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[AOGC 2006]アジア地域のオンラインゲームの現状(その2日本編)
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印刷2006/02/14 21:35

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[AOGC 2006]アジア地域のオンラインゲームの現状(その2日本編)

 アジアオンラインゲームカンファレンスでは,アジア地域での全体的な傾向に関するレポートとして,「アジアオンラインゲーム市場とゲーム社の戦略」と題して(韓国)中央大学助教授,コンテンツ経営研究所所長ウィ・ジョヒン(魏晶玄:John H.Wi)氏の講演が行われた。韓国編に続いて日本の状況をお届けしよう。

■日本のオンラインゲームの状況

 皆さんご存じのように,残念ながら日本でのオンラインゲームは,まだまだ一般層にまでは広がり切れていない。それをウィ氏はビデオゲームの影響と分析している。コンシューマゲームやアーケードゲームが普及しているので,オンラインゲームに移行する人が少ないというわけだ。これは,日本市場の中心はアーケードとコンシューマゲーム機であるという認識によるものであり,日本の業界関係者の間ではあまりにも当たり前のように浸透している説なので,詳細は端折る。正直,アーケードゲームの影響についてはあまり実感がないのだが,ウィ氏は後述の「三国志対戦」と「ムシキング」に非常に強い感銘を受けているようで,これらを日本特有のものとして重視しているようだ。
 また,極端な例になるが,中国やベトナムなどでの状況と比較した話も出てきた。
 中国やベトナムでは,オンラインゲームは,日本でいうところのインターネットカフェを中心に広がっている。そしてそこでは,オンラインゲームは最も安価で,かつほぼ唯一の娯楽として存在するという。ASEAN諸国では,娯楽として映画とオンラインゲームが競い合っている状態だそうだ。中国の地方都市になると,映画すらないという状況である。
 翻って日本を見ると,娯楽は街に溢れており,ゲームについても,いくらでもある状況だ。ある意味,そういった豊かさがオンラインゲーム普及の障害となっているわけだ。

 日本のゲーム業界全体の規模が約1300億円で,オンラインゲームに限ると200億〜300億円程度だという。このように,市場規模がまだ小さいまま,韓国とほぼ同等のゲームが続々と流れ込み供給過剰の状態となっている。これによって,部分的に韓国と同じ状況が再現されているとウィ氏は説明する。
 韓国では,オンラインゲーム市場が成長を終えて,徐々に飽和してさまざまな問題が浮上してきているのに対し,日本では飽食が過ぎて,若くして成人病といった感じだろうか。すでに韓国編で書いた事項のほとんどが,日本市場でも当てはまることに気づいている人も多いだろう。



 オンラインゲーム白書の調べによると,「これから遊んでみたいオンラインゲームは何か?」という問いに対する回答で,6割が「ない」というものだった。この要因について,ウィ氏は二つあると分析している。一つは,オンラインゲームについての認知が低いということ。もう一つは,オンラインゲームのゲーム性がコンシューマゲーム機やアーケードゲームに対して劣っているということだという。
 戦闘一つ取っても,単調になりがちなオンラインゲームに対し,コンシューマゲームなどではさまざまな工夫が凝らされている。ゲーム自体のクオリティにも問題があるという認識だ。アジア各国ではあまり問題にならないのかもしれないが,周りにさまざまな非オンラインゲームが溢れている日本では,それらと比べても負けないだけの,ゲーム自体の面白さを高めていくことが必要だということだろう。そもそもオンラインゲーム白書の調査があてになるものなのかどうか,という問題が曖昧なので,それを基に仮説を立てるのも危険であると思うのだが。

 SEGA Linkをはじめ,コミュニティを積極的にゲームに取り入れる方向性が出てきたことも取り上げられていたものの,ほかのアジア地域では,コミュニティとゲームプレイヤーがかなり重なりを見せるのに対し,日本ではコミュニティのユーザーがゲームをしていないことが多いという。
 また,日本では10代のオンラインゲームプレイヤーが極端に少ないという指摘もあった(4Gamerの読者属性ではそれなりにいるのだが)。将来の市場を支える10代については,無料にしてでもゲームをしてもらうくらいのつもりで取り組むことが重要だと力説していた。このあたりは,日本人以上に危機感を持っているようだ。

●正しい課金方法とは
 「オンラインゲームは体験してみないと絶対に分からない」とウィ氏は語る。少しでも多くの人に触ってもらうことがなにより重要であり,課金を焦る傾向を憂いている。
 最初は無料あるいは低額で間口を広げる。だんだんとゲーム内の資産が増えてくると,プレイヤーはだんだんやめにくくなるのだから,それに合わせて課金するべきだというのが,ウィ氏の主張だ。
 一部のゲームでは,すでにそのような課金方法が採用されている。一定レベルまでは無料で,あるレベルから課金が始まるようにすることで,間口を広げることと課金を両立させているのだ。意味は少し違うが,ヘビーユーザーほど自然と支払額が増えてくるアイテム課金制は,そういった理屈にかなったものなのかもしれない。



●三国志大戦は日本型オンラインゲームの原型となるか?
 三国志大戦はアーケードゲームではあるが,優れたゲーム性に注目して,4Gamerでも過去に開発者インタビューを行っている。
 アーケードゲームベースのオンラインゲームとして日本で大きな成功を収めている三国志大戦とムシキングを,日本独自のオンラインゲームのあり方として非常に重視しているようだ。
 またムシキングについては,子供の財布から(本当に子供の財布からいくら出ているのかは把握できないのだが)トータルで500億円規模の市場が生まれていることに驚きを示していた。日本の通常のオンラインゲーム市場全体に匹敵する(それ以上か)市場が,小学生を中心にすでに存在しているわけだから無理もないかもしれない。

 これら2作品については,その射幸心を煽る作り方など,オンラインゲームの面白さを十分に理解した人の作品であると絶賛している。半面,とくにムシキングについては,日本国内での技術的評価が低いことを残念そうに語っていた。

 日本の場合,他国と違ってPCをベースにしたオンラインゲームよりも,携帯電話とかアーケードゲーム機などとリンクした,非PC系での日本型オンラインゲームが展開されるのではないかとウィ氏は予測している。
 日本のエンターテインメント産業の主力部分がオンラインゲームに移行するとしたら,確かにPCベースは考えにくい。
 日本人の目からすると,ゲームセンターを中心としたオンラインゲーム展開は難しそうに思えるのだが,コンシューマゲーム機をベースにということであれば,十分に可能性はあるだろう。パケット定額制などが浸透すれば,携帯電話をベースにということもないではない。マルチプラットフォームで動作するというものも,当然出てくるだろう。
 携帯やアーケードゲームまで取り込むオンラインゲームというのはなかなか想像しにくいのだが,三国志大戦やムシキングで,そういったものの手応えをウィ氏は見いだしているようだ。

 日本国内の状況については,日本にいればだいたい分かるというのも事実だが,韓国から見た日本のオンラインゲーム像というものも,興味深いものがある。むしろ,日本の持つ問題点を新鮮な視点から捉え直すことができた気がする。
 今後オンラインゲーム展開を予定している国内のゲーム開発者も,ぜひ一度真剣に,改めて考えてみてほしいと思った次第だ。(aueki)

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