レビュー
さまざまな「遊び方」が楽しめる秀作RPG
Neverwinter Nights 2 日本語マニュアル付英語版
» D&DベースのコンピュータRPGの中でも,とくに人気の高いNeverwinter Nightsシリーズ。その最新作である「Neverwinter Nights 2」のレビュー記事を,ライター 星原昭典氏に執筆してもらった。日本語マニュアル付英語版をプレイしている人だけでなく,完全日本語版の発売を切望しているという人も,ぜひ目を通してほしい。
RPGメーカーとして有名なBioWareが手がける
D&DベースのコンピュータRPG
D&Dのルールをベースとして作られたコンピュータRPGは少なくない。NWN2はその中でも,最新のものの一つだ |
NWN2の前作にあたる「Neverwinter Nights」(ネヴァーウィンター・ナイツ)が発売されたのは,2002年1月のことである。NWNはペンシル&ペーパーのRPG(いわゆるテーブルトークRPG)である「Dungeons & Dragons」のフランチャイズ作品で,物語の背景には「D&D」の数あるキャンペーンセッティングの中でもとくに知名度の高い,フォーゴトン・レルムが使われていた。
BioWareはNWN以前から,バルダーズゲートシリーズやアイスウインドデイルシリーズ,「Planescape Torment」といった,D&Dベースの作品をいくつも手がけてきた。これらの作品が,基本ルールとして「Advanced Dungeons and Dragons」が採用され,2Dグラフィックスで作られていたのに対し,NWNにはより新しい「Dungeons & Dragons 3rd Edition」ルールと,3Dグラフィックスが採用されたことが,当時大きな話題となった。
また,驚くほど内容の充実したツールセットが付属していることも,NWNの大きな特徴だった。ユーザーはこれを駆使することで,オリジナルのダンジョンやシナリオを作ってネット上に公開したり,自作した冒険世界にほかのプレイヤー達を招き,あたかもテーブルトークのD&Dをするかのようにマルチプレイ・セッションを楽しむことができたのだ。
このフィーチャーは言うまでもなく,非常に革新的かつ心ときめくものであり,コアなファンの中には「シングルプレイ・キャンペーンをクリアしただけではNWNの半分しか楽しんだことにはならない。ツールセットとマルチプレイを駆使した遊び方こそ,本作の精髄である」という人も多かった。
そんな魅力的なフィーチャーにあふれたNWNは当然のようにヒット作となり,のちには2本の拡張パック(「Shadows of Undrentide」「Hordes of the Underdark」)のほか,オフィシャルな有料ダウンロードコンテンツなども登場。ファン達の間で長くプレイされ続けた。
そしてそのNWNの正式な続編として2006年10月に登場したのが,ここで紹介するNWN2である。
ちなみに日本では,2007年7月に日本語マニュアル付英語版が発売された本作だが,欧米では2007年10月に,拡張パック「Neverwinter Nights 2: Mask of the Betrayer」がリリースされる。新たなシングルプレイ・キャンペーンを中心として,レベル20より上の冒険者レベルのサポート,新たなサブレイスとプレステージクラスの追加といった要素が盛り込まれるようだ。
前作のシステムを踏襲しつつ
新種族,新クラスなど新たな要素を多数追加
NWN1ではうまくできなかった,複数人のキャラクターを操ってのシングルプレイ。NWN2ではそれが可能になった。おかげで冒険はにぎやかに |
グラフィックスやUIの進歩は見られるが,NWN2の基本的なルック&フィールはNWNとかなり近い。ゲームはリアルタイムで進行し,移動と戦闘の間に区切りがなく,シームレスにつながっている。
ただし,NWN2に採用されている基本ルールは,「D&D 3rd Edition」から「D&D v.3.5」に変わっている。これはコアなRPGプレイヤーにとっては非常に大きな変更だと思われるが,一般的な日本のコンピュータRPGファンにとっては,身構えなければならないことではない。「より進化した新しいルールが使われているので,より遊びやすくなっている」といった程度の認識で大丈夫だ。
