界に進入するというシーンですね。
現在は,龍界内の拠点にいます。龍族が奪われた自分達の地を奪い返そうとしているところです。
船から飛び降りてましたよね。あれはゲームでもあのような演出でしょうか。
イ・ジホ氏:
ここはカットシーンで見るだけですね。
2.0の最大の特徴は,今までと違う要塞戦が実装されているということです。今までのアビスの要塞戦というのは,とにかく勲章を獲得するためにお互いが戦うという形でした。
今回,我々が準備したものでは,要塞戦そのものが終点ではありません。そこからまた何かに繋がるという部分に気を使いました。
また,3次元空間では,地形にあまり意味がありませんでした。ですので,飛べない場所での要塞戦のほうが楽しいのではないかと思いまして,そういったものを準備しました。
ご覧のとおり,要塞戦を通じて相手の陣営にいくんですが,要塞戦二つをクリアすると,その真ん中に通路が開かれます。その通路を通じて相手の陣営に行けるという形です。
これまであった,時空の亀裂のように,いつでもいけるというわけではなくて,同じ陣営の人たちが力をあわせて,要塞をクリアしないとなかなかいけないようになっています。で,相手のところに行って,またさまざまなコンテンツを楽しめるようになっています。
また,自分達の陣営で二つの城を占領すると,その間がつながるんですが,そこから,暗黒のポエタのような,最終的なインスタンスダンジョンに行くことができます。それに続いて,相手側の城を二つ占領すると,相手側のレイドボスに遭うことができます。
4Gamer:
要塞が何か所かあるわけですが,攻略に順番はなくてどこでもいいんですか。
イ・ジホ氏:
はい。どこからでもかまいません。
韓国でも,自分達の陣営の二つの城と,相手側の二つの城,この四つの城を占領したケースはまだありません。
両方とも龍族の地ですので,過去のアビスの龍族より,もっと自分達の地を取り戻すために必死になっています。で,その相手の陣営の城二つと,自分達の陣営の城二つを占領したときに出てくるレイドボスは,2.0で一番強力なボスとなっております。これは韓国のテストサーバーでも,一度も現れたことはありません。
また,自分達の陣営内の要塞を占領したとき,また相手側の要塞を占領したときに獲得できるコンテンツというものも,より豊かなものになっています。
4Gamer:
基本的なことですが,龍界ということで,今までの要塞戦と比べて,龍族というのはどのくらい関わってくるわけですか。
基本的に,フィールド全体において龍族が登場する場面というのが非常に多くなっています。元々,この地は龍族のものでして,今現在は天族と魔族が占領しているというコンセプトなんです。ですので,以前よりは龍族が登場する場面が多いと思います。同じく,要塞を取り戻すために,ドレドギオンで入ってくるということです。
4Gamer:
普通に飛んでやってくるほうのドレドギオンですよね。
イ・ジホ氏:
はい。
これが先ほど申し上げましたレイドボスです。
これ以外にもクロメデのインスタンスダンジョンというのがあります。これは,ソロのコンテンツをもっと補強しようという目的で作ったものなんですが,全世界で,炎の神殿というのが一番人気があるということだったので,クロメデをコンセプトにした,ソロのインスタンスダンジョンを追加しました。こちらは,プレイヤー離れが激しいレベル37から40のプレイヤーの成長を助けるもので,レベル41まで全体的にカバーしています。これは韓国では非常に人気が高く,ライトユーザーの場合は1日1回は必ずプレイをしているといってよいほどです。ソロインスタンスダンジョンではあるのですけれど,経験値も高いですし,良い武器や防具も獲得できます。
4Gamer:
難易度的にはどうなんでしょうか。レベル37でも別に問題ないくらいですか?
イ・ジホ氏:
ソロインスタンスダンジョンですので,クラスによる差は大きいと思います。ですので,すべてのクラスで,低いレベル,低い武器を使っていろいろ試しながら作りましたので,全体的に難度は高くないと思います。
4Gamer:
これって,クラスは関係あるんですか?
