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「ウルティマ オンライン 宝珠の守人」開発者インタビュー
このたび来日したのは,リードデザイナーのマリア・ハミルトン氏,プロデューサーのジェニファー・レイン氏,コミュニティマネージャーのクリス・ローニアス氏。2005年8月24日,3人とも大変多忙ななか時間を割いてもらい,宝珠の守人の注目点や自信のほどについてインタビューしてきた。
Text by 麻生ちはや
Photograph by kiki
■βテストで早くも攻略された新ダンジョンの数々
4Gamer:
「ウルティマ オンライン 宝珠の守人」(以下,UOML)のβテストが終了しましたね。バグフィックスやバランス調整など,もう準備は万全ですか?
マリア:
今回の拡張についての作業は完了していますし,準備は整ったと思います。ただ,バグを完全に取り除くというのは,残念ながら不可能です。今回の拡張には本当に多くの要素を盛り込んでいますし,実は前回の拡張版「武刀の天地」にも,未だにバグが残っているんです。もちろん,今後もすべてのバグを修正するために努力を続けますよ。
4Gamer:
宝珠の守人には驚くほど多くの新仕様が盛り込まれていますが,「プレイヤーに一番人気が出る」と予想している仕様はどれですか?
マリア:
どんなプレイスタイルであっても,新仕様のどれかを必ず楽しんでほしい,という意味で,こんなにも多くの要素を盛り込みました。その中でも一つ挙げるなら,「ピアレスボス」でしょうか。なぜならあまりに強いモンスターゆえに,プレイヤー同士が協力し合わなければ絶対に攻略できないという,今までのUOにはない存在なんですよ。
クリス:
協力プレイという意味では,複数のメイジが協力して一つの魔法を完成させる「スペルウィービング」も興味深い新仕様ではないでしょうか。また,個人的には九つの新ダンジョンがオススメですね。従来の,狭い通路を淡々と抜けて……という,ありきたりなダンジョンとはまったく異なり,もっとオープンな場所になっています。難度も上がっていますし。
4Gamer:
ダンジョンの話が出たのでお聞きしますが,九つ実装される新ダンジョンのうち,最も攻略が難しいのはどこですか
マリア:
「パレス・オブ・プレキシマス」というダンジョンですね。ここの最後のボスを倒すのはかなり難しいですよ。ファセットでいうと,トラメルとフェルッカの両方にあります。
ジェニファー:
モンスター以外に,ダンジョン自体にも仕掛けを施してあるんです。
マリア:
2番めに難しいのは……「プリズム・オブ・ライト」というダンジョンです。ここは一方通行のダンジョンで,一度入ったら後ろには戻れません。ボスはそれほど強くないですし,途中で町に帰ることもできますが,また最初からやり直しになってしまうんです。
4Gamer:
今挙げられたようなダンジョンを,βテストで攻略できたプレイヤーはいたんでしょうか
マリア:
とあるダンジョンに「マラクタス」というチャンピオンが出現しますが,βテスターの皆さんはこのマラクタスの召喚方法が見つけられず,これだけは攻略できなかったようですね。一番難しい「パレス・オブ・プレキシマス」では,βテストの最終日に17人がかりでようやくボスが倒されました。
ジェニファー:
βテスターの皆さんもボス攻略が目的で,毎晩PTを募集してボス討伐に挑んでいたみたいですよ。
4Gamer:
UOでは,まったく知らないプレイヤーとPTを組んでどこかに出かける,ということがとても少ないですが,今後このダンジョンの存在によって,普段知らないプレイヤーと協力し合うということが増えそうですね。
ジェニファー:
それこそ,まさに今回私達が期待している点です。
■新種族は"エルフ"以外にも候補があった!?
4Gamer:
エルフについて質問させてください。資源の採取能力がヒューマンに比べて優れているなど,種族固有の能力を最初から持っているエルフですが,βテストでの評判はいかがでしたか?
マリア:
一つ大きな不安材料として,PvPにおいてエルフが強すぎるのではないか,という声がありました。これは実際にβテストには参加していないプレイヤーの間でも議論が起きています。また反対に,ヒューマンはすべてのスキルを器用に使えるメリットがあるじゃないかという声もあります(ヒューマンは,スキル値が0でも低い確率でスキルの使用に成功する仕様)。これについてはまだ結論は出ていないのですが,こういった両方の意見が出てくるのは,私達としては非常に喜ばしいことです。
4Gamer:
エルフがPvPで強いというのは,エルフ専用の装備のせいですか?