その一方で,NWN2には誰にとっても重要かつ分かりやすい追加/変更点が存在する。まず基本キャラクタークラスにWarlockが追加されている。Warlockは,Priest/Druidなどが使うDivineスペルとも,Wizard/Sorcerer系キャラクターが使うArcaneスペルとも異なる“Invocations”という特殊な魔法を操るスペルキャスターだ。
Invocationsは事前にスペルを覚えておく手間を必要としない。さらにInvocationsには使用回数制限もない。つまり,休憩を必要とせずに好きなスペルを好きなだけ使用できるという素晴らしい特性を持っている。
ただしInvocationsスペルは攻撃的なものばかりであり,また一人のWarlockが修得できるInvocationsスペルの種類はあまり多くない。戦闘時の使い勝手では勝るが,魔法の多彩さや効果の大きさでは,ほかのスペルキャスターに遅れをとるというわけだ。
攻撃的な魔法を回数制限なく使うことができるWarlockは,戦闘に向いているクラス。自分に強化魔法をかけて前線に飛び込むスタイルでのプレイも可能 |
すべてのWarlockが使用できる基本的なダメージ魔法 Eldritch Blast。術者のレベル上昇に合わせて効果がどんどん上がっていく |
初めから数多くのプレステージクラスが用意されていることも,NWN2の新フィーチャーだ。プレステージクラスとは,基本クラスで冒険を始めたキャラクターが,成長して必要な条件を満たしたのちにマルチクラス可能になる上級クラスのことで,Assassin,Arcane Archer,Divine Champion,Waepon Masterといったものが存在する。NWNでは拡張パックを追加することで,いくつかのプレステージクラスを選択できるようになっていたが,NWN2では最初から豊富に用意されており,その中にはNWN1+拡張パックでは選べなかった新しいものも含まれている。
選択可能な種族にも,より多くの選択肢が用意された。NWN1ではD&D3.5eの3冊のコアルールブックの中の1冊である「プレイヤーハンドブック」で紹介されている,ヒューマン,エルフ,ドワーフといった種族が選択できたが,NWN2ではさらにサブレイスも選択可能になっている。
用意されているサブレイスは,フォーゴトン・レルムのワールドセッティングにのっとったもので,たとえばエルフであれば,そのサブレイスとしてMoon Elf,Sun Elf,Drow(Dark Elf),Wood Elfが用意されている。サブレイスごとに肌の色や能力値補正,生来の特殊能力などが異なっているので,キャラクターメイクのバリエーションは大きく広がったといえよう。
また,完全に新しい選択肢としてPlanetouchedが追加になっている。プレインタッチトとは,異次元(異なる次元界=プレインの存在はD&Dの世界では空想ではなく事実である)の住人の血を引くもののことで,善なる次元界の住人の血を引くAasimar,悪しき次元界の住人の血を引くTieflingの二つが選択可能になっている。
数人のグループでの冒険が可能になったことも,非常に嬉しい変更だ。NWNでは,主人公であるプレイヤーキャラクターが共に冒険できたのは,たった一人のヘンチマンのみだったが,NWN2ではストーリーを進めることでNPCの仲間が増えていき,その中から数人をピックアップしてグループが組める。
このおかげで,前作に比べるとNWN2の冒険はにぎやかだ。各クラスの長所を活かして弱点を補い合うようなタクティカルな戦闘も楽しめる。たくさんのキャラクターが入り乱れて,きれいなエフェクトの魔法や特殊技能を連発する様子は,見ていて楽しい。
敵味方の人数が増えてくると戦闘はよりタクティカルになってくる。各キャラクターの特性を活かした戦術がうまくきまったときは快感だ |
効果の大きな魔法は,そのグラフィックスエフェクトの規模もやはり大きい。スペルキャスターが何人もいる戦闘では,画面がかなり派手になる |
なおNWN2では,新しいアイテムクラフティングの仕組みも用意されている。ただし,シングルプレイキャンペーンで実用に耐えうるものを作れるようになるには,かなり早い段階から計画的に,生産スキルの高いキャラクターを育てていかなければならない。にもかかわらず,ゲーム中にはそのようなヒントが(十分には)示されない。シングルプレイでアイテムクラフティングを楽しむためには,ゲームシステムに対する深い理解が必要だろう。初回のプレイでそこまでのことができる人は,あまりいないと思われる。
