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[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋
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印刷2008/02/25 21:21

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[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋

「Unreal Tournament 3」の上手くいった点といかなかった点を分析するEpic GamesのJeff Morris氏(左)とMichael Capps氏
画像集#004のサムネイル/[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋
 2007年度の後半は,「Call of Duty 4: Modern Warfare」「The Orange Box」,さらには「Crysis」といった大作FPSが目白押しだった。これを,「史上最高のFPSクリスマス」と呼んだのが,Epic Gamesがリリースした「Unreal Tournament 3」(以下 UT3)のシニアプロデューサーJeff Morris(ジェフ・モリス)氏である。これはMorris氏と,デザイナーであり現CEOのMichael Capps(マイケル・キャップス)氏が行ったセッション,「Unreal Tournament III Postmortem: ULTRA KILL!!!」の中での発言で,そのうえでUT3がクリスマス商戦で苦戦したことを明かしたのである。
 ちなみに,UT3はアメリカではPC版が11月19日に発売されたものの,当初のセールスは伸び悩んでいた。NPD Groupの調べでは,最初の2週間の小売店販売本数はPC版のみで約3万7000本でしかなかった。12月11日にリリースされたPLAY STATION 3版がその3倍程度の数字を出しているとはいえ,期待作の割には「惨憺たる結果」としか形容できない。
 だがMorris氏は,「よく,Midway Entertainmentのパブリッシング不足に我々が失望しているという話を書く人がいますが,我々はまったくそんなことは思っていません」と,まずは販売元との不仲説を否定した。


急遽変更されたというメニュー画面
画像集#001のサムネイル/[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋
 Capps氏は,あくまでUT3を「シリーズの最高傑作だ」とし,よくこなれたマルチプレイFPSを作り上げた開発チームの力量を讃える。Epic Gamesの上海オフィスとのコミュニケーション問題でアートディレクションに苦労したこともあったそうだが,「従来作のように世界観が統一されていないただのFPSではなく,(FPS黎明期からシリーズを作ってきた経験を持つ)我々の力が最も発揮された作品」とした。
 Capps氏は,UT3が開発当初,「Unreal Engine 3のテクノロジーデモ」としての側面があったことも明かしたうえ,40種もあるマップや,Darkwalkerなどのユニークなデザイン,そしてMODサポートなどといった部分も十分に評価できるところであるとした。

Jeff Morris(ジェフ・モリス)氏
画像集#005のサムネイル/[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋
 ここまで述べたあと,「プロデューサーとして自己反省もしなければいけない」というJeff Morris氏へ話題がバトンタッチされ,UT3のどこがうまくいかなかったのかについての自己分析が始まった。
 彼が最初に指摘したのは,とくにマルチプレイモードでのユーザーインターフェイスである。メニューの「ダサさ」は,発売当初から多くのファンに酷評されていたが,これは何度も重ねられたテストプレイの結果,ゲームパッドで操作しづらいという報告を重く受け止め,最終段階で現在のものに急遽変更したからだという。発売のわずか数か月前のことであり,「洗練させるにはあまりにも時間が足りなかった」という。
 また,用意されたキャラクターカスタマイズ用のパーツが少なく,プレイヤーのチョイスが限られていたことも問題だった。ファンがキャラクターに自己投影できなかったとMorris氏は話す。
 さらには,シングルプレイ用キャンペーンのブリーフィングマップが何を意味しているのかプレイヤーに分かりにくかったり,主人公Reaperに感情移入しにくいうえ,カットシーンも登場の間隔が長すぎて,迫力にも欠けていたことなどをアピールにつながらなかった点として挙げた。

プレイヤーに分かりにくかった,シングルプレイ用キャンペーンのブリーフィングマップ(左)
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 さらに,ゲームだけでなく制作サイドにも大きな問題があったとMorris氏は言う。先に述べたように,UT3はUnreal Engine 3.0のテクノロジーデモとしての性格も帯びていたため,2005年というあまりにも早い時期からプロモーションを始めざるを得ず,それが新鮮味を失わせる原因になったという。
Michael Capps(マイケル・キャップス)氏
画像集#006のサムネイル/[GDC2008#46]Epic開発者の語る,Unreal Tournament 3の試練と苦渋
 Unreal Engine 3.0のSDKに,テックデモとしてUT3のα版を同封する形でライセンシー各社に配布していたのだが,どうしてもゲームの非公開情報が少しずつ漏れていく。そのため,新機能や新フィーチャー情報がリークする前に,自分達で発表することで先手を打つしかなかったのだ。UT3で最も興味を引き付けはずだったDarkwalkerが,「発売されたときには,もうオールドニュースだった」と,プロモーションのスケジューリングがうまくいっていなかったことをMorris氏は認める。
 そんなUT3だが,現在でも少しずつとはいえ売れており,その状況には満足しているとMorris氏。Epic Gamesの発表では,2月の時点でPC版およびPLAYSTATION 3版のセールスは120万本に達しており,5月に予定されているXbox 360版にも期待がかかるところだ。ただし,UT3のローンチの教訓として「実際にゲームが見せられる状態になるまで,焦ってプロモーションをかけてはならない」と付け加えるのは忘れなかった。

 念を押しておくが,このセッションはポストモーテム(Postmortem=事後分析)であって,Epic Gamesの開発者達は失敗部分だけを語ったのではなく,上記したように成功した部分もあったことを述べている。ともあれ,GDCの面白いところは,ミリオンセラーを飛ばしたヒット作ばかりでなく,リリースしたタイトルについて,うまくいった部分とそうでなかった部分を次に生かそうとする開発者達のセッションが少なくないことだ。「歴史から学ぶ」のは人間だけができる行為の一つだが,今回UT3を自己分析してみせたEpic Gamesの開発者達が,この分析を糧により良い作品を作ってくれることを心から願うばかりだ。


※3月3日2:30PM,初出時に誤解を招く表現があったので修正しました。
※3月17日2:35PM,初出時の見出しが内容を適切を表していないとの判断により,修正いたしました。
  • 関連タイトル:

    アンリアル トーナメント 3 英語版 日本語マニュアル付き

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