インタビュー
「RED STONE」開発インタビュー。「RED STONE」開発の経緯からアップデートの目玉までいろいろ聞いてみた。「実はメイドは強いんです」
2013年5月24日に都内で開催されたプレスカンファレンスでは,開発元であるL&K Logic KoreaのExecutive Producer & CEO であるナム・テクウォン氏が来日し,今後のアップデート予定を明かしてくれた(関連記事)。
その発表会後に,ナムCEOとインタビューを行う機会を得たので,「RED STONE」の開発秘話や今後のアップデートでの見どころなどを聞いてみた。
4Gamer:
よろしくお願いします。さっそくですが,本日のカンファレンスはいかがでしたか。
今日のカンファレンスでは,今年のアップデート予定を一気に全部発表してしまいましたので,お客さんの反応が知りたくてしょうがないという状態です。
4Gamer:
今日発表したものが,2013年に行われるアップデートのすべてなんですか?
ナム氏:
すべてというわけではありませんが,2013年の目玉となるものは,本日でほぼ発表したことになります。
4Gamer:
まさに日本での「RED STONE」 8周年を祝うような内容だったということですね。韓国は今年で10周年ということですが,そちらはいかがでしょうか。
ナム氏:
韓国でも10周年で大きな準備を用意しています。あと1週間ほどで10周年になるんですけど(※取材当時),本日のカンファレンスの準備で,若干後ろ倒しになってしまってます(苦笑)。韓国では、6月中に10周年記念の大きなイベントを開催する予定です。
4Gamer:
10周年のイベントで,なにか大きな発表はありますか?
ナム氏:
今回は日本で先に発表して,後日,韓国で発表することにしましたので,今日お話しした以上のものはありません。
4Gamer:
ああ,それじゃあ本当に全部出してしまったわけなんですね。
ナム氏:
4Gamer:
韓国ではサービスから10年が経った「RED STONE」ですが,日本ではどうして「RED STONE」が生まれたのかという話はあまり知られていないんですよ。せっかくですので,そういうところから話を聞かせいただければと思います。そもそも,なぜ「RED STONE」を制作しようと思ったのでしょうか。
ナム氏:
もともとL&K Logic Koreaは,オンラインゲームではなく,PCのパッケージゲームを作っている会社でした。
L&K Logic Koreaで最初に作ったゲームは「鏡戦争:悪霊軍」というタイトルだったんですけれども,1999年の9月に発売されて,それが終わったあとにRPGを作ってみようという話が社内で出ました。1999年末だったと思います。
4Gamer:
それでは,最初の数本はアクションゲームかなにかだったんですか?
ナム氏:
最初に作った「鏡戦争:悪霊軍」というパッケージゲームは,ファンタジーの世界観を持つRTSでした。その次に企画していたのが,クォータービュー形式のアクションRPGで,企画としては主人公が最大でキャラクターを5体まで連れてプレイできる形のものでした。
そのようなゲームを1年半ぐらい作っていたんですけど,その間に韓国ではPCゲームの市場がとても小さくなってしまって……。
4Gamer:
日本もあまり変わりません(苦笑)。
ナム氏:
ということで,そのゲームをパブリッシュしてくれる会社を探すのが,非常に困難となりました。そのとき作っていたクォータービューのゲームというのは,何人かのキャラクターを同時に動かせるようなものでしたので,MO形式のオンラインゲームにすることは難しくなかったんです。しかし,2000年ごろはMMOスタイルがはやっていて,「MMORPGならば投資する」というパブリッシャーを見つけることができました。
そこで,そのゲームを8か月ぐらいかけてMMORPGとして作り直し,投資をもらって2003年5月にOBTを実施したのが「RED STONE」です。
4Gamer:
なるほど。しかし,8か月でOBTまでこぎ着けたとなると,かなり急ピッチで作業が進められたことになりませんか?
