テストレポート
新型左手用キーパッド「Tartarus Pro」ファーストインプレッション。新型キースイッチの感触は?
左手用キーパッドマニアである筆者は,発売日に秋葉原でTartarus ProのMercuryモデルを購入してきたので,早速,写真中心のファーストインプレッションをお届けしたい。
Tartarus Proは,2017年に発売となった「Razer Tartarus V2」(以下,Tartarus V2)をベースとした新製品である。メインのキーパッドは5キー×4行から1つ引いた19キーで,キーパッド右下にセンタークリック機能付きのスクロールホイールを,スクロールホイールの右側には,左手親指で操作する「8-way directional thumbpad」(以下,Thumbpad)や追加ボタン,20番目のキーとなる大きめのキーをまとめた「Thumb Module」(以下,サムモジュール)が配置されている。
これら主要コンポーネントの数や配置は,どれもTartarus V2とまったく同じものだ。
サムモジュールには十字キー型のThumbpadがあり,Thumbpad上には円形のキャップが填め込まれている。ゲームパッドのスティック感覚で操作したいときはキャップを付けたまま(※アナログ入力には対応していない),十字キーとして使いたいときは,写真のように取り外して使うことが可能だ。
Tartarus ProとTartarus V2を並べてみたが,色の違いを除くと違いが分からないほどだ。Tartarus ProのBlackモデルで比較すれば,どちらがどちらか見間違えそうである。
ただ,まったく同じ金型で作ったパーツを使っているというわけでもないようで,よく見比べるとサムモジュールからパームレストの底面側パネルが,両製品で異なる形状をしていた。もっとも,実用上の違いはないだろう。
Analog Optical Switchはクリック感のない赤軸風
アクチュエーションポイントの変更は全キー一律
Mecha-Membraneは,メンブレンキースイッチ風のソフトな押し心地と,メカニカルキースイッチ風のクリック感を両立させたのが特徴であった。そのため,押し込むと明確なクリック感がある。
それに対してAnalog Optical Switchは,いわゆるCherry赤軸に似た,クリック感のないリニアな押し心地となっており,打鍵音も静かだ。クリック感がないのは構造的な理由よりも,アクチュエーションポイントが変更可能であるため,クリック感を付けると不自然になるからであろう。筆者としては,Mecha-MembraneよりもAnalog Optical Switchの打鍵感のほうが好ましく思える。
Analog Optical Switchのアクチュエーションポイントは,Razerの統合設定ソフトウェア「Razer Synapse 3」(以下,Synapse 3)を使って設定する。Synapse 3をインストール済みのPCにTartarus Proを接続して,キーパッドを選択すると設定画面に切り替わる仕組みだ。画面中央にあるTartarus Proの画像下側に,アクチュエーションポイントを設定するスライダーがあった。
アクチュエーションポイントは,最小が1.5mm,最大が3.6mmとなっており,「一次」と「二次」の2点を設定できる。浅く押し込んだときに反応するのが一次で,深く押し込んだときが二次だ。なお,複数のアクチュエーションポイントを使い分けない場合は,一次だけが使われる。
なお,このアクチュエーションポイントの深さ設定だが,筆者が確認した限りでは,各キーごとに設定を変えることはできず,Tartarus Pro全体で共通の設定になるようだ。キー1つずつに異なるアクチュエーションポイントを割り当てることはできない。
浅く押し込んだときと深く押し込んだときで異なる入力を行うには,Synapse 3のカスタマイズ画面で使い分けをしたいキーを選んだうえで,左ペインにある機能割り当ての項目で「二次機能」のチェックボックスをオンにしよう。すると,機能の割り当て設定が2つに増えるので,上側に一次,下側に二次で入力したいキーやボタンを割り当てればいい。[Shift]キーや[Ctrl]キーなどとの同時入力も設定可能だ。
[W/A/S/D]キーの押下で通常の移動,[Shift]キーを押しながら[W/A/S/D]キーを押すとダッシュ移動になるゲームの場合,たとえば一次に[W],二次に[Shift]+[W]を割り当てると,浅く押せば普通に移動し,深く押せばダッシュで走るという具合に使い分けられるようになる。
何分,購入してきたばかりで細かい設定の作り込みまではできていないのだが,通常移動とダッシュ移動の押し分けは,思ったよりも難しいように感じた。
日常的にプレイしている「Elder Scrolls Online」を使い,一次を最も浅い1.5mmに,二次を最も深い3.6mmに割り当てて移動とダッシュ移動の使い分けを試みたのだが,押し込む指に少し余計な力がかかっただけでダッシュ移動になってしまうのだ。また,深く押し込むと緊急回避が発動する設定も試してみたが,やはり押し込む力の加減がなかなか難しく,誤爆が頻発してしまう。
誤爆しても実害が少なく,同じキーでの押し分けが効果的なゲームや場面というのは,今のところ思いついていない。
もう1つ,Tartarus Proで気になるのは,Thumbpadの耐久性がTartarus V2から改善されているのかだ。製品情報ページを見ても,Thumbpadについてはとくに改良点もないようで,ほとんど言及されていない。実際にTartarus ProとTartarus V2でThumbpadを触り比べてみたのだが,とくに違いは感じなかった。当然ながら,メインキーのようなアクチュエーションポイントの変更機能もない。
筆者が自宅で使っていたTartarus V2のThumbpadは,購入から1年少々で一部の方向に入力できなくなった。ゲームにおける移動操作をThumbpadに割り当てることが多いので,入力頻度が非常に高いためだろう。Tartarus ProでThumbpadのスイッチに耐久性の高いものが使われているかどうか分からないのだが,現時点では少々不安が残る。
余談気味だが,現在のSynapse 3には,日本語キーボードを接続しているのに,Tartarus ProやTartarus V2の設定では英語キーボードと誤判定してしまうバグがある。たとえば,[@]キーを割り当てようとすると,英語キーボードにおける[@]キーの入力操作である[Shift]+[2]キーが設定されてしまうので,[@]キーを割り当てることができないのだ。かなりひどいバグなのだが,Synapse 3の開発にはバグの存在が伝わっていないのだろうか。
今回はあくまでもファーストインプレッションなので,細かいテストや評価は今後の課題としたいが,現状ではアクチュエーションポイントを好みに合わせて変えられる点と,リニアで打鍵音の少ないキースイッチは気に入っているので,
一方,キーの押し込みで入力を切り替えられる特徴を生かした使い方は,思い浮かんでいない。左手用キーパッドを購入したいが,キーの押し分け機能は重視しない人なら,1万円前後で買えるTartarus V2を選ぶという手もありだろう。
RazerのTartarus Pro製品情報ページ
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