連載
【ヒャダイン】自由ってのは,責任を伴うものなんだよっ! フリーシナリオ!
ヒャダイン/前山田健一 / 歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第2回「自由ってのは,責任を伴うものなんだよっ! フリーシナリオ!」
まず,当時のRPGの概念を根底から覆した「フリーシナリオ」システムに衝撃を受けました。8人の主人公を自由に選べて,それぞれのストーリーに始まりはあるものの,あとはお好きにどうぞ。どこに行ってもいいし,何をやってもいい。敵のレベルは主人公達のレベルと比例するから,どこにだって行けますよ! って,いやー,斬新。
それでは,俺がSFC版ロマサガ1を愛してやまない点をいくつかあげますね。
●その1 8人の主人公を選ぶ段階から,いろいろとシビア
どういうことかというと,まずこの8人,16歳から30歳と幅のある年齢設定になっているのです。若い主人公は初期能力が低いけど,伸びしろがある。一方,年齢が高い主人公は,最初はラクだけど後半の伸びが悪い……。リアル。リアルだよ,ロマサガ1。
俺,今年で32になるんだけど,やっぱ寄る年波を感じるもん。物覚えも悪くなったし。それに比べて,ももクロちゃんは最年長で18歳でしょ。伸びしろ満載。ゲームの序盤の序盤で,現実を叩きつけられるわけです。
で,主人公を選んだら,次になんと両親の職業を決定することになります。戦士,聖戦士,武闘家,魔戦士,僧侶,シーフ,詩人,魔術師,占い師から選べるのですが,両親の職業によって,主人公の能力値が変わってくるのです。……所詮はDNAっすか。やっぱ遺伝子っすか……。厳しい現実。しかも,異性の親の能力値の影響のほうが大きいというリアルっぷり。ほら。男の子はお母さんに似て,女の子はお父さんに似るっていうじゃん。両親をシーフとかに設定したら,ひどいよね。泥棒一家。
●その2 フリーシナリオだからってフリーすぎる!
一度もイベントをこなさず,ただひたすら戦闘をこなしているだけでも,ラストダンジョンに行けます。あと,殺しに手を染めるも染めないもプレイヤーの気分次第!
そう,ロマサガ1といえば,名物キャラクター「ガラハド」。街で話しかけると「念願のアイスソードを手に入れたぞ!」と自慢してくるのです。アイスソードは大変攻撃力の高いレアアイテム。そこでプレイヤーは三つの選択肢を突きつけられます。「そう 関係ないね」「譲ってくれ頼む」そして「殺してでも奪いとる」。
そうなのですよ。私利私欲のため,こんなひどいことまで選択できちゃうわけです。怖いよ。リアルだよ。
でも,システム的にきっちりフォローはできているんです。というのも,ロマサガ1には「善行」と「悪行」のポイントがあって,当然のことながらガラハド殺しは悪行そのもの。なので,ラストダンジョンの前に冥府(地獄)に行って「デス」という神に許しを乞わねばなりません。
そしてそこでも,選択肢が。デスと戦うか,仲間一人の命を差し出すか。おいおい,仲間を生贄って。リアル。予定調和のシナリオを進むRPGと違い,フリーシナリオならではのリアルさを感じますね。やっぱり自由と責任は表裏一体。勉強になります。
●その3 レベルアップが,リアル
通常のRPGでは,敵を倒して経験値を溜めるとレベルアップして,色んなパラメータが上昇するのですが,ロマサガシリーズは,もっとリアル。
物理攻撃をしていると腕力や体力が上がるし,魔法を使うと知力が上がる。武器の熟練度も同じで,その武器を使えば使うほど,使いこなせるようになる。弓矢なんて,最初1しかダメージを与えられないのに,熟練度が増してきたら鬼火力。
そりゃそうだよね。ピアノだって練習すればうまくなるし,サッカーもバスケもそうだ。勉強すれば賢くなるし,筋トレすればマッチョになる。資質によって限界はあるけど,まあ,リアル。いやー。馬車の中で食っちゃ寝,食っちゃ寝のおっさんとはえらい違い。働かざる者食うべからず。
●その4 バグすら魅力的
詳しくは書かないけど,ロマサガ1にはバグが多かった! でもね。最近思うんですけど,バグとか,バグを使った裏技とかって,楽しくない?
