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[COMPUTEX 2005 #09]GPUの第3勢力「Volari」が満を持してSM3.0に対応
基本的なコアアーキテクチャは「Volari 8600」と「Volari 8300」に大別され,それぞれさらにノートPC向け派生品が存在する。
■発表ベースで史上2番目のSM3.0仕様チップ
頂点パイプラインは8本で,頂点シェーダユニットは4基。ピクセルレンダリングパイプラインは16本で,このうちピクセルシェーダは8基という仕様だ。「プログラマブルシェーダユニット数はパイプライン数の半分」という特徴は,先代Volariから受け継いだ格好。理由は言うまでもなく,XGIがパフォーマンスと低コスト化というトレードオフの中でアーキテクチャを設計しているからだ。
XGIのアシスタント部兼コーポレートマーケティング部Danny Lee氏によれば,SM3.0仕様における最大の特徴ともいえる「頂点テクスチャフェッチ(VTF:Vertex Texture Fetching)」にも対応しているという。
8600のプロセスルールは0.13μmで,トランジスタ数は今のところ非公開。コアクロックは400MHz,メモリクロックは550MHzとなっている。採用メモリはDDR(DDR1) SDRAMだ。8600には,コアクロック450MHz,メモリクロック900MHzの上位モデル「8600 XT」も,またベタなネーミングだが用意されている。
先代Volariと異なり,1枚のカードに2個のビデオチップを搭載する「Duo」モデルは今のところ存在しないことになるが,これについては「Duoはコストがかかる製品なので,シングル8600が成功したら考える」(Lee氏)とのことで,登場の可能性はゼロではない。
このほか8600シリーズの特徴としては,192ビットのメモリバス幅を持つ点が挙げられるだろう。これにより,8600 XT搭載カードのビデオメモリは,256MBや128MBとは別に,192MBとか96MBとかいった,これまでからすると微妙な容量のものも登場することになる。
理由は「その時々で最も安価なメモリチップを組み合わせて,競合製品の128MBや64MBよりも大きなビデオメモリ容量のビデオカードを安価に提供できる」(Lee氏)ようにするためだ。例えば,メモリ容量192MBを実現したい場合,容量8Mビットのメモリセルが32ビット分並ぶ,いわゆる「8Mx32」メモリチップを6個用意すれば192ビット接続で実現できるが,これは「8Mx16」を12個でも代替え可能。さらに,96MBなら「8Mx32」チップを3個で96ビット接続,「4Mx32」チップを6個で192ビット接続,といった選択肢を用意できるわけである。
また,ビデオ(映像)再生支援機能として独立したビデオプロセッサコアを実装しているのも特徴で,3:2プルダウン方式のフレーム再構成機能(アニメや映画など,24fpsベースの映像を30fpsベースの映像に変換する機能)や,ジャギーを低減する「Edge Smoothing」機能も提供される。
搭載ビデオカードは,早ければ10月にも登場の予定。価格はLee氏いわく「192MB製品は128MB製品の競合製品と同価格に揃えたい」とのことで,同容量の場合はGeForce 6600やRADEON X700より10〜15%安価なラインが目安になるという。
■TurboCacheライクなシステムを統合したVolari 8300
8300と組み合わせられるビデオメモリは32MBあるいは64MB。ただし8300では,3Dアプリケーションの使用状況やメインメモリの空き状況に応じて,動的にメインメモリの一部をビデオメモリに割り当てる。結果として,ビデオカード上のビデオメモリ容量にかかわらず,ビデオメモリを128〜256MBを使用できるという(配布されていたカタログには最大512MBという記述もある)。
XCAは,8300のコアに内蔵されたMMUハードウェアによって実現しているそうなので,仕組み自体はATI TechnologiesのHyperMemoryよりも,NVIDIAのTurboCacheに近いといえる。そんなXCAを採用する8300のライバルはズバリ,GeForce 6200 with TurboCacheとRADEON X300 HyperMemoryで,3DMark05のスコアは1000前後をターゲットとするのだそうだ。「先進的な3Dゲームを高解像度・フルフレームでプレイするのには向かないかもしれないが,640×480ドット程度で軽く3Dゲームを楽しむには申し分ない」(Lee氏)としている。
プロセスルールは0.13μmでトランジスタ数は現時点で非公開。コアクロックは300MHzから350MHzを予定している。組み合わせられるビデオメモリはDDR SDRAMで,クロックはコアクロックに準じた値,つまり600〜700MHz相当(実クロックは300〜350MHz)になるようだ。
ピクセルレンダリングパイプライン本数は8本。ただし8600,そして先代のVolariと同様,ピクセルシェーダユニット自体はパイプライン数の半分となる4基だ。なお,頂点パイプライン本数についてLee氏は4本と言っていたが,提供された資料には頂点シェーダに関して何の記載もない。ひょっとすると,頂点シェーダについてはCPUエミュレーションの可能性もある。
スペック表を見る限りでは機能面での制限はとくになさそうで,αRGBそれぞれのチャネルが32ビット浮動小数点実数(FP32)からなる128ビットバッファや,1パスで複数バッファへの書き出しが可能なマルチレンダーターゲット(MRT)にも対応している。
消費電力はピーク時で5〜7W程度。発熱が少ないためファンは不要で,ヒートシンクのみで動作するという。接続インタフェースはPCI Express x16/8/1。とくに変換チップは必要ない。
実際の製品出荷は8月以降になるようだ。搭載ビデオカードの価格は「GeForce 6200 with TurboCache搭載カードより10〜15%安価なラインを目安にしてほしい」(Lee氏)とのことなので,5000円台で購入できる可能性がある。
■MXMを採用したノートPC用Volariも登場
モジュールはNVIDIAが提唱するPCI ExpressベースのノートPC用ビデオカード規格「MXM」を採用しており,BTO可能なノートPCでは,GeForce 6シリーズの代わりにVolariを選択できるようにするという。
ちなみに8600MはMXM Type-III,8300MはMXM Type-Iで提供される予定だ。ビデオメモリはMXMモジュール上に用意され,ビデオチップには内蔵しない。
日本では,成功したとは言えなかった先代Volari。新8x00シリーズは,日本のユーザーにどのように受け止められるのだろうか。ビデオチップ業界の第3勢力,XGIについては今後も注目していきたいと思う。(トライゼット 西川善司)
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