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2009年末〜2010年始に「買い」のグラフィックスカードは? 10分で分かる,実勢価格3万円以下のGPU事情
カードのシリーズ名がまちまちになってしまっているがゆえに,モデルナンバーを見ただけでは性能の違いが分からない時期,と言い換えることもできそうだ。
では実際のところ,新製品と従来製品は,どれが「買い」なのか。今回は,4Gamerのレビュー記事やテストレポート記事を振り返りながら,専門用語の利用をできる限り避けつつ,とくに混乱の度合いが激しい3万円以下の価格帯について,グラフィックスカード市場の状況を整理してみることにしたい。
図で確認する,2009年12月のグラフィックスカード市場
さて,さっそくだが,下に示した図は,2009年下半期に4Gamerのレビューやテストレポートで取り扱ったGPUのうち,搭載グラフィックスカードの価格帯が3万円以下の製品を主役として,性能と価格帯の分布をざっくりとまとめたものだ。一部例外はあるものの,基本的には,上にあればあるほど高性能,右にあればあるほど高価格となる。
図は,クリックすると別ウインドウで拡大版を表示するようにしてあるので,文字が小さすぎて読みづらいという人はそちらをどうぞ。
図 2009年12月28日時点における,1〜3万円程度のGPU分布
図には,GPU名以外にも色や吹き出しによって色々と情報を付け加えてある。順番に説明しておくと,まず,青い点線と吹き出しによって示した「ハイエンド」「ハイクラス」「ミドルクラス」「エントリーミドルクラス」「エントリークラス」「ローエンド」は,だいたい,以下のようなイメージだ。
- ハイエンド&ハイクラス:高解像度かつ高いグラフィックス設定で,最新世代の3Dゲームを快適にプレイできる。3Dオンラインゲームしかプレイしないのなら,よほどのことがない限り不要
- ミドルクラス:最新世代のゲーム機と比べても遜色ないレベルで,大多数の最新世代3Dゲームを快適にプレイできる。一方,3Dオンラインゲーム用GPUとしては,普通に使うならオーバースペック。ただし,高い解像度設定でプレイしたい,(ジャギーを低減させる)アンチエイリアシングを適用したいといった目的があるなら,オンラインゲーム前提の人が選んでも損はない
- エントリーミドルクラス:解像度やグラフィックス設定に妥協は必要だが,最新世代の3Dゲームを問題なくプレイできる。3Dオンラインゲームしかプレイしないなら,ひとまずこのレベルがあれば,当面,困ることはないはずだ
- エントリークラス:最新世代の3Dゲームを問題のないフレームレートでプレイするには,解像度やグラフィックス設定に相当な妥協を強いられる。現行世代の3Dオンラインゲーム用としてはまずまずの性能を持っているので,とりあえずはこのレベルでも十分だが,将来を考えると若干の不安が残るのも確か
- ローエンド:ゲーマー向けではないので,ゲーム用途を考えているなら選ぶべからず。ビデオ再生を快適に行いたいとか,ビデオのトランスコード(≒エンコード)などにGPUを使いたいとかいった一般PCユーザー向けの製品である
「明確かつ明瞭な根拠によって厳密に分類している」わけではないので,おおよそこんな感じだと受け取ってもらえればと思う。
注意してほしいのは,GPUという製品が一般に,「製品シリーズごとに,ハイクラス/ハイエンドGPUがまずあって,そこから機能や性能を削ることによってミドルクラス以下のGPUが作り出されている」ということ。ミドルクラス以下のGPUでは,製品ごとに「上位モデルと比べて,どんな機能や性能が制限されているか」が異なるため,ゲームごとの得手不得手が大きく出やすくなる。言い換えると,ゲームタイトルによっては,今回の図とはまったく異なるテスト結果になることがあるのだ。
そういった事情もあって,上の図における「3D性能」は,何か特定のベンチマークテストにおける結果で代表させたものではない。あくまでも,4Gamerで掲載したレビュー記事やテストレポート記事を基に,スコアの平均を取る形でまとめたものなので,この点はお断りしておきたい。
●図を読み解くヒント
図について,もう少し踏み込んで説明してみよう。
GPUそれぞれの価格帯を示すバーは,計4色に色分けしてあるが,凡例にも入れてあるとおり,これらは対応するDirectX(Direct3D)世代を示している。
