レビュー
ベオウルフ 呪われし勇者【日本語マニュアル付き英語版】
» 現在公開中の映画のライセンスタイトル,「ベオウルフ 呪われし勇者」は,数で攻めてくる敵をバッサバッサと斬り倒す主人公ベオウルフが必要以上にマッチョで,しかも登場する女性が必要以上に薄着というなかなかの注目作。そんな本作を剣戟アクションの大ファンで薄着の女性も大好きだといわれるUHAUHA氏が斬る!
映画を観てからプレイしたい
「ベオウルフ 呪われし勇者」登場
映画は,J・R・R・トールキンの「指輪物語」にも影響を与えたというイギリス文学史上最古の英雄叙事詩「Beowulf」をテーマに,バック・トゥー・ザ・フューチャー三部作や「フォレスト・ガンプ/一期一会」といった多くの作品を送り出しているロバート・ゼメキスが監督したオールCGムービー。ベオウルフ役にレイ・ウィンストン,怪物グレンデルの母親をアンジェリーナ・ジョリー(アンジー)が演じる(といってもCGだが)ほか,アンソニー・ホプキンス,ジョン・マルコヴィッチなど豪華キャストが(しつこいようだが,彼らの演技を再現したCGで)登場しており,公開前から注目されていた一本だ。テレビCMで見た人も多いと思うが,水中から現れる妖艶なアンジェリーナ・ジョリーの姿に,ついフラフラと映画館に足を運んでしまった人もいるだろう。私のことである。
物語はこうだ。六世紀のデンマークを統治するフローズガール王は,宴を催すたびに現れては人々を虐殺する怪物グレンデルに苦しめられていた。そんな怪物の噂を聞きつけて,海を渡って現れたのが勇者ベオウルフ。フローズガール王は彼に「グレンデルを倒せれば,金色に輝く杯を褒美として与える」と言う。苦労の末,グレンデル撃退に成功したベオウルフは戦勝を宴に酔いしれる。しかし,翌朝,目を覚ました彼が目にしたものは,虐殺された兵士達の姿だった。かくしてベオウルフは,犯人であろうグレンデルの母親のもとへ向かうのであった……。
というわけで,プレイヤーはマッチョで気高い勇者ベオウルフとなり,従士と共に大群で襲い来る敵をバッサバッサと倒していくのである。謎解きやパズル要素などは一切なく(たぶん,勇者はあまり細かいことにこだわらないからだ),純粋な剣戟アクションゲームになっている。ゲームで描かれるのは,映画で触れられていない空白の30年間だ。
ちなみに筆者は映画を観てからプレイしたのだが,なんというかゲームの登場人物の扱いには疑問が残る。アンソニー・ホプキンス扮するフローズガール王は似ているものの,主人公のベオウルフは映画のベオウルフとあまり似ていないし,怪物グレンデルの母親はアンジーとは全然別人。おそらく,肖像権の問題なのだろうけど,感情移入という部分でちょっと残念だ。
なお,日本語マニュアル付き英語版ということから分かるとおり,ゲーム中のテキストや音声はすべて英語で,会話シーンでの英語字幕の表示もできないため,ヒアリングに頼るしかない。映画で触れられているシーンがゲームにも登場するので,このへんはあらかじめ映画を観ていれば補完できそうだが,映画で触れられていない部分も楽しむとなると,ある程度の英語力が必要になってしまうだろう。とほほ。
というわけで,さっそくベオウルフのゲーム性はどんな感じなのか見ていくことにしよう。「ライセンスものに当たりなし」なんていうジンクスが頭をよぎったりしないでもないのは事実かな。
襲い来る敵を蹴散らす血みどろの戦いが繰り広げられる
剣戟アクション
攻撃は単発ではなく,弱攻撃からフィニッシュ攻撃の組み合わせによるコンボ(ヒロイックフィニッシュと呼ばれる)を使った戦い方がメインになる。コンボを繰り出すのにややこしい操作は必要なく,弱攻撃(1〜3回)+フィニッシュ攻撃でお手軽に発動可能。使用する武器によって出てくる技は異なるが,大技になると周辺にいる敵が血しぶきを上げて一気に吹き飛ぶという気持ちいい演出が見られる。
またコンボを使うことでベオウルフのライフを示すヒロイックゲージ(水色のバー)が回復するため,自然にコンボを中心に戦っていくスタイルになるだろう。ちなみにベオウルフと一緒に戦いに参加している従士(つまり部下)は,ベオウルフの攻撃を受けてもダメージを食らわない。派手に暴れまくっても大丈夫だ。
武器は素手攻撃のほかに片手武器,両手武器,そして盾が登場する。武器には剣,斧,大斧,槍などがあり,片手武器の場合は盾も同時に持てるので,敵の攻撃を流したり,カウンター攻撃を狙いやすくなる。両手武器では盾を持てないが,一撃で大ダメージを与えられるのだ。通常の武器以外に耐久度や与えるダメージの大きい「伝説の武器」がある。これらは隠しエリアの発見やボスを倒すことで入手可能だ。
