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[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
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印刷2011/08/15 14:34

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[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介

 2011年8月11日に掲載した前編に続いて,「Computer Animation Festival」(コンピュータアニメーションフェスティバル,以下 CAF)に入選し,「Electronic Theater」(エレクトリックシアター,以下 ET)で上映された作品の中から,CAF審査委員会がとくに優秀作と認めた各部門の受賞作品を中心に紹介していく。

2011年8月11日に掲載したElectronic Theater紹介記事「前編」



ABC of Animation

Felicia Brunsting/Cirkus,ニュージーランド


画像集#002のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 オーストラリアやニュージーランド地域には,ハリウッド映画の大手プロダクションの部門スタジオなどがあり,有力なVFXスタジオが数多く存在している。「The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring」や「King Kong」などの作品で,2001年から2003年にかけてアカデミー賞VFX部門賞を連続受賞したWETA Digitalは,ニュージーランドのスタジオで,今では,世界で最も技術力の高いスタジオの1つに数えられている。

 Cirkusも,ニュージーランドを活動拠点とする,躍進著しい新興CGスタジオの1つだ。そんなCirkus制作の「ABC of Animation」(CGアニメのイロハ)が2011年ETのオープニングリール((最初の上映)に選ばれたのである。
 ABC of Animationは,CGアニメがどのように作られているのかを,CG制作の知識がなくても理解できるように手順を追ってコミカルに解説するという内容の作品だ。これを見ればCGアニメがどうやって作られているのか分かるかも。



Flamingo Pride

Tomer Eshed/Talking Animals,ドイツ


画像集#004のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 本作は,2011年のCAFで最優秀学生作品賞を受賞した作品である。制作はドイツにあるBabelsberg Film Schoolの卒業生であるTomer Eshed氏ほか。
 南ヨーロッパの干潟で,連日連夜,終わりなきダンスパーティを続けるフラミンゴたち。浮かれまくっている仲間をよそに,垢抜けない主人公のフラミンゴは,仲間はずれにされ,まったくモてず,少々浮いた存在になっていた。彼は,同族フラミンゴよりも,清らかで美しい鶴の美女に思いを寄せていたのだった。しかし,高潔すぎる彼女から見ればフラミンゴ男なぞ,チャラい遊び人風にしか見えず,彼の思いは届かない。意を決した彼は「フラミンゴのプライド」にかけて一世一代のイメチェンに挑戦する。その決意は彼女のハートを捕らえることができるのか……。
 「Flamingo Pride」の作品本編は,残念ながらネット上で公開されていないが,Eshed氏のプロフィールサイトにスチルイメージが掲載されているので,そちらでイメージをつかんでほしい。

 ちなみに,彼の第1作「Our Wonderful Nature」は,SIGGRAPH 2008のCAFにて「Best Well Told Fable Prize」(よくできた嘘で賞)という洒落の効いた名前の特別賞を獲得している。こちらの作品も動物がモチーフのお笑い作品だ。
 全編が公開されているOur Wonderful Natureを下に掲載したので見てほしい。



Paths of Hate

Damian Nenow氏他/Platige Image,ポーランド


画像集#006のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 「Paths of Hate」は2011年度のCAF審査員特別賞を受賞した作品だ。「手描き風コミックシェーダ」とも言うべき,スタイライズドレンダリング(Stylized Rendering)手法を採用した意欲作である。
 この手の表現でありがちな完全二値的なセルシェーディングとはせず,陰影を普通の拡散反射系でなだらかに表現しつつ,輪郭線やディテール表現はフリーハンドライクなハッチングタッチで描き出しているのが特徴だ。逆に,背景では輪郭線を出さず,絵画風のシェーディングを採用しているのも面白い。映像的に見ても非常に独創性の高い作品といえるだろう。

 本作は,第二次世界対戦時のころが舞台となっているだろうか。ヨーロッパのどこかの空で,ふたりの敵対する国同士の戦闘機乗りが遭遇する。2人はありとあらゆる飛行術を駆使して,敵を攻撃し,敵からの攻撃を回避する。実力が拮抗する2人には,祖国に守るべきものが存在し,それが戦う理由となっていた。
 しかし,お互いを憎み,機銃のトリガーに掛けた指の力を強めて行くなかで,本来の戦いの意味を忘れ始めた二人は,だんだんと人ではなくなっていく。
 序盤のリアルかつ圧倒的な迫力の空中戦には目を見張るものがあるが,中盤以降は,大空を舞台にした,なんとも幻想的かつ恐ろしげな肉弾戦へと変貌していく。