実際,Windowsを快適に動作させられるかどうかの指標と謳われる「Windows Experience Index」(Windows エクスペリエンスインデックス)を実行すると,DirectX 10.1対応以上のGPUを搭載したPCのほうがグラフィックスのスコアは高めに出るようだ。それを根拠に,DirectX 10.1以上に対応したGPUを選びたいという消費者マインドはよく分かる。
また,ゲーマー視点からすると,DirectX 10.1/11独自の機能を使ったゲームというものは確かに存在するため,それらをプレイするなら,対応GPUのメリットを享受できるという現実もある。新世代のハイエンドGPUを渡り歩きながら,最新世代のゲームタイトルを積極的にプレイする人からすると,今からDirectX 11非対応のGPUを購入するというのは,あり得ない選択肢だろう。
オンラインゲームをメインに考えているのであれば,DirectX 9.x/10.0世代のゲームタイトルにおける性能(≒図で示した指標)を重視すべきであり,DirectX 10.1/11がうんぬんという話は,1年後か2年後か分からないが,タイトルが出揃ってきたころに,あらためて考えればいいことなのである。
このあたりは,人によって「正解」が異なるので,自分がどちら側の立場なのか,よく考えて選択することを勧めたい。自分とは逆の立場の人の意見を聞いてしまうと,あとあと後悔することにもなりかねないので,くれぐれもご注意を。
さて,もう一つの軸である価格については,極端なクロックアップモデルや,極端なグラフィックスメモリ増量モデルといった個性の強い製品は対象から外し,中心的な価格帯をピックアップして反映させている。その理由は,
- メーカーレベルのクロックアップがなされても,効果は限定的で,体感レベルでの性能に劇的な違いをもたらすことはあまりない。よって,「クロックアップ版である」点だけに高い金額を払うことは,(ベンチマークテスト用途はさておき)ゲーム用途だと割に合わないことのほうが多い
- リファレンス仕様を大きく超えるグラフィックスメモリ容量は,ハイエンドGPUを搭載した環境で,ごくまれに意味があるかどうか,というレベル。とくに,ミドルクラス以下のGPUを搭載したグラフィックスカードなら512MBもあれば十分で,それ以上の容量にコストをかけるのはまったくの無駄である
ためだ。
なお,当然のことながら,店頭価格は日々変わるうえ,ショップごとの特価販売が行われるケースもあるので,あくまでも,12月28日時点における参考データだと理解してほしい。
予算別に「買うなら何か」を考える
以上,全体を俯瞰してみた。ここまでで,グラフィックスカード市場全体の状況はある程度把握してもらえたのではないかと思うが,ここからは「で,結局のところ,どれを買えばいいのか」を,予算別に少し考えてみることにしよう。
●2〜3万円の予算なら「待ち」が正解?
店頭には,DirectX 10.x世代のハイエンドGPUを採用した製品が「ブランドを問わなければ,探せば買える」程度には並んでいるので,アリといえばアリだが,その場合でも,投入する予算は2万円以下に抑えたいところだ。
●割り切れば悪くない1万円台後半
DirectX 11世代のミドルクラス〜ハイクラスGPUシリーズであるATI Radeon HD 5700の2製品が迷いの種だが,これまで述べてきたように,このタイミングでDirectX 11対応GPUにこだわる場合は,ハイエンドのATI Radeon HD 5800シリーズに手を出すべきだ。一方,DirectX 11にこだわらないなら,「ATI Radeon HD 4890」「ATI Radeon HD 4870」(以下,HD 4870)「GeForce GTX 260」(以下,GTX 260)は魅力的な選択肢だといえる。
ハイエンド製品の宿命として,補助電源コネクタ2系統の利用が必須で,さらにカード長も200mm台中盤と長い点は要注意だが,そのあたりを割り切って純然たる3D性能で評価するなら,いま挙げた3製品は,相当に買い得だ。
なお,上に示した図で,HD 4870とGTX 260の3D性能はほぼ同じとしているが,GTX 260に関しては,3モデルが存在することを押さえておきたい。
- HD 4870よりも性能がやや低い製品
(=65nmプロセス技術を採用して製造される,シェーダプロセッサ192基版) - HD 4870よりも性能がやや高い製品
(=65nmプロセス技術を採用して製造される,シェーダプロセッサ216基版) - 2.と同じ性能で,消費電力が低い製品
(=55nmプロセス技術を採用して製造される,シェーダプロセッサ216基版)
筆者が秋葉原のショップ店頭で確認した限り,現在販売されているものはほぼ3.へ切り替わっているようだが,ブランドによっては,製品ボックスにも公式サイトにも,3.であるかどうかを判断するための情報がなかったりもするので,この点は覚悟しておく必要があるだろう。