シングルプレイ用のオフィシャルキャンペーンでは
NPCメンバーと“一緒に冒険している感じ”が強く味わえる
シングルプレイキャンペーンでは、NPCメンバー達が少しずつ強くなっていくことが実感できる。ボイスつきシネマティックが豊富なこともあり,次第に愛着が感じられるようになってくる |
ゲームプレイは,イベントやクエストに導かれつつ各地を巡っていくうちに,どんどん行動可能範囲が増えていくという,よく見かけるスタイルで進んでいく。ノンリニアな冒険が楽しめることよりも,用意されたストーリーラインを味わうことに主眼が置かれたデザインだ。
旅の道連れとなるNPCグループメンバーは,冒険の過程で一人また一人と増えていく。彼らにはそれぞれ生い立ちと,主人公の一行に加わる理由が設定されており,展開されるドラマの中で,プレイヤー一行は自然に人数が増えていく仕組みだ。フルボイスとまでは行かないが,かなり多くのセリフにボイスが当てられており,彼らの個性を際立たせるのに一役買っている。
NWN2では,冒険を通じて得られる経験点が仲間達の間で共有される。このため「パーティメンバーとして頻繁に選ぶ仲間だけがレベルアップしていって,あまり冒険に連れ出さないメンバーはレベルが低いまま。結局,後半には彼らのいる価値がなくなってしまう」というようなことは起こらない。お気に入りの固定メンバーのみで冒険を進めることもできるし,逆に冒険のたびにメンバーを入れ替えて,いろいろな構成を楽しむことも可能だ。
どちらかといえばキャラクター達は,モンスターなどを倒したときにもらえる細かい経験点ではなく,クエストをクリアしたときにドカンと入る経験点で成長していくので,レベルアップを目的としたグラインディング(単調な戦闘を繰り返すこと)は必要ない。
キャラクター同士の会話の多くは,このようなインゲームのキャラクターモデルをそのまま使った「会話シーン」で表現される |
メンバーと会話中。好感度が必要な値まで上がっていたために,Influence(影響力)チェックに成功し,より突っ込んだ質問にも答えてくれた |
面白いのは,NPCメンバーの一人一人に“主人公に対する好感度”のようなパラメータが設定されていることだ。この好感度は,主人公が選択を迫られる場面でどのように行動したかによって,少しずつ変化していく。つまりNPCの仲間達は,主人公の振る舞いをちゃんと見ているというわけだ。
ゲーム中,主人公はいつでも任意のメンバーに話しかけられる。メンバー達は知り合って間もないうちは,あたりさわりのないことしか話してくれないが,好感度が上がっていくと,自身にまつわる深い話をしてくれるようになったりする。そしてそれがキッカケとなって,そのメンバーの個人的な事情に関わるサブクエストがアンロックされることもある。
このCompanion Influence(メンバーへの影響)の仕組みはNWN1にも存在したが,NWN2ではさらに手が加えられており,各メンバーの好感度がストーリーに対して,より積極的な影響を与えるようになっている。たとえば,冒険の中盤で主人公は裁判に掛けられるのだが,その際メンバーの一人が証言台に立つことになる。このメンバーの主人公に対する好感度を,それまでに十分に上げられていた場合,彼女は主人公の無実を証明するために熱心に証言してくれる。しかしそうでなかった場合,主人公を助けることに対してあまり積極的になってくれない……といった具合だ。
このようなインタラクションが豊富に用意されているため,多くのプレイヤーはストーリーを進めていく中で,NPCメンバー達に愛着を感じるようになっていくだろう。それに伴い,物語への没入度合も高まっていくのだ。
プレイヤーをゲーム世界へ引き込んでいくこの仕組みはとても面白い。だが一方で,この好感度はストーリー全体という長いスパンでゆっくり変化していくものなので,初回のプレイですべての反応を見るのは不可能。かといってほかの反応を見るために,キャンペーンを2回3回と繰り返すのは厳しいため,すべてのコンテンツを体験しないと満足できないヤリコミ派のプレイヤーにとっては,ちょっと悩ましいシステムでもある。