 作者であるポーランド出身のDamian Nenow氏は,ポーランドにあるThe National University of Film, Television and Theater in Lodzの卒業生で,卒業後はポーランドの実力派ポストプロダクションスタジオPlatige Imageに合流したという経歴の持ち主。Nenow氏の過去作品「The Kinematograph」は,2010年のCAFにも入選している。

 公式サイトでは,作品の基本情報が入手可能だ。作品全編の公開はなされていないものの,下に示したとおり,Vimeoで予告編をチェック可能だ。




Sweater Dog

Gina Moffit/Ringling College of Art and Design,アメリカ


画像集#007のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 Ringling College of Art and Designの学生にして,「歌って描けるシンガーソングCGクリエイター」(?),Gina Moffit氏の作品。最優秀学生作品賞,次点作品である。

 飼い主に愛され幸せな毎日を送っていたダックスフントは,溺愛ぶりが暴走した飼い主から,犬用セーターを着せられてしまう。それによって,これまでハッピーだった毎日が,セーターのおかげでえらく不便になってしまうというストーリーが描かれている。
 作中,「Sweater Dog! Sweater Dog!」とやたら耳に残る挿入歌は,Moffit氏の作詞作曲で,演奏も彼女自身によるもの。「脳科学者や海洋学者にもなりたかったけど,結局,私はシンガーソングCGクリエイターになることに決めたの」というコメントは,彼女のプロフィールから。何となく“不思議ちゃん”を匂わせる人柄にも興味を抱かざるを得ない彼女の作品群は,下に示したSweater Dogをはじめ,彼女の公式YouTubeチャンネルでも視聴できる。



Escape of the Gingerbread Man!!!

Rujira Poksomboonkij/The Monk Studios,タイ


画像集#008のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 審査員特別賞の次点となる作品。審査員特別賞の次点となる作品。制作はタイの新興CGアニメーションスタジオであるThe Monk Studiosによるものだ。
 日本ではそれほど馴染みがない「ジンジャークッキー(ジンジャーブレッド)の冒険」というおとぎ話だが,英国では,とても一般的なおとぎ話として知られている。16世紀,ヘンリー8世時代に発祥したといわれているこのおとぎ話は,簡単にまとめると「パン屋さんから脱走した人型の生姜入りクッキーが,色んな動物による罠をかいくぐるも,最後にずる賢いキツネに食べられてしまいましたとさ」というもの。
 映画「Shrek」シリーズにもジンジャークッキーが出てきて,このおとぎ話のパロディが各所で見受けられるのだが,どうも日本人にはピンとこなかったりする。

 ともあれ,この有名な寓話をどちらがより面白く語れるか,2人の語り部が競い合うというのが,本作の内容である。2人の語り部が競い合う現実のシーンは,Pixar Animation Studios系のCGアニメスタイル。一方,2人の語り部が語るアレンジ版「ジンジャークッキーの冒険」を映像化したシーンでは,イラストタッチだったり,人形劇スタイルたったりと,さまざまな表現が駆使されている。
 下に掲載した動画は,本作のダイジェスト版だ。



VW - The Beetle

Mary Melendez/The Mill,アメリカ


画像集#010のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 倫理的な配慮から,暴走を助長するイメージで自動車のコマーシャルを制作することは御法度とされている。ただ,スポーツカーの場合,自動車メーカーとしては躍動感を演出したいという思惑もあるわけだ。
 このジレンマをうまく乗り越えつつ見事に作り上げたのが,2012年にVolkswagen(フォルクスワーゲン)から発売が予定されている新型「Beetle」(ビートル)のTVCMだ。
 車名がビートルなのだから,そのまま,虫で表現しちゃおうということで完成したのが本作である。

 雑木林の中を猛スピードで走るカナブンは,昆虫たちの世界でも憧れの的。どんな虫も彼が通れば振り返る……という,“いかにも”というジョーク系の内容にもかかわらず,そこはかとなく格好いい風情は必見だ。なお,制作はアメリカのVFXスタジオ,The Millが担当している。



Time for Change

James Cunningham/Media Design School,ニュージーランド


画像集#012のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 毎日12時になると夫婦がキスをする仕掛け時計。しかし,時計も古くなり,夫婦の人形もいつの間にか年老いてしまった。しかも,夫は,完全に妻の尻に敷かれてしまい,もはや毎日12時のイベントも,キスではなくてビンタになってしまった。
 「こんな生活はもういやだ」と考えた夫は,「奥さんチェンジ」作戦を思いつくのだった……。
 本作は,ニュージーランドMedia Design School出身の学生によるもの。豊かなグローバルイルミネーション表現と木材の素材表現が見どころとなる。




