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[CEDEC 2005#01]浜村氏「2007年に最大化するゲーム市場」
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印刷2005/08/29 23:22

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[CEDEC 2005#01]浜村氏「2007年に最大化するゲーム市場」

エンターブレイン代表取締役社長 浜村弘一氏
 本日(8月29日)より行われている"CESAデベロッパーズカンファレンス 2005"で,エンターブレインの代表取締役社長,浜村弘一氏によるセッション「2007年に最大化するゲーム市場 〜次世代ゲーム機の登場と今後のトレンドについて〜」が行われた。ここでは,その模様をかいつまんで紹介していこう。

■2006年から2007年に,ゲーム市場は最大規模に

 2005年末から2006年春にかけて,マイクロソフトの"Xbox 360"を皮切りに,ソニー・コンピュータエンタテインメントの"プレイステーション3",任天堂の"Revolution"が市場に投入される予定だが,それがゲーム市場にどのようなインパクトを与えるのかという展望から,このセッションはスタートした。

 4Gamerでは「こちら」で,2005年3月に行われた「AOGC」(Asia Online Game Conference:アジア オンライン ゲーム カンファレンス)における,浜村氏の基調講演の模様をお伝えしたが,金額ベースの国内市場規模推移(および展望)については今回も(2007年の予測が追加された以外は)ほとんど変わりはなかった。
 3種類の次世代機が投入されることにより,金額ベースだけを見れば,国内の市場規模は順調に拡大が見込まれ,2006年から2007年にかけては過去最大の市場規模になると,浜村氏は断言。

 また,これもAOGCの基調講演のときと同じく,この国内市場規模推移には(携帯電話をプラットフォームにしたものを含む)オンラインゲームが含まれていないことを強調し,これを含めることで,さらなる拡大が見込まれるとの見解を明らかにした。



■ゲーム業界に残る大きな宿題とは

 しかし,市場規模が拡大しようとも,ゲーム業界には大きな宿題が残っていると浜村氏は言う。それは,

(1)企画の行き詰まり
(2)開発費の高騰

だ。

 そしてこれを,コンシューマゲーム機の歴史をひもときながら,解説。
 任天堂の"ファミリーコンピュータ"の時代,ソフトの価格は4800円前後だった。これが"スーパーファミコン"に移行するにあたり,開発費は大きく高騰したものの,ソフトの価格が7800円前後(中には1万円を超えるものも)と上昇したため,開発リスクを抑えることができた。
 ここから,"プレイステーション"の時代に移るわけだが,やはり開発費が高騰。しかもソフトの価格が5800円前後と下がったものの,ファミコン時代のROMカートリッジからCD-ROMにメディアを変更したために,部材費が大幅に減少したうえ,リピート生産のスピードが向上したことで,やはりなんとか開発リスクを吸収できていたという。
 しかし,"プレイステーション2"の登場で,これまでにないほどに開発費が高騰したにもかかわらず,ソフトの価格は6800円前後と1000円しか上がらず,結果的にソフトハウスにかかる開発リスクが高くなってしまったという。

 そして現在では,ある程度収益の見込める人気シリーズの続編が目立つようになり,新たなチャレンジをするソフトハウスが減少してしまったのに加え,ゲーム自体が高度化/複雑化したことにより,ファンのゲーム離れが起きてしまっているそうだ。

 また,販売時の掛け率が上昇したことにより,小売店が抱えるリスクが増大したことも,続編の増大傾向などに拍車をかけているという。



■ゲームのオンライン化で収益拡大のチャンス

 さて,それでは次世代機の登場にあたって,ソフトハウスはどのような取り組みをするべきだろうか。
 浜村氏の予測によると,プレイステーション3用ソフトの価格は,7800円前後(プレイステーション2用のものに加え1000円程度上昇する)というが,やはり開発費も高騰するために,これだけでは開発リスクを吸収しきれないであろう。
 そこで,ソフトハウスには"新たなビジネススキームの創出"が必要になると,浜村氏は語る。
 ここでようやく,オンラインゲームの話に。