MOで開発していたものを8か月でMMOに変えたと話しましたが,実際には,並行してMMORPGも準備はしていたんです。当時,MOとして準備していた「RED STONE」を,別に計画していたMMORPGのシステムに組み込んだんです。世界観を入れて,ゲームシステムを持ってきてという感じで移植作業を行いました。
4Gamer:
つまり,基礎研究を行っていたMMORPGのプロトタイプにMOとして開発していたゲームを組み合わせ,改良したものが「RED STONE」となったわけですね。
ナム氏:
1998年ごろからMMORPGを企画していましたので,それを「RED STONE」に合わせてカスタマイズしたというのが正しいかもしれません。
4Gamer:
その際に参考にしたMORPGやMMORPGというのはありますか?
ナム氏:
オンラインゲームで参考にしたものはほとんどありませんが,Diablo 1と2,それ以外ではクォータービューのアクションRPGを参考にしていました。
4Gamer:
このタイトルがL&Kのオンラインゲームの第1弾ですよね?
ナム氏:
オンラインゲームというものをどう定義するかによって返答が違うと思うんですが,実は「RED STONE」を作る前に制作した「鏡戦争:悪霊軍」というタイトルも,Battle.netでオンライン対戦ができましたので,もし「Star Craft」や「League of Legends」をオンラインゲームだとするのであれば,「鏡戦争:悪霊軍」もオンラインゲームということになります。ただ,MMORPGとして最初に作ったゲームということであれば「RED STONE」になります。
4Gamer:
それが,10年も続くタイトルになると思ってましたか?
ナム氏:
正直,当時はまさか10年続くとは思わなかったですね。昔のパッケージゲームというのは,長くても寿命は1年ぐらいで,これをMMORPGにしたときにはどれぐらい長くもつかというのが見えていなかったんです。それよりも,来月は何をアップデートすればいいのかという悩みで頭がいっぱいでした。もちろん,これが10年20年と続けばいいなと考えたことはありましたが。
4Gamer:
では,10年もの間,人気が続いた秘訣はなんだと思いますか?
ナム氏:
プレイヤーの皆様の愛のおかげです(笑)。それ以外に特別な何かは思いつきませんね。
「RED STONE」のユニークなところ,独特なところというのは,プレイヤーの方のほうが詳しいと思うのですが,そういった部分が日本の市場で受けたというのが一点。そして,パブリッシャーのゲームオンと堅い信頼関係で一緒にやってきたことが効いたというのもあると思います。三点めとしては,MMORPGというジャンルが日本に入った初期の段階で,「RED STONE」というタイトルが紹介されたところが大きいと思います。あと,PCの要求スペックが低いので間口が広いというのもありますね。
足りない点もいっぱいあると思うんですけど,プレイヤーの皆様に愛情を持ってたくさんプレイしてもらっているので,アップデートも続きますし,改善も修正も続けてこれたんだと思います。
4Gamer:
今年のロードマップは,先ほどのカンファレンスで発表されたもの(関連記事)となるとのことですが,その先,「RED STONE」はどのような道を歩んでいくのでしょうか。
ナム氏:
新キャラクターや新しいアイテム,マップを追加していくことはオンラインゲームとして当然必要なものでありますが,それ以外の新しい要素をどのように入れるかというのはいつも悩みどころです。「RED STONE」というゲーム自体は,すでにサービスから10年も経っていますので,最新のゲームに入っているシステムがなかったり,逆に最新のゲームにはないシステムが入っていたりもします。
最新のトレンドについていくか,それとも「RED STONE」だけのユニークなコンテンツやシステムを探していくかで,いつも悩んでいます。それを調整していくのが今後の「RED STONE」の歩み方ではないかと考えています。
4Gamer:
では,時代に合わせるというよりも,プレイヤーの反応を見て少しずつ手を入れていくといった感じなのでしょうか。
ナム氏:
先ほど挙げた二つは両立が難しいものかもしれません。新しく入れられるものはあるとは思います。プレイヤーからの意見にはすべて目を通しているんですが,「RED STONE」に反映できないものであったり,入れることは可能であってもゲーム悪影響を与える可能性があるものだったりと,すべてを入れるわけにはいきません。「RED STONE」の既存のプレイヤーが慣れているシステムのままで,新しいコンテンツ,新しい経験と出会っていただけるように調整するのがベストだと考えています。
プレイヤーの皆様の意見を聞いて,「RED STONE」でできることを開発元から提案し,それを精一杯作っていくのが義務かなと思っています。ゲームを豊かにするようなプレイヤーの意見を「RED STONE」に反映していくというのが,開発元としてのスタンスです。
しかし,韓国のプレイヤーからは,ほかの最新ゲームをプレイして「○○というシステムを入れてください」と言われることが,結構あるんですけど,日本では不思議とあまりないんですよね。
4Gamer:
日本のプレイヤーって,許された範囲でどこまでも深く遊んでいくタイプが多いですから,システムに対する要望は少ないのかもしれませんね。また,どこまで声が届くのかなどが分からなくて慎重なのかもしれません。
日本のプレイヤーの声はゲームオンが伝達してくれますし,我々もコミュニティサイトや掲示板などでお客様の意見を積極的に聞こうと頑張ってます。そういう意味で,プレイヤーの皆様には,もっと意見を述べてほしいなと,開発元としては思っています。
4Gamer:
なるほど。
ところで社長は日本のアニメやフィギュアといったものが好きだとお聞きして,今日発表された「メイド」もその影響なのかなと思ってしまいました。今後,新キャラクターを追加するときも,やはりそういうものが影響しているのでしょうか。
ナム氏:
日本のエンターテイメント文化というのは凄く特化されていて,非常に参考になります。もちろん,日本のものだけ見ているわけではなくて,北米やヨーロッパのものも参考にしているんですけど。
「RED STONE」には,「ビショップ」などの割とスタンダードな職業が入っているんですけど,そういった正統派ファンタジーの世界観のなかで,既存のゲームにないような,例えば「リトルウィッチ」や「プリンセス」といった少し変わった職業も追加しています。これはプレイヤーがどういったものをほしがっているのか,いつもプレイヤーの視線で選んでいます。
いまは半分はノーマルでスタンダードな職業を追加し,残り半分はユニークで独創的なものを追加するといった感じでやっています。こういった流れで,今回は「メイド」というキャラクターが生まれました。
4Gamer:
カンファレンスでは「メイド」以外にも候補があったと話されていましたが,どのような職業があったのでしょうか?
ナム氏:
たくさんあったんですけど,すぐに思い出せる候補だと「忍者」と「花魁」ですね。「花魁」はたしか,キセルで攻撃するキャラクターでした。
「RED STONE」は,日本サービスが一番成功していますので,日本のカラーがある職業を入れたいというのはありました。しかし,ファンタジーの世界に,日本に特化した職業を入れてしまうと世界観を壊してしまいますので,サービスしている各国のプレイヤーから好まれそうなものを入れていきたいと思っています。
4Gamer:
先ほど,スタンダードと独創的なものを交互に追加すると話されていましたので,「メイド」の次の次にちょっと期待してしまいます。
ナム氏:
まだ発表はできませんが,「メイド」の次がもしかしたら遊び心がありそうなキャラクターになるかもしれませんね。
4Gamer:
「メイド」がスタンダードなほうだったということですか……(笑)。何が出てくるかちょっと楽しみです。ただ,アバターシステムが実装されると,ネタものはそちらに行ってしまいそうな気がするのですが。
ナム氏:
詳しくは言えませんが,いろんなものをアバターシステムで用意しています。職業では作れそうもないものでも,アバターという枠であればいけるんじゃないかと考えています。
4Gamer:
もしかして,アバターの例で出ていた「バニーガール」も職業で入れたかったものなのでしょうか。
ナム氏:
「バニーガール」は,どちらかというとゲームオンの要望によるものですね。
4Gamer:
なるほど(笑)。「バニーガール」は女性クラス向けですが,男性クラス向けにもそういう色モノ系のアバターアイテムを出していく予定はあるんでしょうか?
