インタビュー
レベルキャップに達してからのやり込み要素を最重視「仙魔道」開発者インタビュー
オープンβテストのタイミングで来日していた,Gamaniaグループで本作の開発を担当するAliBangBang Digital GamesのVice Presidentである張宇傑(Jack Cheng)氏とガマニアデジタルエンターテインメントオンライン事業本部第1事業部ディレクター稲川義章氏にいろいろ話を聞いてみた。
本日はよろしくお願いいたします。仙魔道はかなり長い期間にわたって開発が進められていましたが,どのような部分に時間がかかっていたのでしょうか。
Cheng氏:
台湾では3年間ほど開発作業をしていましたが,日本でサービスするに当たって,日本のガマニアでの市場調査を参考にして,カスタマイズアイテムやクエストの用意に時間をかけていました。
稲川氏:
当初RvRをコンセプトとしていた作品をGvG中心に変更したり,日本からの要望でクエストを増やしてもらったりしていました。
4Gamer:
クエスト数はかなり増えたのですか?
稲川氏:
毎回のバージョンアップごとに100単位で増えています。
Cheng氏:
クエストだけでも2000以上になりますね。
稲川氏:
これだけ量があるとテキストを読むだけでも大変なのですが,クエストは全体的なストーリーにもつながっていますので,ぜひ飛ばさずにテキストを読んでいただきたいところです。
4Gamer:
根本的なところからお聞きしますが,仙魔道をこういう東洋的な世界観のゲームにしたのはなぜでしょうか。
このゲームの開発を始めた頃に,台湾や韓国では東洋的な世界観のゲームが少なかったので,東洋的なゲームを作ろうと思いました。「仙」と「魔」という言葉のイメージにしても西洋と東洋ではかなり変わってきます。西洋では,どうしても妖精と悪魔のようなイメージになるのですが,東洋的な世界観ではもっと内面性の違いとして捉えられており,文化的な違いがあります。
仙魔道では,仙と魔の選択でストーリーが変わってきますし,仙と魔では受けられるクエストの傾向も違っています。
4Gamer:
東洋系ということでは,もう少し普通の武侠系というのは考えなかったのでしょうか。
Cheng氏:
武侠系ですと,派閥の区別がはっきりしていて少林寺拳法のような具体的なイメージになりますよね。仙魔道ではもっと幻想的なイメージの東洋的なファンタジーを作りたかったんです。
4Gamer:
仙魔道を作るうえで,もっとも力を入れた部分はどこでしょうか。
Cheng氏:
いちばん力を入れたのは,キャラクターが仙と魔を行き来できるようにする部分ですね。プレイヤーが自由にキャラクターを育成できるようにすることに注意しました。
クエスト,合成と採集の部分でキャラクターを強化し,さらに仙と魔の陣営を行き来することでキャラクターを育成できるようになっています。
仙と魔を行き来しながらキャラクターをカスタマイズしていく部分に加え,(日本での)次のバージョンから採集と生産,精錬と合成ができるようになります。アイテム強化によっても,かなりキャラクターのカスタマイズができるようになっています。
4Gamer:
台湾ではどういう部分に人気がありますか?
Cheng氏:
台湾では生産部分に人気がありますね。合成と精錬で武器や防具にいろんな効果を加えることができます。
稲川氏:
台湾では,単純にキャラクターの強さを求める傾向が強いみたいですね。仙魔道の武器や装備のカスタマイズは,かなり強化範囲が広いので,最強を目指してやり込んでいる人が多いようです。
4Gamer:
なるほど。このゲームでいちばん疑問に思っていた点をお聞きしたいのですが,仙と魔の陣営変更が自由という本作の特徴によって,台湾ではコミュニティでなにか問題は出ていないのでしょうか。
Cheng氏:
台湾でも陣営の選択には戸惑っているプレイヤーがいたようです。陣営によってスキルの成長が違いますし,善心ポイントと悪心ポイントを稼ぐにはどうしても両方の陣営を行き来しなければなりません。陣営を変更してキャラクターを強くしたいんですけど,一緒に遊んでいるチームメイトも失いたくないということで,仙と魔の両方の陣営にギルドを作っていたりという例はありますね。
ギルド丸ごとで移転したりというのはありませんか。
Cheng氏:
まだそういうのはないですね(笑)。
4Gamer:
台湾では,戦場などよりもっと直接的にPvPを行うようなシステムは入っているのでしょうか。
Cheng氏:
システム周りは日本のものと変わりません。戦場での6vs6が基本です。また中立エリアでのPvPでも戦闘でも敵を倒すとポイントがもらえて,専用装備などと交換できるようになっていますので,かなり頻繁にPvPが行われていますね。
4Gamer:
