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印刷2006/06/07 16:48

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[COMPUTEX 2006#02]ATI,Intelの基調講演でRadeon対応版「Havok FX」を発表

Rick Bergman氏(Senior Vice President,PC Business Unit, ATI)
 COMPUTEX TAIPEI 2006の会場では,IntelのAnand Chandrasekher(アナンド・チャンドラシーカ)氏による基調講演が行われた。その模様は改めてお知らせするが,基調講演の最中に,ATI Technologies(以下ATI)の上級副社長であるRick Bergman(リック・バーグマン)氏が壇上に登場し,GPU(グラフィックスチップ)を使って物理シミュレーションをアクセラレートする「Havok FX」のATI版を披露した。その概要は2006年6月6日の記事でお知らせしているが,ここでは改めて,その発表内容をお知らせしていきたい。

■Havok FXは効果物理サブシステム

 「Havok FX」はHavokの物理シミュレーションミドルウェア「Havok 4」を構成するサブシステムで,「FX」は「Effects」(効果)を意味し,効果物理を意味する。

 Havokによれば,物理シミュレーションには大別して2種が存在するとのこと。一つはゲームの進行に密接に関わる物理シミュレーションで,同社はとくにこれを「Game Play Physics」(ゲームプレイ物理)と呼んでいる。例えば,敵との衝突判定などがこれに当たる。
 一方,ゲームプレイ物理の結果から連鎖的に起こるもので,ゲームの進行からは比較的独立した物理シミュレーションは「Effects Physics」(効果物理)に分類される。壁を銃撃したあとに飛び散る破片などは効果物理だ。ゲームプレイ物理を「親」としたときの「子」的な存在といえるかもしれない。

 効果物理は,処理としてゲーム進行から切り離されているため,並列処理に落とし込みやすく,マルチスレッド化しやすい。
 GPUは,プログラマブルシェーダ3.0(Shader Model 3.0,以下SM3.0)世代でピクセルシェーダユニットに条件分岐や動的反復などがサポートされたことで,非常に高度いプログラマビリティを手に入れた。ならば,GPUを使ってこの効果物理をマルチスレッド実装してしまおうということで,このコンセプトを実現したのがGPU版「Havok FX」というわけだ。
 よって,逆にいえばGPU版Havok FXには,ゲームプレイ物理をアクセラレートする素養はなく,ゲームプレイ物理はこれまでどおりCPUで実行されることになる。

■Havok FXがATIプラットフォームにも公式対応

 壇上に上がったBergman氏は「これからはBoundless(無限の可能性を秘めた) Gamingだ」と語り,「CPUとGPUが適材適所で仕事をしていき,最大パフォーマンスを得る」コンセプトとして,Cross Fire環境上でHavok FXを動作させるデモを披露した。
 デモでは,Intel 975X Expressチップセット搭載マザーボードにRadeon X1900シリーズ(詳細不明)搭載グラフィックスカードを2枚差し。これにCrossFire動作でグラフィックス描画を処理させ,3枚めのRadeon X1900(これも型番不明)を物理シミュレーション専用アクセラレータとして実行させるものだったのだ。なお,3枚めのRadeon X1900カードが,PCI Express x16接続なのか,それ以外のバス幅で接続しているのかは不明だ。

 デモの内容は,4000個のレンガを積み上げたタワーに,ボールをぶつけて崩していくというものだった。その模様は「こちら」(10MB,38秒:WMV)にUpしておいたので,ぜひ参照してほしい。
 レンガが崩れていくときは,1個1個の形状衝突判定が行われ,それぞれがバラバラの挙動を示す。CPUだけで処理しているときのフレームレートはたかだか8〜9fpsだったのに対し,GPUアクセラレーションに切り替えて実行させると,まったく“引っかかり”がなくなって,CPUで処理していたときの10倍以上のフレームレートになる。まるでアニメーションのようなスムースさだ。


4000個のレンガで組み立てられたタワーを崩すデモ


■余ったグラフィックスカードで効果物理をアクセラレート

 物理シミュレーションのアクセラレータといえばAGEIA Technologiesの「PhysX PPU」があるが,あちらはゲームプレイ物理のアクセラレーションにも対応している点がアドバンテージになる。対するHavok FXでは,SM3.0対応のGPUであればその種類を問わない。これがHavok FXのウリになるわけだ。
 Havokによれば,「Radeon X1000シリーズはミドルレンジクラスでも効果物理アクセラレータとしては十分高速である」としており,今後,例えばグラフィックスカードをアップグレードしたときに,「今まで使っていたグラフィックスカードは物理アクセラレーション用に転用する」といった流れがメジャーになるかもしれない。
 Havok FXは,GDC 2006でHavokとNVIDIAが共同発表した。このことからも分かるように,GeForce 6シリーズ以上にも対応している。つまりHavok FXは,GPUの種類は問わずSM3.0対応GPUであれば動作するのだ。Havokによれば,GeForceとRadeonの共存プラットフォームでも動作が可能で,たとえばGeForceでグラフィックス,Radeonで効果物理……といったコンフィギュレーションも可能という。GeForceからRadeon,あるいはその逆の道筋でアップグレードを果たしたユーザーも,アップグレード前のグラフィックスカードを無駄にしなくて済むのだ。

 Havokは,同社のWebサイトで「PhysX PPUにHavokを対応させる用意もある」と述べており,自分達が「ソフトウェア(ミドルウェア)カンパニー」であると明確に述べ,AGEIA Technologiesとは競合しない立場を主張している。
 Havok FX自体は今年の夏にリリース開始予定。Namco Bandai Gamesが発売予定の「Hellgate: London」などへの対応がアナウンスされている。(トライゼット 西川善司)

  • 関連タイトル:

    Havok

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    Intel 900 Express

  • 関連タイトル:

    ATI Radeon X1900

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