マリア:
いえ違います。エルフが有利だといわれているのは,エネルギー抵抗の限界値とマナの限界値の増大についてです。実際にはエルフが圧倒的に強いというわけではないです。
4Gamer:
ハートウッドに住む"善のエルフ"と,地下に住まう"人間を憎むエルフ"の2種類に分かれていますけど,βテストではどっちの人気が高かったですか。
マリア:
とくにどちらかに人気が偏るということはなかったですよ。ただ,これはUOの特徴でもあるんですが,UOプレイヤーというのは自分のスキルや衣装に合わせて役柄を演じる,「ロールプレイ」を楽しむ人が多く,今回も赤ネーム(PK)なプレイヤー達は邪悪な存在「サンクチュアリ」で活動するというロールプレイを楽しんでいたようです。
4Gamer:
この種族という新しい概念が今回受け入れられれば,別のクラスが導入される可能性はあると思っていいんですね?
クリス:
もちろんです
4Gamer:
オークなんてどうでしょう?
マリア:
実はオークは選択肢の中に入っていたんですよ。
クリス:
事前のリサーチでプレイヤーからの意見を集めたところ,エルフがダントツの人気でしたが,2位がオークだったんです。
マリア:
実はオーク専用スキルも考えたんですよ。例えば「bully」とかですね。オークキャラクターでこのBullyスキルを磨けば,NPCのオークに指示を出して,無理やり言うことをきかせられるんです(笑)。
4Gamer:
なんだか,テイマーみたいですね。
マリア:
そんな感じです。スキルレベルによって従わせられるオークの数が違ったり,スキルが足りなくて失敗すると,逆にNPCオークから襲われてしまうとか。
■中には変化や進化を嫌うプレイヤーもいるが……?
4Gamer:
ところで話は変わりますが,前回のカンファレンスで「何か大きな変化があるときには,それを嫌う人が必ずいる。開発する身としては,いつまでも同じレベルで満足しているより,新しいことに挑戦を続けていきたい」と伺いましたが,あらためてお聞きします。これまでのUOの世界観を大きく壊すような種族の導入などによって,古参プレイヤーが離れていってしまう不安感はありますか?
ジェニファー:
例えばですが,新仕様の一つである「コレクション」で集めるのは,過去8年間のUOの歴史が詰まったものだったりします。古くからUOをプレイしてくれている人にしか分からない懐かしい物を扱うなど,私達も古参プレイヤーのことは考えています。
マリア:
確かに宝珠の守人は大きな変化をもたらしますが,これらはプレイヤーが求めているものです。今回の種族についてだって,リサーチしたところ,「ガーゴイルを入れてほしい」「エルフがいい」といった,どの種族を入れたいかという意見の違いはあっても,「種族なんてやめてくれ」という声はありませんでした。古参プレイヤーから「エルフを導入するのはいいけど,エルフをPKできるようにもして」なんて案はありましたけどね。
4Gamer:
以前の拡張/パブリッシュからアーティファクト(AF)が導入されましたね。以後,PvPでも通常の狩りでも,全身AFで固めていないとお話にならないという風潮が見られます。以前のUOは装備よりも,プレイヤースキルや判断力,マクロの完成度などが求められていたと思うのですが。
クリス:
確かに最近アイテム偏重になってしまっていることは,私達も気がついています。しかし,最終的にPvPではやっぱりプレイヤースキルおよび,仲間との連携が求められますし,宝珠の守人で導入されるスペルウィービング(織成呪文)は,このアイテム重視のスタイルを打ち壊す存在になると思っています。
マリア:
それに今回の拡張で登場するモンスターは,結構な確率でAFを出します。AFが行き渡って当たり前になれば,アイテム偏重という現状も当然変わっていくでしょう。
ジェニファー:
それと同時に,生産クエストの「レシピ」では,AFに匹敵する強い装備品が作れるようになりますよ。
4Gamer:
なるほど。ところで今回の拡張に限った話ではないんですが,皆さんがUOの中で個人的に気に入ってる部分はどこですか?
