第2部の会場(の一部)。Windows 8搭載機の体験コーナー
2012年11月12日,Microsoftの日本法人である日本マイクロソフトは,東京・品川にある本社で,報道関係者向けイベント「
コンシューマー製品メディアデイ 」を開催した。
イベントは,Windows 8発売後の状況を振り返りつつ,年末商戦に関する意気込みを語る第1部と,実際のWindows 8搭載機や関連サービスを体験できる第2部との二部構成。第1部の話題は,
13メーカーから計250機種ものWindows 8搭載機が発表された。タッチ対応機も多い
これまでユーザーは,タブレットの利便性とPCの生産性のどちらかを選ばねばならなかったが,(タッチ対応の)Windows 8搭載機であれば両方を実現できる
Surfaceを日本で発売しないとは言っていない(が発売時期は明かせない)
などといったもので,正直,ゲーマーとはあまり関係のない話だったのだが,第1部のQ&Aと第2部において,Xboxブランドと「
Xbox SmartGlass 」の今後について少し突っ込んだ話を聞くことができた。今回はそのあたりを中心にお届けしてみたいと思う。
国内のXboxは当面の間「Xbox Video」がメイン
SmartGlassは「これから」ながら可能性大
というわけで,まずはXboxブランドからだ。
2012年5月にMicrosoftが,Xboxブランドを,ゲーム機としてのXboxに留まらず,ビデオや音楽なども含めた総合的なエンターテイメントブランドにしたという話は,4Gamerでも
第一報 以降,繰り返しお伝えしてきたとおりである。
Windows 8のXbox Video。すでにサービスが始まっている
だが,ここには大きな問題がある。北米市場におけるXbox 360は
現行世代機トップシェアを確保 し,展開されるビデオ配信サービスの「Xbox Video」や音楽配信サービスの「Xbox Music」は,多数の購読者を抱えている。しかし,日本では残念ながらそうではない。週の売り上げは数百台〜千数百台がいいところで,現行世代トップシェアどころか,PlayStation 2より売れない週も珍しくないという状況だ。
当然,そこで展開されるサービスも北米市場のそれには遠く及ばず,Xbox Musicに至ってはサービス開始の目処すら立っていない。今回のイベントでも,Xbox Musicの開始スケジュールに関する言及はなかった。
香山春明氏(日本マイクロソフト 執行役常務 コンシューマー&パートナーグループ担当)
XboxブランドではXbox Videoをまずは訴求していくという
日本マイクロソフトで一般ユーザー向け製品を担当する
香山春明氏 に,この状況でどうするつもりなのか尋ねてみたところ,氏からは,「ゆくゆくはXboxサービスを拡充させて,北米に見劣りしないしようにしていきたい。
当面,力を入れていくのはXbox Videoだ 」という回答が得られた。すでに1200コンテンツが用意され,Windows 8機やXbox 360から利用できるようになっているXbox Videoに注力していくというわけだ。
Xboxブランドの根幹でもあるXbox Games(≒Xbox 360)よりも,日本ではビデオ配信に力を入れていくとなると,日本における「Xbox」というブランドの扱いが,北米とはかなり違ったものになっていくかもしれない。
続いて,Xbox SmartGlassである。
KinectにMad Catz製ステアリングコントローラ,Playseats製シートまで揃ったForza HorizonのXbox SmartGlassデモ。正直,この環境がうらやましい
Xbox SmartGlassについては,
Windows 8の使い勝手を検証する特集記事内で概要で紹介している が,要は,タッチ対応のWindows 8&RT機やAndroid&iOS搭載タブレットおよびスマートフォンを,Xbox 360ダッシュボードやXbox Videoなどのリモコンとして用いたり,対応ゲームで操作可能なサブスクリーンとして用いたりできるようにする機能だ。
第2部では,
9日掲載の記事 でお伝えしたのと同じように「
Forza Horizon 」と連携させたデモが展示されていたほか,「Halo 4」と組み合わせたデモも展示されていたので,今回はさっそくHalo 4との連携ぶりを直撮りムービーでお届けしてみよう。
Halo 4におけるXbox SmartGlassの利用例
VIDEO
Halo 4におけるXbox SmartGlassの利用例。「Halo Waypoint」につながっている
