レビュー
人気シリーズの最新作が,久々にPC版でお目見え
SEGA RALLY REVO
» 長い歴史と伝統を誇るSEGA RALLYシリーズの最新作「SEGA RALLY REVO」。ラリーなのに他車と走ったり,激しくぶつかってもコースアウトしなかったり,車もダメージを受けなかったりと,いろんな面でアーケードよりの一本。シビアな“ラリーシミュレーション”を語らせたら北関東で10本の指に入らないこともないという4Gamerきっての走り屋ライター,UHAUHA氏がこの作品をレビューする。
SEGA RALLY“らしさ”は健在!
シリーズ最新作「SEGA RALLY REVO」がPCに登場
久しぶりにPC版として登場した,SEGA RALLYシリーズ最新作「SEGA RALLY REVO」。SEGA RALLYならではの面白さは引き継がれ,新たに“路面の変化”という大きなフィーチャーが追加された。プレイするたびに轍が変化するラリーゲームが,今まであっただろうか? |
SEGA RALLYはコンシューマ機では多くの作品がリリースされているが,ことPC版に限れば1999年に発売された「SEGA RALLY2」以来の登場となる。SEGA RALLYの新作が発表されるたびに,PC版の発売情報が一切ないことにガーガー文句を言っていた筆者としては嬉しい話である。
SEGA RALLYの人気の秘密は何か? 一般的なラリーとは異なり,本来1台ずつ走行するラリーカーが,何台もぶつかり合いながら派手にレースするという(現実のラリークロスに近い),荒っぽくも楽しいコンセプトだろう。手軽にラリーカーを操る面白さ,豪快なドリフトでコーナーを走り抜ける爽快感。ハイスピードでドリフトしながら,抜きつ抜かれつの熱いラリーレースが楽しめるのだ。
コーナーを曲がりきれなくてもコースアウトはしないし,スピンはしても横転やクラッシュによるダメージを受けることもない。小さなお子さまから大人まで,幅広い層のプレイヤーに楽しんでもらえる味付けにしてあるところがポイントだ。実際,7歳になる筆者の息子も父親の仕事の邪魔をしながら,ゲームパッド片手にラリーを楽しんでいたりする。
最新作SEGA RALLY REVOでは,アーケードゲームならではの手軽さ,SEGA RALLYらしい爽快感,とことんタイムを詰めていく面白さを踏襲しつつ,今までのラリーゲームにおそらくなかった“路面の変化”という要素を取り入れて,一段と熱いラリーレースが楽しめるようになった。
ライバルカーも同時に走行するSEGA RALLYでは,高速ドリフトバトルが展開される。団子状態でコーナーに入って追い抜いたときの爽快感がたまらない |
バンパー視点ではカメラ位置が低いせいか,跳ね上がる砂利などが激しく飛んでくる。バンパー視点のほかにはボンネット視点,外部視点(2種類)が用意されている |
最新鋭ラリーカーから往年の名車まで
チャンピオンシップはポイント制
従来の制限時間制が廃止され,残りタイムを気にせずレースに集中できる。チャンピオンシップを征するには常に上位入賞が必須。クイックプレイやタイムアタックも併用してコースの攻め方を極めたい |
チャンピオンシップには,現代の最新鋭ラリーカーで競う「プレミア」,ラリー用にチューンされたマシンで競う「モディファイ」,歴代のラリーカーで競う「マスターズ」の,三つのクラスが用意されている。
それぞれのクラスにはアマチュア,プロフェッショナル,エキスパート,ファイナルの四つのリーグがあり,上位になるほど難度が高くなる。リーグは一部を除き三〜四つのラリーで構成されており,ラリーの成績によりポイントが加算され,総合ポイントによってリーグ優勝が決まる。
最初はプレミアクラスのアマチュアリーグしかプレイできないが,アマチュアリーグで規定ポイントを獲得すると,上位リーグのプロフェッショナルリーグに挑戦できるようになる。プレミアクラスのすべてのリーグで高得点をマークできれば,モディファイクラスが挑戦できるという具合に,獲得したポイントで上位レベルのモードがアンロックされていく。