そのあたりはこだわりすぎずに,そういうものだと割り切ってプレイしたほうが,精神衛生上よろしいだろう。
操作性に関しては,とくに気になるところはなかった。AIをオンにしておけば,NPCキャラクター達は自律的に呪文や技能を使って戦ってくれるので,D&Dのルールに通じていなくてもプレイは進められる。
UIの使い勝手はおおむね良好だが,クエストジャーナルの性能がいまひとつなのは残念だった。やるのであればもっと親切に情報をまとめてくれたほうが,プレイヤーとしてはありがたいのだが。
グラフィックスの品質は,ハードウェア性能の進歩に合わせて大きく向上している。オブジェクトはより精巧に,テクスチャはより精細になった。キャラクターに使われているポリゴン数は劇的に増えているようで,インゲームのキャラクターは,グッと近づいても粗さを感じないクオリティだ。そのためか,本作のイベント時の「会話シーン」は,インゲームのモデルをそのまま利用して作られている。
町の人などとの会話はテキストのみで行われるが,ストーリーやイベントに関連するかなり多くの会話に,このボイスを使った「会話シーン」が使われている。ようするにキャラクターモデルをボイスにリップシンクさせてしゃべらせ,それをカメラで交互に映しているだけなのだが,ゲーム中にかなり多くの「会話シーン」が用意されているのはこの単純さのおかげでもありそうだ。単調であることを責めるよりも,むしろこの「会話シーン」が,ツールセットでモジュールを自作するときにも使用できることを評価するべきだろう。
ワールドマップからは指定した土地まで一瞬で移動できる。だらだらとした移動の手間がないのはありがたい。行動範囲はゲームの進行にしたがって増えていく |
ユーザーインターフェイス。基本的にはNWN1に近いアピアランスだが,自作のポートレートが使えなくなったことについては賛否両論ありそうだ |
シナリオを自作できるツールセットの機能は向上
ただし扱うためには高いスキルが必要になる
NWN2のツールキットは、いわば“オリジナルRPG作成ツール”だ。高機能なツールではあるが,使いこなすには高いスキルとモチベーションが必要になる |
NWN2のツールセットは,NWNのツールセットよりも高機能なものになっているようだ。このツールセットは非常に高度な内容が詰め込まれた複雑なアプリケーションであるため,1ゲーマーとしての筆者には,機能のすべてを完全に把握して評価することは難しい。おそらく多くのプレイヤーにとって,このツールセットは一朝一夕で扱えるようになるものではないだろう。
NWN1のツールセットは,これに比べればまだシンプルだった。小さなダンジョンならタイルやモンスターなどを直感的に配置するだけで簡単に作れたことを覚えている。しかしNWN2のツールセットは,同じような気軽さでは使えず,できることが以前よりも増えた上級者向けのツールになっているのだ。
NWN2のツールセットは,コンピュータRPG作成ツールとしてのさらなる複雑さを期待する“市井のゲーム開発者”達にとっては,より魅力的なツールになったと言えそうだ。ただ,「こまごまとしたコンピュータRPG作りにはあまり興味はなく,D&Dのオンラインセッションを手軽に実現するためのカジュアルな道具として使いたい」という“ゲームプレイヤーやダンジョンマスター”にとっては,ちょっと触りづらいものだといえる。
マルチプレイの楽しさは無限に広がる
遊び方をどこまで広げられるかはプレイヤー次第
とあるPersistent Worldでのプレイの様子。たまたま出会ったPaladinのプレイヤーキャラクターとグループを組んで,アンデッドの出る洋館内を探索しているところ |
とりあえず事前の知識として,“このゲームのマルチプレイにはいくつもの異なった遊び方があるのだ”という点を押さえておくと,少し理解しやすくなるだろう。以下ではその遊び方のパターンをいくつか紹介する。
この手のコンピュータRPGのマルチプレイは,“シングルプレイ用のゲーム世界をほかのプレイヤー達と一緒に冒険する”というタイプが一般的だ。DiabloやDungeon Siege,Titan Questといったタイトルのマルチプレイはこのタイプである。