俺はゲームやり込み派なので,同じゲームを何回も何回もプレイします。なので俺にとってバグって,故意に発生させるとどうなるんだろうとか,バグを使って最短クリア! とか,色んな楽しみ方を与えてくれるものでもあるんです。
そういう意味じゃ,最近のゲームは完璧すぎるよなあ。商品としては正しいんだろうけど。プレイヤーをちょっと意地悪な気持ちにさせるバグ,俺は好きだなあ。
●その5 主人公8人が個性的
8人の中から一人を主人公として選べることは前述の通りですが,残りの7人は酒場にいて,仲間にすることができます。そして最大6人パーティで冒険できるのです。
仲間にする際,会話ができるのですが,その時のしゃべり方などから俺の妄想スイッチ発動! 仲間にした後の会話はなく,ひたすら戦闘と移動をするだけなんですが,「ああ。バーバラはちょっとハスキーな声なんだろうな」とか「シフのCVはやっぱり緒方恵美さんだよな」とか「ジャミルとアイシャはちょっとした恋心とかあるのかな」とか,色々妄想できちゃうわけですよ。
俺に画力があったら,薄い本を作ってコミケに出展したと思う。
●その6 音楽が素晴らしすぎる
音楽担当はイトケンさんこと伊藤賢治さん。まず8人の主人公それぞれにテーマソングがあり,フィールドでは延々とその曲が流れるので,耳に焼き付きこびりつくのですが,これまた,名曲揃い!
例えば旅芸人の女性バーバラの曲は,南米音楽をモチーフにした切ない旋律,お調子者のコソ泥ジャミルは軽快なシャッフルビート。純朴な遊牧民の娘アイシャは,可愛らしくのどかな曲調……と,見事に十人十色ならぬ八人八色。
同じフィールドでも音楽が違うだけで,ゲームから受ける印象はガラリと変わります。そう,最低8回は楽しめるのです!!
で,やはりイトケンさんといえば戦闘曲。通常戦,ボス戦,ラスボス戦。全身の血が沸騰するような,激しく,そして切ない楽曲。いわゆる「イトケン節」が炸裂しております。それらを聴けば,無条件に鳥肌が立ち,主人公達への感情移入も完了。敵に向かって全力で立ち向かっていく気概を与えてくれるのです。
ちなみに,このあたりのイトケンさんの楽曲には,自分自身大きな影響を受けています。3月7日に発売される,ももいろクローバーZの新曲「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」の作詞・作曲・編曲をさせていただいたのですが,実を言いますと,このロマサガのボスバトルのフレイバーをオマージュさせていただいております。血沸き肉踊るんだけど,なぜか切なくて胸をギュッと掴まれてしまうイトケン節。このフレーバーを,自分なりにリスペクトを込めて,ももクロちゃんの新曲に注入させていただきました。
えー,ロマサガ1の音楽に話を戻しましょう。数々の楽曲の中でも白眉なものの一つが,その名も「下水道」!! 下水道で流れる音楽なのですが,勇敢で切なくて,愛おしい。世界一カッコイイ下水道なのです。
以前4Gamerでイトケンさんと対談させていただいたときにお聞きしたんですが,当時の楽曲の発注が「フィールド1」「フィールド2」といった感じだったので,どこでどの曲が使われるかをイトケンさんご自身は把握されていらっしゃらなかったようです。なので,この名曲のタイトルが「下水道」となったわけなんですねぇ。
曲タイトルは残念なのですが,敵がワンサカいて,何回も往復する下水道をワクワクしながらプレイできたのは,まさにこの曲のおかげでもあるわけで。
……という,色々な魅力を持つロマサガ1。個性的な仲間が集まって目標を達成していくという図式。まさに今のアイドル。いや,ほんと,影響受けてます。
フリーシナリオで何度も何度も楽しんだように,俺も何度も何度も聴きこんで楽しめる楽曲を作っていきたいなー,とロマサガ1をプレイするたび思う所存。はい。今でもやってます,ロマサガ1。Wiiのバーチャルコンソールでは,SFC版を配信中なので,まだ遊んだことのない人は,この機会にぜひ。
■■ヒャダイン/前山田健一(歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー)■■ 本文中でも触れているとおり,ヒャダイン氏が作詞・作曲・編曲を手がけた,ももいろクローバーZの新曲「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」が3月7日(水)に発売されます。ヒャダイン氏としては,3月19日(月),Shibuya O-EASTで行われる野宮真貴さんの30周年記念ライヴにゲスト出演予定。テレビ朝日系列で毎週放送中の音楽情報番組「musicる TV」には,メインMCとして出演中です。 |
- この記事のURL:
キーワード