プレイレポート
奥深い駆け引きが楽しめるFlashベースの対戦型カードゲーム,「KING OF WANDS」のプレイレポートを掲載
トレーディングカードゲームの要素を取り入れた
Flashベースの対戦型カードゲーム
KOWは2月12日から正式サービスが開始された,オンライン専用の対戦型カードゲームだ |
Flashゲームには食指が動かないという人も少なくないだろうが,実際にプレイしてみると,そのゲームとしての完成度の高さに驚かされること請け合いである。戦術性の高い対戦型カードゲームが好きな人は,ぜひ本稿を通じてKOWの魅力を確認してほしい。
KOWは,魔法専門学校「マルクト魔法学校」での生徒同士の争いをテーマとした,オンライン専用の対戦型カードゲームだ。プレイヤーはカードを用いてモンスターを召喚したり,攻撃魔法を放ったりして,ほかの生徒(プレイヤー)と戦いを繰り広げる。
プレイヤーは最初に,手持ちの「召喚符」と呼ばれるカードを使って,自陣(7マスのバトルフィールド)にモンスターを呼び出していく。呼び出したモンスターは移動と攻撃の二種類の行動が行えるが,そのつど「ジェム」というリソースを消費していく。ジェムがなくなるまで各ユニットを動かしたら,自分のターンは終了だ。これを二人のプレイヤーが交互に繰り返す形で,ゲームは進行していく。
なおプレイヤーは,手持ちの召喚符の中から最大15枚の「デック」を作成し,それを持ち寄って戦うことになる。デック構築の段階からバトルは始まっているといっていいが,対戦相手の手の内(デック構成)は戦うまで分からないので,さまざまなケースを想定しつつ,デックを組みたいところだ。
KOWはブラウザ上でプレイできる。プレイ環境のハードルは限りなく低く,それでいて奥深い戦術性が楽しめる |
右側の赤いマスが自分の陣地。召喚したモンスターはカードとして表示されるが,自分のターン終了時に実体化する |
画面の左右にある黄色の宝石がジェムの残量を示している(画像では,青が3,赤が10)。これはターン内の行動力に関係のあるリソースだ |
掲載画像を見ると,赤と青のバトルフィールドが,それぞれ七マスずつあるのが分かるだろう。これは言うなれば,RPG「ウィザードリィ」の前衛/後衛といった概念に近いもので,パーティ同士が対峙しているような位置関係をイメージすると,理解しやすいかもしれない。
例えば,最もオーソドックスなモンスターのスライムは,正面にいる相手1体を攻撃できるが,そのためには自身が前列に出ていて,さらに相手も目の前のマスにいなければならない。もちろん,攻撃範囲やダメージはモンスターによって違っており,マスを飛びこえて攻撃できるシャドウや,敵味方関係なく周囲のユニットすべてを攻撃できるゴーレム,移動はできないものの,正面方向へ強力な貫通攻撃を行えるドラゴンなども存在する。
また,それぞれのモンスターは攻撃範囲やダメージが異なるだけでなく,攻撃対象を毒や麻痺状態にしたり,「結晶化」させて行動不能&被ダメージ無効にしたりといった特殊能力を持ち合わせたものもいる。
召喚符には,自陣にモンスターを呼び出すタイプのほかに,魔法タイプのものもある。これらは消費ジェム量が多いので多用は禁物だが,例えばマスの位置に関係なく攻撃したり,あるいは回復したり,さらには仲間をワープさせたりといった,強力な特殊効果が発動できる。そういったさまざまな召喚符を駆使して,勝利を目指していくのだ。
「シャドウ」は,マスを超えた先にいる相手を攻撃できる。モンスターによって攻撃タイプはさまざまだ |
下に並んでいるのは魔法タイプの召喚符。消費ジェムは多いが,使いどころがを間違えなければきわめて有益 |
手持ちの召喚符の中から,デックを構築しているところ。かなり本格的だが,こう見えてもFlashゲームである |
いかにして「連鎖攻撃」を繰り出すかが勝利の鍵