もっとも,1〜3のどれを選んでも,体感できる3D性能にそれほど大きな差があるわけではないが。
●選び放題の1万円台前半は主役が交代
この価格帯には,DirectX 11世代のGPUも存在しているが,図から明らかなとおり,コストパフォーマンスはやや低めだ。上で説明したとおり,DirectX 11にこだわるかどうかで決めるのが正解だろう。
なお,1万円台前半の価格帯には,エントリーミドルクラスの製品もひしめいているのだが,どうしても補助電源の不要な製品を使いたいというのでなければ,積極的に選ぶ理由に乏しい。
●1万円未満の価格帯は9000円前後が熱い
また,搭載製品の大多数が1万円を大きく割り込んだ「GeForce 9600 GT」や,最安値なら5000円程度から購入できる「ATI Radeon HD 4670」も,この価格帯では相変わらずの輝きを放っている。安価さと入手のしやすさにこだわるなら,こちらになるだろうか。
なお,上に示した図の中でも説明しているとおり,9800 GTと9600 GTには,6ピンの補助電源コネクタを必要とする通常版と,必要としない代わりに,若干3D性能が引き下げられた省電力版の2種類が存在する(※厳密には,通常版にも初期型と,消費電力が若干引き下げられた後期型があるのだが,それらを見分ける方法は基本的に存在しない)。
秋葉原の店頭をチェックしてみると,トレンドは省電力版に移っているようで,9800 GT,9600 GTとも,省電力版のほうが在庫は多そう。ただし,通常版が店頭からなくなったわけでもないので,購入時は,製品ボックスを確認するなり,店員に聞くなりすることをお勧めしておきたい。
最後に,エントリークラスおよびローエンド品は,図からも明らかなとおり,エントリーミドルクラスのグラフィックスカードと店頭価格に大きな違いがないため,積極的に選ぶ必要を感じない。とくにローエンド品は,3Dゲームをプレイする前提だと,安物買いの銭失いになるだけなので,くれぐれもご注意を。
「DX11をどう捉えるか」次第だが
DX9&DX10重視なら間違いなく買い時
序盤の繰り返しになるが,DirectX 11環境を重視するハイエンド志向の人にとっては,入手済みのHD 5800/5900カードを“使い倒す”か,一時期の深刻な品不足を脱し,そこそこ店頭で見られるようになってきたHD 5800/5900カードを購入するか,はたまた次世代GeForceを待つか,というタイミングになるだろう。3万円以下で販売されているグラフィックスカードに気を配る必要はない。
ただ逆に,そうでない多くの人にとっては,なかなか面白い時期だといえる。図を見ると分かるように,旧世代ハイエンドの値下がりによって,市場にあるほとんどのグラフィックスカードが,2万円を割って販売されているという,価格的に,たいへん買いやすいタイミングを迎えているからだ。とくに,5000円〜1万5000円の価格帯はよりどりみどりと言っていい。
図でハイクラスとカテゴリ分けした旧世代ハイエンドの一部モデルが終息という噂も聞こえてきてはいるものの,実際の店頭では,まだまだ在庫が残っている。入り乱れるモデルナンバーの把握がやっかいだが,そこは今回示した図を参考にしつつ,ぜひ3Dゲーム環境のアップグレードを図ってほしいと思う。
●参考記事
- [2009/09/23]「ATI Radeon HD 5870」レビュー。世界初のDirectX 11カードは「速い」だけに留まらない
- [2009/10/01]扱いやすさは上位モデル以上。「ATI Radeon HD 5850」レビューを掲載
- [2009/10/13]1万円台の市場にDX11時代の開幕を告げる「ATI Radeon HD 5770&5750」レビュー
- [2009/10/16]GT200世代初のエントリーモデル「GeForce GT 220」「GeForce 210」。その立ち位置を明らかにする
- [2009/10/23]「ATI Radeon HD 5770」CrossFireXテスト。2万円のカード2枚でHD 5870に迫れるか?
- [2009/11/17]99ドルのDX 10.1対応エントリーミドルGPU,「GeForce GT 240」レビュー掲載
- [2009/11/18]“300mm超級”の世界最速シングルカード,「ATI Radeon HD 5970」レビュー掲載
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