レビュー
今や貴重なリアル7.1ch出力対応ヘッドセットは誰のためのものか
Razer Tiamat 7.1 V2
Razerがしぶとく市場へ投入し続けているものの1つに,「リアル7.1ch出力対応ヘッドセット」がある。片耳あたり5基,計10基のスピーカードライバーを搭載し,内部で配置や角度を変えることで,7.1chスピーカーセットのような音場を実現するというアレだ。
最近ではバーチャルサラウンドサウンド技術の選択肢が増え,また品質も上がってきたため,リアル7.1ch(あるいは5.1ch)出力対応ヘッドセットをあまり見かけなくなってきたが,Razerは依然として諦めていないようで,2012年に発売された「Razer Tiamat 7.1」(以下,Tiamat 7.1)以来の新作となる「Razer Tiamat 7.1 V2」(以下,Tiamat 7.1 V2)を2017年10月に国内発売した。今回取り上げるのはこの第2世代モデルだ。
ダミーヘッドを使ってリアル7.1ch出力対応ヘッドセットをテストするのは今回が初めてだが,どういう結果が得られるだろうか。細かくチェックしていきたい。
初代機と基本コンセプトは変わらない一方で,見た目は向上
LEDイルミネーションはRazer独自のLED制御技術「Razer Chroma」対応。複雑なライティング仕様の割に,かなりきちんとした色が出るのは,さすがRazerといったところか。
エンクロージャ全体の大きさは最も長い部分の実測で装着時に約50(W)
エンクロージャ内側のイヤーパッドは,厚みが実測約20mmとかなりある。ほとんどのケースにおいて,耳たぶに当たって不快な思いをすることはまずないだろう。
ちなみにこのイヤーパッド,着脱式なのだが,取り付けるとき「エンクロージャ側の溝に合皮の先端部を差し込む」というよくあるタイプではなく,4か所の穴と突起でエンクロージャ側に固定する填め込み式になっており,圧倒的に着脱がしやすい。
左右エンクロージャは,“魚の開き”状にできるアームと,それをつなぐ2本の金属製アーチによってつながっている。別途,2本のワイヤーでヘッドバンドを結び,ワイヤーが伸縮するという仕様は,とてもSteelSeries的だ。
ヘッドバンドの外側はRazerのエンボス加工入りで,頭頂部に触れる内側は通気性のよいメッシュ素材をクッションカバーとして採用している。ちなみにクッションの厚みは実測約10mmで,薄い。スポンジにメッシュ素材を貼り付けてあるような印象を受けた。
使わないときは跳ね上げておけるタイプのマイクブームは全長実測約80mmで,ブーム部は下ろした状態で約5(W)
マイクの先端部は,口元側に大きめの空気孔が1つ,その反対側に小さな空気孔が1つある。ただ,製品情報によると指向性マイクとあるので,2マイクではなく,1マイク仕様のはずだ。
実のところ操作系は初代Tiamat 7.1と同じだが,筐体自体は確実に小さくなっている。ケーブルが直付けなので正確ではないものの,インラインリモコンの重量は実測参考値で約155gと,けっこう軽い。
ボリュームノブは押し込むことで出力全ミュート有効/無効を切り換えられる。全ミュート時は赤いスピーカーアイコンが表示される仕様だ |
こちらは本体奥側のダイヤル部。ここで調整したいチャネルを選んでからボリュームノブを回すことで音量の調整を行うことになる |
ケーブルは布巻き仕様で,端的に述べて太く硬い。具体的な長さと直径は実測で以下のとおりだ。
- 本体からインラインリモコンまで:長さ約1m,太さ約4mm
- インラインリモコンから分岐まで:長さ約1.8m,太さ約5mm
インラインリモコンと,ケーブルの太さ&硬さが相まって,使っているとケーブルのテンションでインラインリモコンが“お散歩”状態になることがままあったことは述べておきたい。
接続端子部。USB Type-AはLEDを光らせるだけでなく内蔵アンプの駆動用電力も給電しているので,接続していなければTiamat 7.1 V2自体を利用できない |
本体正面向かって背面側には4系統の3.5mmミニピン端子があり,ここにアナログ接続のマルチチャネルスピーカーセットを接続することもできる |
そのヘッドバンドのクッションは薄いという話を上でしたが,その割に当たりはソフトで,とくに大きなストレスを感じることはなかった。
重量は本体実測で約360g。重めの部類に入る。側圧はそれほど強くないものの,その分,ヘッドバンド部分に本体の重量が乗っているようには感じられた。クッションも薄いため,長時間の利用だとこの重さをストレスに感じる人も出てくるだろう。
