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[GC 2007#008]「The Elder Scroll IV:Oblivion」のリードデザイナーが語る“ゲームに適したストーリーの語り方”
ちなみに現在のRolston氏は,「Rise of Nations」をはじめ,ストラテジーゲームの専門チームと考えられていたBig Huge Gamesに移り,THQよりリリース予定のコンシューマゲーム機向けRPGを開発中であるという。
「The Elder Scrolls III: Morrowind」(以下,Morrowind)の成功で急にスポットを浴びた印象のRolston氏は,はげ頭に白髭がトレードマークという,亀仙人のような風貌が印象的な人物。80年代までは高校の教員で,その後West End GamesやAvalon Hillsなど,テーブルトークRPGのパブリッシャでゲームデザインをしていたという経歴の持ち主だ。The Elder Scrollsシリーズの開発元であるBethesda Softworksに在籍していたのは10年程度で,ゲーム業界からの引退を考えてBethesdaを辞職したものの,再びBig Huge Gamesによって担ぎ出されることになったという。
こうした経験を積んできたからか,ゲームの叙述理論に関しては一言も二言もある人物だ。
これは,あることについてのストーリーを知りたいのであれば,本や映画で済ませたほうが,断片的になることもなく素直に吸収できるからだそうだ。例えば,BioWareの「バルダーズゲート」シリーズやION Stormの「Deus Ex」のような旧式の語り方では,プレイヤーは途中でストーリーについていけなくなってしまうのではないか,と苦言を呈する。
村のNPC達や,落ちているスクロールに書かれた長文でゲーム世界の背景にある物語までをすべて説明しようとするのは,「ゲーマーがどこまで興味を持続できるか」という観点で見た場合,あまりにも安易な仕掛けではないか? そのような疑問やジレンマはRolston氏自身も常に持っているようで,自分なりの答えとして提示したのが「マップを物語の主人公にする」という,Morrowindで見せた発想の転換だったという。
一言で言えば,Rolston氏のナレーティブ論法は,「説明」ではなく「印象」である。
例えば,Morrowindにはドワーフ達が高度な文明を印象付ける遺跡を残したままいなくなったという設定があり,その遺跡もマップ中に存在するが,ゲームの中ではドワーフ達が滅亡(逃亡?)した理由について,深く語られることはない。しかし,プレイヤーがその遺跡を探索したとき,「ああ,ここでドワーフ達が歩き回っていたという過去があるのだ」と歴史を肌で感じる,つまり“印象”を持つことで,プレイヤーは各自自分なりのストーリー感を持つに至るというわけだ。
ゲームの進行と直接的に関連しない事柄は,「このような不明瞭な説明のほうが効果的なはずだ」とRolston氏は力説する。
確かに,4Gamerでも「なんですぐ怒るの?」というOblivionのプレイ日記風の連載を掲載していたが,決まった道筋もない広大な世界を,気の赴くままに楽しむというゲームシステムだからこそ,日記スタイルで解説するのが適していたともいえるだろう。
オープンエンドなゲームでは,プレイヤーの印象によって世界観もまったく違ったものになり,そのどれもが正しい。小説や映画とは異なり,プレイヤー主導型のストーリーが,それぞれのプレイヤーによって展開されるというわけだ。
Rolston氏はセッションの終盤,ゲームは好きでも剣や魔法を使ってモンスターを追い回すという根本的なコンセプトに対し,冷めた目で見つめるプレイヤーの大多数を「Pilgrims」(巡礼者)と表現。そして,このようなPilgrimsにこそ,言葉で説明するより個々のイメージに即した印象付けをさせることが重要であると説いている。
MorrowindからOblivionへと続く一連のシリーズには,「俺様専用ゲーム」的なプレイフィールがあるが,この印象は,こうした叙述理論から生まれたものなのだろう。(ライター:奥谷海人)
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The Elder Scrolls IV: Oblivion
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The Elder Scrolls III:Morrowind
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