モンスターを倒すと,攻撃力がアップした状態でさらに行動できる。連鎖をうまく利用できるようになれば,初心者卒業だろう |
KOWでは基本的に,一体のモンスターはターン内に一度しか行動できない。しかし,モンスターにトドメを刺した場合に限っては再度行動が可能で,しかもこの場合は攻撃力アップのおまけが付く。従って,一撃でモンスターを倒し続けている間は,ジェムが尽きるまで強力な攻撃を繰り出し続けられる。
これは勝ちを狙ううえで,想像以上に重要なシステムだ。例えば,前衛のすぐうしろにモンスターが配置されている場合。前衛を倒すと,後衛が自動的に押し出される形となる。そのため攻撃力の高いモンスターは,次々と相手モンスターを葬って,1ターンで一番奥に控えるリーダーユニット(プレイヤーキャラクター)を狙える可能性があるのだ。連鎖による瞬殺(あるいは一発逆転)といった試合展開も,KOWではそれほど珍しいものではない。
そしてこの連鎖攻撃システムは,敵のみならず,味方のモンスターを倒した場合にも適用されるという点が,KOWのバトルをより面白くしている。もし自陣に弱ったスライムなどがいれば,ターンの最初に「自らの手で」それを倒し,攻撃力をブーストさせたうえであらためて敵モンスターを攻撃する,という戦術もとれるのだ。
最初にこれを見たときは,仲間を犠牲にするのはかわいそう……とも思ったのだが,ゲーム性としては実に興味深い。このシステムをアレコレ活用しようと思ったら,回復魔法の使いどころや攻撃対象など,より深く考えて決める必要がある。もちろん,デックの組み方も変わってくるだろう。
敵味方のバトルフィールドに関係なく,瀕死のモンスターを放置したままターンを終えることは,相手に連鎖のチャンスを与えることを意味する。そのため,いかにして自分にとって連鎖しやすいような,そして相手に連鎖させないような展開を作り出していくかが,プレイ時の大きなポイントとなるのだ。
当然,対戦相手もこちらに連鎖攻撃をさせないようにモンスターの位置を調整したり,瀕死の味方モンスターを自分で「処理」してくるだろう。そういった駆け引きの末に連鎖攻撃を決め,次々とモンスターを葬り去れたら,それはもう痛快だ。連鎖といえば「ぷよぷよ」を連想する人が多いだろうが,なるほど米光氏が手がけた作品らしいゲーム性である(というのはちょっと強引だが)。
・ハートマーク:召喚したモンスターの生命力
・拳マーク:攻撃力(連鎖中は更にプラス1される)
・宝石マーク:使用時(召喚時)に,自分が消費するジェム量
・上矢印マーク:使用時(召喚時)に増える相手のジェム量
生命力や攻撃力はそのままの意味だが,そのあとの二つには要注目。各行動時にジェムが必要だということは,すでに説明した通りだが,KOWでは無闇にたくさんのモンスターを召喚すると,手持ちのジェムが減ってしまうだけでなく,相手のジェムが増えてしまうのだ。その結果,魔法カードの使用や連鎖などといった,強力な攻撃を許すことになる。
つまり,強力なデックを構築できたからといって,試合開始後にいきなりフルパワーを出しきってしまうのは,あまり得策とはいえない。相手の戦力に応じて,いかにして過不足ない力で対応していくかが重要になってくるのだ。このシステムによって,安易なパワーゲームを抑止しつつ,ゲームバランスを保っているというわけである。
召喚符は使うとなくなるタイプが多いが
課金アイテムや自動補充などのサービスもあり
リアルマネーで「エン」を購入し,それを消費してカードやアバター,付加サービスなどを入手する。購入方法はクレジットカードやWebMoneyに対応している |
現在用意されている主なゲームモードは,勝敗に応じてレートが上下するタイプの公式戦と,レートが変化しない練習モードの二種類。またそれとは別に,ステップアップ形式でゲームルールを覚えられる「レッスン」と,詰め将棋感覚で一人で遊べる「詰めワンズ」も用意されている。とくに,合計30問が用意された詰めワンズはかなりの手ごたえがあり,これを一通りクリアできるようになる頃には,公式戦デビューに相応しい実力が得られているはずだ。