ほかのラリーゲームのチャンピオンシップモードのように,1シーズンを通して競うのではなく,好みのクラス,リーグを自由に選択してプレイできるので,一つずつ何度も繰り返しプレイするというプレイスタイルが採れるのは嬉しいところだ。
メニュー周りは非常に軽く,サクサク切り替えができて好印象だ。チャンピオンシップのクラス,リーグ,ラリーの獲得ポイントなどもメニュー画面で確認できる |
リーグは複数のラリーの獲得ポイントで競う。ライバルカーも派手にミスをするので,あきらめずに走り切るようにしたい。結果は最後まで分からないのだ |
冒頭でも触れているが,SEGA RALLYは5台のライバルカーを相手に周回コースを3周するラリーレース。最後尾からスタートして,3周のうちにライバルカーを抜いてトップでゴールするだけと,ルールは簡単だ。ただし,余裕で勝てるのはプロフェッショナルリーグくらいまでで,エキスパートリーグ,ファイナルリーグになると,コースレイアウトも難しく,ライバルカーも非常に速く,手ごわくなる。
ところで,今までのSEGA RALLYには制限時間があり,チェックポイントを通過するとタイムが加算され,タイムがなくなるとゲームオーバーとなった。昔のアーケードのレースゲームによくあったものだが,REVOではこの制限時間がなくなっている。
今回は純粋に順位を競うスタイルとなり,レースに集中できる半面,残りタイムが僅かなときに「ゴールまで間に合うか?」というドキドキ感がなくなったのが,SEGA RALLYファンは少し寂しく感じられるかもしれない。
チャンピオンシップのほかには,好みのコースを選んでレースをできる「クイックレース」,コースのベストタイムに挑戦する「タイムアタック」,画面分割での2人対戦および世界中のプレイヤーとネット対戦ができる「マルチプレイヤー」が用意されている。チャンピオンシップの進行状況によって,使用できるラリーカーやコースが徐々に増えていくのは“お約束”である。
レベルが上がるほどライバルカーは速くなる。後方を気にしてブロックラインを走るなど,抜かされない走りも必要だ。うしろばかり気にしてクラッシュしないように |
タイムアタックモードでは世界中のプレイヤーとタイム争いができる。ゴーストカーの表示も可能だが,気になって自分の走りができない人は非表示にもできる |
本作には最新鋭ラリーカーから往年のラリーカーまで,30車種以上が登場する。このうち一部を紹介しておくと,スバル インプレッサ WRX STI,三菱 ランサーエボリューション IX,フォード フォーカスRS,プジョー 206,トヨタ セリカ VVTi,シュコダ オクタビア キットカーといった,現在もラリー界で活躍中もしくは最近まで活躍していたラリーカーのほか,トヨタ セリカ ST205,ランチャ デルタHF インテグラーレ,ランチャ ストラトス,アウディ クワトロラリー A2など昔からのラリーファンであればプレイしたくてウズウズしてくるような車種まである。これらのラリーカーはチャンピオンシップモードで使用でき,それぞれ走行距離を積むことで2種類のカラーリングがアンロックされる。
このほかにも、車種そのものをアンロックするラリーカーもある(チャンピオンシップ以外で使用可能)。これは非常にマニアックなラインナップとなっており,ハマー H3,三菱 コンセプトX,アウディ スポーツ クアトロS1(1987年パイクスピーク優勝車),フォード RS200E,そして故コリン・マクレー氏の名を冠にしたコンセプトカーであるマクレー・エンデューロなど計15台。もちろん,チャンピオンシップモードの進行状況でアンロックされていくが,プロフェッショナルリーグの優勝など,条件が厳しいものもある。
●登場する車の(ごく)一部
Subaru Impreza WRX STI |
Mitsubishi Lancer Evolution IX |
Toyota Celica VVTi |
McRae Enduro |
Baja Dune Buggy |
Icelandic Racer |