波形と試聴で全7.1chを徹底的に検証してみる
といったところを踏まえて,テストに移ろう。
2018年3月時点において,4Gamerのヘッドセットレビューでは以下のようにして実力を検証することになっている。
- ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによる測定と試聴
- マイク入力テスト:測定と入力データの試聴
ヘッドフォン出力時の測定対象は周波数特性と位相特性,そして出力遅延だが,アナログ接続型ヘッドセットで遅延計測はほぼ意味がないので,今回は周波数特性と位相特性を計測する。具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」のとおりである。
一方,マイク入力の測定対象は周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」にまとめてある。基本的には,それらを読まずともなんとなくは理解できるよう配慮しているつもりだが,気になるところがあれば,それぞれリンク先をチェックしてほしい。
というわけで,いつものようにヘッドフォン出力から見ていきたいと思うが,4Gamerでアナログ接続型ヘッドセットのテストに使っているCreative Technology製サウンドカード「Sound Blaster ZxR」はアナログだと5.1ch出力までしか対応していない。そこで今回は,Sound Blaster ZxRで5.1chのテスト――サイドサラウンド以外――を行いつつ,テストに用いているPC,より正確にはASRock製マザーボード「Fatal1ty Z68 Professional Gen3」のオンボードサウンド機能を提供するRealtek Semiconductor製HD Audio CODEC
テストに当たって,インラインリモコン側のボリュームはすべて全開にしている。筆者の通例だと,計測した信号とリファレンス信号は平均音圧レベルが同じになるよう調整するのだが,Tiamat 7.1 V2ではそのままグラフ化している。
これにより,「周波数の波形がどうか」という話だけでなく,チャネルごとのボリュームがどれくらい異なるかを把握しようというわけだ。
ここで注意したいのは,Tiamat 7.1 V2が,バスリダイレクト機能をサポートしていないことである。
「バスリダイレクトとは何か」という話は初代Tiama 7.1のレビュー時に済ませてあるため,詳細はそちらをチェックしてもらえればと思うが,ものすごく簡単におさらいすると,「本来サブウーファへ送られる低域信号には,サブウーファ専用の『LFE』と,サテライトスピーカー側の低域成分をまとめた『SUB』があるにもかかわらず,TiamatシリーズにはSUBをサブウーファへ送る機能がない」のである。Tiamat 7.1に引き続いてTiamat 7.1 V2でもこの仕様は変わらなかったので,Razerはこれを問題だと捉えていない可能性があるが,いずれにせよ,バス(bass,低音。より具体的に言えばSUB信号)をリダイレクト(redirect,変更)してサブウーファへ送る処理を行わないと,Tiamat 7.1 V2の低音はスカスカなものになってしまう。
Sound Blaster ZxRでは専用コントロールパネルの「スピーカー/ヘッドフォン」以下にある「バス リダイレクション」にチェックを入れると有効化できる。「どの周波数帯より下の信号をSUBとしてサブウーファへ送るか」の設定,いわゆるクロスオーバー周波数設定は,必要に応じてスライダーで調整可能だ。スライダーは最小10Hz,最大1000Hzで,7〜8Hz刻みの調整が可能だが,今回はデフォルトの80Hzではなく,筆者側で調整して96Hzとしている。
一方のHD Audio CODECではやはり専用コントロールパネルを開き,「スピーカー」タブの下にある「スピーカー設定」を選択のうえ,「低音管理を有効にします」にチェックを入れればOK。こちらはクロスオーバー周波数の設定に対応していないので,操作としてはチェックを入れるだけだ。
これは,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したグラフを基に,4Gamer独自ツールを使ってリファレンスと測定結果の差分を取った結果だ。リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。