基本的にKOWは,プレイヤー対プレイヤーの対戦をメインコンテンツとしたタイトルだが,レッスンや詰めワンズといった,一人遊びの環境が整えられているのは嬉しい。
プレイ時の注意点としては,大半の召喚符が消費アイテムとして設定されていることが挙げられる。つまり基本的に,デックに加えた召喚符は,勝負で使用すると消えてしまうのだ。ただし,召喚符は毎日自動的に補充され,また参加することで召喚符が得られるゲーム内イベントなども頻繁に行われている。よって,それほどハイペースでプレイしない限りは,召喚符が足りなくて満足のいくデック構築ができなくなる,といった状況にはなりにくい。
さらに,正式サービス以降は使用回数が減らない「永久召喚符」が導入されており,このあたりのバランシングは今後も微調整されていきそうな雰囲気だ。とりあえず,先述したジェムの仕様とも相まって,お金をつぎ込まないと満足にプレイができない,といったことはないので,安心して楽しんでほしい(もちろん,上を目指そうと思うなら,それなりに有料召喚符などを購入する必要があるだろうが)。
見た目の割に競技性が高いタイトル
一人用モードも導入されているのが嬉しい
CBTではベテランプレイヤーの参加率が高かったのか,初心者の筆者はこてんぱんにやられてしまった。参加人数がもっと増えると,マッチングのバランスも適正になるだろう |
そして,これだけのゲームがFlashベースで楽しめてしまうという点にも,あらためて感心してしまう。課金システムはもちろん,ちゃんとしたチャットルームも設けられているし,ブラウザさえ動けばネットカフェや学校/職場(はまずいか……)でもプレイできる。プレイ環境のハードルが低いというのは,やはり魅力的だ。
一口にカジュアルゲームといっても,スペック面のハードルが若干高い作品も最近は増えてきている。そういった中で,事実上ほとんどすべて(と言ってもいいだろう)のオンラインゲーム環境でプレイできるKOWは,本当の意味での“カジュアルゲーム”と呼ぶに相応しい内容なのかもしれない。
もし,読者の中でFlashゲームに対する偏見を持つ人がいれば,この機会に一度KOWに触れてみてほしい。そういったこだわりのある(?)PCゲーマーであるほど,実際にプレイしたときの驚きも大きいのでは,と個人的には考えている。
もちろん,それほど大げさに考えなくても,例えば一人用の詰めワンズなどをちょっとした空き時間でプレイするのにも向いている。プレイヤーの実力が勝敗に結びつきやすいゲームであるため,それなりに対戦型カードゲームの素養は必要かもしれないが,プレイのハードル自体はかなり低いのだから,幅広いプレイヤー層に遊んでもらいたいものだ。
KOWはかつてNTTコミュニケーションズのコミュニティサイト「なつゲー」で運営されていたが,同サイトの終了に伴い一度はサービスが終了したタイトルである。宙ぶらりんになっていたKOWの運営権をデックスエンタテインメントが取得し,2008年2月に二度目のスタートを迎えたわけだ。
今回のプレイを通じて,KOWそのものに魅力があるのは十分理解できたので,これからは同社が「アルテイル」シリーズで培ったノウハウを,新規プレイヤーの獲得やアップデート内容にどう反映させていくのか,そのあたりの運営手腕にも注目していきたい。
なお先日,本作のプロデューサーを務めるデックスエンタテインメントの北岡将長氏に,アップデートの方向性や今後の運営展開について話を聞かせてもらった(関連記事は「こちら」)。KOWの向かう先が気になるという人は,そちらの記事にも目を通してほしい。
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