耐久度という言葉が出てきたが,盾を持った敵や鎧を着た敵に真っ向勝負で斬りつけても,攻撃はたいていガードされ,こちらの武器の耐久度が下がってしまう。耐久度が下がると最終的には壊れてしまうのだが,こうなると素手での戦いを強いられる。
戦闘中,ベオウルフもしきりに(英語で)「武器をくれ!」と叫ぶが,敵の攻撃を華麗にかわして怒りの鉄拳を敵に食らわすのも勇者らしくてカッコいい。とはいえ,素手のままでは苦戦を強いられるのは必至。幸い,要所に武器が置かれており,新たに武器を調達したり,違う武器に持ち替えたりは簡単だ。それでもなかなか武器が入手できないときは,敵に掴みかかり,そいつが使っている得物をサクッと奪い取ってもかまわない。
敵が近くにいるときのベオウルフの行動は,画面に現れる矢印ボタンでコントロールする。それぞれのボタンには,殴る,投げる,叩きつける,武器を盗むという行動がアサインされており,使用可能なものが黄色く光るので,それに合わせてタイミングよく方向キーを入力しなければならない。掴み攻撃に始まる一連の行動はボス戦の仕上げでよく使用するのだが,連続で光るボタンの方向と同じ矢印キーを正確に入力できないと次の攻撃に移れず,再び掴むところから始めることになる。ちょっとしたミニゲーム仕立てという風情だ。連打する必要がある場合もあり,気がつくと必死になって矢印キーを連打している自分がいて,ちょっぴり照れくさかったりして。
ベオウルフにはヒロイックゲージのほか,カーナルゲージ(オレンジ色に光っている)があり,このゲージはダメージを受けたり,カーナルフューリーキーを押し続けることで溜まっていく。そしてゲージがいっぱいになったときに発動できるのが,上にも書いたがカーナルフューリーである。これは,一定時間のみ肉体的制限が解放され,つまるところ“無敵”になる。こうなると,普段以上に野蛮で暴力的なベオウルフに変貌するのだ。
無敵ベオウルフは,攻撃力が上がって強さが一段と高まる半面,部下の従士へも攻撃が当たってしまうため,暴れているうちに従士も死んじゃった,なんてことも起きる。再びカーナルフューリーキーを押せば解除されるが,解除後(自動で終わった場合を含めて),一時的にダメージを受けやすくなるカーナルスタン効果があるので注意が必要だ。使いどころの難しいカーナルフューリーだが,「ここぞ!」というときには古代の蛮性を思い切り発揮してほしい。
従士の士気をいかに高めて戦うかが重要なポイント
拠点となるのがベオウルフの居城であるヘオロット城で,ここは従士の強化(アップグレード)が可能な「ウィグラーフの戦術卓」,ベオウルフ自身を強化できる「ウンフェルスとカインのコーナー」,ベオウルフの伝承を見たり,女王ウィールソウに会える「寝室」,ウルフガルが次の運命(進むべき道)を案内してくれる「バルコニー」が用意されているという,何かと便利な城である。
各エピソードの戦いぶりによって,アワードとしてベオウルフと従士それぞれが「マーク」を獲得できる。ウィグラーフの戦術卓とウンフェルスとカインのコーナーでは,それらのマークを消費してベオウルフと従士達を強化するのだ。ベオウルフは「カーナルフューリー持続時間の増加」「攻撃ダメージの増加」といった方向の強化が可能で,従士は「ヒロイックブースター(後述)の範囲を広げる」「防御力を増加させる」など,最大で5レベルまで強化できる。最初のレベルはマーク一つで強化可能だが,次レベルへは二つ,その次は四つと倍で増えていくため,どの項目を強化すべきかが悩みどころだ。
この強化という要素は,ゲームを進めていくうえで楽しみになると思うのだが,本格的にゲームのストーリーが動き出すACT1のエピソード4でヘオロット城を出発して以来,いつ城に帰って強化できるのだろうと思いつつエピソードがどんどん進み,次にヘオロット城へ戻ったのはACT2のエピソード9終了後ときた。たしかに強化にはマークがかなり必要になるし,城に戻れない長旅ムードを演出しているのかもしれないが,もうちょっと頻繁に強化でき,激闘を繰り返して強くなっていった感じを出したほうが良かったんじゃないかと思う。
さて,これまで従士という言葉を頻繁に書いたが,今さらながら従士とはベオウルフに仕える戦士達のことで,ゲームを共に戦っていく心強い仲間である。従士達は放っておいても敵を発見して戦ってくれるが,ときに従士に命令を下す必要に迫られることもある。これは従士命令インタフェース(左Ctrlキー)で行うのだが,従士の士気を高めるヒロイックブースター,ベオウルフのかけ声で扉のスイッチなどを操作するコンボブースト,従士を三人ずつのグループにしたり,それを解除するという四つの命令が用意されている。