イ・ジホ氏:
プレイヤーの見た目はクロメデになるんですが,あくまでも自分のクラスで戦います。
4Gamer:
なるほど。
イ・ジホ氏:
日本語ではどう訳されるか分からないのですが,ハラメルインスタンスダンジョンと呼ばれるところです。レベル18では,パーティクエストですとか,パーティミッションというのがなかなか難しくて,クリアできないというのが現状で,そこからまた離れてしまうプレイヤーが多いのですけれども,そういうことで,レベル18からレベル20のプレイヤーが簡単にミッションをクリアできて,また成長できるようにするためのものです。
このインスタンスダンジョンを実際プレイしていると,パーティミッションをするうえでも非常にプラスになる要素があります。それから,非常に見た目がカッコいい,ビジュアル的にも優れた装備がたくさん得られるので,この装備をゲットするためにサブキャラクターを作る人もいるほどです。
ここはレベル51から55を対象としたカスパーインスタンスダンジョンです。最高レベルまでの成長を助けるために,多くの経験値と報酬を与えるところです。このダンジョンは,ダンジョンの中で,かなり多くのスキルが付与されますし,職業クラスと関係なく,非常に力が強くなって,敵と戦って簡単にクリアできるようになっています。クラスは関係なく,本当に多くの相手と戦うとことになっておりますので,そこから痛快感というか爽快感を感じられるダンジョンです。
4Gamer:
ここもソロのインスタンスダンジョンですか。
イ・ジホ氏:
はいそうです。
4Gamer:
ソロの状態で,51から55まで上げることができるということですね。
イ・ジホ氏:
ソロだけやりたい方だとそうですね。しかし,ここはクールタイムが非常に長いので,2日に1回くらいしかできません。
これら以外にもパーティダンジョンで,ウダスの神殿と捨てられたウダスの神殿があります。こちらに出てくるノーリリムという種族は,AIONのストーリーと非常に密接な関係があります。これを実際プレイしたら分かるところなんですけれど……,ナウシカに出てくるような巨神兵を作るという話とも関わりがあります。
こちらのAI・人工知能なんですけれども,非常に多様な形で,難易度も多様にして工夫を凝らしました。しかし韓国のほうでは,今までのインスタンスダンジョンより難しいという評価を受けています。ハードコアなプレイヤーには非常に喜んでもらっていますが。
パーティインスタンスダンジョン以外にも,フォースインスタンスダンジョンというのが追加されました。こちらは12人で楽しむことができます。
こちらのダンジョンは,アビスの一番真ん中にある城を占領したときに入れる「深淵の残骸」というところです。こちらから出現するモンスターにも非常にAIに工夫を凝らしました。
4Gamer:
AIに工夫したという部分を具体的になにか挙げてもらえますか。
今までは,単純な形で力任せで攻略できたのですけれども,これからはプレイヤー同士,クラス間で戦略が必要だったり,力を合わせなければいけない仕組みになっています。先ほど画面にも出てきたんですが,二つに分かれるモンスターの場合は,二つを両方同時に攻略しなくてはいけません。
4Gamer:
両方同時に倒さないと片方が復活しちゃうとかそんな感じですか。
イ・ジホ氏:
そうです。
それ以外にもさまざまなペットが追加されました。このペットの場合は,日本専用で追加したものもあります。
また,2.0ではさまざまなモンスターが追加されました。
さらに韓国では「風の道」と呼ばれるシステムも入っています。まるで空の高速道路を走っているような感じで,この高速道路を一度通ると,非常にスピードが速くなります。進入と離脱が自由な構造になっていますし,簡単に利用することができます。また,これを利用しないと発見できないコンテンツというのもあります。
4Gamer:
レイドボスが出るのは普通のフィールドなんですか。
イ・ジホ氏:
大きく3種類のレイドボスがあるんですが,このフィールドの中からも出てくるということですね。
龍界の中で天族が占領している地域と,魔族が占領している地域,それぞれで出るレイドボス。それから,それ以外にもドラマタと呼ばれるボスいます。これは,それぞれの占領地域で特定条件を満たさないと倒すことができないボスとなっています。そのフィールドのレイドボスより多くの人数が必要ですし,かなりの攻略研究が必要となります。
4Gamer:
特定条件というのは,そのボスのいる場所以外で揃えるものがあるんですか? それともその場所でなにかということですか。
イ・ジホ氏:
特定の条件というのは,そのボスがいるエリアに侵入するための入場条件なんですけど,いわゆる入場券と考えればいいと思います。
先ほど要塞の真ん中と紹介した場所に,パーティでの(非レイドでの)最終ボスといわれる「ルードラー」というボスがいます。パーティ単位の戦闘で得られる一番いい装備を,このボスから得ることができます。その分,攻略は,非常に厳しく,難しいです。開発者すらテストでなかなか討伐できなかったくらいです。しかし,もらえる装備のよさというところから考えると,このボスからもらえる装備が一番ですね。
このルードラーというボスは,次のアップデートまでは,今の暗黒のポエタのタハバタのような位置付けになると思います。
4Gamer:
ちなみに,タハバタは最近は結構倒されているものなのですか。
イ・ジホ氏:
そうですね。韓国ではレベル55のプレイヤーも利用できるようになっていますので,今までは攻略できなかった人が,レベルアップをして攻略できるようになっています。もともとタハバタは初期の仕様ではレベル55の人は行けないという設定だったのですが,韓国でかなりの要請があって変更ました。変更してからは,かなり利用率が上がっています。