差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。
……と,例によって前置きが長くなったが,テスト結果の考察を以下,順に行っていこう。まずはマルチチャネル出力時からだ。
■Sound Blaster ZxR接続,バスリダイレクト無効
5.1chモード,全ch同時出力
5.1chモード,フロントLR出力
5.1chモード,センター/サブウーファ再生
5.1chモード,リアLR出力
■Sound Blaster ZxR接続,バスリダイレクト有効
5.1chモード,全ch同時出力
5.1chモード,フロントLR出力
5.1chモード,センター/サブウーファ出力
5.1chモード,リアLR出力
■HD Audio CODEC接続,バスリダイレクト無効
7.1chモード,全ch同時出力
7.1chモード,フロントLR出力
7.1chモード,センター/サブウーファ出力
7.1chモード,リアLR出力
7.1chモード,サイドLR出力
■HD Audio CODEC接続,バスリダイレクト有効
7.1chモード,全ch同時出力
7.1ch接続,フロントLR出力
7.1chモード,センター/サブウーファ出力
7.1ch接続,リアLR出力
7.1ch接続,サイドLR出力
こうやって並べてみると,Tiamat 7.1 V2を使ったときに生じるSound Blaster ZxRとHD Audio CODECの違いは,どちらかというと低域に出ていることが分かる。高域はそもそも8kHz以上で大きく落ち込むため,違いが出にくいというか,サウンドデバイス間にある細かな違いはTiamat 7.1 V2の仕様に吸収されてしまうのだろう。
さて,続いては2ch2.0chモードである。
テストに用いる信号はサラウンドのテスト時と変わらないが,ここでは当然のことながら2chステレオで再生することになる。Tiamat 7.1 V2側ではリモコン側のボタンを使って2.0chモードに固定する一方,Sound Blaster ZxRおよびHD Audio CODECではそれぞれ専用コントロールパネルからバスリダイレクト無効/有効のサラウンド出力と,純然たるステレオ出力の計3パターンずつで計測を行うことにした。
■Sound Blaster ZxR接続
Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,Sound Blaster ZxR側サラウンド出力,バスリダイレクト無効
Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,Sound Blaster ZxR側サラウンド出力,バスリダイレクト有効
Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,Sound Blaster ZxR側ステレオ出力
■HD Audio CODEC接続
Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側サラウンド出力,バスリダイレクト無効
Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側サラウンド出力,バスリダイレクト有効
Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側ステレオ出力
以上,延々とグラフを並べることになってしまったが,ステレオ音楽を聴いての試聴印象結果もここで述べておきたい。
まず伝えておく必要があるのは,Tiamat 7.1 V2の2.0chモードが「まったくよくない」ということだ。個人的には「久しぶりにひどい音を聞かされた」感が強い。低域の山が強いうえに8kHz以上の落ち込みがこれまで見たことのないほど顕著なので,弱い高域を強い低域がさらにマスクしたような状態に陥るようだ。
Tiamat 7.1 V2のインラインリモコン上で2.0chモードを選択する限り,サウンドデバイス側で対策を行っても,試聴印象はほとんど変わらない。おそらくTiamat 7.1 V2の2.0chモードとは,バスリダイレクト無効/有効以前の問題として,ステレオ信号を全chで同時再生してしまっているのだろう。