仙族と魔族以外に妖族というのがいますよね。これは,今後どのようにストーリーに関わってくるのでしょうか。
Cheng氏:
基本的に妖族はプレイヤーが選択できないMobやNPCとして登場します。ストーリー的には,仙族と魔族が彼らの世界での大きな戦いのあと,妖族のいた世界にやってきて,そこでさらなる戦いを繰り広げていることになっています。ここはもともと動物の世界だったのですが,仙と魔の戦いの影響で動物が知力を持ち始め,仙と魔に匹敵する勢力の妖族が台頭してきました。一時は,仙と魔,そして妖族の対立関係になったものの,妖族と仙族,魔族のトップ同士では同盟を結んでいます。しかし,妖族の反抗勢力が四天王を率いてそれに抵抗している状況です。
稲川氏:
妖族は,あくまでNPCやモンスターとして登場します。クエストなどでは,モンスターが攻めてくるという設定や,妖族を倒しに行けといったものが出てきますので,ストーリーには随時関わってきます。
クローズドβテストの状況は? 戦場は宣伝不足か
次に,日本でのクローズドβテストの状況についてお聞きしたいのですが。
稲川氏:
クローズドβテストでは,5000名の募集に対して倍以上の応募があり,大半のテスターにログインしていただきました。テストは1週間と短いものだったのですが,レベルがカンストしている人も結構いたようです。
最初,グラフィックスがちょっときついという意見があったのですが,実際に遊んでみると面白かったという声が多かったですね。運営のほうでGMとキャストキャラクターを使って何度もイベントをやりましたが,それも好評でした。イベントをやると毎回何十人かが集まって,みんなでわいわいとボスを倒したり,仙魔軍と戦ったりしていました。
ただ,クローズドβテストでは戦場系のPvPコンテンツのテストがあまりできなかったので,そのあたりはオープンβテストでしっかりテストしたいですね。
NPCはいましたし,戦場には普通に入れたわけですよね?
稲川氏:
はい。それはできました。
4Gamer:
実際に戦場に入った人はどれくらいいたんでしょうか。
稲川氏:
全体の数割というところですね。これについては,うまく宣伝できていなかった部分もあったと認識しております。戦場に入ったテスターからは楽しかったという感想をいただいており,逆に,もっとしっかり宣伝してくださいとお叱りを受けています。
クローズドβテストの段階では,戦場でちょっと不親切な部分も残っていましたので,あまり強くアピールしていなかったのですが,テスターさんの声も受けまして,オープンβテスト以降はもっとアピールしていきたいと考えています。
戦場のどういう部分が人気だったのでしょうか。
稲川氏:
そうですね。あまり殺伐とせず,スポーツ感覚でPvPができるというところでしょうか。それまで育ててきたキャラクターの力を最大限に発揮して相手のチームをなぎ倒すという部分ですね。殺されたほうも別にデスペナルティがつくわけではありませんので,復活して気軽にもう一度戦いに出られます。いろいろ戦略の余地がある点も面白いと思われたんじゃないかと思います。
4Gamer:
戦場以外のPvPについてはどうだったんでしょうか。
稲川氏:
中立地帯などでのPvPはあまり見掛けませんでした。1週間の期間でレベルキャップまで行っていた人も結構いたのですが,その人達もそれほどPvPを求めてはいなかったようですね。
4Gamer:
やはりそんな感じですか。
稲川氏:
PvPエリアに行くときは,たいていキャストキャラクターがついていましたので,遊び半分という人が多かったのではないかと思います。個人で中立エリアに行っていた人もいるでしょうが,無差別に襲いかかる人はほとんどおらず,まだ,クローズドβテストの段階ですので,皆さんかなり慎重だったのではないでしょうか。
その分,戦場に行くと,最初からみんな戦う気でいますのでやりやすかったみたいですね。
日本独自要素がもららしたゲームの広がり
今後のアップデート予定などを聞かせてください。
Cheng氏:
クローズドβテスト,オープンβテストで挙がったプレイヤーの声を取り入れてゲームの改善を考えています。今後のバージョンでは,BGMの変更やキャラクターボイスの追加,妖孤女王の追加などを予定しています。マップのローカライズやスフィアのカスタマイズができるようにもしていきます。将来的には大型のフィールドもリリースする予定です。
稲川氏:
テスターから出てきた意見はすべて開発側に渡しており,すでに回答も上がってきていまして,いつ修正するかという段階になっています。すべての要望に応えられるわけではないのですが,対応できるものについては,できるだけ応えたいと思っています。開発側としても,日本市場を最重要と考えていますので,かなり融通してもらっています。
4Gamer:
声は,日本オリジナル要素ですか?