 全世界のネットゲーム市場を見ると,全体の70%がアジア市場で,さらに全体の45%を韓国市場が占めている。
 これは,韓国では小中学生からPCに触れる機会が多いことや,金大中前大統領政権時のインフラ政策により,インターネットと生活が密着していることなどが理由の筆頭として挙げられた。そして,ゲームデザイナー(プロデューサーやディレクターなどのクラス)は兵役が免除されたり,税制で優遇されるなど,国策としてゲーム開発を推進していることにより,急速な拡大/成長を遂げたという。このあたりは,4Gamerの読者にはお馴染みのことだろう。

 一方の日本では現在,ブロードバンド接続コストが非常に安く,自宅でインターネットを利用している人も多い。
 ただし,世界的にオンラインゲームがPC先行で普及しているにも関わらず,PCゲームよりもコンシューマゲームが発達してきたという事情からか,市場拡大の可能性は何度となく指摘されながらも,いまだ爆発には至っていない。
 だが,3種類の次世代機がどれもネットワーク接続機能を装備していること,そしてブロードバンド接続環境が普及していることは,オンラインゲーム市場が拡大するための下地ができていると考えられるという。

 そして,そのような中,各ソフトハウスに求められる新たなビジネススキームの一例として浜村氏は,なんと"パッケージ販売+ネットワークによるデータ販売"を挙げた。
 例えば,MMORPGでシナリオやアイテムを追加販売したり,スポーツゲームで選手データを販売したり……といった,いわゆる"アイテム課金制"というやつだ。
 すでにこれは,PC向けのオンラインゲームの多くで採用されており,4Gamerの読者にとっては,"新しいビジネススキーム"どころか,使い古されて今更という印象のぬぐえないものだろう。しかしこれは裏を返せば,それほどまでにコンシューマゲーム市場において,オンラインゲームというジャンルが未発達であることの証とも受け取れる。
 そして,浜村氏というコンシューマゲーム市場において大きな発言力/影響力を持つ人物が,今あえてこういった発言をしたということは,すでに発表されている次世代機向けのMMORPGなどでこういった課金形態が採用されることが内定しているということなのかもしれない。というのは,あまりにも穿った見方だろうか。



■拡大するゲーム市場で生き残るのは……?

 これ以外にも浜村氏は,ニンテンドーDS向けの「nintendogs」などを例に,次世代機の登場を迎えるにあたってのゲームの質的な変換を強く訴えていた。
 とくに,プレイステーション3に採用される"Cell"チップは,家電メーカーへの供給が予定されていることから,プレイステーション3というゲーム機だけの販売台数がたとえ1000万台しか行かなくても(これはこれで十分にすごい数字ではあるが),Cellが採用されてプレイステーション3と同等の機能を有する家電製品を含めれば,(若干現実味に欠ける話に聞こえるが)潜在的な市場規模がこれまでには考えられないほどの大きさになることをアピール。ネットワーク接続以外にも,ゲームコンテンツの"出口"が多様化することもまた,ゲーム市場の拡大に影響を与えると語った。
 最後には,次世代機の登場によってゲームをとりまくビジネスの大きな構造変換が起き,市場規模が拡大するのだからこそ,そこで成功できるのは,ハードウェアプラットフォームに依存するソフトハウスではなく,新たなアイデアで自ら市場を開拓していくソフトハウスだけであると述べ,セッションは終了。

 非常に前向きに力強く,明るい未来が語られ,ゲーム業界の一端に身を置く者としては,なんとなく勇気が湧いてくるような内容であった。
 だが,例えば浜村氏の言うように,コンシューマゲーム機向けのオンラインゲームでアイテム課金制が広く採用されることになったとして,(PC向けのオンラインゲームで現在言われていることだが)経済力の差がゲームの楽しみ方に影響を与えかねない点を,ソフトハウスはどのように回避するべきか,といった問題についての言及がなかったのが惜しまれる。
 もちろん,その答えを浜村氏が出す必要はないのだが,問題がゼロではないことを明確にしつつ,それでもこれがコンシューマ市場においても新たなビジネススキームとして成立しうるのだ,と断言してほしかったのは,筆者だけだろうか。(TeT)

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