こんな具合で,本作にはチャンピオンシップモードに関わる多くのアンロック要素が用意されており,すべてのコース/ラリーカーで走り回れるようになるには結構時間がかかる。リーグを終えるたびにアンロックされるものが多いため,「何か解除されるかな?」といった楽しみがある。また,アンロックには何がどれだけ必要なのかも分かるので,「〜をアンロックしてやろう」という狙った遊び方もできる。
轍(わだち)に翻弄されるのか
逆にうまく利用するのかが腕の見せどころ
どのコースもレースを忘れて見とれてしまうほど風景が美しい。バリエーションに富んだコースが用意されており,いずれもかなり細かく描き込まれているので,たまにはレースを放棄して風景を眺めるのも面白いかもしれない |
どのコースも,路面の質感や移り変わる風景は,現在発売されているドライブゲームの中でもトップレベルの美しさ。ラリーによって時間帯の違いもあるため,同じコースでも違う景色を見せてくれるし,走行中に動物の鳴き声や臨場感を演出する環境音が聞こえてきたり,飛行機が飛んだり,電車が鉄橋を通過したりなど,レース中にもかかわらず思わず見てしまうセガらしい演出も盛り込まれている。つい見てしまってハンドルを切り損ねてタイムロス,なんてことにならないよう要注意だ。
先行車の巻き上げる煙でコースの先が見えなくなることも多いので,しっかりコースレイアウトを覚えておきたい。リズミカルにコーナーを抜けられるかも重要なのだ |
道路脇でインド象が鳴いたり,ヘリが近づいてきて埃を巻き上げたり,轟音を立てて戦闘機が飛来したりと周回ごとに異なるネタが仕込まれているのが凄い |
挙動については「アーケード寄り」というよりも,はっきり「アーケードな挙動」と断言してしまっていいだろう。ラリーカー各車の挙動特性の違いは再現しているものの,プレイヤーが選べるのは,グラベル路面に強いオフロードタイプにするか,ターマックに強いオンロードタイプにするかだけ。一応,セッティングというメニューが用意されているが,画面中央にポツンとマニュアルかオートマかのギア設定があるだけ,という潔さである。
グラベルでは,アクセルオンのままハンドルを切るだけで簡単にドリフト状態になるし,ほかのラリーゲームのように,リアを流してカウンター(逆ハン)を当てながらドリフトをコントロールする必要もない。必要なときに「ちょんちょん」とハンドルを切り込んだり,カウンターを当てたりする程度でドリフトコントロールしていくタイプだ。多少オーバースピードで無理な走りをしても,“見えない壁”によりコースアウトはなく,速度が落ちる程度でラリーカーも壊れない。
こんな感じなので,中には「えー!」と思う人もいると思うが,一部のマニアをターゲットにするのではなく,初めてプレイする人,レースゲームがあまり上手ではない人,そして上級者まで,まさに万人が楽しめる(つまりアーケードゲームの狙うところ)というスタンスは初代SEGA RALLYから変わっておらず,個人的にはこういった手軽にプレイできるラリーゲームはアリだと思う。
なお,ゲームコントローラはフォースフィードバック機能付きのステアリング,もしくはゲームパッドでのプレイをお勧めしたい。路面から伝わる細かい振動のほか,轍を越えるときにも振動するため,挙動の変化を掴みやすくなるのだ。手軽にプレイできるゲーム性ということで,筆者はXbox 360のゲームパッドでプレイしたが,それほど繊細なハンドルさばきを必要としないゲームなので,十分プレイできる。
簡単にドリフトできるが,進入速度が高いとアウト側の壁に押しつけられる。ライバルカーがいると自分のラインで走れずに無理な走りを強いられることが多い |
コースアウトがないため,多少無理な走りをしても速度が落ちる程度で安心。ただし,うまく壁に当てないとスピンをしたり,急激に速度が落ちることもある |
本作で新たにフィーチャーされた「路面の変化」。路面が柔らかいところや雪上を走ると,ラリーカーが通り過ぎたあとに,タイヤ跡が「轍」(わだち)として残るようになった。
(当然ながら)路面の状態が綺麗な部分で最大限のグリップが得られるため,轍をトレースするように走れると,挙動を乱しにくく,ドリフトもコントロールしやすい。逆にドリフト中に轍を乗り越えたりすると突然リアが流れ出したり,滑ってアウト側に膨らんでしまったりするのだ。