実際,2.0chモードに切り換えると,Tiamat 7.1 V2のインラインリモコンはマスターボリュームとマイク入力ボリュームしか調整できなかったり,Tiamat 7.1 V2をサラウンドモードに変更して全chで同じ信号を再生したときの周波数特性が2.0chモードのそれに近かったりすることからして,その可能性は高そうだ。
いずれにせよ,Tiamat 7.1 V2の2.0chモードは,初代機から変わらず「いただけない」ということになる。
さらに言えば,Tiamat 7.1 V2を7.1chモードにした状態ならインラインリモコンからチャネルごとの出力バランスを変えられるので,フロントLRとLFE(+SUB)のバランスを調整することもできる。Sound Blaster ZxRならクロスオーバー周波数も好みに変更できるので,試してみてほしい。
クロスオーバー周波数を変更できるサウンドデバイスなら,Tiamat v2の周波数特性を基準にして,クロスオーバー周波数は80Hzから120Hzの間にしておくのがいいと思う。
なお,具体的な試聴印象は,バスリダイレクトを有効化した状態のフロントLRにおける波形に近い。8kHz以上の超高域はたしかに“いない”感じなのだが,5〜8kHz付近の「高音が出ていると感じやすい高域」が強いので,超高域の大きな落ち込みはそれほど知覚されない,と言ったほうが正確だろうか。
また,350Hz付近が谷になっているため,中低域はすっきりしており,2.0chモードを選択したときのようには高域をマスクしてしまったりしない。
Sound Blaster ZxRとHD Audio CODECを比較してみると,方向性は似ているものの,前者のほうがツヤがあって,よりオーディオ的に聞こえる。音圧が高いのが効いているのだろう。
また,Sound Blaster ZxRで96Hzにクロスオーバー周波数を設定したとき,80Hzあたりの山はHD Audio CODECと比べても大きくなるので,低域の「きちんと再生される具合」もSound Blaster ZxRのほうが良好だ。HD Audio CODECと組み合わせる場合は,インラインリモコン側の出力設定でフロントLRを「3時」くらい,SUBを全開にするといいと思われる。
では肝心要のリアルサラウンドはどうだろうか。
まずはSound Blaster ZxRと接続し,バスリダイレクトを有効化して試聴を行った。
2ch出力対応のヘッドセット(やヘッドフォン)でバーチャルサラウンドサウンドを実現するための「バーチャライゼーション」においては,音の指向性を確保するため,たっぷりの高域成分が間違いなく必須だ。ではなぜTiamat 7.1 V2では高域が落ち込んでいるのにサラウンド感があるのだろう?
Tiamat 7.1 V2のサラウンド感がある理由は,エンクロージャ内に配置される計10基のスピーカードライバーの存在を「8kHz以上の超高域再生能力を欠いた,安価なマルチチャネル出力対応サラウンドスピーカーセット」に喩(たと)えると分かりやすい。
より高品位なマルチチャネル出力対応サラウンドスピーカーセットと比べて品質は劣るかもしれないが,きちんとサラウンドに聞こえるように設置してあれば,きちんとサラウンドサウンドとして知覚できるのだ。Tiamat 7.1 V2のスピーカードライバー配置は,まさにそんなイメージである。
テストにあたっては今回も「Fallout 4」と「Project CARS」を用いているのだが,前者では,視界前方30度くらいのところにヘリコプターを見据えると,きっちり前方30度くらいのところから音が聞こえる。高域がなくてもスピーカードライバーの配置と角度を最適化することでフロントスピーカーの代わりは務まるという好例と言っていいだろう。
また,ヘリコプターの周囲をぐるっと回ってみると,サイドサラウンドを利用できないSound Blaster ZxRでも,出力はSound Blaster ZxR側で5.1chにダウンミックスされるため,「サイドサラウンドチャネルを利用できていないがゆえのデッドポイント」のようなものを感じることなく,キレイに音がつながるのを聞き取れた。HD Audio CODECの7.1ch出力はいわずもがなだ。
テスト対象のゲームタイトルを増やしていけば,「Sound Blaster ZxRでサイドサラウンド出力に対応していない」問題が顕在化し,音のつながりが悪くなる可能性もゼロではないものの,ヘッドセットのエンクロージャ内における各スピーカードライバー間の物理的な距離は大したものでもないので,あまり神経質になることでもないと思われる。