ナム氏:
女性のプレイヤーの皆様のためにも,そういったものを作らなければならないと考えています。
4Gamer:
このアバターアイテムは,例えば「バニーガール」のアバターアイテムを装備すると,丸ごと「バニーガール」になっちゃうんでしょうか? 耳などパーツごとに装備するというのはできないのでしょうか?
ナム氏:
セットでまとめてですので,パーツごとに装備というのはできません。新しい装備スロットが一つ追加されて,そこにアバターアイテムを装着すると,外見が一気に変わる感じです。もちろん見た目だけではなく、キャラクターのパラメーターも変更となり、能力が上昇します。
4Gamer:
なるほど。しかし,アバターアイテムは新しいキャラクターを一つ作るぐらいの手間がかかりそうですね。
ナム氏:
そのとおりです。ですので,皆さんが喜んでくださることを心から祈っています。
アバターアイテムは職業別になってまして,その職業に合った,その職業に特化した形になります。もちろん,女性共通アバターなども考えてないわけではないですが,基本的には職業ごとになります。
どの職業にどのアバターを合わせるかは現在協議中で,日々アイデアが出ていますので,いまはまだ決まっていません。
4Gamer:
かなり手間がかかるみたいな感じですが,それだとあまり頻繁にリリースできないのではないでしょうか。
いろいろなアップデートの企画がありますので,アバターアイテムだけポンと出しても,それだけで喜ばれることはないと思っています。アバターアイテムは,それぞれのアップデートに合わせて出していこうかと考えています。
おっしゃられたように,毎月毎月出していけるかというと,難しいでしょう。ただ,プレイヤーの反応がよければ,スピードアップしないといけないなとも考えています。
4Gamer:
アバターアイテムって,どちらかというと遊び心系のアイテムですよね。どんなものを出していきたいですか。
ナム氏:
いろんなものを考えているんですけど,どこかの企業とコラボレートしたアバターもやってみたいと考えています。
4Gamer:
ゲームオンさんが積極的に動けばはかどりそうですね。
では,これからのアップデートで「ここは注目してほしい」というところがあれば教えてください。
もちろん,開発元としては作っているすべてのアップデートコンテンツに注目してほしいのですが,今回発表したなかだと,やはり「メイド」ですね。
アバターも大変ですが,新規キャラクターを追加するのはもっと手間がかかります。ストーリーも考えなければなりませんし,クエストやスキルのバランスなどを考えてと,結構な開発期間をかけて作られています。ですので,今回の発表したなかでは,」「メイド」という新職業に注目してほしいと思います。「メイド」というのは,ほかのMMORPGではあまり見ることのない職業ですので,お客さんの反応も気になります。
4Gamer:
でも,発表会の情報によると「メイド」ってあんまり強くないということでしたよね? Buffもないようですし。
ナム氏:
強いですよ。もちろん,既存の職業よりあまり強くしすぎるとバランスが崩れますので,そこまでではないんですけど,「メイド」というのは結構強い職業に入ります。ホウキが強いのか「メイド」自身が強いのかはちょっと分かりませんが,設定上,悪魔の力を引き継いだ半人半魔として強い力を発揮するようになっています。基本的にはダメージディーラーのポジションです。
ただ,ドジっ子みたいなモーションで,ホウキや調理器具などを使って攻撃するので,強くは見えないかもしれませんね。
4Gamer:
カンファレンスでもアクションは楽しい職業だとおっしゃってましたね。
ナム氏:
お皿を投げたり、ホウキを振り回したりするスキルモーションもありますよ。
4Gamer:
それは楽しみですね。
では,最後に日本のプレイヤーに向けてのメッセージをお願いします。
ナム氏:
いままで「RED STONE」を支えていただき,愛してくださった皆様に感謝いたします。L&Kにとって,「RED STONE」はとても意味深いタイトルです。このタイトルをもって,プレイヤーの皆様と開発元,そしてゲームオンと一緒に,MMORPGというジャンルの歴史を歩んできました。こういう歴史の場面を共に歩んできてくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。今後もこういった関係で,また新しいMMORPGの一シーンを作っていきたいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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