しかし,轍を乗り越えたときの挙動変化を利用して,速度を維持したままラリーカーの向きを変えることで楽にライバルカーを追い抜けたりなど,タイムアップにも利用できるので,轍は奥が深い。
周回コースでは,2周目以降は新たにできた轍の上を通過することになるため,この轍をうまく利用できるかどうかも本作をプレイする上でのポイントになるのだ。
2周目以降は,自分とライバルカーが作った轍の上を走ることになる。リアルタイムに計算されて再現されるため,プレイするたびに違うところに轍ができる |
速度が高いほど,轍を乗り越えるときに挙動を乱す。ドリフト中に轍を踏むとアウトに流されるので注意が必要だ。轍という要素により,一段とゲーム性が増して面白い |
走行中のボディの汚れの変化にも注目したい。泥濘を走ると湿った泥が車体に付くのだが,そのまましばらく走行すると,湿った泥が乾いていく。再び泥濘を走れば泥が再び湿り気を帯びるし,ウォータースプラッシュ(水たまり)に入ると汚れが落ちたりもする。
この「汚れ」の再現は見事で,今までこれほどまでに汚れを再現したゲームはなかっただろう。ゲーム中は外部視点でしか気付かないところだが,走行後に見られるリプレイでボディの汚れもじっくり見てほしいところだ。
ラリーゲームの爽快感,興奮,面白さを
誰もが味わえるバランスが見事
コンピュータの操るライバルカーは“我が道を行く”状態で,追突や幅寄せは当たり前。何度もイライラさせられる。アクセルを緩めるのではなく,反対に押し返すくらいの勢いで競り合おう |
ライバルカーを追い抜くコツは,多少強引でもブレーキングを遅らせて前に出てしまうことだ。真うしろからの追突だけは大きく遅れをとることになるので厳禁だが,微妙にラインをずらしつつ並んでコーナーに入ると良い。ときにアウト側のライバルカーを使ってコーナーを曲がるという,CPUカー並の悪どい走法も必要になるだろう。まぁ,こういった強引な走りはSEGA RALLYの醍醐味ではあるのだが,マルチプレイでは避けておいたほうが無難かもしれない。
また,チャンピオンシップモードとクイックプレイモードでは,ライバルカーとのレースを熱いものにするために,「ブースト」(間隔補正)が入る。先頭とビリの差を縮めるため,後方の車は無条件で速度が上昇するというもの。これも昔から,アーケードのレースゲームにはよくある仕様だ。
ブーストのおかげで,途中でミスをして引き離されても先行車に追いつく可能性が残されており,最後まであきらめずに走れるわけだ。逆にクラッシュしたはずのライバルカーが,気がついたら真うしろにいたなんてことがあるから,ゴールまで気を抜かないようにしたい。
ちなみにチャンピオンシップモードのエキスパート以上の難度となると,ブースト関係なしに一つのミスが順位を落とすことになる。気合いを入れてプレイしてほしい。おっと,忘れるところだったが,マルチプレイモードではブーストの有無を選択できる。
筆者は久しぶりにSEGA RALLYをプレイしたわけだが,SEGA RALLY REVOでもSEGA RALLY“らしさ”は健在で,非常に楽しめた。なんといっても手軽にプレイできるところが嬉しく,原稿書きの息抜きに「ちょっと1リーグ……」などと言いつつ何リーグもプレイしてしまっている次第だ。
アーケードゲームほぼそのままの内容になっているため,シミュレータ要素を求めるプレイヤーには受け入れられない部分もあると思う。しかし,「これはSEGA RALLY」と割り切ってプレイするのもアリではないだろうか。ハイスピードのドリフトでインからライバルを押して,リズミカルにコーナーを抜けたときの言いようのない興奮は,多くの人に味わってほしいところである。
興味のある人は,「こちら」にある日本語体験版をプレイして,SEGA RALLYならではの挙動,轍を使った走り方,ライバルカーとのバトル,そして美しい風景やボディの汚れなどを確認してほしい。
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