低域は,Sound Blaster ZxRで96Hzにクロスオーバー周波数を設定してテストしている限り,それほど強くは感じない。「しっかり存在するものの,前には出てこない」印象だ。これに対してHD Audio CODECの場合,クロスオーバー周波数は(おそらく)350Hz付近にまで上がるため,音の重心も高くなり,俗に言う「軽い音」に聞こえる。重低音は存在すれども相対的に小さめなので,どうしても低弱高強に聞こえるのだ。
一方,Project CARSだと,ゲーム側が低域から中低域の成分を非常に多く含んでいることもあり,何かバランス設定を弄ったりしなくても,相応に低音は出る。ただ,重低域はやはり「いるけれども前には出てこない」印象だ。
定位はFallout 4同様できちんとしている。とくにフロントLRとリアLRによる前方および後方の定位感は「リアルサラウンドならでは」という感じがある。また,高域はグラフで見たほどひどい落ち込み方には感じなかった。
バスリダイレクトは,少なくとも今回試した2種類のサウンドデバイスなら有効にでき,効果も確認できる。ただし,どういうわけかステレオ音源を採用したオープニングムービーだけはバスリダイレクトが有効にならず,サブウーファからは音が一切出なかった。どうもサラウンドコンテンツのときしかバスリダイレクトは有効になっていないようだ。
音質自体は,バスリダイレクトで設定したクロスオーバー周波数にもよるが,Sound Blaster ZxRで96Hzに設定すると,ギアチェンジの音や縁石に乗り上げたときなどの超重低音も聞こえた。ただ,低音の重心はそれでも依然として高く,低弱高強な印象は拭えない。
マイクはHD Audio CODECでの利用に最適化!?
※2kHz〜4kHz付近の周波数帯域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。
まず言えるのは,Sound Blaster ZxRに接続したときとHD Audio CODECに接続したときとでは,得られる周波数特性がまるで異なるということだ。同じマイクとは思えないくらいだが,Sound Blaster ZxR側のマイク入力周りにイコライジングが入っていないことは確認済みなので,HD Audio CODEC側で周波数特性をフィルタリング(≒イコライジング)して弄っている可能性が高い。
実際に声を聴いてみると,HD Audio CODECと比べて,Sound Blaster ZxRとの接続時のほうがはるかに低域に存在感があり,声の張りも感じられる。ただ,ノイズも多い。Sound Blaster ZxR側でマイク入力時のノイズリダクションを有効化したほうがいい印象である。
逆にHD Audio CODECとの接続時は,声の張りこそ感じられないものの,チャット相手が聞き取りやすく,かつ目立ったノイズもない印象だった。
そういうわけで,「2つのテスト条件であまりに傾向が異なるため,マイクの評価をしづらい」というのが正直なところだが,HD Audio CODECにおける極端なイコライジングのかかり方からして,RazerはTiamat 7.1 V2を,HD Audio CODECと組み合わせて使う前提で最適化している可能性が高いと思う。その意味では,HD Audio CODECと組み合わせたときの評価のほうが,マイク性能の実態には近いはずだ。
どこまでもニッチだが,必要な人にとっては唯一無二の選択肢
一方で,リアルサラウンドらしい前方定位のよさはさすが。また,マザーボードのオンボードサウンド機能に最適化されているとしか思えない音質傾向は,せっかくマザーボードのアナログ7.1chサラウンドサウンド機能があるのだから,ぜひ積極的に活用したいという場合には,唯一無二の体験をもたらしてくれるものであることにも,疑いの余地はない。
どこまでもニッチで,しかも実勢価格は2万4700〜2万7000円程度(※2018年3月31日現在)と安価でもないため,ほとんどの4Gamer読者には勧められないが,ごくごく一部のユーザーにとっては他に代えがたい製品。Tiamat 7.1 V2というのは,そういうヘッドセットである。
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Tiamat 7.1 V2をパソコンショップ アークで購入する
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