NWN2でも,インターネットを介して複数人同時にシングルプレイ・キャンペーンをプレイすることは可能だ。ただし,NWN2のシングルプレイ・キャンペーンは,基本的には一人で,オフラインで,NPCの仲間達と,じっくり時間をかけてプレイするようにデザインされているので,はっきりいってマルチプレイには不向きである。ごく親しい友人と毎日一緒に,同じ時間プレイし続けてシナリオを進めていくことはできなくないが,それは骨の折れる作業になるだろう。
あるいはあまり深く考えず,他プレイヤーとの偶然の出会い,おしゃべり,殴り合いなど目的にして,とにかくシングルプレイキャンペーンモジュールを使ってサーバーを立ち上げてしまう,ということもできることはできるが,やはり建設的な何かには発展しづらいものと思われる。
知り合いとプレイするのであれば,ツールセットで作ったユーザーメイドのモジュールを一緒に楽しむというのが,最もポピュラーなプレイスタイルだ。NWN2の大手ファンサイトでは,ユーザーメイドのモジュールが多数公開されている。その中には数人のプレイヤーだけで楽しめるショートシナリオなどもある。そういった,まだ内容を知らない冒険に友人達と共に挑むのは,とても楽しい体験だ。プレイするのに適正なキャラクターレベルが指定されている場合は,同じく有志の手によって作られたキャラクター作成/レベル調整用のモジュールなどを利用するとよい。
ちなみに有志が公開したモジュールの中には,シングルプレイで遊ぶためのものもかなり多い。そのようなモジュールを一つ一つ試していくのも,NWNシリーズの,インターネットを利用した数ある遊び方のうちの一つだ。
知人の中に,自分で作ったシナリオモジュールを使ってダンジョンマスターとして冒険をホスティングしたいという人がいるのであれば,彼のセッションにプレイヤーとして参加すればいい。付属しているDM用のクライアントを利用すれば,ダンジョンマスターにはNPCを動かしたりモンスターを出現させたりといった,通常はできない操作が可能になる。これを駆使すればペン&ペーパーのD&Dのような“一人のダンジョンマスター&数人のプレイヤーキャラクター”によるセッションをオンラインで実現できる。NWN関連のコミュニティサイトなどでセッション参加者の募集を探し,それに応じてみるというのも面白そうだ。
さらに,NWNシリーズならではのマルチプレイの遊び方には,“Persistent World”を使ったものがある。Persistent World(=持続するゲーム世界)とは,自作のゲーム世界のモジュールを使って立ち上げっぱなしにしている常設サーバーのことだ。
Persistent Worldは,大抵ある程度の規模を持った世界で,プレイヤーが集まる宿,街と商店,フィールド,ダンジョンなどを備えている。クエストや狩り場も用意されていて,参加プレイヤー達はダンジョンマスターなしでも,自由にその世界を冒険し,キャラクターを育てていけるようになっていることが多い。
キャラクターデータは通常そのサーバーに保存される設定になっている。サーバーは常設なのでプレイヤーは好きなときにログインして,一人で,あるいはほかの参加者達とのプレイを楽しめばよい。このPersistent Worldであれば,友人を集めたりプレイ時間を合わせたりといった手間をかけることなく,手軽にマルチプレイが楽しめる。
例えるならば,NWNのPersistent Worldは,MMORPGにおけるワールドサーバーのようなものだ。「エバークエスト」はノーラスというPersistent Worldに接続してプレイするゲーム,「ファイナルファンタジーXI」はヴァナディールというPersistent Worldに接続してプレイするゲームだと見ることもできる。そしてNWNは,マッシヴリィなものではないが,ユーザーが自分でワールドサーバーを作り,立ち上げて,運営することが可能な作品だと言えるだろう。
Persistent Worldでのプレイを開始したい場合は,まずゲーム内のマルチプレイ用サーバー検索機能を使って「PW Action」や「PW Story」といったカテゴリーを覗いてみるとよい。そこでリストアップされるのは,ほとんどがPersistent Worldを運営しているサーバーだ。運営者のポリシーによっては「PW 〜」ではなく「Action」や「Role Play」カテゴリでサーバーを立てているところもある。
気になるサーバーが見つかったら,そのサーバーのディテールをチェックする。おそらく,そのPersistent WorldのオフィシャルサイトのURLなどが記述されていると思うので,そこを訪れてみよう。