クリス:
ハウスカスタマイズです(即答)。ここまでできるMMORPGはほかにそうそうありませんし,UOというゲームに深みを与え,プレイヤーとUOの世界を強く繋ぎとめる素晴らしいシステムだと思っています。
マリア:
生産系が個人的にお気に入りですね。かなり現実世界に近い形で物を創り上げていくシステムだといえますし。
ジェニファー:
私は1997年からずっとUOをプレイしていますが,UOの魅力はやはり圧倒的な自由度の高さですよね。週末をずっとハウスカスタマイズに費やしてもいいし,PKに燃えてもいいし,何でもできるというのはUOの最大の魅力です。
■まだ発売前なのに,早くも今後のことを聞いてしまう
4Gamer:
前回の拡張パック「武刀の天地」の発売から,今回の「宝珠の守人」発表までは,1年を切る短いスパンとなりましたが,次の拡張もこれぐらい早く来ると期待していいんでしょうか。
クリス:
今は宝珠の守人を成功させることが第一ですし,今後の展開についてはちょっとお話しするのは難しいです。ただ今回こういった「タウンホールミーティング」という形で,プレイヤーの皆様との交流を,アメリカや日本だけでなく数か国で行っています。ここから,EAがどれだけ今回の拡張パックをプッシュしているかを感じていただければ幸いです。
4Gamer:
これまで何か国かで「タウンホールミーティング」を開いていますが,プレイヤーと接してみて雰囲気などはいかがでした?
クリス:
国ごとにまったくタウンホールミーティングの様子が異なり,面白かったですよ。ロンドンは地下のパブで開催したのですが,みんなノリノリで,くだけたカジュアルな感じでした。逆にベルリンはまるでセミナーを受けてるようなお堅い感じでしたね。
4Gamer:
「ウルティマ オンライン」という一つのタイトルに,もし「完成形」というものがあるとしたら,この宝珠の守人で何%ぐらいまで来ましたか。
クリス:
それはとても難しい質問ですね。ご存じのようにUOは進化し,変化し続ける,終わりのない物語のようなものです。100%というものはありませんし,新仕様についてもプレイヤーの皆さんに受け入れられて初めて評価が下されます。UOはいつでもプレイヤーが望む形に姿を変え続けていきますから,完成というものはありえません。
4Gamer:
プレイヤーが望む限り,この先もずっとサービスは続いていくというわけですね。
クリス:
そう願います。
4Gamer:
さしつかえなければ,現在のプレイヤー数を教えてください。
クリス:
申し訳ありませんが,それについてはお答えできません。ただ,全プレイヤー数に対して,日本のユーザー数は45%程度ということだけはお伝えできます。
4Gamer:
長くなりましたが,最後に間もなく始まる「宝珠の守人」を期待している4gamer読者へ,コメントをお願いします。
クリス:
今回の拡張は,従来の拡張パックに比べると,とても凝った内容で"Cool"ですよ。プレイヤーが欲しがっていた機能をふんだんに採り入れ,生産でもPKでも,どんなプレイスタイルの人でも必ず楽しんでもらえるはずです。UOを作っていくのはプレイヤーの皆さんですから,どうか宝珠の守人を楽しんでください。
ジェニファー:
日本を含む全世界のUOプレイヤーから,宝珠の守人をプレイした感想を聞けることを待っていますし,成功を祈っています。
マリア:
βテストを経て,本当に多くのフィードバックを下さったプレイヤーの皆様に感謝します。皆様の声があってこそ,今回の拡張版は生まれました。本当にありがとうございます。
4Gamer:
ありがとうございます。
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今回導入された新仕様は本当に多種多様である。種族の概念から新ダンジョン,数え切れないほどの生産アイテム,内装アイテム,共同魔法とでも呼べる「アーケインサークル」など,挙げていけばキリがない。インタビューにてマリア氏が述べたように,戦闘中心でも,生産が好きでも,ハウスデザインばかりやっている人でも,とにかくどんなプレイスタイルのプレイヤーでも,必ずどれか一つは要素を享受し,楽しめるように細やかな工夫がされている。
前回のプレスカンファレンスで「新しい何かを導入すれば,必ず不満を持つプレイヤーも出てくる。しかし私たちは現状に満足して止まってしまうわけにはいきません」と発言していたが,「宝珠の守人」はひょっとしたら,すべての現役UOプレイヤーを満足させてくれるだけのパワーを持っているかもしれない。
終わりのないMMORPGでは,単に新MAPや新モンスターを増やすだけでプレイヤーの気持ちをつなぎ止めることは大変難しい。しかし,8年間もの長いサービスで培われた経験と,プレイヤーの要望を汲み上げ,必ず応えてくれるという信頼関係が,今回のような魅力がぎゅっと詰まった製品に結びついたに違いない。
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