4Gamer:
なるほど。
イ・ジホ氏:
最近はSランクでの募集もかなり増えていますね。もちろん,みんな55レベルで。強くなって再チャレンジするといった感じですね。
4Gamer:
龍界については,行くだけならば割と簡単なんですよね。そこで本格的に戦うとなると,それなりに装備を揃える必要があるのでしょうか。
イ・ジホ氏:
以前に比べますと,むしろレベル50のプレイヤーが非常に成長しやすくなっています。例えば,クエストの報酬も,よりいいものになりましたし,得られるアイテムというのも非常にいいものになりました。ですので,デイリークエストでもいいですし,ほかのものでも,着実に地道にプレイするといい装備が得られる構造になりました。
4Gamer:
ビジョン映像だとシステムにもいろいろ絡んだような大きな変更があっちこっちにあったと思うんですが。
イ・ジホ氏:
それはあくまでも未来ビジョン,未来映像ということなので,それのすべてを現時点で準備しているわけではないんですよね。しかし,これからその一つ一つを実現するように準備を進めております。
4Gamer:
ビジョンというのは,3.0そのものではなく,3.0からその先までこういう風にしたいよという考えで作られたものだと思えばいいのでしょうか。
イ・ジホ氏:
バージョンの数字というのは,私はあまり重要ではないと思うんですね。その映像の中にあったものでも,3.0の前に実装することもあると思いますし,3.0以降に実装されることもあると思います。
4Gamer:
個人的に気になっているのは,グラフィックスレベルの向上の部分です。それはゲームシステムとかとは直接関係ないものだと思いますが,もしかしたら早く入ってくるということもありえるんでしょうか。
イ・ジホ氏:
それにはお答えできません(笑)。それが実際に出る前に,話すのはあまりよくないと思いますし。
4Gamer:
ぜひ早めに,お願いします。
さて,現状までを見れば,大きなライバルは不在だったかもしれません。今後はFF14なども出てきますし,大きなMMORPGがいくつか出てきますが,AIONの開発スタンスというのはこれからどうなるんでしょうか。
イ・ジホ氏:
そうですね,作る側としては,いつどの作品が発売されるのかは分からないので,それを意識しながらは作るということはしておりません。もちろん,新しい似たようなゲームが発売されたときは,どのような楽しさがあるのかというのが非常に気になりますし,チェックしたりはします。
しかし,むしろ気を使っているのは,同じジャンルのゲームではありません。例えば2.0からは,TwitterがAIONに追加されました。ですので,このように時代の流れにあわせた要素を取り込むということを気にしています。こういったコミュニティ機能もどんどん追加していきますし,時代に遅れないようなMMORPGを作ることに力を注いでいます。
4Gamer:
AIONのTwitter機能は,ゲーム内でスクリーンショットを撮ってそれを送ることができるとものになっていますよね。
そこは補足いたしますと,最初は本当に簡単で、基本的な機能だけを入れるつもりで導入しました。しかし,意外と韓国での反応がよくて,機能の追加要請をかなり受けている状況です。また、Twitterの使用率が高い北米のプレイヤーからもいろんな要請がきています。
4Gamer:
最後に,AIONの今後と来年の2周年に向けての意気込みを一言お願いします。
イ・ジホ氏:
今回は仕事のために日本にきたのですが,ちょうど「The Tower of AION」1周年ということで,こういうインタビューをするチャンスもいただけて非常に感謝しておりますし,光栄に思っております。これからも毎年AIONが発展して,10年後もこういうインタビューができればなと思っています。我々が思うには,日本ではまだMMORPGは活性化していないと思っています。ですので,より多くの日本のプレイヤーにMMORPGの楽しさを知ってもらい,MMORPGを楽しんでもらうための努力をこれからも続けていきたいと思います。これからもAIONをよろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
AION 2.0での大きな路線変更は,これまでのハイエンドコンテンツの拡張を中心としたものから,ライト層を逃さない,どんな人でも楽しめる内容を充実させていく方向も重視していくことのようだ。より遊びやすく,そして各国に合わせたローカライズや調整を加えていくということで,ややピーキーな傾向のあったバランスが,1年を経て,新たな局面を迎えようとしている。インタビューの中でも,具体的にこれまできつかった部分での救済策が続々と導入されることがうかがえる。
また,これまでもプレイヤーの要望を汲んでいないわけではなかったのだろうが,全世界統一仕様となると,反映されるのも簡単ではなかったと思われる。各国の運営サイドの裁量がもっと反映されるようになれば,より快適なプレイが期待できるようになるだろう。
ちなみに,クラスバランスについても少し聞いてみたのだが,かなり調整は進んでおり「スピリット以外はどれも強いと思う」とのこと。氏の使っているのはスピリットウイングだそうで,改善しようと提案しても,自キャラがスピリットだと意見が通らないと嘆いていた(青芝も入っているかもしれないが)。
1年目の展開でセキュリティ強化,FSやSPの独立によるサービス体制の強化を整え,全体的(世界的)な方針でのライト層重視の展開と,各国へのローカライズ,カルチャライズ対応の両面によって,2年目を迎えたAIONは,かなり遊びやすいタイトルに変貌しようとしているようだ。
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