稲川氏:
声とBGM,それとスフィアのカスタマイズ,妖孤女王などは日本オリジナルの要素ですね。
4Gamer:
妖孤女王もですか(笑)。開発側としては,キャラクターに声を付けるというのは違和感はありませんでしたか?
Cheng氏:
最初に聞いたときには,日本の仙魔道は台湾の仙魔道とは全然別のものになったなあと感じたのですが,キャラクターボイスがつくと開発側のテンションも上がってきまして,どういう評価になるか,みんな楽しみにしています。
4Gamer:
日本のオンラインゲームでも,ここまでキャラクターボイスを入れたものはほとんどないですよね。
稲川氏:
全キャラに声を入れていますし,5月からは,プレイヤー自身がエモーションで声を出すことができるようになります。2Dだといくつかあったかもしれませんが,3DのMMORPGではあまりないかもしれませんね。これは,仙魔道の世界観が奥深いこととキャラクターの個性が際立っているのでできたことだと思います。
4Gamer:
スフィア(頭に付く後光)のカスタマイズについて聞かせてください。
稲川氏:
スフィアのカスタマイズについては,かなり以前から要望を出していたものです。カスタマイズ要素をウリにしているゲームなのですが,カスタマイズ要素がまだ弱いと感じていまして,グラフィックス的に特徴となっているスフィアの部分でもっと遊び要素を入れられないかと打診していました。これが拡張できるようになることで,かなり個性的なキャラが作れるようになったと思います。
4Gamer:
Chengさん自身が仙魔道でおすすめの部分というのはどこでしょうか。
いちばんおすすめは,精錬の部分と合成強化の部分ですね。日本の仙魔道は,台湾で調整を繰り返してから持ってきたものですので,比較的簡単にゲームに馴染めると思います。ちょっとしたヒントになりますが,陣営の変更をぜひ楽しんでみてほしいんですよね。キャラクターの育成の過程で仙と魔の違いを体験していただくことをおすすめします。
稲川氏:
実は,生産、採集などについても日本側から提案した要素なんですよ。比較的カンストしやすいゲームですので,レベルキャップに達しても楽しめる要素を盛り込んでいます。
4Gamer:
なるほど。日本からの要望というのはかなり多いんでしょうか。
Cheng氏:
とっても多いですね(笑)。おかげで,外見にしても,システムにしても,最初の仙魔道よりずっとグレードアップしたものに仕上がりました。
稲川氏:
もともとリアル系のゲームを目指していたものなのですが,全部が堅すぎると受け入れてもらえないと思うんですよ。
ものによっては,「なんでこんなものを入れるんだ」と議論になることもありました。声優を入れるとか,妖族の長がなんでロリ系なんだとか,最初はヒロインを出すというのもなかなか受け入れてもらえなかったんですよ。日本ではこうなんだということで,いろいろ資料を出してアピールしまして,やっと納得してもらいました。
4Gamer:
では,日本のプレイヤーに向けて一言お願いします。
Cheng氏:
台湾のプレイヤーと比べると,日本のプレイヤーは恥ずかしがり屋が多いようですね。チャットなどもあまり多くないようですので,仙魔道を通して,ギルドを組んだり,一緒にモンスターを倒したりなどもっと交流を深めていただければと思っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
懸案であった「裏切り」によるコミュニティ問題などについても聞いてみたのだが,すでにサービスが始まっている台湾でもさほど大きな問題にはなっていないようだ。ストーリー設定からして,2大陣営の争いというPvPを主要要素としているのは明らかながら,現状で実装されているPvP要素は,スポーツ感覚で楽しめるものに限定されていることが要因かもしれない。
インタビュー後に,本日実装されるアップデート内容を実際に見せてもらった。まだ微調整は入るようだが,公式サイトでサンプルボイスが公開されているように,NPCがすべてしゃべる。……のはともかく,「歌う」のは随分変わった取り組みになっていると思った。4月23日に発表されたので,すでにご存じと思うが,新しいクライアントでは,門脇舞以さんがカバーするSearch and Destroyがキャラクター選択時に流される。聞くと楽しくなってくるとのことだが,パンクと仙魔道との組み合わせについては,実際に聞いた人それぞれの印象にゆだねておこうと思う。
妖族の妖狐女王茜姫は,今後のストーリーで重要な役割を担ってくる(らしい)。公式サイトでは,カルラとかケチョウ兄弟の名前もすでに出てきたので,妖族絡みのストーリー展開についてもそろそろ明らかになってくるはずだ。
最近は,PvP重視のゲームが増えて来ているのだが,レベルキャップに達してからのやり込み要素と,かなりライトでスポーツ感覚のPvPに注力して開発されている仙魔道は,少し新しいかたちのMMORPGを模索しているようである。今後,正式サービスに向けてますます改善が図られていくであろう仙魔道に期待してみたい。
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