The Fantastic Flying Books of Mr. Morris Lessmore

Clare France,Moonbot Studios,アメリカ


画像集#013のサムネイル/[SIGGRAPH]恒例の「Electronic Theater」2011年版レポート(後編)。審査委員会選出のCGムービーと入選したリアルタイムデモを紹介
 「The Fantastic Flying Books of Mr. Morris Lessmore」は,最優秀作品賞を受賞した作品だ。
 本作の主人公であるMorris Lessmoreは,自分だけの物語を綴りたいと思いながら日々を過ごしていた。そんなある日,竜巻が発生し,彼の住む町がめちゃめちゃに破壊されてしまう。消沈した彼が目にしたのは,本に手を引かれながら大空を羽ばたく美しい女性。夢中でこの美女を追いかけていった先で,彼は竜巻の被害から免れた図書館を発見する。
 この図書館には,人間と「書面」で会話できる不思議な本達が住んでおり,彼は,ここに住み込んで自分だけの物語を書き始めることを決意する。それしても,あの美女は一体どこに行ったのだろうか?

 一見,全てが3DCGに見えるこの作品だが,実はミニチュアのストップモーションや2Dアニメが組み合わせられたハイブリッド作品。CGの質感とミニチュアの質感が見事に融合し,CGアニメ作品の新しい可能性を垣間見せてくれている。
 アメリカのMoonbot Studiosが手がけた本作だが,この世界観をゲーム化,インタラクティブ電子書籍化した作品も同時にリリースされている。この戦略は,中小CGスタジオにおける独立作品の新しいマーケティング手法としても注目を集めているようだ。

 公式サイトでは,本作のメイキング映像などが視聴可能になっているほか,前述したゲーム化やインタラクティブ電子初期化された作品の紹介もある。なお,下に掲載したのは予告編。映像本編はiTunesにて1ドル99セントで購入できる。




自分のPCで実行できるリアルタイムデモ作品


 CAFに入選しながら,Electronic Theaterでの上映こそされなかった作品群もある。その中でかなりの存在感を放っていたのが,読者のPCで実際にEXEファイルを実行して楽しめるリアルタイムデモだ。今回のCAFでは,8月11日に掲載した前編で紹介した「Cdak」を含め,全部で9作品が入選していた。
 本誌の読者は,比較的性能の高いGPUを持っている人が多いだろう。興味がある人は,以下に掲載したリアルタイムデモ作品を実際にダウンロードして実行してみてほしい。

Agenda Circling Forth

Matt Swoboda,アメリカ


 パーティクルエフェクトを効果的多用したアーティスティックな作品。映像が煙のように崩れていくさまが美しい。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=54603



Ceasefire(All Falls Down)

Matt Swoboda,アメリカ


 破壊シミュレーションのような映像だが,剛体というよりは絵の具が溶けていくような表現になっている。プログラムしたのは,上のAgenda Circling Forthを作ったのと同一人物。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=55558



Elevated

Rune Stubbe,アメリカ


 こちらもCdakと同じく4096bytesのプログラムによりできている。雪山を飛び回るような映像が描かれるデモだ。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.scene.org/prod.php?which=52938&howmanycomments=100&page=5



Finally Inside

Andreas Rose,Daniel Szymanski,アメリカ


 幾何学的なオブジェクトがパーティクルエフェクトをばらまきつつ,サウンドに同期しながらダンスをするビデオドラッグ的な作品である。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=55741



Happiness is Around the Bend

Konstantinos Pataridis,アメリカ


 有機的な形状変化を伴いながら機械が変身していくさまを描いた作品。細かい陰のような陰影は,Screen Space Ambient Occlusion(スクリーンスペース・アンビエントオクルージョン)によるものだと説明されている。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=55556



Stargazer

Sverre Lunae-Nielsen,Sabastien Viard,Morten Andersson,アメリカ


 液体表現や剛体の衝突,無限に続くディテール表現などといった「リアルタイムCGにおけるハイテクの数々」を,流れるような映像デモシーケンスにまとめたテクニカルな作品だ。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=51438




Texas

Eivind Liland,アメリカ


 プロシージャル手法を用いて表現された,ファイルサイズ4096bytesのプログラムによる作品。四面体,立方体などで表現された不思議な空間を飛び回っているような情景が描かれている。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=51448




X Marks the Spot

Kim Kalland,Thomas Kristensen,Kyrre Glette,アメリカ


 サイズわずか64KBのプログラムで構成されたリアルタイムデモ。プロシージャル手法再現された「ビルが立ち並ぶ都市」を舞台に,赤い人型ロボットがダンスを踊るものとなっている。

●ダウンロードページ
http://www.pouet.net/prod.php?which=55546



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