筆者的に最も意表を突かれたのがコンボブーストだ。数人がかりで操作する扉の回転スイッチなどは従士達に命令を出すことで操作してくれるのだが,連中,モタモタしていてなかなか完了しない。その間にもどんどん敵が湧いてくる。そこで,コンボブーストを使って気合いを入れてやるわけだ。オラオラ,もたもたしてんじゃない! そこの赤ら顔,もっと力入れて! という感じでしょうか。
コンボブーストは画面上に円形のゲージが表示され,そこに沿って移動するマークが中央に来たときにタイミングよくボタンを押して発動するというリズムゲームのノリだ。マークは短い(前進キー:W),長い(後退キー:S)の2種類あり,これを押し分けることによって従者の行動が素早くなるというあんばい。「ジャン,ジャン,ジャーン」という感じで押すのだが,それに併せてベオウルフが腕を振り上げて威勢の良いかけ声を放ったり,コンボに失敗して従士達が転けてしまったりなど小粋な演出もあり,思わず笑ってしまった。
ベオウルフにとって従士は一心同体的な存在で,何人の従士が行動を共にしているかは,ヒロイックゲージの上にある水色の丸の数で分かる。従士の人数はヒロイックゲージと連動しており,従士が倒されて人数が減るとヒロイックゲージも減ってしまうのだ。また,従士の士気にも関連しているため,ベオウルフがダメージを受けてヘロヘロになっていると従士達も「ダメだ……」と弱まってしまう,可愛いヤツラである。もちろん,ベオウルフが敵の攻撃を華麗にかわして攻撃を繰り出したり,従士が敵に囲まれてたこ殴りにされているのを助けたりすると,「俺達も頑張るよ!」と士気がググっと高まるのだ。
この士気の高まりはベオウルフと従士の体から放たれる青いオーラとして表示されるが,前述の命令インタフェースにあるヒロイックブースターを使うと,従士の士気は最高潮に達して素晴らしい働きをする。実際にプレイしてみるとよく分かるが,士気を気にせずプレイしていると,ザコ敵相手でも従士が全滅してゲームオーバーになってしまうことがあるが,士気を高く保つような戦い方を意識していると意外なほど楽に進んでいける。従士の士気という要素によって,ベオウルフの偉大さが演出されており,プレイヤーが自然に勇者っぽい戦いをするような仕掛けになっているのだ。
お手軽な剣戟アクションを楽しみたいならこれだ
剣戟アクションという視点から見れば,たくさんの敵を相手にコンボで蹴散らしていく爽快感は素晴らしく,ストレス解消に役立ちそうだ。しかし,基本的に敵の攻撃を交わしてカウンターを繰り出すだけで勝てたり,コンボによってベオウルフのダメージが回復されるというシステムのせいか,ベオウルフ自身が死ぬということは数えるほどしかなかった。トロールに連れ去られる住民を守りきれなかったり,従士が全滅しちゃったりという理由でのゲームオーバーを何度も味わったのだが,ベオウルフが死んだというのは,せいぜいボス戦くらい。難度調整がもうちょっと足りないという感じがあり,やるかやられるかといった緊張感が薄く,ゲーム全編で単調な戦いになりがちだ。まあ,無敵の勇者なのだから,このくらい強くてもいいのかもしれないが。
海外サイトなどでは非常に辛口の評価を目にする。同意できる部分もないわけではないが,個人的には「そこまで言うかな」である。はっきり言って,筆者は驚くほど楽しんでベオウルフをプレイしてしまったのである。個人的に面白かったのは,やはり従士の存在を常に感じさせてくれるゲームシステムだ。従士が全員倒されるとゲームオーバーになるせいもあるのだが,自分が戦闘中でも従士の誰かが危険な状態になっていれば戦いを止めて助けに向かったり,手遅れで死んでしまうと戦力低下にガッカリしたりするといったところに,類作にはない新しさを感じたのである。
従士達のがんばりで戦いを有利に進められるというシーンも多く,ベオウルフ一人だけの活躍ではなく,一緒に行動する仲間達の存在が生かされている。ヒーローの獅子奮迅の活躍によって味方の意気が上がり,戦況が有利になるというのはいろんな映画で見られるシーンだが,すごく格好よくて好きだ。その雰囲気をゲームで味わえるわけである。わんさか向かってくる敵を前に,ベオウルフのかけ声と共に味方の士気を一気に上げる青いオーラが放たれた瞬間,さすがに腕は振り上げなかったものの筆者のテンションも上がってしまった次第だ(単純?)。
映画が面白かったという人はプレイして損はないと思う。いくつかクリアの難しいエピソードはあるものの難度はそれほど高くなく,比較的手軽に挑戦できる剣戟アクションに仕上がっている。古代の英雄ベオウルフとなって,血まみれで破天荒な冒険を繰り広げよう。
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