ご覧のとおり,Halo 4においては,いわゆるSTATS情報がメインだ。Forza Horizonだと,Xbox SmartGlass端末にマップを表示できるので,それと比べるといささか地味なのが否めないが,マイクロソフト ディベロップメントに所属する技術者の
浅田 真氏 (インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス プラットフォーム開発統括部 ハードウェアプログラムマネージャー)が,「
Xbox SmartGlassが持つメリットは,アプリなので後から拡張できること 」と述べていた点は押さえておきたい。「技術的にマップの表示は可能だ」とも氏は語っていたので,将来的にマルチプレイのマップを表示させたりできるようになるかもしれない。
Halo 4のXbox SmartGlassデモ。上のムービーは,このデモシステムでWindows 8搭載機のほうを撮影したものになる
ところで表示に関して言うと,Xbox SmartGlassを導入できたとしても,ゲームとの連携機能「Xbox SmartGlass Experience」は利用できず,Forza Horizonのマップや,Halo 4 の情報などを表示できないスマートフォンやタブレットがあり,しかもどれで利用できてどれができないのか,Xbox SmartGlassアプリをインストールするまで分からないという問題がある。この点を指摘してみたところ浅田氏は,「デベロッパに向けて推奨している解像度がある。それをクリアした端末で,かつXbox SmartGlassを満足に動作させられるものであれば対応できるだろう」という見解を示していた。
現時点でMicrosoftとして要件を一般に公開する予定はないそうだが,「Windows 8搭載機の場合は,Windows 8 Style Appsが動作するものであれば対応できる」(浅田氏)とのことだ。
Home Run Stars
また,第2部の会場には置いていなかったのだが,浅田氏は,Xbox LIVEマーケットプレースから購入できるKinect対応タイトル「
Home Run Stars 」を,Xbox SmartGlass応用例として示してくれたので,4Gamerで再現した写真を示してみたい。Home Run Starsは,そのままプレイすると野球のホームラン競争をするゲームなのだが,Xbox SmartGlassを利用すると,
Xbox SmartGlass対応端末側が投手となり,ミニゲーム形式で,投げる球やその精度を選択できるようになる のだ。従来とは異なる遊び方が可能というのは興味深い。
Home Run StarsとiOS版Xbox SmartGlassの例。通常はKinectでバットを振るゲームだが,Xbox SmartGlassを利用すると,もう1人のプレイヤーが投手として参加できる。まず球種を選ぶと……(下に続く)
(続き)画面に1つずつ現れる円を3つ,タイミングよくタップするよう求められる(左)。タップのタイミングと場所でポイントが加算され(右),ゲーム内ではそれに応じた投球がなされる
ちなみにXbox SmartGlass対応端末は,複数台を1台のXbox 360と連携できるとのこと。たとえばXbox SmartGlass対応の麻雀ゲームなどが出てくれば,各プレイヤーは手元の端末で牌を操作し,Xbox 360と接続されたディスプレイ機器には場の模様を表示させる,といったことも可能だという。
また,日本マイクロソフトでXboxのマーケティングを担当する
磯貝直之氏 (リテールビジネス統括本部 Xboxカテゴリーマーケティンググループ ディレクター)によれば,今後「
たとえばRPGにおいて,経験値を稼ぐミニゲームなどをXbox SmartGlass対応端末で持ち出してプレイし,帰宅後,それをXbox上に反映させる 」といったことも検討されているという。「日本におけるXbox 360の普及率からして,それを実現して広く支持を得るには,次世代機での仕切り直しを待つべきではないか」と尋ねたところ,磯貝氏は苦笑していたが,十分な普及台数のある状況でXbox SmartGlassが利用できるようになれば,ゲーマーにとってはかなり嬉しい事態となるのではなかろうか。
というわけで,結局「国内におけるXbox 360の負けっぷりがね……」という話になってしまうのだが,遙か遠くで聞こえ始めた次世代機の足音が近づいてくるまでの間に,ファーストパーティだけでなく,サードパーティでもXbox SmartGlassの採用が進めば,据え置き機とタブレット&スマートフォンの連携例として,かなりのものができそうな気配だ。Microsoft(というか日本マイクロソフト)の頑張りにとにかく期待したいところである。