プレイレポート
「Age of Conan」プレイレポートその4:MMORPGジャンルにおけるAoCの特徴と立ち位置。そして今後の課題について
なお本稿は,基本的に6月中旬のゲームプレイを基に執筆している。アップデートによって,最新のゲーム内容と記事との間に若干の差異が生じてしまう可能性がある点に関しては,あらかじめご了承を。
「Age of Conan」プレイレポートその1
「Age of Conan」プレイレポートその2
「Age of Conan」プレイレポートその3
[週刊連載]「AoC暗黒大陸血まみれ紀行」第1回
ショートスパンのプレイにおけるAoCの印象
「World of Warcraft」という,MMORPGとしてはあまりに大きな成功例を参考にしつつ,現在主流であるクエストドリブンなスタイルにまとめられたAoCのゲーム序盤は,非常にプレイがしやすい。
とくにTortage島は遊びやすい。主に一人で遊ぶことを想定して作られているため,まるでシングルプレイ用のRPGのような感覚で,気負わずにプレイできる。やることが次々に示されるので,ビギナーでも“世界に投げ出されてしまって,何をして良いか分からない”状態に陥ることなくゲームを進めていける。
そのボリュームは,MMORPGの導入ゾーンとしては特大サイズである。メインストーリーともいえる長編のクエストもあり,さらにはフルボイス。ここをプレイするだけでもシングルプレイRPG1本分……とまでは言わないが,半本分をクリアしたくらいの満足感は得られる。長編クエストはアーキタイプごとに異なっているので,コンテンツ全体としてはやはりシングル1本分くらいのボリュームがありそうだ。
Tortageはマルチプレイの部分も不足なく,一緒に始めた友人数人と,クエストを次々とクリアしていったり,あとから始めた友人のヘルプをしたりといったプレイは,大きな充実感が得られるものとなる。
コンテンツは,ところによってはかなり贅沢な使い方をされており,せっかく作ってあるのにもったいない,と思えるほどの早いペースで駆け抜けることになってしまうソロ用ダンジョンなどもある。あるいは「せっかくいい雰囲気なんだから,ここにクエストやその対象Mobなどを配置すればいいのに」と思わされるようなフィールドが,ただ放置されていたりもする。このあたりは,やや作り込み不足という印象だ。とはいえそれは,数々のクエストを駆け抜けつつキャラクターを育てていくという,本筋のドライブ感にはなんの悪影響も与えない。
おそらく,かなり多くのプレイヤーは,1体目のキャラクターがレベル45くらいに育つまでは,夢中になってゲームにのめり込めるだろう。そして,この気持ちよい没入感は,まさに作り手の意図どおりのものだろう。レベルが45程度になるまでにかかる期間は,普通に一日二時間程度のプレイをした場合,おそらく1〜2か月だ。つまりAoCは,購入後数か月間は,夢中でプレイできる面白さをもった作品である。
ロングスパンのプレイおけるにAoCの印象
グループ中心のプレイに切り替えれば新たな展開が見えるかといえば,必ずしもそうではなく,停滞感は完全には払拭できない。このレベル帯から始まるグループコンテンツの整備が進んでいないからだ。アグロマネージメント関連を含めて,おそらくすべてのクラスで調整が必要だろうし,グループインスタンスをさらにやりがいのあるものにするには,レベルやリスポーンの調節,経験値やドロップの整備,スクリプトの練り込みといった作業が必要になるだろう。
MMORPGにおいて,ソロクエストだけでキャラクターをレベルキャップまで育てられなければならない,という決まりはない。だが,ためしにAoCが強く意識しているWoWに目を向けてみれば,あちらではサービス開始当初から,ソロクエストのみでレベルキャップまでキャラクターを育てられるようになっていた。
さらに二人めのキャラクターを作った場合,一人めのキャラクターでは足を向けなかったゾーンで,体験しなかったソロクエストを楽しめば,二人目のキャラクターも新鮮な気持ちで育てられた。そしてそれでも,まだまだ未体験のクエストがごっちゃり残るというくらいにクエストがリッチだった。
さらに加えて,そのような驚くほどぶっといソロプレイのみでのキャップ到達ルートを確保した上で,望むならグループでインスタンスダンジョンへ通うことも可能という,これまたぶっとい別ルートも用意されていた。
もし,WoWの成功の秘密が,この法外ともいえるコンテンツ量にあったのだとしたら,この点においてAoCは相対的に弱い。
AoCのゲーム序盤には,夢中になれる面白さがしっかりと存在する。その手応えは,ここ数年にリリースされたオンラインRPGの中では随一と言えるレベルだ。だが,中盤以降のコンテンツには,現状明らかに不安がある。
プレイヤーの納得できる未来を示せるかどうかがカギ
だっこができたりパンダに乗れたりすることは,武侠の世界とは何の関係もない。また,武器を持ち替えると役割が変えられるというシステムは,三国志の世界とは何の関係もない。
AoCにおいては,残虐な描写も,それが発動すると気力が増すというFatalityの仕組みも,武器を振り回すという独自のプレイ感覚をもった戦闘システムも,それらを多用した荒っぽい乱戦が発生しやすいゲームデザインも,すべてが「バーバリックなコナンの世界」というバックグラウンドから導き出されており,各々は切り離されていない。だから,それらからもたらされる印象は,プレイ体験の中で有機的に結びつき,プレイヤーの胸中に豊かな心象を描いていく。それによりプレイヤーは「自分は確かにワイルドなコナンの世界を楽しんでいる」ということを実感できるのだ。このゲームデザインは,実際に触れてみると非常に心地よいものだった。
AoCの中盤以降には,まだ完成していない部分がある。「ある」というより「多い」と言ってもよいかもしれない。だが,確かに整備は必要だが,ゲームが楽しめないほどの状態ではない。適切なケアが行われれば,これはよいものになるぞという手応えも感じる。そして序盤の完成している部分は非常に没入感が高く,こちらは文句なく面白い。だからもし,今後の改良によって,中盤以降もそれまでに経験できたものと同程度のコンテンツで満たされていくというのであれば,ぜひプレイを続けていきたいと筆者は考えている。
けれども,プレイヤーが期待感を維持していられる期間には限界がある。その期間内に作り手が適切な処置を行えるか,あるいは説得力のあるプランを示せるかによって,本作の未来は大きく変わってくるだろう。
- 関連タイトル:
Age of Conan: Unchained
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