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[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋
ちなみに,UT3はアメリカではPC版が11月19日に発売されたものの,当初のセールスは伸び悩んでいた。NPD Groupの調べでは,最初の2週間の小売店販売本数はPC版のみで約3万7000本でしかなかった。12月11日にリリースされたPLAY STATION 3版がその3倍程度の数字を出しているとはいえ,期待作の割には「惨憺たる結果」としか形容できない。
だがMorris氏は,「よく,Midway Entertainmentのパブリッシング不足に我々が失望しているという話を書く人がいますが,我々はまったくそんなことは思っていません」と,まずは販売元との不仲説を否定した。
Capps氏は,UT3が開発当初,「Unreal Engine 3のテクノロジーデモ」としての側面があったことも明かしたうえ,40種もあるマップや,Darkwalkerなどのユニークなデザイン,そしてMODサポートなどといった部分も十分に評価できるところであるとした。
彼が最初に指摘したのは,とくにマルチプレイモードでのユーザーインターフェイスである。メニューの「ダサさ」は,発売当初から多くのファンに酷評されていたが,これは何度も重ねられたテストプレイの結果,ゲームパッドで操作しづらいという報告を重く受け止め,最終段階で現在のものに急遽変更したからだという。発売のわずか数か月前のことであり,「洗練させるにはあまりにも時間が足りなかった」という。
また,用意されたキャラクターカスタマイズ用のパーツが少なく,プレイヤーのチョイスが限られていたことも問題だった。ファンがキャラクターに自己投影できなかったとMorris氏は話す。
さらには,シングルプレイ用キャンペーンのブリーフィングマップが何を意味しているのかプレイヤーに分かりにくかったり,主人公Reaperに感情移入しにくいうえ,カットシーンも登場の間隔が長すぎて,迫力にも欠けていたことなどをアピールにつながらなかった点として挙げた。
さらに,ゲームだけでなく制作サイドにも大きな問題があったとMorris氏は言う。先に述べたように,UT3はUnreal Engine 3.0のテクノロジーデモとしての性格も帯びていたため,2005年というあまりにも早い時期からプロモーションを始めざるを得ず,それが新鮮味を失わせる原因になったという。
そんなUT3だが,現在でも少しずつとはいえ売れており,その状況には満足しているとMorris氏。Epic Gamesの発表では,2月の時点でPC版およびPLAYSTATION 3版のセールスは120万本に達しており,5月に予定されているXbox 360版にも期待がかかるところだ。ただし,UT3のローンチの教訓として「実際にゲームが見せられる状態になるまで,焦ってプロモーションをかけてはならない」と付け加えるのは忘れなかった。
念を押しておくが,このセッションはポストモーテム(Postmortem=事後分析)であって,Epic Gamesの開発者達は失敗部分だけを語ったのではなく,上記したように成功した部分もあったことを述べている。ともあれ,GDCの面白いところは,ミリオンセラーを飛ばしたヒット作ばかりでなく,リリースしたタイトルについて,うまくいった部分とそうでなかった部分を次に生かそうとする開発者達のセッションが少なくないことだ。「歴史から学ぶ」のは人間だけができる行為の一つだが,今回UT3を自己分析してみせたEpic Gamesの開発者達が,この分析を糧により良い作品を作ってくれることを心から願うばかりだ。
※3月3日2:30PM,初出時に誤解を招く表現があったので修正しました。
※3月17日2:35PM,初出時の見出しが内容を適切を表していないとの判断により,修正いたしました。
- 関連タイトル:
アンリアル トーナメント 3 英語版 日本語マニュアル付き
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(C)2005 Epic Games Inc. Unreal is a registered trademark of Epic Games Inc.