ほとんどのPersistent Worldは,その開発者達が自ら運営するオフィシャルサイトを持っており,そこではサーバーのルールや世界背景の説明,バージョンアップやイベントの告知などが行われているほか,そのPersistent Worldに接続するのに必要なデータファイルの配布も行っている。それを入手して,指示通りにインストールを完了すると,そのPersistent Worldに接続できるようになる。
筆者も実際にいくつかのPersistent Worldを体験してみたが,クエストドリブンなところもあればハック&スラッシュ中心のところもあり,そのデザインから作り手の個性やこだわりが感じ取れてとても興味深かった。オリジナルのルールやインタフェースを用意しているものもあり,さわってみて感心させられることも多い。
街ですれ違った人からいきなりグループインバイトが飛んできたときは,まさに欧米のMMORPGをプレイしているようだと錯覚した。
Persistent Worldの中には,レジストしたメンバーのみでクローズドな運営を行っているところもある。より濃密なプレイ体験の実現と,理想とするファンタジー世界の構築を目指してのことだろう。NWNのもっとも“濃い”部分に踏み込む覚悟があるのなら,そういったコミュニティに所属するのも面白そうだ。
シングルプレイキャンペーンだけでも十分に楽しめる
マルチプレイができれば面白さはさらにアップする
ときには敵味方入り乱れる混戦状態になることも。状況によっては,NPCをAI任せにせず自分で操作することも必要だ |
ストーリーもダイナミックだ。田舎の青年だった主人公が陰謀に巻き込まれ,冒険に出かけることを余儀なくされ,仲間達と出会い,やがて世界を揺るがす大きな災禍に立ち向かうことになる。全体としてはRPGの定番的な筋書きだが,要所要所にユニークな仕掛けやサプライズが配されており,プレイしていて退屈することはなかった。D&Dらしく交渉やリドルで進めていく部分が用意されているところなどは,「さすが,分かっているなぁ」という感じだ。
そのようなハイクオリティな作品であることを踏まえたうえであえて言うならば,仲間になるNPCのクラスや個性,物語の進行方向などが固定されているので,そこに不自由さを感じる人はいるかもしれない。だがそう思った場合は,ツールセットやマルチプレイ,そしてプレイヤー作成のコンテンツを試すべきだ。
プレイヤーが自分の手でコンテンツを作成できるツールセットと,さまざまな遊び方を許容するマルチプレイ機能を備えたNWN2は,無限ともいえる可能性を秘めている。すべてのクラスを体験できなかったとか,クラフトがうまくいかなかったなどといいう,シングルプレイキャンペーンで感じた不満は,これらを駆使すれば解消されるだろう。
そもそも,プレイしきれないほど多くのサブレイスやプレステージクラスがあったり,膨大な数のスキルやスペルが存在したり,シングルプレイキャンペーンではいまひとつ生きていないクラフトシステムが用意されていたりするのは,これらに,シナリオやキャンペーンを自作するための素材としての意味合いもが含まれているからである。
そのような楽しさの広がりも含めて評価するならば,本作は100点満点中90点以上の点数を付けてよい作品だ。ただし,一歩進んだ遊び方にアクセスするためにはある程度の探求心と理解力が不可欠であり,それらが“ソフトを購入すれば誰でも楽しめる”という性質のものではないこともまた事実だろう。
NWN2は,まずシングルプレイ・キャンペーンだけでも面白い。そして,深く遊ぶことができる人にとってはさらに数倍面白い。そういう作品だ。
最後に余談を一つ。「Dungeons & Dragons」の開発元 Wizards of the Coastは,コアルール最新版となる「Dungeons & Dragons 4th Edition」を2008年にリリースすることをアナウンスしている。4th Editionでは,PCやインターネットを使ったプレイをオフィシャルにサポートするという話も出ているようで,コンピュータRPGプレイヤーにとっても気になるところだろう。
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